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2016
06.08

大人の恋には嘘がある 20

ドアがバタンと音を立てて閉まった。

「う・・・うん・・」

つくしは布団の中で寝返りを打った。
目は閉じられたままで、耳だけが音を拾ったようだ。
いい香りがする・・
まだ眠いけど起きて仕事にいかなきゃ・・
頭はぼんやりとしているが、気分は悪くない。
でも、もう少しだけ寝ていたい・・
つくしは大きくあくびをするともう一度寝返りを打った。
ここのところ残業続きで睡眠不足なのかもしれない。
それなのに昨日は道明寺との食事に出かけて、でも出かけた先で思いもよらぬ人にあらぬ誤解を受け、それからやっと食事にありつけたと思ったら道明寺が変なこと言い出して・・
なんで道明寺はあんなこと言い出した・・



道明寺?



そのとき、つくしは自分の寝ている隣が何かの重みで沈んだのを感じた。
その瞬間、ぱっと目を開いて見えたのは見覚えのない天井だった。

・・この天井はあたしの部屋の見慣れた天井じゃない。

さっきまでまったく問題はないと思っていた気分が急に悪くなってきたような気がした。
どうも様子がおかしい・・ここはどこ?あたしの部屋じゃないことだけは確かだ。
それに実家でもない。じゃあ自分が寝ているベッドは誰のベッド?
悪い予感がした。
道明寺とメープルで食事をしていたところまでは覚えている。

つくしは天井を見つめたまましばらくじっとしていた。
まるで動くと隠れていることが凶暴な肉食獣に見つかってしまうのを恐れているサバンナの動物のような気がした。もしくは、じっとして周りと同化するような保護色を纏えば敵はやり過ごせると考えている昆虫のようだった。
ああ・・あたしはこのベッドに同化したい。

重みで沈んだ隣を見る気になれなかったが悪い予感は強くなる一方だった。

どうしよう!
いったいあたしは何をしたの?
ここはどこなのよ?
道明寺とメープルで食事をしたのは覚えてる。
でも・・・途中までしか覚えてない?
マンションまで送ってもらった記憶がない!
記憶が無いなんてあたしの脳はどこに行ったのよ!
まさか溶けて流れただなんてことは・・


つくしはそれでもいつまでもベッドに横たわっているわけにもいかず、脚だけを動かしてベッドの外へ出ようとしていた。脚だけをゆっくりと床に下ろしてその後で体を滑り下ろすようにすれば、起き上がる必要はない。床に降りたら這って行けばいい。でもどこへ?
ここがどこだかわからないのに・・でも取りあえずベッドから出ないと!

ゆっくりと脚だけを床に下ろす・・・
だがつくしの足先は毛の生えた何かに触れたのがわかった。
それは温もりが感じられる筋肉に覆われた人の脚。
女性の脚は筋肉になんて覆われてない。それは紛れもなく男性の脚だ。

「起きたか?」

隣から聞こえて来たのは道明寺の声だ。体の位置を変えたのかマットレスが動いた。
つくしは勇気を出すとゆっくりとした動きで隣にいる司を見た。寝起きの胃がでんぐり返りをしそうだった。

「おはよう、牧野」

司は片肘をついてつくしを見ていた。
黒い瞳はいたずらっぽく輝くとおかしそうに片方の口元を上げた。
その瞳はカリスマ的な魅力を持つ三白眼の切れ長で、囲むのは濃く長いまつ毛だ。
つくしはさっき香ったいい香りがこの男からしていることに気づいた。思わず至近距離で吸い込んでしまった香りはスパイシーでセクシーな香りがして、頭がくらりとした。
悪い予感は当たっていた。何か喋らないといけないと思ったが舌が凍ってしまったみたいで動かなかった。

