彼がこの街に来たのははじめてだ。
司は空港でタクシーに乗り込むと高速道路を利用して最寄りのインターチェンジで降りて欲しいと言い、ある街の名前伝えるとそこへ向かうように指示をした。
道は平坦で見える景色はどこの田舎街でもそうだろうが、大して代わり映えはしなかった。
ましてや田舎の高速道路などいくら走っても同じような景色しか見えなかった。
やがて車は司の指示したインターチェンジを降りると一般道を南へ向かって走っていた。
運転手は街中に入りましたがどちらまでと男に聞いたが「悪いが街を一周してくれないか?」とだけ返された。
街を一周するとはどういう意味だろうか?
いくらこの街が大きな街ではないと言ってもこの男の言っている意味がわからない。
「この街に来るのははじめてですか?」
運転手は何気なく聞いたが、男から返される言葉は無かった。
どうやらこの客は話しをする気がないらしい・・
だが、妙な客を乗せてしまったと思った。身なりは良さそうだがこのご時世だ。目的意識のない客など恐ろしいとしか思えなかった。だがタクシー強盗を働くような男には見えないし、バックミラー越しに窺える顔は何かを考えているように思えた。
この街は何の変哲もない地方都市だ。たいした観光名所もなく、観光客は宿泊をせずに次の街へと足を運ぶ。それでも途中何台かの大きな観光バスとすれ違った。運転手はこれくらいの規模の街にしては日常生活に困ることなく生活しやすい街だと思っていた。
気候は温暖で過ごしやすい。病院や福祉施設などの生活の基盤になる施設も整備されていて困ることはない。ただ、若者が好むような施設はないが、それでも学校はいくつかあり、夕方になれば駅前では多くの若者の姿を目にすることが出来る。
運転手のタクシーは普段は空港構内で客待ちをしているタクシーだ。だから東京からの客を乗せることが殆どだ。後ろに座る男も東京便から降りて来た客だ。何しろこの空港に到着する便は一日数便しかなく、時間が限られているからすぐわかった。
やがてタクシーは大きな橋を渡った。一級河川の河口付近に架かる大きな橋で左手には太平洋の大海原が見え、右手には市街地が広がっていた。はるか遠くには低いが山並みが見えた。
***
古い記憶が突然甦った。
それは神の恩恵なのか、それとも悪魔の気まぐれなのか・・
牧野とは1年と少し前ホテルのパーティーで出会った。
いま思えば、それまでの自分は本来の自分ではなかった。
牧野はそんな別の人生を歩んで来ていた自分に訪れた過去からの贈り物だったのかもしれない。
司はパーティーの日を思い出していた。
それはずっと好きだった女性に会えた日で、彼の人生が再び動き出した日だったはずだ。
だがそんなことにも気が付かなかった愚かな自分を殴りたい思いでいた。
あいつの住んでいる街を車で巡った。
小さな地方都市だが住みやすそうな街だと感じられた。
何もかもが面白くないと思っていたときに出会った女性。
17歳の自分がこんな危機的状況に陥るとは考えもしなかったあの頃に出会った女性。
高校時代追いかけ回して手に入れようとした女性。
それは切実な思い。そして実らなかった彼の初恋だった。
あの頃の生き方を思い返してみても仕方がなかった。
10年間の距離が再び近づいて来た今、手を伸ばせばそこに牧野がいる。
そうだ牧野はこの街にいる。これからは過去と向き合って生きるときだ。
心から愛していた女性と共に同じ人生を歩みたい。
あの頃決して手に入れることが出来なかった女性をこの手に欲しい。
日が沈むころ、彼は山の上にいた。
タクシーが司を運んで来たのはつくしが働いているレストランの前だった。
ニューヨークを離れ帰国した牧野は東京にはいなかった。
探し出した先は地方都市のレストランだった。
牧野はこのレストランで働いている。
この場所は静かだ。
聞こえるのは風が吹く音と、香るのは植えられているバラの花の匂いだ。
まさに今を盛りとばかりに咲き誇るバラの花。色は様々だが、匂いはどれも同じ甘く、深い香りだった。司はその香りを深く吸い込んだ。胸の奥深くに吸い込まれた香りはあの頃の切ない気持ちを思い起こさせた。ため息をつくことのない男だが、めずらしく大きく息を吐いた。
バラの花には思い出があった。遠い昔の思い出を思い起こさせるバラの花。
