止まない雨の音が聞こえてくるようだ。
心の中を冷たい風が吹きすさぶ。
既に司の心は奈落の底に落ちてしまっているのだろうか?
まるで暗闇が誘いかけて来るようで、心に巣食うのは女を傷つけてしまいたいという加虐的な思い。だがその反面で慈しんでやりたいという思いがあった。
自分の気持がわからなかった。
あの女の将来も運命もこの手の中にあると言うのに自分の手が震えているのはどうしてだ。
全てをこの手にしたというのに何が足りない?
掴む女の腕はあの頃と変わらない細さ。あの頃感じることが出来なかった体の温もりを全て自分のものにしたというのに何が足りない?
怒りだけが繰り返し襲いかかると唇を重ね体を奪っていた。
果てしなく続く行為と狂ったように女を求めてしまうのはどうしてか。
荒っぽく優しさも愛情も与えてはいないつもりだが、それでも心のどこかにあるのは愛を与えたいという思いなのか。自分の冷たい唇に触れる温もりのある唇が欲しくてたまらなかった。
あの女を自分の傍においておくことで感情の全てが自分に向けられる。
それこそが自分の望んだことだった。
憧景すら覚えた女が自分を捨てたことが許せずにここまで来た。
別の男の傍で暮らしていた女の思考の全てが自分に向けられることを望んでいた。
次にどんな言葉で傷つけてやろうかと考えてしまうのは、あの女の心が自分と同じくらい傷つけばいいと思うからだろう。
復讐は蜜の味というが、その蜜は金があるから買えるというものではなかった。
類の記事を見せたときのあの女の顔が頭の中を過った。
自分の方を見て悲しそうに歪んだ黒い眉。
本当ならその人柄を一番表すはずの大きな瞳の中に写ったどこか得意気な自分の顔。
その瞳に輝きはなかった。口は何も語らなかったが開けば自分を軽蔑する言葉が出るはずだ。
そんな言葉をどこかで期待していたのかもしれない。
罵られればそれだけ返す言葉が増えるからだ。
瞳に怒りを浮かべて睨み返されればもっと酷い言葉を言い放つことが出来るはずだ。
10年だ。それなのにあの女は変わっていない。
もう10年以上たつのに、あの女に憑りつかれていた。
司は執務室の椅子に腰かけると、ほとんど睨みつけるような視線で目の前に置かれた書類を見ていた。彼は昨日ニューヨークから戻ってきたばかりだった。
ニューヨークを訪れた理由は父親に呼び出されたからだ。
その結果は目の前の文書を持っての通知。
司の決めた本社機能の殆どをニューヨークから東京に移す話しは役員会を通らなかった。
いくら今の司に力があったとしてもまだ父親の力に及ばないということか。
役員という役員全てが父親の意向を汲んでいるわけはないだろうが、司の思惑どおりにことは運ばなかった。一朝一夕にして物事が変わることはないと言うことか?
それともまだあの父親の力が怖いのか?名誉職でしかない父親。そうは言っても持ち株比率からすれば、大株主に値する男だ。
役員の間の根まわし、コンセンサスが取り付けてあったということか。
触らぬ神に祟りなし。
道明寺の父子関係にはかかわりたくはないということが本音なのかも知れなかった。
司と父親の間は親子と言えど親しい関係ではないと誰もが知っていたからだ。
あの男がどんな男かわかっている。
冷え冷えとした記憶の中にあるのは道明寺という名前に重きを置き、自分の基準に満たない人間は容赦なく切り捨てるような男だった。
それは邸の使用人から自らの側近にいたるまですべての人間に対してだ。
司は追想の世界を漂った。
子どもの頃からあの男は怪物だと思った。何かに溺れる者は愚かな者だと言った。あの頃の出来事は何事も冷静に計算されたうえに成り立っていた。他人に対して警戒するとこを求められ、信頼することは許されなかった。
道明寺という家に生まれた以上、おまえの人生はおまえだけのものではないと言われて育った。物事の本筋から逸れることが許されない人生が司には用意されていた。
そんな自分の人生の焦点を狂わせたのは他ならぬ司の両親だ。
大切だったものを奪った人間を許すことが出来るか?
誰が自分をこんな男にしてしまったんだ?
