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2016
07.06

大人の恋には嘘がある 39

人を愛するということは相手を信頼するということだ。
愛と信頼は密接に結びついて存在している。



つくしが司の気持に応じてくれたのは、彼が彼女の愛と信頼を勝ち得たということだろう。
心からの思いがなければ簡単に体を許すような女じゃないとわかってはいたが、牧野のために逃げ道は用意していた。
だが、どうやらその必要はなかったようだ。

司はキス以外にも大きな贈り物をもらっていた。


それは、つくしの心の中の箱を開けるという鍵。
今まではどこかで線を引いている。と感じられていたつくしの心が司に向かって開かれていくのを感じていた。
愛したい・・愛されたいという思いが解き放たれた瞬間だった。


力強い指はつくしの手を引っ張った。
ベッドルームへ行こうということだろう。
二人は何も言わなかったが司はつくしの手が震えているのを感じていた。
司は決して無理はするまいと思った。愛し合うと言うことは求め合うということで、押し付け合うことではない。もし迷いがあるならするべきことじゃない。


「牧野、本当にいいんだな?」

司は緊張からなのか、いつもは耳に心地よく聞こえるバリトンボイスがしゃがれてしまっていた。
つくしは息を呑むと「・・うん」と小さな声で頷いた。
だがやはり頷いた声にはどこか戸惑いが感じられた。

愛し合うことは追い立ててまですることではないが、初めての牧野はどうしたらいいのか分からないのかもしれない。司は自分が初めて女を抱いた時のことなど、とっくに忘れていたし、初めての女をどう扱えばいいのか正直わからなかった。
今まで相手をした女は世当たりが上手い女達ばかりで、避妊さえしていれば気遣いなど必要なかった。


こいつは、牧野は怖がってる。そう感じられた。


「大丈夫だ。心配すんな」
司はつくしの頭を両手で挟むと、目をじっと見つめた。

「馬鹿な自分と3年間も顔を突き合わせていたんだ。今さらがっついたりしねぇよ。けどな、男にとって3年も女がいないなんてことは気が遠くなるほどのことだぞ?」

「そ、そうなの?」つくしの声も緊張からなのかうわずっていた。

「ああ。男にとってはな。だけどな、好きでもねぇ女を抱きたいなんてことは一度も思わなかったな」
司は苦笑した。
「おまえのせいで俺の体はおまえ以外受け付けなくなってた。__ったく男として情けねぇ状況に陥っちまったって感じだったな」

今、二人は体を寄せ合っている。
体がつくしの柔らかさに反応し、司の体は隠しようがないほどに屹立していた。
誰もが羨ましがるほどの外見に、魅力的な家柄を持ち、大勢の人間を惹きつけてやまない男もたったひとり、好きな女の前ではただの男としての機能しか持ち合わせていないようだ。

「今度こそうまく愛してみせる。これだけは誓って言える」
愛したい、愛させて欲しい。愛して欲しいという思い。

熱心に、だが欲望が感じられるようなかすれた声に、つくしも素直に自分の気持を認めることができた。

「あたしも・・あのときどうしてあんな態度に出ちゃったのか・・」

ただあの時は嘘をつかれたという事だけが頭の中を巡り、他には何も考えられなかった。

「おまえとあの買収案件で争ったとき、正直もうどうでもいいって気持だった。
 だだっぴろい会議室の端と端で睨み合うなんてことは二度としたくねぇな」
司の顔に自然と笑みが浮かんでいた。

「仕事人間の牧野つくしは恐ろしいくれぇ冷たかった」

「あの時はそうでもしないと泣きそうだった。だってあんたはうちのクライアントが買収しようとしてる会社を横取りしようとする会社の副社長だなんてことが信じられなかったから睨みつける以外なかったのよ?」
つくしは笑いながら司の顔を見上げていた。