だが、司の頭の中にはこれからのことしか考えられなかった。
「雨か・・」
ぽつぽつと降り出した雨が司の肩を濡らしはじめた。
土砂降りの雨は遠い昔を思い出させるがこの雨は違う。あの日の雨は冷たい雨だった。
だがバラの花が咲くこの季節の雨はどこか生暖かさを感じさせる雨だった。
まるでこれから芽吹く花のための命の源となる水を与えているかのような雨だった。
そろそろ店に入るか・・
司はひっそりと佇む古びたレストランが彼の人生での悦びの舞台になるなんて考えもしなかったはずだ。
「いらっしゃいませ!」
明るく弾むような声が耳に届いた。
だが次に聞こえてきた声には戸惑いと驚きだけが感じられた。
「ど、どうみょうじ・・」
***
つくしは呆然とした。
かつて愛した男が目の前にいて自分をじっと見つめていた。
店の入り口の鐘がカランと鳴って人が入ってきた気配に気づいて振り向いた。
目に映ったのはニューヨークで別れた道明寺だった。彼がいつもつけているコロンの匂いがどんどん近づいてくるのが感じられた。
道明寺は口を開かない。その視線は赤ん坊が育っていることを示すお腹のふくらみに注がれていた。
息を呑むような緊張が感じられ、つくしは立っているのが辛く感じられてきた。
「牧野さんどうしたの?」
厨房から顔をのぞかせて声をかけてきたのはレストランのオーナーの男性だった。
客が入って来たのにオーダーを取ることもせず立ったままのつくしを心配したようだった。
「い、いえ、なんでもありません!」
「い、いらっしゃいませ。どうぞお好きなお席へおかけください」
まっすぐに見ていられなくて、視線を下げた。
店の中には他に客はいなかった。
どうしてこんなところにこの男がいるのか理由が知りたい。
10年前にずたずたに傷ついた心はニューヨークに置いてきたはずだ。それなのに道明寺に会うとまだ心が痛いだなんて、こんなことではこれからこの子と生きて行くことが思いやられる。
道明寺は婚約者とあの街にいるはずなのにどうしてこの街にいるのだろう。つくしは無意識のうちにお腹のふくらみに手をあてていた。あの街を去ってからつくしはこの男の動向には関心を持たなくなっていた。
今まではどこで何をしていても耳に入る男の情報だったが、意識して目に触れない、耳にしないことを心がけていた。だが情報操作でもしているのか最近はこの男についてのゴシップを耳にすることはなかった。
「なんて言えばいいんだ?」
「え?」
司は窓際の庭が見える席へと腰を下ろした。
「おまえは牧野つくしだろ?」
今さらこの男はなにを言っているんだろう・・
あたしの名前を確認して何を言いたいのか。
「俺が無神経でなければおまえに気づいていたはずだ」
「気づいていれば一緒に暮らしていたはずだ・・夜だけじゃなく」
「俺のことを怨んでいないか?」
司はまどろっこしい言い方しか出来ない自分に腹が立った。
牧野への思いをどうすれば上手く伝えられるかを考えれば考えるほど言葉が失われていくような気がしていた。
「俺を・・許してくれないか?」
「思い出したんだ・・俺たちのことを」
「な、なにを言って・・」
道明寺の記憶が・・
道明寺があたしのことを思い出した・・
あたしとあの頃に築いた信頼関係を思い出してくれたの?
つくしは落ち着かない気持ちで身じろぎをしていた。
もし道明寺があたしのことを思い出したらどうするだろうかということを何度も自分に問いかけていたことがある。あれからもう10年以上時が経過したんだし、あの頃と同じ気持ちでいるかどうかという思いだ。
「どう説明したらいいのかわからないが・・おまえを忘れてしまったことを許して欲しい」
「それに、おまえを・・捨てたこと・・」
「おまえの腹の子どもは・・」司は奥歯を噛みしめた。
「あ、あたしの子どもは・・」つくしは丸みのあるお腹に手を当てた。
「俺の子どもなんだろ?」
「ニューヨークで俺以外とは寝てなかったんだ。どう考えても俺の子どもだろ?」
「あの、道明寺、あたし今仕事中だから・・今そんなこと・・」
道明寺が思い出した・・
10年間あたしのことを忘れていた道明寺が。1年間あたしと夜だけの関係を続けていた道明寺が。だが決してあたしのことを愛しているとは言わなかった道明寺が・・
い、いつ?いったいいつ思い出したの?
