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2016
06.22

大人の恋には嘘がある 30

交流会と言っても、いわゆるひとつのパーティーだ。
道明寺ホールディングスと澤田ホールディングス、そして他の企業関係者も招いての大がかりなパーティー。いるのは高級志向で多忙を極める一流企業に勤める集団だろう。

司はやっとの思いで、つくしとのデートの約束を取り付けたと思っていたところへ澤田と言う男の出現にやきもきしていた。
司の前で堂々とつくしが好きだと宣言し、ライバル宣言までした男。

ニューヨークから帰国して以来、じゃれるようにつくしに付き纏っては来たが、微妙な関係から始まっていつも上手くかわされて来ていた。だがホテルで何もなかったとはいえ一夜を過ごし、そこから二人の関係が前進したかと思っていたら、澤田の出現だ。

クソッ!

やっと牧野が俺の気持ちと同じになったと思ったところで澤田の出現に司はイライラしていた。
3年以上眠らせていた欲求に対してのイライラもあるのかもしれないが、それはいつか牧野と思いが通じればなんとかなると思っていたのだから、時間の問題だと思っていた。
ここまで時間をかけて来たんだ。澤田なんかに牧野を取られてたまるか。
司の頭の中にはただその思いだけがあった。

本当はこんなパーティーに参加するより牧野と二人っきりで食事に出かけ、酔わない程度に酒を飲ませて気分よくさせて、それから願わくば今度こそ一緒のベッドで寝たい。
もちろん添い寝じゃない。だが今はそんな場合じゃなかった。

司は毎日気を揉んでいた。
それは澤田とつくしが同じ会社にいるということだ。だがこればかりはいくら司が気を揉んだところでどうしようもなかった。

パーティーには当然だが澤田智弘も来ていた。
背の高さは司よりも少し低いが決して見劣りするような高さではない。
いかにも自信たっぷりで権力を手にしている男という感じだ。つくしと一緒に会社を
訪れた時は本当の自分を隠して司に近づいて来たということだろう。





「道明寺さん、こんばんは」

一流どころの財界人が集まるこのパーティー会場でも澤田は堂々とした態度で司に挨拶をしてきた。いかにも場慣れしている感じだ。

「牧野、この前は話しを聞いてくれてありがとう」

にっこりと笑いかけて来たその笑顔は会えてうれしいよ。と心から言っているようだ。
つくしは思わずぎょっとした。澤田のひと言で隣に立つ男から並々ならぬ熱が感じられたからだ。その熱は恐らく怒りのエネルギーだと思われた。
司は澤田を睨みつけるようにして立っている。

つくしは司からの誘いに応じ今夜のパーティーに参加していた。企業同士の意見交換会みたいなものだと言われ、おまえの今後の仕事のためにも参加した方がいいと思うと言われたからだ。司とつき合いを始めると言うことは、求められる立場があると言うことは理解していた。

ニューヨーク時代も客に招かれパーティーに何度か参加したことがある。
だが今まで参加して来たパーティーはあくまでもビジネスの延長線上にあるもので、仕事絡みのものが殆どだった。だが今夜のパーティーは少し様子が違うようだ。
美しく着飾った人々が行き交うパーティーで、つくしが今まで参加してきたものとは明らかに違っていた。

道明寺とつき合おうと決めた時点で断る理由はなかったから、パートナーとして参加したが、澤田の存在に戸惑いを隠せなかった。いくら澤田が金融業界において優秀な営業マンだとは言え、ある程度のステータスがなければこのパーティーには参加できないはずだから。

「さ、澤田さん、こんばんは。」

つくしは挨拶を返した。だが澤田が話したこの前のことには触れなかった。
なにしろつくしに対して強烈なアプローチをしてきた男のことだ。またここでこの前のことなんてのを話したら、道明寺の逆鱗に触れることは間違いない。

「この前ってなんだ?」
案の定食い付いた。
つくしは微笑したまま答えようか迷っているようだ。
司は苛立ちを募らせた。
つくしに変わって答えたのは澤田だ。

「先日、牧野さんにおつき合いを頂いたんです」
「さ、澤田さん。あの・・」
「へぇーなんだよそりゃ?」司は眉を寄せると澤田を睨んだ。
「何につき合ったって?」
「コーヒーをご一緒したんです。二人だけで」
「あ、あの、澤田さん?」つくしは目をみはった。

確かに二人で飲んだけど、場所は街角のカフェで周りに大勢人がいるのに、どうして二人だけなんてことを言うのだろうか?二人だけだなんて言うとまるで周りに誰もいないように思われてしまう。

「なんでおまえと牧野がコーヒーを一緒に飲んでんだ?」
司は不機嫌そうに口元をこわばらせた。
「ど、道明寺、あのね、ただ、話しをしただけだから。そんな騒ぐほどのことじゃないから。同じ会社の人間として話しをしただけだから・・あの・・」

不信感をあらわにした司の表情は、つくしの言い分を信用していないことはあきらかだ。

「違いますよ。俺と牧野は仕事の話しなんかしてませんから」
澤田は司の不信感をあおるかのように言って見せた。
「さ、澤田さん?」つくしの声が裏返る。
「澤田、おまえ随分と俺に対して挑戦的だな」
険しい口調だった。
二人はまるでこれから12ラウンドを戦うボクサーのように睨み合っていた。
いったいどちらが挑戦者なのだろうか?