司は文書を手にするとライターに火をつけ燃やした。
しばらく手にしていたが、灰皿に放つとオレンジの炎を揺らめかせ灰となった。
「クソジジイ。まだ全てを手放すつもりはねぇってことか?」
司の表情に冷笑が浮かんでいた。
「それでもあんたが手にしている物はいずれ全てが俺の物になる」
ニューヨークで父親の部屋に飾られていた花瓶を壁に投げつけて割ったことがあった。
中国清王朝時代の花瓶。あの父親の眼鏡に叶った花瓶だったのか称賛を込めた言葉を聞かされた。それだからこそ余計に壊したくなっていた。
今、司の執務室に飾られているのはあの時の花瓶を思い出させるような芸術品だった。
古代ギリシャの神話をもとに描かれた絵。
技術がどうこうと論じるつもりはないが目を見張るほどの芸術作品だということは十分理解していた。
取引先が経営するギャラリーでのオープニングセレモニーに参加した司が偶然見かけた絵。
この絵を迷うことなく買っていた。
彼の注意を引いたのはそこに描かれている人物だ。その人物が彼の心を揺さぶった。
それはギリシャ神話の神のひとり。冥府の王ハデスが春をもたらす農耕の女神ペルセフォネをさらって自分の元へと縛り付けようとしている様子が描かれていた。
この王が冥府の中で生きなければならないなら誰かそばにいてくれる女を欲しがったとしても不思議ではなかった。
地獄で一緒に暮らしてくれる女が欲しい。
自分を望んでいるかどうかなど関係ない。鳥かごの中に閉じ込めて一生離さない。
永遠に冥府に閉じ込めておく。この絵はまさにそんな絵だ。
だがこの絵に描かれた冥府の王ハデスの顔には苦悩の表情が窺える。
春を知らせるペルセフォネをさらうことに迷いがあるのか?
春を知らせる女_
あいつの名前はつくし。その名も春の息吹を感じさせる名前だ。
道明寺という地獄にいる俺がハデスならあいつはペルセフォネか?
地獄が俺を縛りつけるならあいつも一緒に縛り付けてやる・・
俺と一緒に堕ちていけばいい。
地獄の果てまで堕ちてくれ。
孤独な抵抗をしていた少年時代の自分はもう存在しない。
この絵を買ったとき司の脳裏を過ったのはそんな思いだったはずだ。
***
ニューヨークの道明寺邸は寒々とした風景に覆われていた。
冬の空気は冷たく凍りつくようで、雪が降れば窓や木々に張り付いてしまうだろう。
雪はまだだが厚い二重ガラスの窓から見える空は雲が低く立ち込めていた。
雪が降るのだろうか。
そろそろフロリダかカリブの島にでも出かけるか。
例えこの街から離れていたとしても仕事は出来る。
男はパソコンを立ち上げると、限られた人間にしか教えていないアドレスへ届いたメールを読んでいた。
「それで?牧野つくしはまだあの山荘にいるのか?」
「はい。司様が通われているようです」
「ヘリでか?」
「はい。あの山荘は都内からですと時間がかかりますが、ご存知のようにヘリなら直ぐに着くことが出来ます」
「それで、あそこの管理はまだ木村か?」
「はい。司様は木村のことは幼い頃から見知っていらっしゃるので信用されているようです。ご自分がいないときは牧野様のことを木村に任せていらっしゃるようです。何しろあの男は警察上がりで銃を使うことにも慣れていますので」
受け答えをする男は髪をきちんと整えた眼鏡姿で葬儀屋のように黒い服を着ていた。
これならいつどこで葬儀があろうと遅れることはないだろう。
表情もそれらしく感情が込められることはなかった。
司の父親は自分の目で見たあの少女の姿を思い浮かべた。
牧野つくし。司とあの娘が10年ぶりだと言うのなら、あの両親が事故で死んでもう10年が経ったはずだ。金の為に娘の心を踏みにじった親など取るに足らない人間だ。
そう仕向けたのは自分だったが・・
それに司にはあの両親の娘は金に弱く軽薄な女だということを植えつけたつもりだった。
だが相変わらず司はあの娘から心が離れることが無いようだ。
あの娘が離れて行ったあとの司についてはいくつものシナリオを描いてみたが、息子は決してシナリオ通りに動く人間ではなかった。
ただ仕事に関しては予想以上に人間になっていた。ビジネスマンとして油断が出来ない人間に仕上がっていた。残忍さと狡猾さは自分に似たんだと思っていた。
そして人を寄せ付けようとしない独特の孤独感が息子にはあった。
だが、どうやらそれもあの娘と接するようになって変わって来た。
あの娘の傍にいたいのか本社機能をニューヨークから東京へ移すなどと言って来るようになっていた。おまけのあの娘に子どもを産ませてその子を道明寺の跡取りにするとまで言い放った。
「いよいよ手を打たないといけないようだな」
これまでの人生で大きなことを成し遂げて来たことがあったが、これから先のことの詳細を説明するつもりはなかった。
そうだ。誰にも話すつもりはない。
息子の人生は、ごく幼い頃から決められていたはずだ。
司のために敷かれたレールは道明寺家にとっての将来を決めるものだったはずだった。
あの娘にさえ出会わなければ、息子は自分の立場を認め、決められた結婚をしていたはずだ。
司の父親とて若い頃には自分の父親に対して反感を抱いたことがあった。
だがいつしか父親の決めた道を歩んでいる自分がいた。
自分のために用意された道を進むことが己の生まれてきた義務だと理解するようになれば、望んでその道を歩んでいた。
そうだ。
だから司とてまだ遅くはない。
道を誤る前に親が息子の進む道を正してやるのが何故悪い?
