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2016
04.07

第一級恋愛罪 25

引っ越しをした翌日、どうしても社まで送るという男の車に乗り込んだつくしはひたすら前を向いていた。
あたしは道明寺を見る必要はないし、道明寺がこっちを見ていたとしてもあたしはそのことを気にする必要もないはず・・・だが・・・


まとわりつくような視線が感じられる。
この男、どうも態度がおかしい。
急に変わったこの態度・・男の色気をムンムン感じさせるような仕草。
たとえ道明寺を見なくても隣に座っていればわかる。
やたらと髪をかき上げてみたり、まるで見せつけるがごとく何度も長い脚を組み替えてみたりしている。ただでさえ強烈な存在感のある男なのに狭い空間の中で行われている動作は無意識とは思えない。
朝からどこかのホストクラブのイケメンと同伴じゃあるまいし・・
いったいこの男に何が起こったというのか?


道明寺がホストだとしたら・・・
この男の女たぶらかしの術はキラースマイルだ!今までこの術をかけられた女性は世の中にどれくらいいるのだろう?どんな女でもこの男には反応してしまうのは仕方がないのかもしれない。普段決して世間に見せることのないような笑顔を向けられた女はいちころだ。
だけど、いったい全体どうしたのよ!あたしに対して何か言いたいのだろうか?
ついこの前までおまえとはビジネス関係とクールに言った男はどこに行ったのよ!
普段あまり感情をあらわにしない男が急に感情を表に出すと怖い。
この男の感情はまるで底なし沼か?いきなり沼の底から沸いたこの男の感情なんてあたしにわかるわけない。


ならばとつくしは努めて感情を出さないように無表情を装うことにした。
が、隣に座る道明寺を見た瞬間黒い瞳にドキッとした。


「い、いつもこんな早い時間に出社されるんですか?」
「ああ。そうだ」
「へぇ。社長ともなれば重役出勤かと思いましたが?」
「社長がのんびり出社なんかしてる企業はあっと言う間に潰れちまう」

ごもっともな意見です。
つくしは経済部記者という立場からいつも考えていた。
社長としてリーダーシップが発揮できる人間は勘のよさ、運の強さも必要だが常に仕事に対してのアグレッシブさが必要だ。朝早くからよく働き、だからといって夜遅くまでダラダラと働くような人間ではダメだ。会社の全体像を掴み効率よく働くことが重要だ。
この男が社長となった新体制の今も道明寺ホールディングスの躍進は続いている。


「あの・・」
「なんだ?」
「少しだけ仕事の話を聞かせてもらってもいいですか?」
「ダメだ。おまえとは半年間の約束が終わったらインタビューを受けるということになっているはずだが?」


ダメか・・

この男と二人っきりで車の中にいるんだからチャンスだと思ったが甘かったか。
それにしても変な沈黙が息苦しい。まさか今日の始まりがこんなふうに始まるなんて思ってもみなかった。引っ越し一日目の朝は例え隣にこの男が住んでいてもそんなことは関係なく清々しい気持ちで迎えたかった。本意とは言えないが超高級マンションに暮らせるなんて自分の一生の中であることではない。だから限られた間だけでもその生活を楽しみたいと考え始めていた。


「おまえ・・男と付き合ったことはあるって言ったよな?」
「な、なんですか?いきなり」
「なんで付き合ってた男がいたのに処女なんだ?」

この男、朝っぱらから何を聞いてくるかと思えば、どうしてそんなことに興味を持つのよ?
ついうっかり自分の個人情報を漏らしてしまった時のことが思い出された。
そんなことに興味を持たれるのも聞かれるのも嫌だった。
つくしは話を変えようと思った。

「そんなこと答えるつもりはありませんから」
「個人情報侵害も甚だしいんじゃないですか?」
「そうか?」
「そうです!」

だいたいなんであたしが処女だなんてことをあんたが気にするのよ。
朝っぱらから処女、処女って・・ああ!もうっ!