「オーナーはさっきの男か?」
「えっ?うん、そうだけど・・」
司は席を立つと厨房へと足を踏み入れていた。
再び戻って来たときには、今日はこの店は臨時休業になったと言った。
そうは言ってももう日が落ちた時間帯で客足は望めそうになかったから店を閉めても支障はないだろう。
2人だけになった店は時を刻む音が聞こえて来そうなくらいの静寂が流れていた。
最初の5分。2人は黙ったままで向かい合っていた。
古いレストランの中で見えるのは互いの後ろに見える古ぼけた内装だけで沈黙が店の中を支配しているように感じられた。
雨に濡れた窓の外には暗闇だけが広がって見えた。
何から話しを始めればいいのか・・
俺はこの店に足を踏み入れた瞬間から牧野を抱きしめたかった。
抱きしめておまえを長い間ひとりにさせて悪かったと言いたかった。
だがそんな言葉は10年という長い時の重みに対しては軽すぎる言葉ではないだろうか。
それでも俺は話さなければならなかったし話しを聞かなければならなかった。
「牧野・・」
1年間、聞きなれた声は静かで優しかった。
そんな男はすばらしくハンサムだ。
司は聞き取れないほど低い声で聞いた。
「体は・・体の調子はいいのか?」
「うん、へ、平気・・」
少し前までつわりがひどかったが今ではもう平気だった。
「そ、それよりどうしてここがわかったの?」
「調べたんだ」
「そ、そっか。そうだよね。あんたならそんなこと簡単だよね」
あたり前だ。人を探そうと思えばすぐにでも探し出せるだけの力がある男なんだからあたしの居場所なんてすぐにわかるはずだろう。
「それより話しがある」司がそっと聞いた。
「どうして・・ニューヨークに来たんだ?」
「おまえは・・どうして俺と・・あんな関係でいることを望んだんだ?」
どうしてニューヨークに来たか?つくしは司をじっと見つめた。
それは・・あんたが忘れられなかったから。
あんな関係でいる・・それは永続的な関係は求めないこと。
永遠の関係を求めたところで手に入るはずがないとわかっていたからだ。
道明寺があたしの傍に永遠にいることは無理だとわかっていたからだ。
だから永遠は求めなかった。
「どうしてって言われても・・」そんなの今さらだ。
「いいじゃない、2人とも大人なんだから、男と女の関係なんて水ものだっていうじゃない?だから・・」
本当は少しでもあんたの傍に居たかったからどんな関係だろうと気にしなかった。
だから夜だけの女だとしても別にかまわなかった。
そんなことよりあんたはこれから将来財閥のためにビジネスとしての結婚をするんでしょ?昔からの知り合いの家の女性と結婚するって言ったじゃない。だから別れた女のことなんて気にする必要はないんだから。いや、違う。別れた夜だけの女だ。
「あ、あのね、子どものことは心配しなくても大丈夫だから。この子はあたしの子どもとして育てるから。なんの権利も主張しないから心配しないで」
「迷惑なんて絶対にかけないから大丈夫」
道明寺のいない人生でも、ひとりで子供を産むこともかまわない。
道明寺とは未来は共有できなかったけど、あたしにはあんたの一部がいるからいいの。
「牧野、俺はそんな話しをしに来たんじゃないんだ」
「じゃあ・・なに?」
「いったいなにをしにニューヨークからこんな所まで来たの?」
司はなにをしに来たと言われ言葉を探した。
判断に迷ったことがない自分がどう言えば自分の思いを伝えられるかを悩んでいた。
何かに対してためらうということが今までは無かった。
「おまえに・・知り合いの家の女と結婚すると告げてからは女を抱いてない」
「つまりおまえと抱き合ってから、他に女はいない」
「言ってる意味がよくわからないんだけど・・」
他に女って?いったい誰の話しをしているの?婚約者の人のこと?
「牧野、結婚してくれ。俺は本気だ」
「俺はおまえもその子どももどっちも欲しい」
本気で言っているのだろうか?つくしは司が正気とは思えない言葉を口走ったかのようにじっと見つめた。
だが自分に向けられている司の目が恐ろしいほど真剣だと感じられた。
でも道明寺と結婚できるはずがない。
「ど、道明寺、あのね、なに言ってるの。あんたには婚約者がいるでしょ?」
「婚約は解消した。他に女はいない」
「あたしに・・子供が出来たから結婚だとか考えてるなら心配しなくても大丈夫だから、あんたはあたしのことは見なかったことにしてニューヨークに帰ればいい」
「まさか自分の記憶が戻ったら、いきなり子供までいたなんてことになったら驚くのは当然だと思うけど・・」
「そんなこと言ってんじゃねぇよ!」
「おまえ、なにひとりで抱え込んでんだよ!」
「おまえ・・俺のこと嫌いなのか?俺がおまえと結婚したいって言ってるのに何が不満なんだ?それとも不安なのか?」
「記憶が戻ったって言ってんだろ!」
「今おまえの前にいるのは、おまえが知ってる俺だ!」
「なあ、牧野・・」
司の目は俺を信じて欲しいと訴えていた。
「おまえに許して欲しいって言いに来た。どんくらい時間をかければ俺を許してくれるんだ?」
司はつくしを抱きしめたかった。口ではうまく言えない気持ちを、自分の胸の高まりを聞いて知ってもらいたかった。
「で、でも婚約者の人は・・」
「あんな女どうでもいいんだ」
「きれいに別れたから問題ない」
「だから俺と結婚してくれ。一生俺のそばにいてくれ」
つくしは何か言おうとした。なんでもいいから言わなければと思った。
だけど言葉がなかなか見つからずにいた。
記憶が戻った道明寺があたしの目の前にいる。
本当は今すぐ道明寺に抱きつきたい思いでいっぱいだ。
「ね、ねえ、出産には立ち会うつもり?」
そんな言葉が思わず口をついた。
つくしは涙声になっていた。
道明寺の言葉に嬉しさが胸に広がっていたからだ。
正直道明寺が他の女性と結婚するなんて話しは聞きたくなかったし、信じたくなかった。
もう二度と会えないと思っていたからこうして会いに来てくれて嬉しかった。
司は呆然としていた。いきなりつくしが泣き出したからだ。
妊娠すると感情の高ぶりが見られるというが、このことか?
