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2016
03.31

第一級恋愛罪 21

予想外の展開だった。
立ち上がった人物はつくしより頭ひとつ分以上背が高く漆黒の長い髪をもつモデルのような女性だった。
きれいな人だった。
女性から見ても思わずうっとりと見つめてしまいそうな人物だ。
もしかしてこの人が道明寺司の秘密の恋人なのか?
それとも群がる虫の一匹なのか?
予期せぬ出来事につくしの中で緊張が高まった。

女性が歩み出たのでつくしは思わず後ろへ下がった。
迫力負けしそうだと思ったがここで引けばあたしは女じゃないとばかり居直った。
こうなったら受けてたとうじゃないの!

「司、彼女が例の?」

その女性は無表情でつくしの頭の先からつま先まで視線を走らせていた。
あたしとこの男との間に親密さが求められるというのはこの女性に対してなのだろうか?
つくしは息をつめて男が女性の問いになんと答えるのかと待っていた。

「そうだ。かりそめの恋人だ」

「あの・・」つくしの問いかけは無視された。

「牧野、俺の姉ちゃんだ。姉ちゃんこいつが牧野つくしだ」

男の態度は苛立たしげではあったがつくしを紹介する口調にはどこか照れくささが感じられた。

道明寺司の姉の出現につくしは慌てた。
何しろ数日前に咄嗟のこととは言え姉ですと名乗っていた自分が恥ずかしい。
まさかこの男の本当のお姉さんがこんなにきれいな人だとは思わなかった。
あのとき食事を共にしたかわいらしい女性は本当のお姉さんを見れば疑うことなく道明寺司の姉だと信じるだろう。決してあたしを見たときのような不信感いっぱいの目では見ないはずだ。
それくらい姉と弟の特徴はよく似ていた。弟に対し髪の毛がくるくると巻いていないところは違うが二人とも目鼻立ちがそっくりで背が高くてモデル体型だ。
恐らくだが身につけているものは目が飛び出るような値段の洋服で、耳たぶで輝いている大きなピアスはダイヤモンドだと思われた。それはお金持ちの女性が好むファッションスタイルだと感じられた。

この女性は道明寺司の姉だ。道明寺は色んな意味で並たいていの男ではない。
何しろ嫌味で傲慢な男だ。この姉という女性も同じような人間だったらと思うとつくしは気が滅入りそうになった。

「姉ちゃんなんでいきなり現れるんだよ!」
司は不平がましく言った。
「悪かったわね。さっきこっちに帰ってきたばかりなんだもの仕方がないでしょ?」
「何が仕方がないんだよ!」
「だってあんたに電話しても出ないじゃない!どうしてあたしからの電話に出ないのよ?」
「・・ったくうるせぇなぁ」
「あんたお姉さまに向かってなんて口を利くのよ!」

つくしは目の前で繰り広げられる姉と弟の会話を興味津々といった様子でながめていたがいい大人が高級レストランの真ん中で口うるさい立ち話をしているのはいかがなものかと思いはじめていた。周りの客は見て見ぬふりを決め込んではいるが、多分耳をそばだてているはずだ。つくしは自分が仲裁に入った方がいいのではないかと思い声をかけることにした。



「あ、あの・・」小さな声で問いかけてみた。

「はじめまして。司の姉の椿です。聞いているかもしれないけどあたし、普段はロスに住んでいるの」
つくしの問いかけに女性は体の向きを変えると右手を差し出してきた。
やはり海外生活が長いと挨拶のスタイルも自然とそうなるのだろう。
つくしも握手の手を差し出した。

「は、はじめまして。牧野つくしと申します」
「ごめんなさいね、こんなところまで押しかけて」

非礼を詫びられたつくしは椿の態度にほっとしていた。
どうやらお姉さんは普通の人間のようだ。
椿はつくしの手を離すと司のほうに向きなおった。


「ところで司、あんた彼女、牧野つくしちゃんにちゃんと話はしたの?」
その声は先ほどまでの感情をむき出しにした様子とは違い少し抑えたような口調だった。
「いや。話してねぇ」
「なんで話してないのよ?」
「別に理由なんかこいつに必要ないんだよ!」
「なに言ってるのよ!お願いしてるんだからきちんと理由を説明するのが筋ってものでしょ?」椿は感情が高まってきたのか片腕を腰に当てながら話を続けた。

「あんたはいったい何様のつもりなの?あたしはあんたをそんなふうに横柄に育てた覚えはないわよ?」
「姉ちゃんこいつとはギブ アンド テイクなんだよ!」
「なによ?そのギブ アンド テイクってのは?」
「こいつが俺の恋人役を引き受ければ俺はこいつのインタビューに答えることになってんだよ!」

司の声に周りのテーブルの人間たちの目が一斉に向けられた。
どうやらかなり大きな声で話をしていたらしい。
さすがに見て見ぬふりを決め込むことに飽きてしまったのか、今では興味津々の様子で三人を見ていた。

姉と弟は自分達の声がまた大きくなってきたことに気がついたようだ。
椿は軽く咳払いをするといつまでも立ったままで話をするのもおかしいから取りあえず座りましょうと言って腰をかけた。

「なによそのインタビューって?」
「こいつ、新聞記者なんだよ」
「あんた・・新聞記者の女の子に・・・?」椿は目を大きく見開くとつくしをまじまじと見た。
「心配すんなよ姉ちゃん。ちゃんと秘密保持の契約を結んでる」むっとした口調。
「そう・・。それならいいわ。それから・・牧野つくしちゃん・・」
「フルネームで呼ぶのもおかしいわね。つくしちゃんでいいかしら?」椿はやさしく聞いた。
「ねえ、司はつくしちゃんのことをなんて呼んでるの?」
椿は弟を見ると答えを待った。

「あ?」
「だから、つくしちゃん?それともまさか呼び捨て?」
「牧野だ」面倒くさそうに答えた。
「ま、牧野?」
「そうだ。牧野だ」
「あんたたち一応恋人関係なのよね?」
「ああ、そうだ」
「司はまあいいわ。それでつくしちゃんは司のことをなんて呼んでるの?」

「道明寺ですが・・」ちらりとその名前の人物と視線を合わせ暗黙の同意を確認した。

椿はうめくと椅子に深く体をあずけた。

「ねえ、二人ともおかしいとは思わないの?恋人同士がお互いを苗字で呼ぶなんて?」
「こんなところで話を続けるのも・・」
椿は嘆息を漏らすと話を続けた。
「どこかで飲みながら話をしましょう」

「つくしちゃん、こんなことになったのはあたしがお願いしたからなの」






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