「自分から処女だって言っといて今更だろ?」
「あのね道明寺、朝からしょ、処女、処女って言うのは止めてくれない?」
「別にいいじゃねぇか。減るもんじゃあるまいし」
「減る減らないの問題じゃないの!」

朝っぱらから肉体関係も精神的な関係もない男とこんな口論をしてるなんて一体なんなのよ?
「前にも言ったけど、あたしが処女でも処女じゃなくてもそんなことは道明寺には関係ないでしょ?」
「いい加減あたしが処女だとか言う話はやめてよね」
「失礼よ!」つくしは怖い顔をして睨んだ。
「道明寺があたしの・・・そ、そんなことばっかり言うんなら・・」
「なんだよ?」
「い、言わせてもらいますけど・・道明寺なんか・・」

「俺はゲイでもバイでもない」
「もちろんサドでもマゾでもないってことも話したよな?」

女を蕩けさせるようなほほ笑みで言われた。
何そのほほ笑みは・・
こ、この男は女の気持ちをかき乱す術を知っている。
これじゃあ人妻もいちころだと妙なところで感心した。
悔しい・・何故かこの男に対して自分が見劣りすることが悔しく感じられてしまった。
なんの欠点も持ち合わせていないその美しい容姿に嫉妬をした。
外見を貶すことが出来ないなら・・

「なによ!道明寺なんか・・その・・したあとで・・ベッドで凄いいびきをかいて寝てるんでしょ!」
「俺はいびきなんかかかねぇよ!」
「どうだか・・」
「なんなら女の証人でも呼ぶか?」にやりと笑う司。
「い、いらない」目をそらして唾を飲み込んだ。


この男・・・
本気で女を口説くと決めたら怖い男になりそうだ。
まるでこの男の方がストーカーになりそうだ。
ま、あたしにはその心配はない。
あたしの方がこの男を人妻ストーカーから守るって言ったら変だけど盾にならなくちゃいけないんだから。

「ど、道明寺、いい?必要以上に近くに寄らなくてもいいから」
「心配しないでもちゃんとかりそめの恋人役はこなすから・・」
「うん、約束は守るから・・」つくしは居心地が悪そうにした。

つくしは落ち着かない気持ちでいた。
道明寺司にじっと見つめられておもわず怯んだ。暫く黙って前を向いていたがだんだんと沈黙に耐えられなくなって来た。どうしても隣からの視線を意識しないわけにはいかなかった。
どうしよう・・何か質問でもしてみようか?何も言わずにじっと見つめられているなんてどうしたらいい?

そうこうするうちに社に到着しましたと運転手がドアを開けてくれたので外へ出た。
この車から降りるときはいつも転びそうになっていたからまたドジを踏まないよう足もとに気を付けることだけは忘れなかった。

「帰りも迎えに来てやる。6時か?」
「か、勝手に決めないでよ!」
「遠慮すんな」
「結構です!」


ぐずぐずしていたら車に引き戻されそうな気がしたしたのでさっさと離れた。
いったいなんなのよあの男は!

編集局に向かう途中、すれ違ったキャップから声をかけられた。
「おい、牧野!おまえ凄い車で出社して来たらしいな?なんでも社主が乗るよりもすげぇ
車だったとか言って噂になってるぞ?」
「あれ、道明寺の車だろ?おまえと道明寺司はやっぱり付き合ってたんだな」

「ええ!そうですがなにかっ?」
つくしは振り返ると思いっきり言葉を吐き出していた。







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コメント
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dot 2016.04.07 08:36 | 編集
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dot 2016.04.07 10:48 | 編集
さと**ん様
司もハッスルした後は疲れていびきもかくかなぁと(笑)あっ!ハッスルなんて言葉は死語ですね(笑)
朝から処*連発するなんて嫌な男ですね。そんな言葉を言わせた私が悪いんですよね?すみませんm(__)m
さすが金持ちの御曹司、生み出す物も持ってるモノもひと味違いますね。金塊と砂金を・・・受けに行きたいです(笑)
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.04.07 22:40 | 編集
こ**る様
お久し振りです(^^)面白いですか?有難うございます!
車内での二人の会話がどうしてこんな話になったのか私にもよく分かりませんが、司は気になっていたのでしょう(笑)人妻ストーカーから追われる司はつくしのストーカーと化す(笑)そんなストーカーに気付かない鈍感つくしという感じでしょうか。つくしちゃんはインタビュー記事を書きたいと一生懸命です。
こんなお話しでも楽しんで頂けて嬉しいです。
毎朝更新なんとか頑張っていますが、年度が変わって忙しく若干の疲れが・・(笑)でもなんとか頑張ります!
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.04.07 23:02 | 編集
vi**o様
えっ?(笑)二人ともかわいいですか?
有難うございます!でも二人の会話が変ですよね?司もストレート過ぎますよね?(笑)
困った男です。
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.04.07 23:09 | 編集
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