「ど、どうしたんだよ。どっか悪いのか?」
「ち、ちがうわよ・・」
ひとりで生むと覚悟はしていたが、それでもやっぱり寂しかった。
誰か傍にいてくれて支えてくれる人が欲しいと思っていたのは事実だった。
でもまさか道明寺が、あたしのことを思い出した道明寺が来てくれるなんて考えもしなかった。
だから嬉しくて涙が溢れてきた。
「2度とおまえをひとりになんてしねぇ。だから安心して子どもを産んでくれ」
「牧野、悪かった・・」
「なあ、結婚してくれるよな?」
「ど、どうみょうじ・・」溢れ出す涙が止まらなかった。
「あたし、子どもが好きなの・・」涙で視界がぼやけて道明寺の顔が見えない。
「あ、あたしでよかったら・・この子と一緒にお願いします」
「おまえじゃなきゃダメなんだよ、俺は・・」
俺は記憶が戻らなければ、人生で最大の宝を失うところだった。
それは牧野と俺の子ども・・そしてこれから先に生まれてくるはずの子どもたちだ。
今までこいつの傍にいられなかった10年分はこれから一生かけて償っていく。
司は上着の中から小さな箱を取り出すと真剣な顔でつくしの手をとった。
手の温もりとともにつくしの指にはめられた指輪はただひたすら美しかった。
だがその美しさに負けない女が俺の前にいる。
司にとっては昔からどんな宝石よりも輝いていた女だった。
つくしの手は温かく、指の力は抜けていた。
その手は司の手を優しく握り返してきた。
互いに握り合った手はもう二度と離さないと誓い合っていた。
つくしは指輪から視線を引きはがすと、まっすぐ司を見た。
「道明寺・・いいお父さんになってね」
「ああ」司の顔にゆっくりと笑みが広がった。
「もちろんそのつもりだ」
司のその言葉に嘘偽りはなかった。
< 完 > * Trick Of The Night

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道は平坦で見える景色はどこの田舎街でもそうだろうが、大して代わり映えはしなかった。
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街を一周するとはどういう意味だろうか?
いくらこの街が大きな街ではないと言ってもこの男の言っている意味がわからない。
「この街に来るのははじめてですか?」
運転手は何気なく聞いたが、男から返される言葉は無かった。
どうやらこの客は話しをする気がないらしい・・
だが、妙な客を乗せてしまったと思った。身なりは良さそうだがこのご時世だ。目的意識のない客など恐ろしいとしか思えなかった。だがタクシー強盗を働くような男には見えないし、バックミラー越しに窺える顔は何かを考えているように思えた。
この街は何の変哲もない地方都市だ。たいした観光名所もなく、観光客は宿泊をせずに次の街へと足を運ぶ。それでも途中何台かの大きな観光バスとすれ違った。運転手はこれくらいの規模の街にしては日常生活に困ることなく生活しやすい街だと思っていた。
気候は温暖で過ごしやすい。病院や福祉施設などの生活の基盤になる施設も整備されていて困ることはない。ただ、若者が好むような施設はないが、それでも学校はいくつかあり、夕方になれば駅前では多くの若者の姿を目にすることが出来る。
運転手のタクシーは普段は空港構内で客待ちをしているタクシーだ。だから東京からの客を乗せることが殆どだ。後ろに座る男も東京便から降りて来た客だ。何しろこの空港に到着する便は一日数便しかなく、時間が限られているからすぐわかった。
やがてタクシーは大きな橋を渡った。一級河川の河口付近に架かる大きな橋で左手には太平洋の大海原が見え、右手には市街地が広がっていた。はるか遠くには低いが山並みが見えた。
***
古い記憶が突然甦った。
それは神の恩恵なのか、それとも悪魔の気まぐれなのか・・
牧野とは1年と少し前ホテルのパーティーで出会った。
いま思えば、それまでの自分は本来の自分ではなかった。
牧野はそんな別の人生を歩んで来ていた自分に訪れた過去からの贈り物だったのかもしれない。
司はパーティーの日を思い出していた。
それはずっと好きだった女性に会えた日で、彼の人生が再び動き出した日だったはずだ。
だがそんなことにも気が付かなかった愚かな自分を殴りたい思いでいた。
あいつの住んでいる街を車で巡った。
小さな地方都市だが住みやすそうな街だと感じられた。
何もかもが面白くないと思っていたときに出会った女性。
17歳の自分がこんな危機的状況に陥るとは考えもしなかったあの頃に出会った女性。