「ええ。そうですよ。僕は牧野と二人でコーヒーを飲みながら二人の将来について話しをしたんです」
「澤田さん!な、なに言ってるんですか!そんな話しなんてひと言もしてないです!」
「ああ?そうだった?」
「そうだったじゃありません!」
「はは。冗談だよ。」

澤田はそれまで冗談めいた口調だったが、突然声のトーンが変わっていた。
「道明寺さん。俺は牧野に自分の気持ちをきちんと話したんですよ。
仕事に真面目に打ち込んで来たおまえをいつも見ていたってね。牧野はすごく真面目なんですよ。まあ道明寺さんもそのあたりはご存知かとは思いますが?」

つくしは口を挟もうとしたが男二人に止められた形になっていた。
司が片手を軽くあげ、黙っていてくれという仕草をした。

「牧野は気を緩めるとか楽しむなんてこともなく仕事ひと筋の女ですからね」
澤田は間近で見て来たニューヨークでのつくしの話しをはじめた。

「そんな牧野がある時から、女の表情をするようになったんですよ。普段から感情が表に出やすい女ですからね。ああ、誰か好きな人でも出来たんだと思いましたよ。ちょうどあなたの会社とうちの顧客とがある会社の買収を戦っている時でした。でも二人の関係は短いものでしたよね?」
彼はそこでいったん言葉を切り、何かを思い出すような表情をした。

「いつだったか、牧野が寂しそうな顔をしていた時がありました。道明寺さん、あなたこいつに嘘をついていたんですね?自分が誰だか、本当は誰だか名乗らなかったんですよね?」
澤田は息をつぐと、先を続けた。

「俺は・・あなたが牧野と付き合い始めたとき、もしかしたらうちの情報を牧野から聞きたいが為にこいつに近づいたんだと思いました。でも牧野のことですから、あなたが例え誰だとしても社内の事を迂闊に話すような女だと思っていませんでしたし、牧野もあなたが誰だか知っているものだと思ってました。まあ、うちの顧客の敵対関係にある人間とつき合うのがいいのかどうかという話になると、問題なのかもしれませんが・・所詮、男と女ですからね」
澤田は肩をすくめた。
「こいつ、かなり落ち込んでいましたよ。あなたが本当は誰だか知ってから、あなたに利用されたとか考えたんじゃないですか?それにもしかしたら会社を裏切った・・背信行為にあたるようなことをしたんじゃないかって悩んでもいたんだと思いますよ。道明寺さんのせいで」
澤田はひと息ついた。
「あなた、その時なにしてたんですか?牧野がひとり悩んでいる時に・・こいつの気持ちわかってたんですよね?知ってて見て見ぬふりですか?」



司は辛抱強く待った。
澤田が言いたいことがなくなるまで待っていた。
話しを聞きながら司の顔には凄みが増していった。

「おまえが言いたいのはそれだけか?」司は言った。
「何も知らねぇ他人が口出すんじゃねぇよ。おまえさっき所詮男と女だなんて言ったよな? 確かに牧野は俺とつき合ってた・・けど、何もなかった・・俺もこいつの名誉のために言っとくが・・こいつが俺に自分の会社の顧客について何か喋ったとかもねぇし・・会社に対しての背信行為があったことも一切ない」
「こいつは俺が誰だか知ってからは2度とセントラルパークには現れなくなったしな」

「そうですよね?リスの餌付けに失敗したってことですよね?」
「おい、澤田。おまえはいったい何が言いたいんだ?」
二人の男の間にはただならぬ雰囲気が漂い、凄みがあるどころではなくなって来ていた。

「道明寺さん、澤田さんそんな深刻な顔をされてどうしたんですか?」

まるで一触即発か?という気配に気づいた初老の男性が声をかけた。
気付けばいつの間にか3人の周りにはかなりの数の人間がこちらの様子を伺っていた。

「お二人共そんなに積もる話しがあるなら、一度お席をもうけましょうか?智弘君も久しぶりに日本に帰ってきて、懐かしくて話し込んでしまったんでしょうかね?」

男性は親切心から申し出をした。
それに道明寺ホールディングスの道明寺司が長々と話し込むことに興味を抱いていた。
今までの道明寺司はパーティーに参加しても仕方がなく。と言った感じで他人にあまり興味を示すことはないからだ。

「ああ、道明寺さんは智弘君のことはご存知だったんですね?もしかしてニューヨーク時代のお知り合いですか?お二人ともニューヨークが長かったようですし」

「いいえ。申し訳ないがわたしはこちらの男性がどなたなのか、存じ上げていないんです。 ご紹介頂いてもいいですか?」

「そうでしたか。道明寺さんはてっきりご存知かと思っていましたが大変失礼致しました。
こちらは澤田智弘君。衆議院議員の澤田先生のご次男で、ゆくゆくはお父上の跡を引き継いで選挙に出られると思いますよ。ご実家は澤田ホールディングスですから道明寺さんともてっきりお知り合いかと思っていました」

「そうでしたか。わたしはてっきりどこかの営業マンだと思っていましたので。どうやら
彼はわたしに嘘をついたようですね?改めてよろしくお願いしますよ、澤田ホールディングスの澤田さん?」









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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.06.22 08:51 | 編集
co**y様
おはようございます^^
はい1ラウンドのゴングが鳴りました。が12ラウンドまで戦うと大変です。
澤田さん、かなりの自信家です。本当に坊ちゃんと対等です。
司、頑張れ!なんですが、明日から3日は短編となります。
ちょっと忙しくて疲れています。
短編はストックからご用意しましたので、よろしくお願いします!
日本の選挙も始まりましたね。ですがやはりイギリスがEU脱退するのかが非常に気になります。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.22 22:28 | 編集
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