「ゆうべはなかなか眠れねぇで困った」
「おまえが思いのほか激しくてな」

つくしは司の言葉が自分の頭の中に浸透するまで数秒かかったような気がした。

道明寺の言葉が頭の中で反復している。

あたしが激しくて眠れないって・・
つくしの頭を過ったのはある状況だった。
どうしよう!あたしはいったい何をしたって言うのよ!
まさか、あたし・・
これは完璧な二日酔いだ・・
何をしたのか全く記憶がない。
やっぱりあたしの脳は溶けてしまったんじゃないかと考えてしまった。

「牧野?どうしたんだ?」
司は何も言わず、自分を見つめているつくしの名前を呼んだ。
「あ、あの・・ど、どうみょうじ・・あたし・・」
司はつくしが今何を想像しているのかわかっているとばかりに、にやついていた。
「おまえの想像したとおりだ」

つくしの顔は恥ずかしさに真っ赤になっていた。
だがその声で今までどこかぼんやりとしていた意識が戻った。
自分の身につけているものが何なのか確かめようと布団をめくり、確かめた。
そのとき、はじめて下着しかつけていないことに気づいた。


ああ・・


あたしは道明寺と・・道明寺の言うところの寝たあとで、こいつに下着をつけてもらったの?
後ろからブラジャーのホックを留めてもらったの?
道明寺にブラジャーのホックを留めて・・
だめだ・・
覚えてないなんて最悪だ・・
あたしは本当に道明寺と・・・?
別に後生大事に守ってきたわけじゃないけど、覚えてないなんて!

「牧野?」
「えっ?な、なに、道明寺?」

つくしは司と目を合わせたが、恥ずかしさでいたたまれない気持ちになった。
こんなとき、男と女はどんな会話をしたらいいんだろう・・
黙り込んだつくしは会話のきっかけを探そうとしたが見つけることが出来ずにいた。

「気分悪りぃのか?」司は優しく語りかけた。
赤くなったかと思えば青ざめたようになるつくしの顔色を心配していた。

「う、うん・・だいじょうぶ・・」
そう答えた瞬間、胃の中がせり上がって来るのを感じ思わず両手で口元を押さえた。
どうやら頭だけじゃなく、胃もつくしを悩ませることにしたようだ。
「ど、どうみょうじ・・トイレ・・どこ?」
つくしはベッドを飛び出したが足元がふらついて膝をついてしまった。
「おい!大丈夫か?」
司もベッドから飛び出すとつくしを抱え上げバスルームへ向かった。

「ど、どうみょじ・・お、下ろして・・・吐きそう・・」
「わかってる。吐きたかったらこのまま吐けばいい」その声はさっきまでの楽しそうな声とは打って変わったように冷静な声でつくしの訴えには耳を貸さなかった。
「昨日たいして飲んでないのに、おまえはアルコールに弱いんだな」

つくしは自分を抱えて運んでくれる司を意識しないわけにはいかなかった。
たくましい裸の胸に抱きかかえられ、頬に感じられるのはその温もりだ。
それに自分をしっかりと抱きかかえている腕の力強さが心地よかった。
なんだか道明寺に守られているように感じられた。

「牧野?大丈夫か?」
司はつくしをバスルームの床に優しく下ろすと便器の蓋を開けた。
「いいか、我慢せずに全部吐け」
「全部吐けばすっきりするはずだ」
つくしはひんやりとしたタイルに座り込むと顔をうつむけた。
「あ、ありがと・・もう・・ひ、ひとりで大丈夫だから・・」
その瞬間、吐き気が襲ってきた。
「バカ言ってんじゃねぇよ。なにがひとりで大丈夫だ」

司はつくしの背中を撫で続け、吐き終えてぐったりとしているつくしの口元を濡れたタオルで優しく拭った。

「すごいところ・・見られちゃった・・」
つくしは呟くと自分の背中を撫で続けてくれた男を見上げた。
「そんなん今さらだ」
そうだよね・・男と女の関係になったのに今さらだ。
しかしあたしの体をここまで欲しがる人間がいるなんてことが未だに信じられない。
いったいこの体のどこが好きなのか聞きたいくらいだ。
簡単に手に入らないから欲しがってたんじゃないのかとさえ思うくらいだ。
でも、済んでしまったことを今さらどうこう言っても仕方がない。
そんなことより手に負えない事態になる前になんとかしなくては。

「あ、あの・・道明寺・・」

聞かなきゃ。あたしはいい大人なんだし、べ、別に恥ずかしがることじゃない。
それに今聞かなきゃいつ聞けばいいのよ?



