今の二人を隔てる壁は・・
隣同士に住んでいるマンションの部屋の壁だけだ。
「未来のことなんて考えてなかったが、おまえに出会ってから考え始めた」
「未来?」
「ああ。そうだ。」
馴染みのない確信が生まれたのはいつからだったのか。
「一週間会えない間に色々と考えた」
だが同時に与えるつもりの無かった時間をこいつに与えてしまったことは想定外だった。
こいつの俺に対する影響力は凄い。
会えなかった一週間の俺は手負いの猛獣だなんて言われた。
胃が痛い手負いの猛獣・・
ならこいつは猛獣使いってことになる。
決して飼い馴らすことが出来ない猛獣の俺を意のままに操れるのはこいつだけだ。
そして俺はそのとき初めて知った。
感情で胃が痛くなるということを。
俺はこいつに対しては繊細な神経の持ち主だったと言うことか?
「一緒に暮らそう。隣同士じゃなくて」
「でも・・」
「いいじゃねえか。どうせすぐに結婚するんだから」
「言ったよな?長くつき合えばいいってもんじゃねぇって」
「つかさ・・」
「なあ、俺を愛してるんだろ?」と顔の覗き込めば
「わかってるくせに・・」顔を赤らめた。
「ならいいんだな?」
その答えは小さな声で返された。
いいわ・・と、だけで戸惑いはなかった。
***
部屋の中に差し込んでいるのはカーテンの隙間からの月あかりだけ。
これ以上ないほど頬を寄せて抱き合った二人。
絡められた互いの指先には、決して離したくはないという思いが込められていた。
どうして欲しい?
そう聞いたとき、強く握り返してきた小さな白い手。
二人の求めるものは同じ。
なにが欲しい?
その答えはひとつだけ。
あなたが欲しい・・
ただそれだけ。
今この瞬間に存在するのは二人だけ。
つくしは司に服を脱がされると彼の匂いを吸い込んだ。
ぞくぞくする男の匂い・・
今夜これから起こることで全てが変わる気がしていた。
「会えなかった間におまえがどこかへ逃げてしまうんじゃないかと思った」
司の声は硬く、かすれて聞こえた。
「いいか。俺から離れないでくれ・・」
俺から離れないで欲しい。
「どこにも逃げないから・・」
それが彼の望んだ答え。
司は一瞬だけ目を閉じた。そしてまた目を開くと、そこに浮かんでいたのは紛れもない欲望だった。
たった一週間会えなかっただけだ。
なのにどうしてこんなにもつくしが欲しいんだ?
だが死ぬほど腹を空かせた獣がたったひとつだけ手に入れた獲物のような扱いはしたくない。
司は優しくつくしの唇をふさいだ。
「つくし、おれ達はまだ互いに知らないことが多いがそれは重要な問題じゃない」
薄明かりの中、司はかすれた声で囁いた。
二人の肉体はまだ慣れてきたばかりで、つくしは司の与える情熱を受け止めることしか出来なかった。
手のひらで胸をそっと包み込むと悩まし気に息を吐いて身を震わせている。
まだ慣れないからこその反応は愛おしい。
華奢で柔らかい体が自分の体重で押し潰されてしまうんじゃないかと心配をしても
つくしはそんなこととは逆に司の体の重みを求めた。
それは愛する男の全てを受け止めようとする精一杯の愛情表現。
女が男に向かって体を開くという行為は危険な行為だ。
それは一番無防備な姿をさらすこと・・
こいつは自分は守ってもらわなきゃいけないような女だと思わないでと言うが、女の力なんて本気の男の力には敵わない。
何かあれば女なんて簡単に処分されてしまう。
この女は情にもろい。そんな女は騙されやすい。
情にもろいか・・それはいいことなのか、悪いことなのか俺には分からないがどちらにしても俺が守ってやらなきゃいけないと言うことだけは分かっている。
今は閉じられている大きな瞳のへりに浮かぶ涙は歓喜の涙であって欲しい。
司はつくしの唇に軽く唇で触れた。
「つくし、俺を見ろ」
つくしは司の肩に爪を食いこませたまま浅い呼吸を繰り返している。
閉じられていた瞳が開くと真っ直ぐに司を見上げていた。
その瞳の中に映し出されるのは俺の顔だ。
いとしい女の瞳の中で永遠に愛を語りたい。
俺を見て、俺だけを見てくれと言う思い。
動きを止め、じっとしているとこいつの体の奥が俺を求めているのが感じられる。
吸い付くようで、纏わりついてくる。
つくし・・今夜はゆっくり時間をかけよう。
時間も空間も超えた先にあるのは二人だけの世界。
愛してる・・
これからもずっと・・
永遠に・・
司はゆっくりと腰を動かしだした。

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「未来のことなんて考えてなかったが、おまえに出会ってから考え始めた」
「未来?」
「ああ。そうだ。」
馴染みのない確信が生まれたのはいつからだったのか。
「一週間会えない間に色々と考えた」
だが同時に与えるつもりの無かった時間をこいつに与えてしまったことは想定外だった。
こいつの俺に対する影響力は凄い。
会えなかった一週間の俺は手負いの猛獣だなんて言われた。
胃が痛い手負いの猛獣・・
ならこいつは猛獣使いってことになる。
決して飼い馴らすことが出来ない猛獣の俺を意のままに操れるのはこいつだけだ。
そして俺はそのとき初めて知った。
感情で胃が痛くなるということを。
俺はこいつに対しては繊細な神経の持ち主だったと言うことか?