高校時代追いかけ回して手に入れようとした女性。
それは切実な思い。そして実らなかった彼の初恋だった。
あの頃の生き方を思い返してみても仕方がなかった。
10年間の距離が再び近づいて来た今、手を伸ばせばそこに牧野がいる。
そうだ牧野はこの街にいる。これからは過去と向き合って生きるときだ。
心から愛していた女性と共に同じ人生を歩みたい。
あの頃決して手に入れることが出来なかった女性をこの手に欲しい。
日が沈むころ、彼は山の上にいた。
タクシーが司を運んで来たのはつくしが働いているレストランの前だった。
ニューヨークを離れ帰国した牧野は東京にはいなかった。
探し出した先は地方都市のレストランだった。
牧野はこのレストランで働いている。
この場所は静かだ。
聞こえるのは風が吹く音と、香るのは植えられているバラの花の匂いだ。
まさに今を盛りとばかりに咲き誇るバラの花。色は様々だが、匂いはどれも同じ甘く、深い香りだった。司はその香りを深く吸い込んだ。胸の奥深くに吸い込まれた香りはあの頃の切ない気持ちを思い起こさせた。ため息をつくことのない男だが、めずらしく大きく息を吐いた。
バラの花には思い出があった。遠い昔の思い出を思い起こさせるバラの花。
だが、司の頭の中にはこれからのことしか考えられなかった。
「雨か・・」
ぽつぽつと降り出した雨が司の肩を濡らしはじめた。
土砂降りの雨は遠い昔を思い出させるがこの雨は違う。あの日の雨は冷たい雨だった。
だがバラの花が咲くこの季節の雨はどこか生暖かさを感じさせる雨だった。
まるでこれから芽吹く花のための命の源となる水を与えているかのような雨だった。
そろそろ店に入るか・・
司はひっそりと佇む古びたレストランが彼の人生での悦びの舞台になるなんて考えもしなかったはずだ。
「いらっしゃいませ!」
明るく弾むような声が耳に届いた。
だが次に聞こえてきた声には戸惑いと驚きだけが感じられた。
「ど、どうみょうじ・・」
***
つくしは呆然とした。
かつて愛した男が目の前にいて自分をじっと見つめていた。
店の入り口の鐘がカランと鳴って人が入ってきた気配に気づいて振り向いた。
目に映ったのはニューヨークで別れた道明寺だった。彼がいつもつけているコロンの匂いがどんどん近づいてくるのが感じられた。
道明寺は口を開かない。その視線は赤ん坊が育っていることを示すお腹のふくらみに注がれていた。
息を呑むような緊張が感じられ、つくしは立っているのが辛く感じられてきた。
「牧野さんどうしたの?」
厨房から顔をのぞかせて声をかけてきたのはレストランのオーナーの男性だった。
客が入って来たのにオーダーを取ることもせず立ったままのつくしを心配したようだった。
「い、いえ、なんでもありません!」
「い、いらっしゃいませ。どうぞお好きなお席へおかけください」
まっすぐに見ていられなくて、視線を下げた。
店の中には他に客はいなかった。
どうしてこんなところにこの男がいるのか理由が知りたい。
10年前にずたずたに傷ついた心はニューヨークに置いてきたはずだ。それなのに道明寺に会うとまだ心が痛いだなんて、こんなことではこれからこの子と生きて行くことが思いやられる。
道明寺は婚約者とあの街にいるはずなのにどうしてこの街にいるのだろう。つくしは無意識のうちにお腹のふくらみに手をあてていた。あの街を去ってからつくしはこの男の動向には関心を持たなくなっていた。
今まではどこで何をしていても耳に入る男の情報だったが、意識して目に触れない、耳にしないことを心がけていた。だが情報操作でもしているのか最近はこの男についてのゴシップを耳にすることはなかった。
「なんて言えばいいんだ?」
「え?」
司は窓際の庭が見える席へと腰を下ろした。
「おまえは牧野つくしだろ?」
今さらこの男はなにを言っているんだろう・・
あたしの名前を確認して何を言いたいのか。
「俺が無神経でなければおまえに気づいていたはずだ」
「気づいていれば一緒に暮らしていたはずだ・・夜だけじゃなく」
「俺のことを怨んでいないか?」
司はまどろっこしい言い方しか出来ない自分に腹が立った。
牧野への思いをどうすれば上手く伝えられるかを考えれば考えるほど言葉が失われていくような気がしていた。
「俺を・・許してくれないか?」
「思い出したんだ・・俺たちのことを」
「な、なにを言って・・」
道明寺の記憶が・・
道明寺があたしのことを思い出した・・
あたしとあの頃に築いた信頼関係を思い出してくれたの?
