FC2ブログ
2016
03.09

第一級恋愛罪 8

「西田、こいつ今日から俺の恋人になったから」
「そうですか。承知いたしました」
前方の座席から再び後ろを振り返るメガネの男性。

「ちょっ・・ちょっと待って!待って下さい!いったいどういう・・」
「さっきはいって返事したよな?」
「ええ・・確かに・・」
「でも意味が違います!」つくしはきっぱりと言った。
いきなり恋人になれ、今日から恋人になったから。
何よそれ!


「牧野、おまえ記者になって何年だ?」
「さ、三年生です・・」
「なんだそりゃ?」
「社長、記者の新人時代は三年までの間はそう言う言い方もします」
「ですから牧野さんは三年目ということでよろしいですか?」
「は、はいそうです」

「西田、例の件だけどこの女で行くから」
「承知いたしました」
「あの、あの、おっしゃっている意味がわからないんですが・・」

つくしは司とメガネの男のどちらでもいいから説明して欲しかった。

「手短に説明しますと」と切り出したのはメガネの男だった。
「牧野様に少しご協力をお願いしたいと思っています」
「き、協力ですか?」つくしは警戒心からか声のトーンが落ちた。

まさかうちの社が道明寺ホールディングスに対して知り得た不都合な真実を記事にするなとか、闇に放り去れとか、捏造した記事を書けとかそんなことじゃないでしょうね!
冗談じゃない。あたしにそんなこと出来ません!
まだまだあたしは記者として駆け出しだけど、ね、捏造記事とかそんなこと・・

「牧野様、聞いて頂いてもよろしいですか?捏造記事を書けとかそんなことをお願いしているわけではございませんから」
「き、聞こえてました?」
「ええ。はっきりと」
つくしは頬を火照らせた。

「お願いしたいのは、かりそめの恋人役です」
「か、かりそめの恋人?」
「そうです。司様は今までアメリカでの生活でしたので日本のマスコミによる付き纏いも酷くはありませんでした。ですが帰国され生活の基盤を日本に移すことになり業務も多忙になりますが、私生活の面での煩わしさも色々と起きてきます」
「この帰国で女性達の騒動が目に見えるようです。すでにその騒動は始まったようですが」
つくしは何が言いたいのかいまひとつ理解出来ないでいた。
「な、なんなんですか?その・・騒動って・・」
「どうぞ、ご覧ください」


再び差し出されたタブレット端末の記事はどんどん更新され、いつの間にか道明寺司の帰国の目的のひとつは空港で熱い抱擁を交わしていたMさんとの結婚の為だとまで書かれていた。
Mさん、牧野さん?あ、あたし?
タップしたりスワイプしたりするたびにつくしの写真がどんどん現れた。

なによこれ!これじゃあ見る人が見ればあたしだってすぐにわかるじゃない!

男に抱きとめられて見つめ合うように見える写真・・・
まるでつくしがにっこりと笑って男を見あげるように見える写真・・・
写真として切り取られた一瞬は真実を歪めている。
世の中の写真週刊誌はこんな風にして真実が歪められて見せているものもあるんだとつくしは考えさせられた。



『 道明寺司氏とMさん遠距離恋愛を実らせる 』

冗談じゃない!
こんなの事実じゃない!本当のことを話せば・・・

『 話せば分かる 』

そう、犬養毅元首相の言葉だ。暗殺されちゃったけど・・
なに?まさかこのお願いとやらを断って真実を話せばあたしは道明寺ホールディングスに抹殺されるとか?

「あの・・」
「西田と申します」
「に、西田さん。これ・・」
つくしは震える指先で画面を指していた。


「いいんじゃねぇの?」
隣の男は腕をうえに伸ばしてあくびをした。
首を回し、肩を回しながら張りつめた筋肉を長旅の疲れからほぐそうとしていた。
髪の中に手を差し入れると荒っぽくかき上げ、ネクタイを緩めにかかっていた。
男は髭も気になるのか指先で顎に触れていた。
「西田、シェーバー」
「はい。ただいま」

ちょっと!のん気に髭なんか剃らないでよ!
「ちょ、ちょっと!何がいいのか理解出来ません!」
「そ、それにあなた達あたしのことなんて何も知らないじゃないですか!」
「し、知らない人間にそんな突拍子もないことを頼むなんておかしいとは思わないんですか?」
「あたしは・・こ、恋人もいないのにけ、結婚だなんてそんな馬鹿なこと・・」
それも道明寺司と結婚?
つくしはそのことに気づくと同時に慌てた。

