これからつくしが会う相手は全ての人々が自分よりも地位の高い人々だ。
道明寺ホールディングス新社長就任披露パーティー。
その新社長の後ろを歩くのは何故か場違いで不似合と思われるあたし。
だがそのことを表だって口にする輩はいなかった。
相手が悪すぎると言うのだろうか?
この男の逆鱗に触れるということは社会から抹殺されるとでも言うのだろうか?
いくらなんでもそれはないでしょう?
だが、つくしは自分のことを囁きあっている声を聞きとることは出来た。
「あの人が・・・道明寺様のお相手なの?」
「まさか・・あの?」
「あんなの単なる間違いでしょ?」
「でも・・」
「なによ!あんなブス!」
「だいたい道明寺様はひとりの女性と継続的な関係なんて続けるわけがないじゃない。この女なんて単なる遊び相手の一人よ!」
つくしはなるほど、この男がこんな女性達から身を守りたいと考えるのも分かるような気がした。
あの騒動が記事になることはなかったがネットの世界ではある程度広がってしまったのは仕方がない。
「道明寺社長、この度は御就任おめでとうございます」
とあちらこちらからかかる声を無視して人々の間を歩く男について行くあたし。
道明寺司が歩けばその行く手は自ずと開かれる。
行く手にいる人々は彼が歩けば目立たないようにそそくさと移動していく。
凄い!
それはまるで磁石が同極の金属を遠ざけて行くようだ。
見ているつくしはある意味面白かった。
道明寺司は俺に近寄るなと言う空気を発散しているのが分かる。
つくしのように客観的に見ていれば、それもまた面白い。
この人物は凄い!!
つくしは彼の後ろを歩きながら記者として益々興味を掻き立てられた。
若くして社長に就任するだけのカリスマ性がある。
黒のタキシード姿はまるで黒ヒョウのようにしなやかだった。
袖口から覗くドレスシャツの白さがアクセントになっていてこれまた美しい。
男の全体的な印象として言えるのは長い脚を持つ黒ヒョウは何かに挑むように挑戦的な態度だ。
きらびやかな服装の人々の間をすり抜ける姿は堂々として、なおかつ優雅だった。このパーティーに来た女性達はそんな男の姿を見るだけでも嬉しそうだ。
この男がにっこりほほ笑んだりしたら、この部屋にいる女性はどうなるんだろう?
悲鳴を上げて失神する?
つくしは新聞記者として例える言葉の間違いには目をつむるとして思った。
・・歩く姿は百合の花・・・これは男性の例えではないがそんな言葉が似合いそうだ。
でも・・・神様は公平なのかもしれない。
見た目はこんなに素敵な男性なのにあの性格。
世間はそれを知っているのだろうか?
嫌味な男だってことを。
どちらにしてもこの男の恋人・・・
それはあたしではない。
この男は嫌味な男だけど、本当の恋人には優しいのだろう。
多分・・
その本当の恋人を守るために、かりそめの恋人を立てるくらいなのだから。
****
舞台は整えられていた。
道明寺ホールディングスの新社長は祝いを述べに来た人々に挨拶をするとシャンパンの入ったフルートグラスを片手に会場内を巡り始めた。
この会場にいるのは、政財界の大物と呼ばれるような人物ばかりだった。
つくしがかつて取材をしようと試みた人物もいた。
当然ながら相手にもされなかったが。
ホストである道明寺司は久しぶりの日本のはずだが、そんなことは全く感じさせなかった。
それとも今までも定期的に帰国してはその人脈を生かして仕事をこなしてきたのだろうか?
「おい」
と呼ばれたのは自分のことだろうか?
「ぼけっとするな」
「え?あ、あたし?」
つくしはぼんやりとした視線で司を見た。
「これはこれは。道明寺さんのお連れの方は君に夢中なご様子で他のことなど、目にも入っていないようですね?」
つくしはその声にどこかで聞き覚えがあると思い、相手の顔を見て驚いた。
なんと!
現役総理大臣がそこにいるではないか!
そしてその傍にいるのは衆議院議長が!