つくしは落ち着かない気持ちで身じろぎをしていた。
もし道明寺があたしのことを思い出したらどうするだろうかということを何度も自分に問いかけていたことがある。あれからもう10年以上時が経過したんだし、あの頃と同じ気持ちでいるかどうかという思いだ。
「どう説明したらいいのかわからないが・・おまえを忘れてしまったことを許して欲しい」
「それに、おまえを・・捨てたこと・・」
「おまえの腹の子どもは・・」司は奥歯を噛みしめた。
「あ、あたしの子どもは・・」つくしは丸みのあるお腹に手を当てた。
「俺の子どもなんだろ?」
「ニューヨークで俺以外とは寝てなかったんだ。どう考えても俺の子どもだろ?」
「あの、道明寺、あたし今仕事中だから・・今そんなこと・・」
道明寺が思い出した・・
10年間あたしのことを忘れていた道明寺が。1年間あたしと夜だけの関係を続けていた道明寺が。だが決してあたしのことを愛しているとは言わなかった道明寺が・・
い、いつ?いったいいつ思い出したの?
「オーナーはさっきの男か?」
「えっ?うん、そうだけど・・」
司は席を立つと厨房へと足を踏み入れていた。
再び戻って来たときには、今日はこの店は臨時休業になったと言った。
そうは言ってももう日が落ちた時間帯で客足は望めそうになかったから店を閉めても支障はないだろう。
2人だけになった店は時を刻む音が聞こえて来そうなくらいの静寂が流れていた。
最初の5分。2人は黙ったままで向かい合っていた。
古いレストランの中で見えるのは互いの後ろに見える古ぼけた内装だけで沈黙が店の中を支配しているように感じられた。
雨に濡れた窓の外には暗闇だけが広がって見えた。
何から話しを始めればいいのか・・
俺はこの店に足を踏み入れた瞬間から牧野を抱きしめたかった。
抱きしめておまえを長い間ひとりにさせて悪かったと言いたかった。
だがそんな言葉は10年という長い時の重みに対しては軽すぎる言葉ではないだろうか。
それでも俺は話さなければならなかったし話しを聞かなければならなかった。
「牧野・・」
1年間、聞きなれた声は静かで優しかった。
そんな男はすばらしくハンサムだ。
司は聞き取れないほど低い声で聞いた。
「体は・・体の調子はいいのか?」
「うん、へ、平気・・」
少し前までつわりがひどかったが今ではもう平気だった。
「そ、それよりどうしてここがわかったの?」
「調べたんだ」
「そ、そっか。そうだよね。あんたならそんなこと簡単だよね」
あたり前だ。人を探そうと思えばすぐにでも探し出せるだけの力がある男なんだからあたしの居場所なんてすぐにわかるはずだろう。
「それより話しがある」司がそっと聞いた。
「どうして・・ニューヨークに来たんだ?」
「おまえは・・どうして俺と・・あんな関係でいることを望んだんだ?」
どうしてニューヨークに来たか?つくしは司をじっと見つめた。
それは・・あんたが忘れられなかったから。
あんな関係でいる・・それは永続的な関係は求めないこと。
永遠の関係を求めたところで手に入るはずがないとわかっていたからだ。
道明寺があたしの傍に永遠にいることは無理だとわかっていたからだ。
だから永遠は求めなかった。
「どうしてって言われても・・」そんなの今さらだ。
「いいじゃない、2人とも大人なんだから、男と女の関係なんて水ものだっていうじゃない?だから・・」
本当は少しでもあんたの傍に居たかったからどんな関係だろうと気にしなかった。
だから夜だけの女だとしても別にかまわなかった。
そんなことよりあんたはこれから将来財閥のためにビジネスとしての結婚をするんでしょ?昔からの知り合いの家の女性と結婚するって言ったじゃない。だから別れた女のことなんて気にする必要はないんだから。いや、違う。別れた夜だけの女だ。
「あ、あのね、子どものことは心配しなくても大丈夫だから。この子はあたしの子どもとして育てるから。なんの権利も主張しないから心配しないで」
「迷惑なんて絶対にかけないから大丈夫」
道明寺のいない人生でも、ひとりで子供を産むこともかまわない。
道明寺とは未来は共有できなかったけど、あたしにはあんたの一部がいるからいいの。
「牧野、俺はそんな話しをしに来たんじゃないんだ」
「じゃあ・・なに?」
「いったいなにをしにニューヨークからこんな所まで来たの?」
司はなにをしに来たと言われ言葉を探した。
判断に迷ったことがない自分がどう言えば自分の思いを伝えられるかを悩んでいた。
何かに対してためらうということが今までは無かった。
「おまえに・・知り合いの家の女と結婚すると告げてからは女を抱いてない」
「つまりおまえと抱き合ってから、他に女はいない」
「言ってる意味がよくわからないんだけど・・」
他に女って?いったい誰の話しをしているの?婚約者の人のこと?