「ご心配なく。結婚ではございません。あくまでもかりそめの恋人ですから」
「もうすでに牧野様のことは分かりましたから」
「それにこれはひとつの取引だと思って頂ければと思います」

「と、取引ですか?」つくしはごくりと唾を飲み込んだ。
「そうです」
「いったい何の取引を・・」
つくしは西田が交換条件を持ち出して来たことに驚いた。
それはまるで以前から決められていたことのように感じられた。
そしていかにもつくしがあざとい女だと思っているかのようだった。

「無事その役割を務めて頂けたら、インタビューの独占をお約束しましょう」

道明寺司の独占インタビュー!!嘘みたい!

「ええと・・あの」つくしは咳払いをした。
「で、でもその・・・かりそめの恋人ってどのくらいの期間を・・」
「そうですね・・」西田は司を見た。
「そうだな、半年ってとこか」髭を剃り終えた男が答えた。
「は、半年間・・」
大事なことを聞かなくては。
「それには・・身体の関係は・・・」
「もちろん含まれません」メタルフレームのメガネ男は言い切った。


その言葉を聞いて安心した。
つくしは独占インタビューをさせてくれると言う西田の言葉に自分の夢が叶う思いがした。
一生に一度の大きなチャンスなのかもしれない。
財界の若きプリンス、道明寺司の独占インタビュー。
記者として自分の署名入りの記事を書きたい。そんな思いが胸の中に渦巻いていた。
「これからの半年間、司様と一緒に過ごして頂く機会も増えると思いますので、牧野様にはそれなりのご対応をお願い致します。それから当然ですが、この半年間に知り得た情報を他言することは出来ません」
「秘密保持契約の書類にご署名を頂きたい」とすでに決定事項のような口ぶりだった。

「す、少し考える時間を頂けませんか?」
あまりにも物事の進み具合が早すぎる。急いては事を仕損じると言うではないか。
「1分だ。1分だけだ。こんな話考える理由があるかよ?」司が眉根を寄せた。
「仮にも俺の恋人役が出来て、半年すぎりゃ俺の独占インタビューだろ?おまえが上手くやってくれるんなら金も払うか?」
「司様、それは・・」
「それじゃあまるで愛人契約か?」ニヤリと笑われた。


あ、愛人契約だなんてとんでもない。
つくしは混乱した頭をすっきりとさせようとした。
喉が渇いた。何か飲み物が欲しい。
つくしは隣に座る男と西田を交互に見た。
道明寺司はいかにもセレブリティらしい風貌と考え方の人物に思えた。
風貌は親から、いや先祖から受け継いだものだからどうしようもないが、多分だが何に対しても金を払えばいいと考えているところに金持ちの傲慢さを感じずにはいられなかった。
この男をこんなに近くでまじまじと見る人間はそうはいないだろう。
もしこれから半年間彼の傍でかりそめの恋人役を演じるなら、もっとこの人物について知る事が出来る。

つくしは頷いた。

「いいわ!引き受けます」
「そのかわり半年後の独占インタビューの件、よろしくお願いします」








にほんブログ村

人気ブログランキングへ

応援有難うございます。
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.03.09 07:04 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.03.09 21:06 | 編集
き*ん!様
はじめまして。
こちらこそいつもお読み頂き有難うございます(^^)
拙宅は王道つかつく話ではないのでイメージがかなり壊れた二人のお話もありますが、お楽しみ頂ければ嬉しいです。
褒めて頂くほどのお話ではありませんが、数のひとつとしてでもお楽しみ下さいませ(^^)
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.03.10 00:12 | 編集
as***na様
半年間の間に何が起こるのか。
永遠を勝ち取ることが出来るのかどうか・・(笑)
いえ、勝ち取らなければ話が終わりませんね。
のん気に髭をそる司ですが、そのうちにそんな余裕もなくなる日が来るかと思われます。
まだ始まったばかりの二人ですからね。
どうなることやら・・と言う感じでしょうか。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.03.10 00:17 | 編集
さ*り様
まだまだこれからですよ、この二人は!(笑)
今回のつくしちゃんは新聞記者ですのでよく喋ります。
常に頭の中で何かを考えているようです。
どんなふうに好きになっていくのでしょうねぇ←え?
えっ?何度も読み返さないで下さい(/ω\)恥ずかしいです。
さらさら~っと流して読んで下さいませ。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.03.10 00:26 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top