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2015
09.01

キスミーエンジェル2

8年前、俺は牧野つくしに恋をした。
だがその頃の俺はどうしようもない世間で言うところの「バカ坊ちゃん」だった。
それに対して牧野はどうだったか・・。
学業と勤労に専念する勤労少女だった。
俺が赤札を貼ったせいで一時期成績が落ちたらしいが、その後は一心不乱に勉強して
奨学金をもらい国立大学へ進学している。
大学へ通いながらも食べるためにバイトの掛け持ちもしていたらしい。
そうしながらも大学を卒業し、大手の地質調査会社に就職している。
ウチじゃないのが残念だが・・・。



つくしは8年ぶりに見る男を睨みつけた。
歳月は関係ない。何年たっていても一目で彼だと分かる。
それにこの男を忘れるわけがない。
私にあれだけつき纏って、好きだ、愛しているなんて言っておいて私を捨てた男だ。


いや、厳密に言えば付き合ってはいない。
だから捨てられたとは言えない。
私の気持ちがこの男に傾きかけた時にさっさと渡米して行った。
で、私の気持ちは宙ぶらりんのままに残された。
そう、私はどうしようもない気持ちを抱えたままで残されてしまった。


そして記憶の中の男は現実の男となって隣の席に座っている。
少年の面影は消え、どこから見ても大人の男だった。
18歳の少年は26歳の青年になりその端正な顔立ちはどんな女性も引き付ける。

そんな男を見ていると何故か自分の心臓の音が外に聞こえるのではないかと思うほど激しく鼓動しているのが分かる。
道明寺司の写真を見たり、声を聞いたりするたびにそんな思いをしてきた。
いつまでたっても高校時代の名残から抜け出せない自分がいる。

でも変わったのはこの男だけじゃない。
私だって努力してここまできた。



「おい、俺にそんなに見惚れるな」
と妖艶な笑みを浮かべた。

見惚れてなんていないわよ。睨んでるのよ。
道明寺は客室乗務員が持ってきたグラスを受け取っている。

「で、牧野。俺たち付き合うのかどうするのか返事がまだだったよな」

「 は? 」

この男、馬鹿なんじゃない?
なに言ってんのよ。
私は文字通り開いた口が塞がらないとしか言いようがなかった。
誰が誰と付き合うですって?

「なあ、牧野。どうする?やっぱり俺たち付き合おうぜ」
「申し訳ないんですけれど、言ってる意味が分かりません」

私は出来る社会人よろしく穏やかな表情をたもちながらも目だけは睨みつけたままだ。
8年ぶりに会う女に付き合うとか付き合わないとかこの男は何を考えいるのか。

彼はグラスを口に運びかける手を止めると驚いたような表情で私を見た。

「牧野、どの部分の意味が分からないんだ?」
「道明寺さん、私たちは付き合うもなにも、そんな間柄にはなったことはありませんから」
「なにがだ?」
「だから、私たちはお付き合いするとか言う間柄ではありませんから」
「どうして?」 

道明寺はほほ笑みを浮かべながらも、その表情はわずかではあるが悲しみを浮かべていた。

「だから!私たちは同じ高校に通いはしましたが、お付き合いするとかどうするとか
そんな話になったことはありませんから!」

それに私は道明寺に赤札なんて言うものを貼られて全校生徒から酷い目に遭わされた。
あの時の事は多分一生忘れない。
でも、そんな私たちの関係もいつからか少しずつ変化して行ったけど・・・。








まずいな、切り出し方を間違えたか・・・・
司は内心で舌打ちをしていた。
まさか牧野がこの便に乗っているなんて思ってもみなかった。
牧野つくし捕獲作戦は俺が帰国してからのものだったからな。
俺は隣で一心不乱に書類を読むふりをしている牧野を見つめた。
写真でしか見たことのなかった最近の牧野は大人の女らしさが醸し出されていた。
こうして実物の牧野がすぐ隣にいるのに手も握れない自分がもどかしかった。




いつまでたっても隣の席から立とうとしない道明寺に私は我慢が出来なくなってきた。

「あの、道明寺さん。いつまでも隣で睨まれると嫌なんですけど」

道明寺は私の隣で身体をこちら側に向け私の方をじっと見ている。

「・・・睨んでなんていない。お前に見惚れてた」
「い、いい加減ご自分の席に戻って下さい!」

俺は牧野の顔を見つめたまま思った。
その唇に触れてみたい。





まずい・・自重しなければ。
このまま昔の癖で突っ走ったら牧野を手に入れることなんて出来なくなる。
が、牧野に触れずにはいられない。
俺は見つめているだけでは我慢が出来なくなりそうだった。
だが、ここは民間機の中だ。
自家用ジェットの中なら何でもありなんだがな・・・。





仕方ないか・・・・・
「牧野、久しぶりに会えて良かったよ」

そう言って俺は席から立ち上がると握手を求めるように手を差し出した。

海外では握手をするのは挨拶のひとつだ。
さすがに牧野も俺からの挨拶を無視することは出来ないようだ。
黙って大人しく右手を差し出してきた。
俺は牧野の手を静かに握った。

そして牧野の手の甲を親指でそっと撫でた。








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コメント
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dot 2015.09.01 19:34 | 編集
う*ちゃん様
同感です!(笑)
アカシアも想像してみたらゾクゾクしました!
握手の握り締め具合って難しいんですよねぇ。
司君はつくしちゃんの手を静に握ってはいますが
その親指は何気にイヤラシイですよね?

はい!司君には頑張ってもらいます!
と言うことはアカシアが頑張らなくては・・・
明日の朝の分、頑張ります!



アカシアdot 2015.09.01 21:54 | 編集
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