「ひ、避妊はしてくれたのよね?」









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コメント
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dot 2016.06.08 16:00 | 編集
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dot 2016.06.08 20:35 | 編集
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dot 2016.06.08 22:42 | 編集
さと**ん様
寝起きの胃は・・・でんぐり返りました。
何故か頭を過ったこのフレーズ・・
この前からつくしは胃に問題があるようです(笑)
(胃下垂とか・・)
三枝師匠の座る椅子は転がってもいいように特別なものだと
聞いたことがあります。ようはそれ仕様だとか?
あ、今は文枝さんでしたね。
私も司に背中をさすられたい・・「だいじょうぶか?」と言われさすられる・・
滋の船に拉致された中での船酔いのひとコマを再現してみました。(^^)
避妊してくれたかどうか。これ重要です(笑)
覚えていないから聞く・・・大人の女ですからね。
さあ、司の答えは!!
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.08 22:52 | 編集
c**ky様
こんばんは^^
おかげ様で今日はなんとか乗り切りました。
だんだんと気温があがり、湿度もあがり、体温もあがり・・
頭の中の熱もあがり(笑)
そうなんですよね、無理は禁物と思います。
でも読んで下さる方がいらっしゃると思うと、よし!今夜も書くぞ!
と思ってしまうのです・・・
体が資本・・おっしゃる通りです!
ですので今夜は・・ストック利用!←今夜はダメです(笑)目の焦点が合いません(笑)
ストックと言っても、もうひとつのお話です。エロじゃない方です。
本当は週末公開予定でしたが明日公開です。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.08 23:05 | 編集
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dot 2016.06.08 23:17 | 編集
chi***himu様
こんばんは。はいもちろん覚えています!
大人の恋~楽しんで頂けて嬉しいです。^^
アカシアはもう少し年齢が上になりますので、学生時代よりも社会人、そしてそれなりに社会経験を積んだ二人が書きやすいのです。(^^)えっと、もっと激しく・・はは(笑)←取りあえず笑ってごまかします。
日本酒のようなスッキリとした口当たり!おお!なんて嬉しいお言葉でしょうか!
クセになるなんて、飲み過ぎ注意でお願いします。日本酒は確かに口当たりはいいので飲みやすいのですが、後で脚に来るんですよね。経験があります(笑)
はい、無理はしないように・・お心遣いありがとうございますm(__)m
でも読みに来て下さる皆様がいらっしゃると思うと、よし!と思うのですが
今夜は書けませんので明日はもうひとつのお話です。エロ坊ちゃんではない方です。
苦手な方も・・・と思いますので読み飛ばして下さいませ。
長いコメント大歓迎です。ありがとうございます。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.08 23:25 | 編集
サ*ラ様
こんばんは^^
甲斐甲斐しくつくしを介抱する司。
そうなんです、原作にもあった場面のひとつ。
今回は滋の船に拉致されて船酔いしたつくしを抱えてバスルームに走るところをイメージしてみました。
そうなんですよね、俺様傲慢だけどつくしにだけは優しいんですよね、そこがいいんですよね?(*^^)v
「金持ちの御曹司~甘美な代償」凄く面白かったですか?ありがとうございます(^^)
もうねぇ、坊ちゃんの妄想が止まりません。でも今回は妄想だけで終わってしまい、坊ちゃんには申し訳なかったです。m(__)m
>エロ可愛く楽しい・・ありがとうございます(^^)サ*ラ様には、いつも御曹司を可愛がって頂きありがとうございます!
明日はいつもお待たせしている心に闇を抱えた人のお話です。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.06.08 23:41 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
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