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2016
08.08

恋人までのディスタンス 6

つくしはくしゃくしゃになった招待状をゴミ箱に捨てた。
もうパーティーの招待状は必要がなくなったからだ。
道明寺司を殴りつけておいて今さら新たなパーティーになんか行けるはずがないからだ。
それにしてもあれだけの騒動を起こしたのに何も言ってこないとはいったいどういうことなのかと訝った。まさか訴訟の準備をしているとかじゃないでしょうね?
ある日突然裁判所からの訴状が送られて来るなんてことがあったらシャレにならないじゃない。

そんなことを考えながらつくしは痛む右手を庇いながら仕事をしていた。
あたしの右手がこんなに痛むのだから、あの男も同じくらい痛いはずだ。
それだけでも殴った価値はあったのかもしれない。

あれからつくしが親友の家を訪ねると、無くしたと思っていた携帯電話がホテルメープルの遺失物係へと届けられていることを知った。ホテル側が着信履歴の一番上にあった優紀の番号に電話をかけてきたということだった。
当然聞かれたのはその電話の持ち主のことで、優紀はホテルにつくしの名前を伝えたからと教えてくれた。

つくしはホテルで起こった道明寺司とのいきさつを申し訳なさそうに話した。
やっと近寄ることが出来たのに、つくしがそのチャンスをふいにしてしまったこと、それから思わず手を出してしまったことまで話していた。
だがぼんやりと考えていた。
もし自分の素性がわかれば、文句のひとつも言ってくるだろうから、それを逆手に取って優紀のことを話せばいいと考えた。

「つくし?」
優紀の問いかけにつくしは我に返った。
「え?な、なに?」
「ねぇ。道明寺・・さんは誰か女の人と一緒だった?」
それはあの男が新しい恋人といたかどうかということを聞きたかったのだろう。
「え?そんなことなかったと思うけど・・」

つくしが遠くから見ていた時も、自分の傍へと近づいて来た時もあの男の傍には女性はいなかったはずだ。もちろん殴りつけた時もいなかった。

「ね、ねえ、優紀。あの男のことなんてもうどうでもいいじゃない。電話をしても繋がらないし、メールをしても返事はないんでしょ?あんな男なんてただ顔がいいだけで、まあお金持ちでもあるけど・・もっといい男なんているから・・ね?」

慰めてはみたものの、連絡が取れなくなってから半年たっても忘れることが出来ないなんて、そんなふうに人を好きになれる友人が羨ましいと感じていた。

「彼ほどの人はどこにもいないと思うの」
優紀は長いため息をつくと悲しそうにほほ笑んだ。
「でも、彼とは・・道明寺さんとはもうダメだってわかってるの・・でもね、なんて言うのかな・・別れるにしても最後にきちんとけじめを付けたいって言うの?あたし・・宙ぶらりんなのは嫌いなの。別れるなら別れようってはっきりと言って欲しいの・・って言ってももう別れてるのと同じだから・・」

優紀の言葉につくしの胸の中に痛みが甦った。
確かにそうだ。恋人と別れるならけじめは必要だ。愛を信じ込まされて、その愛を疑いなく受け入れてしまうような女は立ち直るまで時間がかかるものだ。

「それにね、道明寺さんは誰もが夢見るような人だと思う。優しくてロマンティックな人だと思うの・・」

あの道明寺司が恋人なら忘れられないような経験をさせてくれるのだろう。
どうみてもカッコいいし、あの洋服の下にはひきしまった筋肉があるのだろう。
だから優紀は半年たってもあの男のことが忘れられないのだろうか。
それにまだ半年では気持ちの整理がつくはずがないのは分かる。

「で、でもね、優紀。優紀が言うそんな優しい人が急に連絡も取れなくなって、まるで優紀のこと忘れちゃったみたいになるなんてことがあるとは思えないの。だから・・」

遊ばれて捨てられたんじゃないかとは口に出せなかったが、そう考えれば一発殴っておいて正解だったかもしれない。

「つくし、もう彼との間に希望がないのは分かってるの。でもね、話しは・・最後のけじめだけはどうしてもつけておきたいの」

千々に乱れる思いが優紀の表情からうかがうことが出来た。友人が恋の思い出を断ち切ろうとしているのだから親友である自分が協力しなくてどうするのかと言う思いがつくしに再度決心させた。

「うん・・それが優紀にとって大切なことなら、それで気持ちが吹っ切れるなら協力するから何でも言って!」
優紀があの男のことで顔を曇らせているところなんて見たくないもの。

「じゃあね・・お願いつくし・・もう一度だけあの人に会えるようにして欲しいの」






つくしは自宅に帰るとゴミ箱に捨ててあったパーティーの招待状を拾い上げた。と同時にため息が出た。
くしゃくしゃになってしまったが招待状には変わりはない。
優紀にああは言ったものの、つくしの表情は曇っていた。いきなり殴りつけた相手になんと言って会えばいいのか。相手は道明寺財閥の後継者だ。それに例え招待状を持って行ったとしてもあたしの顔は道明寺司を殴った女として顔写真が出回っているかもしれない。
そうは言っても無二の親友のためだ。なんとかしてもう一度あの男に会いにいかなければならない。つくしはそう決心していた。









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コメント
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dot 2016.08.09 01:56 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
今回は親友のためにも頑張る彼女です。30過ぎでも純情つくしちゃんですからね。どうなるんでしょうか!←え?
もうねぇ・・どうしましょう・・面白すぎです!!(≧▽≦)
本当に素晴らしい!あの指輪と婚姻届のやり直しを考えていたんですね!この二人は「御曹司」がモチーフですがメインは西田さんですね?(笑)執務室から一瞬のうちに走り去るつくしは9秒台を目指しているはずです。「茶の湯でチャチャ!」(≧▽≦)
頭に思い浮かんだのは石井明美「cha-c*a-cha」(笑)もうねぇ・・(笑)面白い!!
本当ですね、振り出しに戻りましたね。この続きが是非知りたいです!坊ちゃんアカシア蜂蜜のブログから勉強するのでしょうか?と言うか西田さんに翻弄されてますね?マ**チ様、本当に有難うございます。アカシアもこんな坊ちゃん大好きですよ。
よし!「金持ちの御曹司」もっと頑張って書かねばいけませんね?リクエストがあればぜひどうぞ(*^^)v
夜更かし同盟、永遠なれ!チャチャチャ♪
アカシアdot 2016.08.09 22:44 | 編集
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dot 2016.08.10 00:40 | 編集
マ**チ様
ありがとうございます!
息抜きどころか、とても楽しみに読ませて頂いています。続きも楽しみにしていますが、無理は禁物です。西田さん、いい味出してますね!アウトレットで売っていたとは信じられません(笑)
こちらの司はつくしを捕まえることに決めたようです(笑)捕食者、司。これからどうするのでしょうか?(≧▽≦)
オリンピック、凄いですね!体操男子団体金メダルおめでとう!女子も4位でしたね。あまり点差がありませんでした。男子競泳も凄いですね!東京が楽しみですね。開会式見たいです!夜更かし同盟、今夜は卓球愛ちゃんを応援します。
コメント有難うございました^^


アカシアdot 2016.08.10 21:43 | 編集
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