「牧野、結婚してくれ。俺は本気だ」
「俺はおまえもその子どももどっちも欲しい」
本気で言っているのだろうか?つくしは司が正気とは思えない言葉を口走ったかのようにじっと見つめた。
だが自分に向けられている司の目が恐ろしいほど真剣だと感じられた。
でも道明寺と結婚できるはずがない。
「ど、道明寺、あのね、なに言ってるの。あんたには婚約者がいるでしょ?」
「婚約は解消した。他に女はいない」
「あたしに・・子供が出来たから結婚だとか考えてるなら心配しなくても大丈夫だから、あんたはあたしのことは見なかったことにしてニューヨークに帰ればいい」
「まさか自分の記憶が戻ったら、いきなり子供までいたなんてことになったら驚くのは当然だと思うけど・・」
「そんなこと言ってんじゃねぇよ!」
「おまえ、なにひとりで抱え込んでんだよ!」
「おまえ・・俺のこと嫌いなのか?俺がおまえと結婚したいって言ってるのに何が不満なんだ?それとも不安なのか?」
「記憶が戻ったって言ってんだろ!」
「今おまえの前にいるのは、おまえが知ってる俺だ!」
「なあ、牧野・・」
司の目は俺を信じて欲しいと訴えていた。
「おまえに許して欲しいって言いに来た。どんくらい時間をかければ俺を許してくれるんだ?」
司はつくしを抱きしめたかった。口ではうまく言えない気持ちを、自分の胸の高まりを聞いて知ってもらいたかった。
「で、でも婚約者の人は・・」
「あんな女どうでもいいんだ」
「きれいに別れたから問題ない」
「だから俺と結婚してくれ。一生俺のそばにいてくれ」
つくしは何か言おうとした。なんでもいいから言わなければと思った。
だけど言葉がなかなか見つからずにいた。
記憶が戻った道明寺があたしの目の前にいる。
本当は今すぐ道明寺に抱きつきたい思いでいっぱいだ。
「ね、ねえ、出産には立ち会うつもり?」
そんな言葉が思わず口をついた。
つくしは涙声になっていた。
道明寺の言葉に嬉しさが胸に広がっていたからだ。
正直道明寺が他の女性と結婚するなんて話しは聞きたくなかったし、信じたくなかった。
もう二度と会えないと思っていたからこうして会いに来てくれて嬉しかった。
司は呆然としていた。いきなりつくしが泣き出したからだ。
妊娠すると感情の高ぶりが見られるというが、このことか?
「ど、どうしたんだよ。どっか悪いのか?」
「ち、ちがうわよ・・」
ひとりで生むと覚悟はしていたが、それでもやっぱり寂しかった。
誰か傍にいてくれて支えてくれる人が欲しいと思っていたのは事実だった。
でもまさか道明寺が、あたしのことを思い出した道明寺が来てくれるなんて考えもしなかった。
だから嬉しくて涙が溢れてきた。
「2度とおまえをひとりになんてしねぇ。だから安心して子どもを産んでくれ」
「牧野、悪かった・・」
「なあ、結婚してくれるよな?」
「ど、どうみょうじ・・」溢れ出す涙が止まらなかった。
「あたし、子どもが好きなの・・」涙で視界がぼやけて道明寺の顔が見えない。
「あ、あたしでよかったら・・この子と一緒にお願いします」
「おまえじゃなきゃダメなんだよ、俺は・・」
俺は記憶が戻らなければ、人生で最大の宝を失うところだった。
それは牧野と俺の子ども・・そしてこれから先に生まれてくるはずの子どもたちだ。
今までこいつの傍にいられなかった10年分はこれから一生かけて償っていく。
司は上着の中から小さな箱を取り出すと真剣な顔でつくしの手をとった。
手の温もりとともにつくしの指にはめられた指輪はただひたすら美しかった。
だがその美しさに負けない女が俺の前にいる。
司にとっては昔からどんな宝石よりも輝いていた女だった。
つくしの手は温かく、指の力は抜けていた。
その手は司の手を優しく握り返してきた。
互いに握り合った手はもう二度と離さないと誓い合っていた。
つくしは指輪から視線を引きはがすと、まっすぐ司を見た。
「道明寺・・いいお父さんになってね」
「ああ」司の顔にゆっくりと笑みが広がった。
「もちろんそのつもりだ」
司のその言葉に嘘偽りはなかった。
< 完 > * Trick Of The Night

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- Trick Of The Night 後編
- Trick Of The Night 中編
- Trick Of The Night 前編
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コメント
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こ*子様
良かったですか!ありがとうございます!