今の牧野つくしとの関係は所詮情事だと思えばいい。
それも短い情事だと・・・
自分に歯向かったものは皆この世を去ったではないか。
「おまえは日本に行ってもらう」
彼は葬儀屋風情の男に一枚の紙を渡した。
「行った先で何をしたとしても私には関係がない」

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既に司の心は奈落の底に落ちてしまっているのだろうか?
まるで暗闇が誘いかけて来るようで、心に巣食うのは女を傷つけてしまいたいという加虐的な思い。だがその反面で慈しんでやりたいという思いがあった。
自分の気持がわからなかった。
あの女の将来も運命もこの手の中にあると言うのに自分の手が震えているのはどうしてだ。
全てをこの手にしたというのに何が足りない?
掴む女の腕はあの頃と変わらない細さ。あの頃感じることが出来なかった体の温もりを全て自分のものにしたというのに何が足りない?
怒りだけが繰り返し襲いかかると唇を重ね体を奪っていた。
果てしなく続く行為と狂ったように女を求めてしまうのはどうしてか。
荒っぽく優しさも愛情も与えてはいないつもりだが、それでも心のどこかにあるのは愛を与えたいという思いなのか。自分の冷たい唇に触れる温もりのある唇が欲しくてたまらなかった。
あの女を自分の傍においておくことで感情の全てが自分に向けられる。
それこそが自分の望んだことだった。
憧景すら覚えた女が自分を捨てたことが許せずにここまで来た。
別の男の傍で暮らしていた女の思考の全てが自分に向けられることを望んでいた。
次にどんな言葉で傷つけてやろうかと考えてしまうのは、あの女の心が自分と同じくらい傷つけばいいと思うからだろう。
復讐は蜜の味というが、その蜜は金があるから買えるというものではなかった。
類の記事を見せたときのあの女の顔が頭の中を過った。
自分の方を見て悲しそうに歪んだ黒い眉。
本当ならその人柄を一番表すはずの大きな瞳の中に写ったどこか得意気な自分の顔。
その瞳に輝きはなかった。口は何も語らなかったが開けば自分を軽蔑する言葉が出るはずだ。
そんな言葉をどこかで期待していたのかもしれない。
罵られればそれだけ返す言葉が増えるからだ。
瞳に怒りを浮かべて睨み返されればもっと酷い言葉を言い放つことが出来るはずだ。
10年だ。それなのにあの女は変わっていない。
もう10年以上たつのに、あの女に憑りつかれていた。
司は執務室の椅子に腰かけると、ほとんど睨みつけるような視線で目の前に置かれた書類を見ていた。彼は昨日ニューヨークから戻ってきたばかりだった。
ニューヨークを訪れた理由は父親に呼び出されたからだ。
その結果は目の前の文書を持っての通知。
司の決めた本社機能の殆どをニューヨークから東京に移す話しは役員会を通らなかった。
いくら今の司に力があったとしてもまだ父親の力に及ばないということか。
役員という役員全てが父親の意向を汲んでいるわけはないだろうが、司の思惑どおりにことは運ばなかった。一朝一夕にして物事が変わることはないと言うことか?
