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2016
03.16

第一級恋愛罪 12

いつの間に恋人役から婚約者役に役柄が変わったのだろうか?

「社主から道明寺司と経済部の牧野つくしのことを記事にするのは、まかり成らんと言われてね」
「なにしろ社主と彼の父親はとても親しい仲だからね」
「牧野君も心配することはないよ。多分どこの社も同じだと思うから」

局長の言わんとすることは・・・

道明寺ホールディングスの圧力が記事を書くことを差し止めたということか?

「たとえだがフリーのライターが記事を持ち込んだとしてもどこの社も相手にはしないと思うよ?」
「まあ、道明寺司と婚約しているのなら何も心配はいらないよ」




つくしが自宅のマンションに着いたのは、夜10時を回っていた。

確かにかりそめの恋人役を了承したが、いつの間に婚約者に変わったのか?
どちらにしても当人たちは互いに興味を持っているわけではないのだからどうでもいいことだった。

局長は本気であたしとあの男が婚約をしているなんて考えているのだろうか?
だいたいどこに接点があったと思っているのだろうか?
あの男は長年アメリカ暮らしであたしは東京。
どこをどうすれば道明寺ホールディングスの御曹司とあたしとの接点が見つかると言うのだろう。
あの男はあたしとの出会いをどう説明するつもりなんだろう。
まさか出会い系サイトで知り合っただなんてことは言わないと思うが・・
いくらアメリカではオンラインデートサービスが確立されているからと言って、こんなハイスペックな男がそんなことをしているだなんて誰も思わないだろうし、信じないはずだ。
そんなことしたら全米、いや世界中の独身女性からデートの申し込みが殺到するはずだ。

だがなぜ半年間という期限付きでかりそめの恋人が必要になったのだろうか。
でもそんなことはどうでもいいことだ。
つくしに理由は関係がなかった。
こうなったら早く半年が過ぎてくれればいいと言う思いだった。
半年後にあの男について自分の名前入りの記事を書くこと。
それが今のあたしの目標だった。


ちんちくりんと言われたことは何度もあるがドンくさい女と言われることには慣れていなかった。
役を引き受けたからには責任をもってやる!

つくしは恋愛に関するハウツー本を買い入れていた。
あんな男にあたしのことをバカになんてさせないんだから!

『 どうすれば男心がつかめるか 』
『 モテる女になるためには 』
『 お金持ちの彼氏と付き合うには 』
『 恋愛論 』
『 ふたりで過ごす夜のための下着選び 』

最後の本は間違えた。あたしには関係がない本だ。
これだけあればなんとかなるはずだ。
だが、これはあくまでも指南本で机上の空論だと言うことを心しなければ。
恋愛は頭で考えるのではなく心で感じるもの。
そして男という生き物は理性と欲望は別だということは昔の恋愛で学んでいた。
あの時は大惨事になる前に退散した。
だから男とは金輪際付き合わないと決めた。
独身の女が彼氏も作らずにいれば独り身が淋しいとか、切ないとか考えると思ったら大間違いだ。
あたしは仕事が充実していればそれで満足だ。


道明寺司がどんなタイプの男性なのか、だいたいのことは分かった。
とにかく嫌な男だった。嫌なと言うよりも嫌味な男だ。
典型的な自己中心的な男に見えた。
つくしは思い出したかのように鞄の底を探っていた。
出て来たのは先輩カメラマンが撮影したつくしとあの男の見つめ合う写真だった。
この男に抱きしめてもらえるなんて孫の代まで自慢が出来るじゃないかと言われた・・
つくしは手元の写真をじっと見た。

端正な横顔だ。堂々としていて男らしい。
男らしいのにまつ毛が長い。
鼻筋も通っていて、唇の形もいい。
髪の毛はくるくるしてるけど、問答無用でかっこいい男とはこう言う男のことを言うのだろう。一度みたら忘れられない男ってのはこんな男のことだと納得していた。
見た目は非の打ち所がないのにあの性格なのはもったいない。

あたしだって他人を見る目はあるはずだ。
こう見えても・・こう見えても・・
ダメだ。
あたしの恋愛経験値は限りなく低い。
新社長就任祝いのお披露目とやらに駆り出されるまでに少しでも女としての体裁でも整えておかないと、またあの男にドンくさい女だなんて言われるのだけは嫌だった。



***


つくしが道明寺司と会ってから1週間が経っていた。
あの男が言ったとおり二人についての話題は1週間と持たなかった。
余程道明寺ホールディングスの圧力が強かったのか、あの騒動なんてなかったようだ。
やはり各社道明寺系列の会社の広告が占める割合が大きいのだろうか。
どちらにしても、政財界を騒がすほどの話題では無かったと言うことだろう。
それもそうだ。単なる御曹司の交際相手の話であって興味のない人間にすればどうでもいいことだ。
だが東証一部上場企業で20代の息子が社長になるなんてことは、なかなかない。
いや。過去にないことも無かった。

とにかく、あの男にドンくさい女と言われないようにすることと、半年後を楽しみに
つくしは家を出た。
よし。
何がなんでも半年間無事に勤め上げてこの男の独占インタビュー記事を書いてやる!







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