「ふん。横取り?随分な言い方だよな?」

「なによ!結局横取りしたじゃない!」

つくしの表情には司の好きな愛らしさが戻っていた。

「いつもの牧野だ」
「えっ?」
「ついさっきまで顔がこわばってたぞ?」
司は優しくからかうとひと呼吸おき、つくしの顔を窺った。

「本当にいいのか?」

途端、二人の間に流れていた笑いを含んだ空気は消えていた。
つくしがまつ毛を伏せるように小さく頷くと、司は足元から彼女を抱き上げた。

「ど、道明寺?あ、あたし重いからお、下ろして!」つくしは慌てた。

「おとなしく抱かれてろ。重くなんかねぇぞ。羽根みてぇに軽りぃ」
司はつくしを抱いてベットルームへと向かった。

「ちゃんと食ってるのか?ダイエットなんかするんじゃねぇぞ?俺はおまえが美味そうに食ってるところを見てると幸せを感じられるからな」
扉を器用に押し開けると、このうえない優しさでベッドの中央へ横たえた。

まるであの時の同じような光景だ。
ただ、今のつくしは酔っぱらって気分が悪い状況ではないし、意識もしっかりしていた。

「あの・・道明寺、前にも言ったけどあたし経験がないの。そんなチャンスがなくて・・だから・・上手く出来ないかもしれない・・」
つくしは司を見つめていた。

「俺は世界で一番幸運な男だな」
司の口をついたのは心からの言葉だろう。

「なにしろ好きになった女の初めての男になるんだからな」
口元には満足げなほほ笑みが浮かんだ。

「道明寺は経験豊富な女性のほうが好みかと思ってた」

「なんだよそりゃ?」

「だって・・道明寺が昔つき合ってた人は・・美人で洗練された女性で、あたしとは全然ちがった・・」

おそらく昔のゴシップ記事のことだろう。知っているということはやはり司の事を気にしていたということだ。

「本当にあたしでいいの?」未だに信じられないという思い。

「俺はおまえしかいらない。おまえがいい。今の俺はおまえが欲しいただの惨めな男に成り下がってるってのに他の女のことなんか気にするな」

繰り返される不安な言葉。その思いが払拭できるなら司は何度でも自分の思いを口にするつもりだ。おまえが欲しい。おまえがいい。牧野つくしだからいい。
過去の女性遍歴は今さらどうしようもないが、記事になっているのは殆どが嘘だ。

どうしても気になるって言うなら
「いいか?もし俺のことで気になることがあるなら、俺に直接聞けばいい。おまえに嘘はつかないと約束したんだ。だからなんでも正直に答えてやる」
司の目は真剣だ。
「いいな?」

つくしは司から目をそらすことなく頷いていた。






ベッドルームは薄明りに照らされていた。
これから起こることは司にとっては手慣れていたことでも、つくしにとっては初めてだ。
だからといって何も知らないわけではない。
経験上知りえなくても、何をするかは当然のことながら知っている。
キスを深めながら互いの洋服を脱がせることから始まると、二人の着衣は消えていた。




二人は大きなベッドのうえで見つめ合っていた。
司は3年間他の女が欲しいとは思わなかった。いくら世間でいいと言われる女が近づいてきても何も感じなかった。だが今、目の前にいる牧野つくしに対しては、ただ欲しいという思いだけが湧き上がって来ていた。3年間眠っていた男としての本能がそうさせるのだろうか?急激な飢えが司を襲っていた。
3年ぶりに感じられた荒々しいとも言える性的衝動には司自身も驚いていた。
今まで休眠状態のようになっていた男としての本能はつくしの裸を前に止めることは出来ない。まさに原因と結果とは今の二人のことだろう。



小さな声で「どうみょうじ・・」と自分の名前を呼ばれたとき、もしニューヨークにいたら他の名前で呼ばれていたと思えば、今感じられる充実感は司の全てを支配していた。

触られることに慣れてないつくしは、司の手と唇が体中を這いまわる度に呻き声を上げていた。
絶え間なく襲いかかる興奮に体は翻弄され続け、大きな波と小さな波が繰り返し押し寄せてきてはその波に弄ばれる小舟のように揺れていた。