それともまだあの父親の力が怖いのか?名誉職でしかない父親。そうは言っても持ち株比率からすれば、大株主に値する男だ。
役員の間の根まわし、コンセンサスが取り付けてあったということか。
触らぬ神に祟りなし。
道明寺の父子関係にはかかわりたくはないということが本音なのかも知れなかった。
司と父親の間は親子と言えど親しい関係ではないと誰もが知っていたからだ。
あの男がどんな男かわかっている。
冷え冷えとした記憶の中にあるのは道明寺という名前に重きを置き、自分の基準に満たない人間は容赦なく切り捨てるような男だった。
それは邸の使用人から自らの側近にいたるまですべての人間に対してだ。
司は追想の世界を漂った。
子どもの頃からあの男は怪物だと思った。何かに溺れる者は愚かな者だと言った。あの頃の出来事は何事も冷静に計算されたうえに成り立っていた。他人に対して警戒するとこを求められ、信頼することは許されなかった。
道明寺という家に生まれた以上、おまえの人生はおまえだけのものではないと言われて育った。物事の本筋から逸れることが許されない人生が司には用意されていた。
そんな自分の人生の焦点を狂わせたのは他ならぬ司の両親だ。
大切だったものを奪った人間を許すことが出来るか?
誰が自分をこんな男にしてしまったんだ?
司は文書を手にするとライターに火をつけ燃やした。
しばらく手にしていたが、灰皿に放つとオレンジの炎を揺らめかせ灰となった。
「クソジジイ。まだ全てを手放すつもりはねぇってことか?」
司の表情に冷笑が浮かんでいた。
「それでもあんたが手にしている物はいずれ全てが俺の物になる」
ニューヨークで父親の部屋に飾られていた花瓶を壁に投げつけて割ったことがあった。
中国清王朝時代の花瓶。あの父親の眼鏡に叶った花瓶だったのか称賛を込めた言葉を聞かされた。それだからこそ余計に壊したくなっていた。
今、司の執務室に飾られているのはあの時の花瓶を思い出させるような芸術品だった。
古代ギリシャの神話をもとに描かれた絵。
技術がどうこうと論じるつもりはないが目を見張るほどの芸術作品だということは十分理解していた。
取引先が経営するギャラリーでのオープニングセレモニーに参加した司が偶然見かけた絵。
この絵を迷うことなく買っていた。
彼の注意を引いたのはそこに描かれている人物だ。その人物が彼の心を揺さぶった。
それはギリシャ神話の神のひとり。冥府の王ハデスが春をもたらす農耕の女神ペルセフォネをさらって自分の元へと縛り付けようとしている様子が描かれていた。
この王が冥府の中で生きなければならないなら誰かそばにいてくれる女を欲しがったとしても不思議ではなかった。
地獄で一緒に暮らしてくれる女が欲しい。
自分を望んでいるかどうかなど関係ない。鳥かごの中に閉じ込めて一生離さない。
永遠に冥府に閉じ込めておく。この絵はまさにそんな絵だ。
だがこの絵に描かれた冥府の王ハデスの顔には苦悩の表情が窺える。
春を知らせるペルセフォネをさらうことに迷いがあるのか?
春を知らせる女_
あいつの名前はつくし。その名も春の息吹を感じさせる名前だ。
道明寺という地獄にいる俺がハデスならあいつはペルセフォネか?
