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2016
04.06

第一級恋愛罪 24

つくしは越して来たばかりの部屋でくつろいでいた。
いや、正確に言えばくつろいでいるのではなく疲れ果ててソファの上へ倒れ込んでいた。
道明寺司の姉の一声で始まったつくしの引っ越しは業者の手によりあっと言う間に終わっていた。だからつくしは自分が疲れ果てているのは精神的な疲れだとわかっていた。

家財道具は言うに及ばず弟の恋人として最低限必要だと思われるものは全て準備されていた。その品々はお姉さんに言わせれば戦闘服ということらしい。
人妻ストーカーと闘う為の戦闘服?なによそれ?あたしは最前線で戦うの?
いくらインタビュー記事が書きたいとは言え、その前に戦死はしたくない。
亡くなればピューリッツァー賞でも貰えるのか?あれはアメリカ国内の報道機関が対象か・・ならボーン上田記念国際記者賞ならどう?あれは日本国内の報道機関が対象だ。

はぁ・・バカな事言ってる場合じゃない。それにあたしはまだ肝心な記事すら書いていない。
果たして記事を書くところまで生きていられるのかどうか不安がよぎる。
ああ、嫌だ。人妻ストーカーと闘って戦死するなんて縁起でもない。 

お姉さん、あたしはかりそめの恋人です。かりそめと言う言葉の意味は一時的なと言うことですがご存知ですか?一時的な虫除けのつもりで引き受けたのがどうしてこんなことになるのよっ!
そのストーカー以外にもあの男に群がる女は多いわけで、その女達を遠ざける為に前面に立たされるあたしは何だか自分が不幸に思えてきた。
悲惨な恋愛経験しかないあたしにとってこのことが今後の自分の人生に役立つ時が来るのだろうか?

果たしてこの取引はあたしにとって良かったのか悪かったのかわからなくなってきた。
お姉さんは何を履き違えたのかまるであたしが弟の本当の恋人であるかのような勢いだ。
お姉さん、弟さんは多分あたしのことなんて屁とも思っていませんから。
お互いにビジネス関係としか考えていませんし、あたしはいつもドンくさい女と言われていますから。それに申し訳ないんですがあなたの弟さんは嫌味な男であたし達は二匹の猫みたいにいがみあっています。
まだ派手な言いあいはしていませんがいつかそんな日が来ると思います。

つくしは寝転がっていたソファから起き上がると部屋を見た。まったくこのマンション?
マンションと言うのかここは?俗に言うところのタワーマンションだがここは裕福な人たちが住む超高級マンションだ。
でもどうして住むところがあの男の隣の部屋になるよ!あのお姉さんの考えていることはあたしには理解が出来なかった。
人妻ストーカーってそんなに凄い人間なの?
いがみあっていた猫が隣同士に住むなんてことになって大丈夫なのだろうか?
ああ、もう今日は疲れた。これ以上考えるのはよそう・・・







***








翌朝、司はいつもどおりに目が覚めた。
そのとき頭に浮かんだのは隣の部屋の住人のことだった。
牧野つくし・・
やべぇ。
思い出しちまった。
布団を跳ね除けてベッドから出ると伸びをした。
昨夜は仲間4人で飲んだが寝起きは爽快だ。
朝立ちしたヤツはいつものことで、何もあの女が隣に越して来たからと言うわけじゃない。
無意識に手が伸びて撫でたのもいつものことで何もあの女のことを考えてたわけじゃない。
が、セックス飢餓に襲われつつあるのも確かだ。半年くらい女日照りが続いてもなんとかなると思っていたが下半身が重く感じられた。俺はあの女のことを考えて興奮してるのか?

バスルームでいつものようにことを済ませると歯ブラシを手にした。

あいつ処女なんだよな・・・

あの薄気味悪いストーカー女から解放されたかと思っていたが姉ちゃんからの連絡で恋人役を探せと言われて、事態はまだ終わってないと言うことを知らされた。
空港で調達した牧野つくしは吊るしのスーツを着た女でドンくさそうに見えた。
いや実際にドンくさくてよく転ぶ女。あいつデカい目を持ってるくせにどこを見て歩いているんだか。かりそめの恋人役をやらせたらぽっと出の女優以下で無理矢理演技をさせられたような素人芝居。まあそれでもなんとなかるもんだ。

しかしあの女の馬鹿正直さというか、感情が開けっ広げなところというか俺に媚びない態度は新鮮だ。そんな女なんて今までいなかったよな。

何がどう気になるのかと言われても、どこにでもあるような平凡な顔でスタイルもちんちくりん。ただ肌は綺麗だったな。酔っぱらったあいつを連れて帰ったこの部屋で覗いて見えた胸元のレースとその肌の白さ。さすがにあの時は何かしようかと言う気にはならなかったが、今でもあの肌の白さは思い出すことが出来る。
初めはなんてことのない女だなんて思っていたのがいつの間にか心の隙間に入り込んできた。俺の周りにいた性欲過剰な牝猫どもはいつも俺に爪を立てたがったがあいつは女としての爪は持ってるのか?あの女に爪を立てられるのも悪くねぇな。

