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2016
06.16

大人の恋には嘘がある 26

ついに立ち上がった男性二人はテーブルを挟んで睨み合っていた。

「ちょっと!ど、道明寺!」つくしも立ち上がった。

つくしに大きく目を剥かれ、司は思わず視線を外した。

「あの、澤田さん、こ、こんな話し止めにしませんか?」
「ふ、ふたりとも、もう止めましょう!」

つくしは情けなさそうに言った。
いったい澤田さんはどうしたって言うの?いきなり道明寺に向かってあんなこと言うなんて!ニューヨークに居た頃つくしが目にしたのは、いつもクールで何事にも動じない澤田だったはずだ。

「牧野、おまえこそ黙ってろ!」
司は噛みつかんばかりの勢いで、目は鋭く澤田を睨みつけている。
怒気をはらんだその声は普通の人間なら口答えするのもはばかられるはずだ。

「おまえ敢えて聞くが、俺が誰だか知ってるのか?」
「あの、道明寺落ち着いて・・」つくしの声は心なしか震えていた。
二人の男の間に流れる緊張感はまさに一触即発の状態で、今にも手が出そうだ。
司の顔は怒り狂った人のようで、こめかみには青筋を浮べている。

「澤田って言ったよな、おまえいったい何がしたいんだ?ここがどこだかわかって言ってんのか?いくら牧野と同じ会社の人間だからって大目に見てもらえるなんて考えんじゃねぇぞ!」

澤田も仕事上の愛想笑いなど全く見せず司を見ていた。
つくしは二人の男が向かい合って睨みあっているのを遮ろうとした。

「あ、あの、澤田さんいったいどうしたんですか?」
出来るだけ穏やかに、感情を逆なですることがないように語りかけたが、二人の男はどちらも視線を外そうとしない。
まるで視線を外した方が負けだと言うように敵を伺っている野獣だ。

「おまえがここに来た理由はなんだ?」
司の隙の無い目が澤田をとらえている。おまえを潰すことなど簡単に出来ると言っているようだ。

自分の責任を果たさなくては!
つくしは自分が澤田をここに連れて来た以上、この常軌を逸した澤田の振る舞いをなんとかしなくてはと考えていた。
ここは道明寺の会社の副社長執務室で、道明寺の独壇場だ。澤田は何を考えて道明寺にケンカを売るようなことをしているのか、つくしは理解に苦しんでいた。

澤田は司を見据えて言った。
「俺、牧野つくしが好きなんです。こいつがニューヨークに居た頃、道明寺さんと会ってる頃から」

「さ、澤田さん?」
「おまえ、気でも狂ったか」

二人同時に口から放たれた言葉はどちらも疑問を呈していて、司に至ってははまるで破滅に追い込んでやろうかと言わんばかりだ。
「よくも顧客である俺の前でそんなことが言えるな?」
「道明寺さん、今自分のことを顧客って言いましたよね?あなたは自分の実力じゃなくて、地位や金でこいつのことを釣ろうとしてるんじゃないですか?」

まるでこれ見よがしの侮辱だと思われても仕方ないような言い方だ。

「自分の立場を利用するなんて、いかにも仕事至上主義の男のやりそうなことですね?」
「おまえ、俺にケンカ売ってんのか!」司の目に危険な色が浮かんだ。

「でも俺はそんな手は使いませんから。男としての魅力で牧野を振り向かせようと思って帰国してきたんです」
澤田はゆっくりと謎めいた笑みを浮かべていた。
「道明寺さん、あなたがニューヨークでこいつと会ってた頃、俺もニューヨークでこいつのこと見てましたから」
「セントラルパーク。それから水族館で」

つくしは息をのんだ。
「さ、澤田さん?」

水族館はつくしがひとり、考え事をするために足を運んでいた場所だ。
お気に入りの電気ウナギが放電する様子を見ながらぼんやり過ごしていた場所に澤田が?