地獄が俺を縛りつけるならあいつも一緒に縛り付けてやる・・
俺と一緒に堕ちていけばいい。
地獄の果てまで堕ちてくれ。
孤独な抵抗をしていた少年時代の自分はもう存在しない。
この絵を買ったとき司の脳裏を過ったのはそんな思いだったはずだ。
***
ニューヨークの道明寺邸は寒々とした風景に覆われていた。
冬の空気は冷たく凍りつくようで、雪が降れば窓や木々に張り付いてしまうだろう。
雪はまだだが厚い二重ガラスの窓から見える空は雲が低く立ち込めていた。
雪が降るのだろうか。
そろそろフロリダかカリブの島にでも出かけるか。
例えこの街から離れていたとしても仕事は出来る。
男はパソコンを立ち上げると、限られた人間にしか教えていないアドレスへ届いたメールを読んでいた。
「それで?牧野つくしはまだあの山荘にいるのか?」
「はい。司様が通われているようです」
「ヘリでか?」
「はい。あの山荘は都内からですと時間がかかりますが、ご存知のようにヘリなら直ぐに着くことが出来ます」
「それで、あそこの管理はまだ木村か?」
「はい。司様は木村のことは幼い頃から見知っていらっしゃるので信用されているようです。ご自分がいないときは牧野様のことを木村に任せていらっしゃるようです。何しろあの男は警察上がりで銃を使うことにも慣れていますので」
受け答えをする男は髪をきちんと整えた眼鏡姿で葬儀屋のように黒い服を着ていた。
これならいつどこで葬儀があろうと遅れることはないだろう。
表情もそれらしく感情が込められることはなかった。
司の父親は自分の目で見たあの少女の姿を思い浮かべた。
牧野つくし。司とあの娘が10年ぶりだと言うのなら、あの両親が事故で死んでもう10年が経ったはずだ。金の為に娘の心を踏みにじった親など取るに足らない人間だ。
そう仕向けたのは自分だったが・・
それに司にはあの両親の娘は金に弱く軽薄な女だということを植えつけたつもりだった。
だが相変わらず司はあの娘から心が離れることが無いようだ。
あの娘が離れて行ったあとの司についてはいくつものシナリオを描いてみたが、息子は決してシナリオ通りに動く人間ではなかった。
ただ仕事に関しては予想以上に人間になっていた。ビジネスマンとして油断が出来ない人間に仕上がっていた。残忍さと狡猾さは自分に似たんだと思っていた。
そして人を寄せ付けようとしない独特の孤独感が息子にはあった。
だが、どうやらそれもあの娘と接するようになって変わって来た。
あの娘の傍にいたいのか本社機能をニューヨークから東京へ移すなどと言って来るようになっていた。おまけのあの娘に子どもを産ませてその子を道明寺の跡取りにするとまで言い放った。
「いよいよ手を打たないといけないようだな」
これまでの人生で大きなことを成し遂げて来たことがあったが、これから先のことの詳細を説明するつもりはなかった。
そうだ。誰にも話すつもりはない。
息子の人生は、ごく幼い頃から決められていたはずだ。
司のために敷かれたレールは道明寺家にとっての将来を決めるものだったはずだった。
あの娘にさえ出会わなければ、息子は自分の立場を認め、決められた結婚をしていたはずだ。
司の父親とて若い頃には自分の父親に対して反感を抱いたことがあった。
だがいつしか父親の決めた道を歩んでいる自分がいた。
自分のために用意された道を進むことが己の生まれてきた義務だと理解するようになれば、望んでその道を歩んでいた。
そうだ。
だから司とてまだ遅くはない。
道を誤る前に親が息子の進む道を正してやるのが何故悪い?
今の牧野つくしとの関係は所詮情事だと思えばいい。
それも短い情事だと・・・
自分に歯向かったものは皆この世を去ったではないか。
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き**ち様
こちらのお話なかなか進まず申し訳ないです。前回より2ヶ月以上経ってましたね。
続きはなるべく早くと思っていますが重いんですよ、この先が。
暗闇を彷徨う司ですのでなかなか浮上しないと思います。
ゆっくりになると思いますがその時はまたお読み頂けると・・と思いますが暗いですからね。
無理はしないで下さいね。
コメント有難うございました^^
こちらのお話なかなか進まず申し訳ないです。前回より2ヶ月以上経ってましたね。
続きはなるべく早くと思っていますが重いんですよ、この先が。
暗闇を彷徨う司ですのでなかなか浮上しないと思います。
ゆっくりになると思いますがその時はまたお読み頂けると・・と思いますが暗いですからね。
無理はしないで下さいね。
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.27 23:26 | 編集

司×**OVE様
久しぶりにというか2ヶ月以上書いていませんでした(笑)
この司くんは暗闇を彷徨っていまして、病んでます。
道明寺家も両親もつくしも類も全てが憎いから始まってますからなかなか・・
ただ彼を救えるのはつくし以外はいません。どうすれば司の心に光が届くのか。
楓さんよりも父親との確執が色々とあるようです。
これ以上司に壊れてもらわないようにしないと・・と思っているのですが。
原作では影も形も出て来ない司パパが何をするのか?
なるべく間隔を開けないようにと思っています。
コメント有難うございました^^
久しぶりにというか2ヶ月以上書いていませんでした(笑)
この司くんは暗闇を彷徨っていまして、病んでます。
道明寺家も両親もつくしも類も全てが憎いから始まってますからなかなか・・
ただ彼を救えるのはつくし以外はいません。どうすれば司の心に光が届くのか。
楓さんよりも父親との確執が色々とあるようです。
これ以上司に壊れてもらわないようにしないと・・と思っているのですが。
原作では影も形も出て来ない司パパが何をするのか?