これで最高裁判所長官がいれば三権の長が揃う。
つくしは眩暈がしそうになった。
「おい、挨拶は」
「は、あひ」
噛んだ。
「は、はい。ま、牧野つくしと申します。よ、よろしくお願い致します」
と頭を下げた。
道明寺司と言えば握手をしたり、話をしたりとパーティー会場の中である程度はくつろいでいるように見えた。
つくしは改めて周りを見渡してみた。
この場に居並ぶのは自分の外見とか努力とかでのし上がったような人物は見当たらないような気がする。
由緒正しい家柄と生まれながらの財力と美貌を備えたような人間ばかりのような気がしてならない。
やはり何をもって自分がこの男のかりそめの恋人に選ばれたのかが益々わからなくなってきた。適当だとは言われてみても、この男の適当の基準がわからない。
つくしは迷った。
だが疑問に思うことは聞いてみるのがブンヤの仕事だ。
「あの・・」
「よっ!司。いよいよおまえも社長か?」
道明寺司の前に立ったつくしの後ろから声がした。
「俺たちの中でおまえが一番最初に家業を背負って立つなんて流石だ」
「やっぱりハーバード出は違うよな」
やはり黒の正装に身を包んだ三人の男性が道明寺司の傍へと近づいて来た。
「おまえはいつも仕事の話ばかりだよな、司?」
「本当だ。たまには色気のある話でも聞きたいよな?」
四人の男性はありきたりの挨拶を交わしながらも親しそうだった。
「で、彼女は?」
司の傍に立つ小柄な女に気がついたのは優しさが感じられる微笑みを浮かべた男性だった。
三人の男性は視線を司からつくしへ移した。
「俺の恋人」
その言葉に男達は三人三様の顔をした。
「悪い、司。この女性が・・?」と信じられない表情。
「へぇ」と簡単な答え。
「なんかどっかで見た」
最後に瞳の色が薄く感情が乏しいと思われるような人物が言った。
「だろうな。ネットで出回った」
「司、この女性は・・公式な恋人なのか?それとも非公式なのか?」
と興味深い聞き方をしたのは女のことなら任せろと言わんばかりの態度の男性だった。
「公式の方だ」

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その新社長の後ろを歩くのは何故か場違いで不似合と思われるあたし。
だがそのことを表だって口にする輩はいなかった。
相手が悪すぎると言うのだろうか?
この男の逆鱗に触れるということは社会から抹殺されるとでも言うのだろうか?
いくらなんでもそれはないでしょう?
だが、つくしは自分のことを囁きあっている声を聞きとることは出来た。
「あの人が・・・道明寺様のお相手なの?」
「まさか・・あの?」
「あんなの単なる間違いでしょ?」
「でも・・」
「なによ!あんなブス!」
「だいたい道明寺様はひとりの女性と継続的な関係なんて続けるわけがないじゃない。この女なんて単なる遊び相手の一人よ!」
つくしはなるほど、この男がこんな女性達から身を守りたいと考えるのも分かるような気がした。
あの騒動が記事になることはなかったがネットの世界ではある程度広がってしまったのは仕方がない。
「道明寺社長、この度は御就任おめでとうございます」
とあちらこちらからかかる声を無視して人々の間を歩く男について行くあたし。
道明寺司が歩けばその行く手は自ずと開かれる。
行く手にいる人々は彼が歩けば目立たないようにそそくさと移動していく。
凄い!
それはまるで磁石が同極の金属を遠ざけて行くようだ。
見ているつくしはある意味面白かった。
道明寺司は俺に近寄るなと言う空気を発散しているのが分かる。
つくしのように客観的に見ていれば、それもまた面白い。
この人物は凄い!!
つくしは彼の後ろを歩きながら記者として益々興味を掻き立てられた。
若くして社長に就任するだけのカリスマ性がある。
黒のタキシード姿はまるで黒ヒョウのようにしなやかだった。
袖口から覗くドレスシャツの白さがアクセントになっていてこれまた美しい。
男の全体的な印象として言えるのは長い脚を持つ黒ヒョウは何かに挑むように挑戦的な態度だ。
きらびやかな服装の人々の間をすり抜ける姿は堂々として、なおかつ優雅だった。このパーティーに来た女性達はそんな男の姿を見るだけでも嬉しそうだ。
この男がにっこりほほ笑んだりしたら、この部屋にいる女性はどうなるんだろう?
悲鳴を上げて失神する?
つくしは新聞記者として例える言葉の間違いには目をつむるとして思った。
・・歩く姿は百合の花・・・これは男性の例えではないがそんな言葉が似合いそうだ。
でも・・・神様は公平なのかもしれない。
見た目はこんなに素敵な男性なのにあの性格。
世間はそれを知っているのだろうか?