「おねがい・・もう・・」

司はどんな小さな呟きも聞き漏らすことがなかった。
体の変化にしてもつくしがどんなことが嫌で、何を喜ぶのかを見逃すことがないようにしていた。

「何がおねがいだ?」
脚のつけ根にキスをすると小さな呻き声が漏れた。

「はぁ・・・ああっ」

次に秘めやかな場所を舌で触れたとき、一段と大きな呻き声が漏れていた。
司が腰を押さえ込むと、自分の体がどうにかなりそうだとばかりに狂おしい声を上げていた。

「大丈夫だ。いいんだ。なにも考えるな」
初めての経験は喜びに溢れるものにしてやりたい。

「後悔はさせねぇ」

司は自分と愛し合ったことを後悔なんてさせたくはない。
痛みを伴う声があがったとしても自分の情熱で歓喜の声へと変えさせてやる。
そんな思いだけが司の中にはあった。
愛し合うという行為に自分の体以上のものを捧げるのは牧野が初めてだ。
それは慈しむ心。愛おしいと感じる気持ち。今までどんな女と寝ても、そんな気持など持ち合わせてはいなかったはずだ。

遂に訪れた二人にとっての最高の瞬間。
切ない声で自分の名前を叫ばれたそのとき、司は本当に好きな人と結ばれる素晴らしさを初めて知った。

これからは傍にいて見つめることを、抱きしめることを許して欲しい。
今まで他の誰かと比べたことなど無かったひとりの女を愛するという気持ち。
好きな女を守りたい、愛したい。そのうえで、愛し愛されるということは身も心も癒されるような気持がした。
人を愛するという気持ちがこんなにも素晴らしいことだと初めて知った。
この想いはこれから先もずっと続くはずだ・・・・
ずっと抱きしめていたいこの思い。



牧野つくし以外欲しくない。

ただその思いだけで過ごした3年間は、今ではもう無かった。








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コメント
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dot 2016.07.06 09:36 | 編集
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dot 2016.07.06 16:02 | 編集
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dot 2016.07.06 23:08 | 編集
co**y様
おはようございます(^^)
私も朝は早いです。仕方なく早いと言うところもあります。そのせいで拙宅は5時から公開となっています。
確かに若い頃は、何時間寝ても足りない思いでしたが、今は睡眠時間が少なくても意外に大丈夫なところもあります。コーヒー片手に寛ぎの時間。必要だと思います。私はこの時間に飲むこともあって、眠れないと言うこともあります。
このお話しで昔が甦った!気になります( ノД`)
読みたかったです。残念です!もしよかったらこっそり囁いて下さいm(__)m
「後悔させない」・・自信満々、俺様がこんなところに表れました。つくしちゃんこんな坊っちゃんに愛されて羨ましいです( 〃▽〃)
お気をつけて行ってらっしゃいませ。また、お待ちしております(^^)
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.07.07 00:13 | 編集
さと**ん様
大人の司にうっとり有難うございます(^^)
アカシアの願望がこんな司になりました。こんなふうにされたい、いえ、されたかった(笑)願望です。
現実生活では無理だと思われることをお話しに組み込んでみました。
【愛したい愛されたいと思う気持ちが解放された瞬間だった。】
言い回しに我ながら恥ずかしいです。心の中の小さな箱の鍵は司のものになりました。良かったね司。
これから先のつくしはきっと素直に接してくれるはずです。
「後悔させない」・・やる気満々?(笑)
はい、休眠状態でした。が、今の息子さんはいつでもOKです!こんな事を書くと御曹司になってしまうので、気をつけます(笑)
「もみほぐすキス」ダンスを踊るようにうごめく唇。
それは「俺の唇の動きに合わせて同じように動け」と言う感じでしょうか。さと**ん様、舌は入れないで下さい。
えー例えると、アワビの動き?(笑)アワビは別の例えに使われますが、ゴホン(龍角*ではないです)、あのように艶かしく動かして下さい。え?やっぱりよくわからない?(笑)すみません!
え?経験不足?またまた(笑)大人の司ですがお楽しみ頂いて嬉しいです。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.07.07 00:41 | 編集
マ**チ様
司へのおめでとう、有難うございます。やっとここまで来ました(≧▽≦)
が、仰るとおり澤田さんがまだ消えていないんです。
アカシア脳内にいます。
幸せな二人に乾杯!( 〃▽〃)
いえいえ、私どもの年代にはこの言葉は普通です。素敵な表現だと思います。古くなんてありません!
司には初心者相手にあまりがっかないように願います。でも一度知ってしまった甘い蜜(ツクシハニー)の虜になってしまったと思います。あ、これは御曹司でした(^^ゞ
澤田さんをなんとかしなくては・・(笑)
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.07.07 01:00 | 編集
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