なるべく間隔を開けないようにと思っています。
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.27 23:41 | 編集

こ**る様
こちらこそお待たせ致しました。
司の父親がなかなか曲者です。なんだか不穏な空気が・・・
司は狂気と暗闇の世界に長く留まっていると日の当たる世界は眩しいでしょうが、つくしちゃんに引き上げてもらいたいと思っています。え?|д゚)バッドエンドでもいいんですか?
どちらにしてもこちらのお話は暗いです(笑)
次回更新なるべく早く・・と思っているのですが頭を切り替えるのがなかなか・・(笑)
「恋人までの~」は自信満々俺様ですね。女を落とすのもゲーム感覚。司の鼻、へし折ってもいいんですか?プライド高いですからねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
こちらこそお待たせ致しました。
司の父親がなかなか曲者です。なんだか不穏な空気が・・・
司は狂気と暗闇の世界に長く留まっていると日の当たる世界は眩しいでしょうが、つくしちゃんに引き上げてもらいたいと思っています。え?|д゚)バッドエンドでもいいんですか?
どちらにしてもこちらのお話は暗いです(笑)
次回更新なるべく早く・・と思っているのですが頭を切り替えるのがなかなか・・(笑)
「恋人までの~」は自信満々俺様ですね。女を落とすのもゲーム感覚。司の鼻、へし折ってもいいんですか?プライド高いですからねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.27 23:55 | 編集

マ**チ様
お待たせして申し訳ございません!!m(__)m
シリアスでサスペンスで(笑)司の父親が・・
不定期連載をじっと待って頂けるなんて!ありがとうございます!
なるべく早く続きを書くようにしますので平にご容赦をm(__)m
金持ちの御曹司。こちらは明るいエロ坊ちゃんなので軽いタッチで行けるんです。
シリアスはなかなか、言葉を選びますので(笑)
週末の夜、静かに更けてますねぇ・・明日の御曹司!いかに!
コメント有難うございました^^
お待たせして申し訳ございません!!m(__)m
シリアスでサスペンスで(笑)司の父親が・・
不定期連載をじっと待って頂けるなんて!ありがとうございます!
なるべく早く続きを書くようにしますので平にご容赦をm(__)m
金持ちの御曹司。こちらは明るいエロ坊ちゃんなので軽いタッチで行けるんです。
シリアスはなかなか、言葉を選びますので(笑)
週末の夜、静かに更けてますねぇ・・明日の御曹司!いかに!
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.28 00:01 | 編集

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ち**ち様
司の父親は何を企んでいるのでしょうか。
親子とはいえ、司の両親は道明寺家のこと、そして財閥の繁栄を第一と考えるような人たちです。
眩しい光を見ることのなかった司の心に光が届くといいのですが、父親が何やら不穏な動きをしていますので先はまだ・・
司の行動はいかに・・^^
コメント有難うございました^^
司の父親は何を企んでいるのでしょうか。
親子とはいえ、司の両親は道明寺家のこと、そして財閥の繁栄を第一と考えるような人たちです。
眩しい光を見ることのなかった司の心に光が届くといいのですが、父親が何やら不穏な動きをしていますので先はまだ・・
司の行動はいかに・・^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.28 21:42 | 編集

チビ**ママ様
こちらは愛の底なし沼の世界。
司の父親はあんな人です。心は何処かに無くしてしまったようです。
道明寺の家の為、自分の血を別けた司に執着しています。そのためなら・・・
司の心には少し光が見えるような気がします。が苦しんでいるようです。
自分がつくしに何をしているのかがわかっていないような気がします。
失ったと思っていた心はどこかに・・残っているのかもしれません。
父親の行動・・はい。お待ちくださいませm(__)m
コメント有難うございました^^
こちらは愛の底なし沼の世界。
司の父親はあんな人です。心は何処かに無くしてしまったようです。
道明寺の家の為、自分の血を別けた司に執着しています。そのためなら・・・
司の心には少し光が見えるような気がします。が苦しんでいるようです。
自分がつくしに何をしているのかがわかっていないような気がします。
失ったと思っていた心はどこかに・・残っているのかもしれません。
父親の行動・・はい。お待ちくださいませm(__)m
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.28 22:12 | 編集

as**ana様
こんにちは^^
いつもお待たせしてすみませんm(__)m
司の父親は恐らく・・・今はご想像にお任せしますが、こんな人ですから何をするんでしょうね?