歯を磨き終えると髭を剃り始めた。

処女か・・・

そんなことわざわざ俺に言うなんてあいつ俺に奪って欲しいのか?
じゃねぇと普通女が男の前でそんなこと言わねぇよな?
いつか、からかい半分で俺がいつでも相手になってやると言ったがあれは撤回だ。
からかいじゃなく本気で相手になってやる。
姉ちゃんが隣に牧野を住まわせることにしたのは正解だ。
ここならいつでもあいつの動向がわかる。
俺は今まで自分から女に関心を寄せることは無かったがこれからは違う。
はっきり言おう。認めたくはないが否定しても仕方がない。
俺はあの女が欲しい。

よし!今朝はあいつを新聞社まで送ってやるか。



司は軽い足取りで隣の部屋の前まで来たがチャイムを鳴らすことを躊躇っていた。

ちくしょう・・なんで俺がこんな・・
のっぴきならない状態に陥るはめになったんだ・・




つくしは初めて聞く音に戸惑った。
が、すぐにチャイムの音だと気が付いた。こんな朝から誰がと思ったが考えられる人物は他に思い浮かばなかった。
どうしよう・・やっぱり出るべきよね?
静かな足取りで玄関までの行くとのぞき穴から外を確認した。
やっぱり隣の男だ。こんな時間から何の用なのよ?

「おい!開けろ!」

いきなり怒号が聞えた。隣の男、朝っぱらから何かあったのか怒ってる?
まだ引っ越して来て一日も経ってないのに何なのよ・・まさかコーヒーが切れたから貸してくれとか言うんじゃないわよね?もし仮にそうだとしてもうちにはインスタントしかないわよ?
そんなことを考えながらドアを開けるべきか迷っていたら・・

「牧野!開けろ!そこにいるんだろ!」

ガンガン、バンバンなぜそんなに激しく叩く?
うるさい!まるでドアを叩き壊しそうな勢いだ。こんな超高級マンションで朝っぱらからガンガンやられたらたまったものじゃない。仕方ない開けるか。どうせあたしも仕事に行くところだし。
「な、なんですか?こんな朝早くから!」
ドアを開けた途端に飛び込んで来た男につくしは思わず後ろへ下がって顔を仰ぎ見た。

「仕事に行くぞ!」
「はあ?なんであたしがあなたと仕事に行かなきゃならないんですか?」
「送って行ってやる」とびきりいい笑顔を張り付けて言った。
「な、なんで?」大きな目がびっくりして丸くなった。

相変らず色気もへったくれもないような服装に身を包んでいる牧野を見て、それでも思わずおっ立ちそうになった俺は何なんだ?
「なんでって・・」
「おまえは俺の恋人だろ?恋人を送って行ってなにが悪い?」

つくしは断る理由を考えた。なぜか急に態度が変わった男が怖かった。機嫌がいいのか悪いのかよくわからない男にじっと見つめられ思わず震えそうになった。この男、捕食者のようだと思ったことがあったが、あれは一時のことで冗談まじりの態度だったがこの捕食者の視線がなぜかあたしに向けられているような気がしてならない。
これ、いったいどう言うこと?

「あの、道明寺まだ早いんじゃない?」

つくしは取りあえず何か話でもしていないとその視線に捕らわれそうで怖かった。
この男の考えていることがまるで手に取るようにわかった。それは紛れもない男としての視線だった。


色んな意味でこいつを押し付けられたことを姉ちゃんに感謝するしかねぇよな。
まあ見つけたのは俺だけど。
けどこいつの近寄らないでシグナルがひしひしと感じられる。
そんなシグナルなんて無視すっけど。俺の本気を舐めんなよ?
大部分の男は同時に平行して複数のことが出来ないと言われているが俺はどうだ?
ビジネスと女の両立はどうだ?こうなったらあのストーカー女を利用して牧野をモノにしてやる。どうでもいい会話でも楽しいと思えるなんて俺はどうでもいいと思っていた人生の墓場に向かって一直線なのか?
けどその前にこれからの俺は威張り散らす26歳の処女の世話で忙しくなる。
なにしろ人生にはセックス以外にも素敵なことが沢山あるんです。なんて言ってた女が相手だからな。
おもしろいことになりそうだ。







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コメント
H*様
暴走気味の司。何かに目覚めてしまったのでしょうか・・
金持ちの御曹司の司、大大大好きですか?有難うございますm(__)m
単なるエロ御曹司となってますが、大丈夫ですか?
Collectorの司は・・幸せになってくれることを祈りたいですね。心が病んでいますのでそに巣食う闇を取り去ってあげれたらと思います。
拍手コメント有難うございました(^^)

アカシアdot 2016.04.06 23:06 | 編集
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