「おまえ・・」司は猛然と挑むような目で見た。
「こいつのストーカーか?」
澤田は「まさか」と小さく笑い「ご冗談を」と平然と言ってのけた。

隣にいると相手の発散する何かが感じられるのだろうか。
道明寺がストーカーと言うのを聞いて、なぜかとんでもないイメージが次々と頭の中を駆け巡った。その中にはもちろん先日の野中さんの奥さんの件も含まれている。
つくしは寒気がして鳥肌の立つのを感じた。

「俺、女性を本気で好きになったことが無いんです。だから自分の気持ちに気付くのが遅かったんですよ」
まるでこれは自分の初恋だと言わんばかりのアピールだ。

「今は知ってるってことか?」 目を細めると澤田を睨んだ。

司はつくしが息をのんだまま、黙って何も言わなくなっていることに気づくと、彼女の方に手を伸ばし、テーブルを回り込むと引き寄せた。つくしの肩まわされた司の腕。
つくしは敢えて逆らわなかった。

澤田は司を見た。
「もしかして俺に、手を出すなって言ってるんですか?」
「あたりめぇだろうが!どこに自分の女に手ぇ出されて黙ってる男がいるんだ?」
「なるほど」澤田は感情の読めない目をしていた。
「道明寺さん、あなたは猪突猛進する人ですね」
「なんだと?おい、わかったような口利くんじゃねぇぞ!」

司はぴしゃりと言い切ったが、澤田の言葉にますます苛立ってきたようで、つくしの肩をぐっと引き寄せた。つくしは澤田の態度にただ驚いているようで、脳の冷静な部分に二人の会話を聞き入れる余裕がなかった。

睨みあっている男二人は互いの腹の探り合いのように、顔色をうかがっていた。
そんな中、先に口を開いたのは澤田だ。

「気をつけますよ。あなたの逆鱗に触れないようにね」
さっきまでとは打って変わったように落ち着いた口調だ。
それは本気で取に行きますからそのつもりでいて下さいと言わんばかりに思える。

「では、僕はこれから下に降りて御社の財務責任者様にご挨拶をしてきます。今日はあなたに会えて良かったですよ、道明寺さん。どうぞこれからよろしくお願いします」
ここに来てはじめて冷静で理性的な澤田がいた。
「牧野、今日はここまで連れて来てくれてありがとう」
司に肩を抱かれて呆気に取られているつくしは返す言葉がなかったようで黙っていた。


澤田は司に向かって一礼をすると、執務室を出ようとした。だが何かを思い出したかのように振り返ると司を見た。

「道明寺さん。僕を牧野つくしを巡って争うライバルとして認めて頂けて嬉しいですよ」

「おい、おまえ」司はつくしの肩をきつく抱きしめたまま言った。
「はっきり言っとくけどな、牧野は俺の女だ!俺にはライバルなんていねぇんだよ!」








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コメント
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dot 2016.06.16 20:23 | 編集
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dot 2016.06.16 22:44 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
dot 2016.06.16 23:59 | 編集
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dot 2016.06.17 00:12 | 編集
co**y様
こんばんは^^
澤田さん、曲者ですね(^^)
司にも堂々と渡り合えるという男。
第三の男は出てこないです。恐らく・・(笑)
坊ちゃんも少し苦労してもらわなければ・・
では、また明日。こんな時間になってしまって、早く寝なくては・・
無理は禁物ですよね。いつもお心遣いありがとうございます。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.17 01:34 | 編集
さと**ん様
司とはれる澤田さんです。
坊ちゃん、ぼけっとしてたらダメです。
澤田さん、水族館まで尾行していたんです。多分・・
ストーカーですね、完全に(笑)
その澤田に「おまえ、気でも狂ったか!」と言う司も直球勝負です。
自分の気持ちに気付くのが遅かった・・と言う澤田。
つくしがニューヨークから去ってから気づく・・そして3年。
司も3年ぶりの再会からのスタートでした。
澤田を威嚇しながらつくしをガードする司です。やっとここまで来たのに澤田の出現に大慌てですね(笑)
今後の澤田の動向が気になります(^^ゞ
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.17 01:47 | 編集
chi***himu様
こんばんは^^
澤田さん。司もライバル登場で焦りまくっています。
やっとここまで来たのに、なぜここでライバルが!と自分でも思いつつ書いてます(笑)
大人の恋~シリーズ、命名ありがとうございます。m(__)m
司には大人ですから大人の対応でライバルを蹴散らしてもらいたいと思っています。
澤田さんも司も直球勝負の人なので、この対決はどうなるんでしょうか?
コメント大歓迎です。いつでもお立ち寄りくださいませ。
chi***himu様もお忙しいと思いますがお身体ご自愛くださいませ。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.17 01:57 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
dot 2017.03.28 20:42 | 編集
C**o様
はじめまして^^
ようこそお越しくださいました。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ライバル登場・・えっと・・イケメンな感じで粘ることは出来るか。
何しろ相手が司ですからねぇ(笑)
やはり司相手に粘れるのは飄々とした類だけかもしれません(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.03.28 21:55 | 編集
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