楓さんもそうですが父親も道明寺家のためなら何をするかわかりません。息子である司もある意味両親のそんなところを受け継いでいるようです。
え?(笑)何気に催促?
こうなったら自分に締め切りをつけて書くしかないですね(笑)重いのでなかなか筆が・・
コメント有難うございました^^
こんにちは^^
いつもお待たせしてすみませんm(__)m
司の父親は恐らく・・・今はご想像にお任せしますが、こんな人ですから何をするんでしょうね?
楓さんもそうですが父親も道明寺家のためなら何をするかわかりません。息子である司もある意味両親のそんなところを受け継いでいるようです。
え?(笑)何気に催促?
こうなったら自分に締め切りをつけて書くしかないですね(笑)重いのでなかなか筆が・・
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.28 22:26 | 編集

イ*ン様
類と司とつくしとでのプロット。
素敵ですね!春を告げる女神によって再生されるふたり。
いつかお時間のある時に、是非お話をお書き頂ければと思います。こちらの司は冥府の王となって自分で作った地獄で苦しんでいます。はたして女神の祝福を受けることが出来るのでしょうか。いつの日か・・地獄に光が届くといいのですが。
拍手コメント有難うございました^^
類と司とつくしとでのプロット。
素敵ですね!春を告げる女神によって再生されるふたり。
いつかお時間のある時に、是非お話をお書き頂ければと思います。こちらの司は冥府の王となって自分で作った地獄で苦しんでいます。はたして女神の祝福を受けることが出来るのでしょうか。いつの日か・・地獄に光が届くといいのですが。
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.28 23:02 | 編集

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ホワ**スター様
司の父親も深い闇の中に住む住人なんです。
父親も道明寺という家に囚われている人ですね。
司の父親、絶対王者にして怪物なのかもしれませんねぇ。
あの楓さんよりもかなり怖い人のようです。
司が求めているものなんて理解出来ないでしょうし、理解しようとしていません。
つくしちゃん、どうしたら司を救えるのでしょうね・・
闇堕ちした彼を救えるのはつくしちゃんだけですね!
ひと筋の光りが暗闇を照らしてくれることを祈って・・
つくしちゃん、手を伸ばしてあげてね。
コメント有難うございました^^
司の父親も深い闇の中に住む住人なんです。
父親も道明寺という家に囚われている人ですね。
司の父親、絶対王者にして怪物なのかもしれませんねぇ。
あの楓さんよりもかなり怖い人のようです。
司が求めているものなんて理解出来ないでしょうし、理解しようとしていません。
つくしちゃん、どうしたら司を救えるのでしょうね・・
闇堕ちした彼を救えるのはつくしちゃんだけですね!
ひと筋の光りが暗闇を照らしてくれることを祈って・・
つくしちゃん、手を伸ばしてあげてね。
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.29 23:31 | 編集

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さと**ん様
冥府の王となって暗闇に住むハデス。
今の司みたいですね。好きな女をさらって冥府に住まわせます。
ハデスはペルセフォネが好きで好きで・・ということでまさに司と同じです。
ハデスはローマ神話ではプルートとなって冥府を司っています。←まさに「司」です。
そしてプルトニウムの語源でもあるプルート・・
プルートは冥王星。
司が星になってしまわないように・・つくしちゃんに手を伸ばしてもらいたいです。
光となって彼を暗闇から引き上げて欲しいのですが、司の父親が怖いです。
木村さんはエロ小説を読んでいたとしても警察あがりなんです(笑)
コメント有難うございました^^
冥府の王となって暗闇に住むハデス。
今の司みたいですね。好きな女をさらって冥府に住まわせます。
ハデスはペルセフォネが好きで好きで・・ということでまさに司と同じです。
ハデスはローマ神話ではプルートとなって冥府を司っています。←まさに「司」です。
そしてプルトニウムの語源でもあるプルート・・
プルートは冥王星。
司が星になってしまわないように・・つくしちゃんに手を伸ばしてもらいたいです。
光となって彼を暗闇から引き上げて欲しいのですが、司の父親が怖いです。
木村さんはエロ小説を読んでいたとしても警察あがりなんです(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2016.08.30 22:41 | 編集