嫌味な男だってことを。
どちらにしてもこの男の恋人・・・
それはあたしではない。
この男は嫌味な男だけど、本当の恋人には優しいのだろう。
多分・・
その本当の恋人を守るために、かりそめの恋人を立てるくらいなのだから。
****
舞台は整えられていた。
道明寺ホールディングスの新社長は祝いを述べに来た人々に挨拶をするとシャンパンの入ったフルートグラスを片手に会場内を巡り始めた。
この会場にいるのは、政財界の大物と呼ばれるような人物ばかりだった。
つくしがかつて取材をしようと試みた人物もいた。
当然ながら相手にもされなかったが。
ホストである道明寺司は久しぶりの日本のはずだが、そんなことは全く感じさせなかった。
それとも今までも定期的に帰国してはその人脈を生かして仕事をこなしてきたのだろうか?
「おい」
と呼ばれたのは自分のことだろうか?
「ぼけっとするな」
「え?あ、あたし?」
つくしはぼんやりとした視線で司を見た。
「これはこれは。道明寺さんのお連れの方は君に夢中なご様子で他のことなど、目にも入っていないようですね?」
つくしはその声にどこかで聞き覚えがあると思い、相手の顔を見て驚いた。
なんと!
現役総理大臣がそこにいるではないか!
そしてその傍にいるのは衆議院議長が!
これで最高裁判所長官がいれば三権の長が揃う。
つくしは眩暈がしそうになった。
「おい、挨拶は」
「は、あひ」
噛んだ。
「は、はい。ま、牧野つくしと申します。よ、よろしくお願い致します」
と頭を下げた。
道明寺司と言えば握手をしたり、話をしたりとパーティー会場の中である程度はくつろいでいるように見えた。
つくしは改めて周りを見渡してみた。
この場に居並ぶのは自分の外見とか努力とかでのし上がったような人物は見当たらないような気がする。
由緒正しい家柄と生まれながらの財力と美貌を備えたような人間ばかりのような気がしてならない。
やはり何をもって自分がこの男のかりそめの恋人に選ばれたのかが益々わからなくなってきた。適当だとは言われてみても、この男の適当の基準がわからない。
つくしは迷った。
だが疑問に思うことは聞いてみるのがブンヤの仕事だ。
「あの・・」
「よっ!司。いよいよおまえも社長か?」
道明寺司の前に立ったつくしの後ろから声がした。
「俺たちの中でおまえが一番最初に家業を背負って立つなんて流石だ」
「やっぱりハーバード出は違うよな」
やはり黒の正装に身を包んだ三人の男性が道明寺司の傍へと近づいて来た。
「おまえはいつも仕事の話ばかりだよな、司?」
「本当だ。たまには色気のある話でも聞きたいよな?」
四人の男性はありきたりの挨拶を交わしながらも親しそうだった。
「で、彼女は?」
司の傍に立つ小柄な女に気がついたのは優しさが感じられる微笑みを浮かべた男性だった。
三人の男性は視線を司からつくしへ移した。
「俺の恋人」
その言葉に男達は三人三様の顔をした。
「悪い、司。この女性が・・?」と信じられない表情。
「へぇ」と簡単な答え。
「なんかどっかで見た」
最後に瞳の色が薄く感情が乏しいと思われるような人物が言った。
「だろうな。ネットで出回った」
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と興味深い聞き方をしたのは女のことなら任せろと言わんばかりの態度の男性だった。
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Comment:2
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます

チビ**ママ様
そうなんです。この司はとてもクールです。
クールビューティ―な司という感じでしょうか。
つくしは記者として司に興味はあるのですが、あくまでも取材対象と見ているようです。
先に恋に落ちるのはどちらでしょう(^^)
クールな司とドン臭いつくしの駆け引き・・でしょうか?
このつくしはドン臭いので駆け引きは難しいかもしれませんね。
コメント有難うございました(^^)
そうなんです。この司はとてもクールです。
クールビューティ―な司という感じでしょうか。
つくしは記者として司に興味はあるのですが、あくまでも取材対象と見ているようです。
先に恋に落ちるのはどちらでしょう(^^)
クールな司とドン臭いつくしの駆け引き・・でしょうか?
このつくしはドン臭いので駆け引きは難しいかもしれませんね。
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.03.18 23:05 | 編集