こちらこそ、いつも楽しみに拝読させて頂いておりますm(__)m
そんなに言っていただくと本当に嬉しすぎて舞い上がります!
妄想の刺激、いい言葉ですねぇ。
私はいつもこ*子様に刺激を頂いています。
最近少し脳内が疲れていますが、こ*子様に刺激を頂いて頑張ります!
コメント有難うございました(^^)
良かったですか!ありがとうございます!
こちらこそ、いつも楽しみに拝読させて頂いておりますm(__)m
そんなに言っていただくと本当に嬉しすぎて舞い上がります!
妄想の刺激、いい言葉ですねぇ。
私はいつもこ*子様に刺激を頂いています。
最近少し脳内が疲れていますが、こ*子様に刺激を頂いて頑張ります!
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.06.03 21:38 | 編集

さと**ん様
こちらのお話は「One Night Stand」と一緒に書いたお話で、記憶喪失別バージョンでした。
今回の記憶の回復はニューヨークの港。自由の女神像を見学するために船が出るところがあるんですが
そこを回復地としました。情景描写をしっかり入れましたがいかがでしたでしょうか?
俺様司はデフォだと思いますが、拙宅はデフォな司はいないですよね?(笑)
この司もつくしを忘れたことと、捨てたことに後悔の念に駆られています。
つくしの潜伏するのは地方都市の山の上のレストラン。
今の季節はバラが満開ということで、ちょうど司がつくしに大量のバラを贈りつけたことを想い出すという
設定にしました。そろそろ雨の季節ですし、雨も降らせてみました(^^)
5分間黙って見つめ合う2人。もし傍でこの2人を見ていたら映画のワンシーンのように思えればと思いました。
デフォではない司でしたが、お楽しみ頂けてよかったです。
今週は忙しい一週間でしたが、山を越えてきました。ありがとうございますm(__)m
いつも素敵なコメントをありがとうございます。
またエロ曹司も頑張ります!
コメント有難うございました(^^)
こちらのお話は「One Night Stand」と一緒に書いたお話で、記憶喪失別バージョンでした。
今回の記憶の回復はニューヨークの港。自由の女神像を見学するために船が出るところがあるんですが
そこを回復地としました。情景描写をしっかり入れましたがいかがでしたでしょうか?
俺様司はデフォだと思いますが、拙宅はデフォな司はいないですよね?(笑)
この司もつくしを忘れたことと、捨てたことに後悔の念に駆られています。
つくしの潜伏するのは地方都市の山の上のレストラン。
今の季節はバラが満開ということで、ちょうど司がつくしに大量のバラを贈りつけたことを想い出すという
設定にしました。そろそろ雨の季節ですし、雨も降らせてみました(^^)
5分間黙って見つめ合う2人。もし傍でこの2人を見ていたら映画のワンシーンのように思えればと思いました。
デフォではない司でしたが、お楽しみ頂けてよかったです。
今週は忙しい一週間でしたが、山を越えてきました。ありがとうございますm(__)m
いつも素敵なコメントをありがとうございます。
またエロ曹司も頑張ります!
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.06.03 21:58 | 編集

H*様
チョビット泣いて、癒されて・・・
いつもお読み頂きありがとうございます!
拙宅のお話で癒しが出来るなんて光栄です。
また御曹司も書きますから、是非そちらで笑って下さいませ。
色々な司がいますが、どの司もつくしちゃんLOVEですから楽しんで頂けるように頑張ります!
色々ですよね・・人生は・・
拍手コメントありがとうございました(^^)
チョビット泣いて、癒されて・・・
いつもお読み頂きありがとうございます!
拙宅のお話で癒しが出来るなんて光栄です。
また御曹司も書きますから、是非そちらで笑って下さいませ。
色々な司がいますが、どの司もつくしちゃんLOVEですから楽しんで頂けるように頑張ります!
色々ですよね・・人生は・・
拍手コメントありがとうございました(^^)
アカシア
2016.06.03 22:06 | 編集

H*様
司が他の女と!
確かに嫌ですよね。アカシアも嫌です。
そして、こちらのお話を再読して下さったのですね!
沢山お読み頂き、有難うございます(低頭)
拍手コメント有難うございました^^
司が他の女と!
確かに嫌ですよね。アカシアも嫌です。
そして、こちらのお話を再読して下さったのですね!
沢山お読み頂き、有難うございます(低頭)
拍手コメント有難うございました^^
