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2015
08.22

いつか見た風景22

今、何時だ?

薬に誘発された眠りのなか司は夢を見た。
その夢のなかに妻となった牧野の姿があった。
白い手が優しく差し伸べられ、身体を触っている夢。


あれは夢だったのか?

いや、そうじゃない。

ぎこちなく俺のシャツのボタンを外し、ズボンを脱がせようと四苦八苦していた。


そしてその夢には続きがあった。

延々と続く夢。
薄暗い世界をどこか向かって歩いていく少年の司。
周りには誰もおらず、たったひとり広い道を歩いていく。彼は誰もいないその世界に不安を覚え、誰かいないかと辺りを見回すが誰も見当たらない。
暫く行くと、前を歩くひとりの少女を見つける。司はその少女に振り向いてもらいたいと呼びかけるも振り向いてはもらえず、追いかけて行くも追いつけず、やがて少女は、はるか前方の暗闇の中へと消えた。その瞬間、司の身体が凍り付いたようになり動かなくなる。
そして司を呼ぶ声だけが聞えて来た。


・・・・どうみ・・・・


どう・・どうみょう・・・


・・どうみょうじ・・


どうみょうじ!

しっかりして、道明寺!


誰かが俺を呼んでいる。
誰かが俺の身体を揺さぶっている。
幾つかの言葉が頭の中を飛び交い思考が纏まらない。だが頭の中に響く声を無視するわけにはいかない。

「道明寺!大丈夫?しっかりして!夢、夢だから!」

夢?夢なのか?

「道明寺!!」

司はだんだんと覚醒してくるのが分かった。


目を覚ました先にいたのは妻となった女。

「何か・・・あったのか?」

司は一瞬どこにいるのか分からなかった。
つくしは安堵のため息と共に座り込んだ。

「うん、うなされてた」

「・・そうか」

「お水飲む?」
司は上体を起こすとヘッドボードへと身体を預けた。

「夢なんて見る事がないのに・・。薬のせいだな」
汗で湿った髪をかき上げた。

「気分はどう?」
つくしはペットボトルに入った水を司に手渡した。

「ああ、随分と楽になった。汗かいて気持ち悪りぃからシャワー浴びてくる」



***



牧野の指が額にかかった髪の毛を払いのけている気がする。


9年前、俺は牧野に恋をした。
一目惚れだと言ってもいい恋だった。
そしてそれから間もなく俺は暴漢に刺されて生死を彷徨い牧野の記憶だけを失ってしまった。それ以来、俺は失われていた記憶を取り戻すことがなく過ごしてきた。


あの頃意地っ張りだった俺と牧野がいた。


牧野、俺は・・・・


お前と俺の過ごした9年前のことを。

思い出した。





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コメント
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dot 2015.08.22 06:21 | 編集
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dot 2015.08.22 20:31 | 編集
う*ちゃん様
ご訪問有難うございます。
司君、思い出しました!
つくしちゃんとは既に結婚していますので
この先の二人がどのような展開になるのか・・?
甘々ですね?( *´艸`) 
私も期待してます!←え?
アカシアdot 2015.08.22 22:17 | 編集
の*様
いつもご訪問有難うございます。
そうですよね、最初は心配しましたよね。
でも司くん思い出しました。
そうそう、この結婚に関しては滋さんに感謝しなくてはいけませんね。
二人とも彼女の思い切った行動に感謝しなくては!
はい、皆が応援せずにはいられない二人ですから私もこれから二人が幸せになるように
頑張ります!
アカシアdot 2015.08.22 22:31 | 編集
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