「一緒に暮らそう。隣同士じゃなくて」
「でも・・」
「いいじゃねえか。どうせすぐに結婚するんだから」
「言ったよな?長くつき合えばいいってもんじゃねぇって」
「つかさ・・」
「なあ、俺を愛してるんだろ?」と顔の覗き込めば
「わかってるくせに・・」顔を赤らめた。
「ならいいんだな?」
その答えは小さな声で返された。
いいわ・・と、だけで戸惑いはなかった。
***
部屋の中に差し込んでいるのはカーテンの隙間からの月あかりだけ。
これ以上ないほど頬を寄せて抱き合った二人。
絡められた互いの指先には、決して離したくはないという思いが込められていた。
どうして欲しい?
そう聞いたとき、強く握り返してきた小さな白い手。
二人の求めるものは同じ。
なにが欲しい?
その答えはひとつだけ。
あなたが欲しい・・
ただそれだけ。
今この瞬間に存在するのは二人だけ。
つくしは司に服を脱がされると彼の匂いを吸い込んだ。
ぞくぞくする男の匂い・・
今夜これから起こることで全てが変わる気がしていた。
「会えなかった間におまえがどこかへ逃げてしまうんじゃないかと思った」
司の声は硬く、かすれて聞こえた。
「いいか。俺から離れないでくれ・・」
俺から離れないで欲しい。
「どこにも逃げないから・・」
それが彼の望んだ答え。
司は一瞬だけ目を閉じた。そしてまた目を開くと、そこに浮かんでいたのは紛れもない欲望だった。
たった一週間会えなかっただけだ。
なのにどうしてこんなにもつくしが欲しいんだ?
だが死ぬほど腹を空かせた獣がたったひとつだけ手に入れた獲物のような扱いはしたくない。
司は優しくつくしの唇をふさいだ。
「つくし、おれ達はまだ互いに知らないことが多いがそれは重要な問題じゃない」
薄明かりの中、司はかすれた声で囁いた。
二人の肉体はまだ慣れてきたばかりで、つくしは司の与える情熱を受け止めることしか出来なかった。
手のひらで胸をそっと包み込むと悩まし気に息を吐いて身を震わせている。
まだ慣れないからこその反応は愛おしい。
華奢で柔らかい体が自分の体重で押し潰されてしまうんじゃないかと心配をしても
つくしはそんなこととは逆に司の体の重みを求めた。
それは愛する男の全てを受け止めようとする精一杯の愛情表現。
女が男に向かって体を開くという行為は危険な行為だ。
それは一番無防備な姿をさらすこと・・
こいつは自分は守ってもらわなきゃいけないような女だと思わないでと言うが、女の力なんて本気の男の力には敵わない。
何かあれば女なんて簡単に処分されてしまう。
この女は情にもろい。そんな女は騙されやすい。
情にもろいか・・それはいいことなのか、悪いことなのか俺には分からないがどちらにしても俺が守ってやらなきゃいけないと言うことだけは分かっている。
今は閉じられている大きな瞳のへりに浮かぶ涙は歓喜の涙であって欲しい。
司はつくしの唇に軽く唇で触れた。
「つくし、俺を見ろ」
つくしは司の肩に爪を食いこませたまま浅い呼吸を繰り返している。
閉じられていた瞳が開くと真っ直ぐに司を見上げていた。
その瞳の中に映し出されるのは俺の顔だ。
いとしい女の瞳の中で永遠に愛を語りたい。
俺を見て、俺だけを見てくれと言う思い。
動きを止め、じっとしているとこいつの体の奥が俺を求めているのが感じられる。
吸い付くようで、纏わりついてくる。
つくし・・今夜はゆっくり時間をかけよう。
時間も空間も超えた先にあるのは二人だけの世界。
愛してる・・
これからもずっと・・
永遠に・・
司はゆっくりと腰を動かしだした。

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コメント
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さと**ん様
【俺を愛してるんだろ?】【わかってるくせに・・・】 これ言わせたかったんです。(/ω\)
どうして欲しい~からの、あなたが欲しいまでの間で二人の空気感を出せたらと思いましたので
感じて頂けて良かったです!(≧▽≦)胃が痛い猛獣、人間ですから胃も痛くなるはずです!(笑)
この司、欲しがるんですが、ちょっと控えめですよね?つくしが宝物のようで壊れたら困るから
って大事にし過ぎているような気がします。
俺を見ろ!これも好きなんです。【愛しい女の瞳の中で永遠の愛を語りたい】これは・・・
自分も書いて恥ずかしくなりました。ええっと、ちょっと待機してからスローに始めました。
本日も色々と有難うございました(^^)楽しかったです。
【俺を愛してるんだろ?】【わかってるくせに・・・】 これ言わせたかったんです。(/ω\)
どうして欲しい~からの、あなたが欲しいまでの間で二人の空気感を出せたらと思いましたので
感じて頂けて良かったです!(≧▽≦)胃が痛い猛獣、人間ですから胃も痛くなるはずです!(笑)
この司、欲しがるんですが、ちょっと控えめですよね?つくしが宝物のようで壊れたら困るから
って大事にし過ぎているような気がします。
俺を見ろ!これも好きなんです。【愛しい女の瞳の中で永遠の愛を語りたい】これは・・・
自分も書いて恥ずかしくなりました。ええっと、ちょっと待機してからスローに始めました。
本日も色々と有難うございました(^^)楽しかったです。
アカシア
2016.04.28 00:28 | 編集
