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2016
03.03

第一級恋愛罪 4

つくしは踵の高い靴に気を取られながらもなんとかバランスを取っていた。
まっすぐに立ち男達の集団がこちらへ近づいてくるのを待っていた。
どんどん近づいてくる姿に思わず見とれそうになったが、そんな場合ではない。
あたしはこの男からなんとしてもコメントをもらわなければならない。

「どうみゅ・・」噛んだ。

「ど、道明寺さん!道明寺さん!この度の帰国は新社長就任の為とお伺いしていますが
今後の御社の方針は以前とは変わると言うことでしょうか!」

目が合った。
少なくともつくしはそう思った。
無表情に見える彫の深い顔が確かにつくしを見た。
だが、それはほんの一瞬のことでもしかしたら自分の錯覚なのかもしれなかった。
スッと視線を外されつくしの前を通り過ぎようとしていた。

いけない!

つい男に目を奪われていたがこのまま何のコメントも取れないなんて悔しい。
あたしったらなんてバカなんだろう。
いくらかっこいいからと言ってぼけっと見惚れている場合じゃない。
前の恋愛でわかってるはずなのに!
男は身の破滅だってわかってるはず。男に現を抜かしている場合じゃないでしょ、つくし!
相手は取材対象者よ!

はじめてひとりで取材に出させてもらえたのだから期待に答えなくては。
このまま手ぶらで、何のコメントももらえないままでは社になんて帰れない!
つくしはなんとか自分に注目してもらおうとしていた。
問題はこの男の気をひくための気が利いた言葉を探したが見つからなかったことだ。
取材に詰めかけているのはテレビの女性レポーターもいて皆若くてきれいだ。
やっぱりあたしにお色気作戦は無理だと納得した。

でも諦めるにはまだ早い。
このロビーは広い。多分この男を迎えに来た車はあたし達が降りた場所のあたりにいるはずだ。だとすれば3分くらいは時間があるはずだ。いくら脚が長いからと言ってもそんなに早くは歩けるはずがない。だが2分が勝負と見た。

「道明寺さん待って下さい!ひと言だけお願いします!」

と、右手のICレコーダーを差し出し男の方へ一歩を踏み出したとき、そこに落ちていたのはどこかのバカが残したチューインガムらしきものだったのかもしれない。
つくしの靴の踵はその粘着質の食べ物に一瞬だが引き留められていた。
その感覚に何かを求め手を伸ばし前のめりになった瞬間、目の前の男の腕を掴んでいた。
右手のICレコーダーは音を立てて床に転がり、左手の名刺入れは放物線を描くように宙を飛んで行き、つくしの名刺がそこらかしこに散らばった。

つくしの片方の靴は床に残されたままで身体だけが男の腕の中へと収まっていた。
それもしっかりと抱き留められていた。
それは一瞬の出来事で自分の身にいったい何が起きているなどと考える余裕は無かった。


し、しまった・・・
失態だ!
やっぱりあんな踵の高い靴なんて履いてくるんじゃなかった。
いくら店員がお勧めだ、今ニューヨークで話題のデザイナーの靴だと言われても、もう二度と買わない。確かにこの仕事は見た目も大切だけど、清潔感が保てるならそれでいい。
もう情けなくてついうめき声が口から漏れそうになっていた。
そして突然、自分が今置かれている状況に気づいたつくしはうろたえていた。

「す、すみません!」ひと呼吸おいてつくしは慌てて謝罪した。


司は思わず女を受け止めたままひと言も口を開かなかった。
小さなかたまりが自分の腕のなかに飛び込んできた。
見下ろせば女が自分のスーツの袖を掴んで司を見あげていた。

司は自分の腕の中に飛び込んできた女をすばやく品定めしていた。
いつも自分の回りにいる女のタイプとは違った。
黒髪で細身・・胸は・・小ぶりだな・・Bカップか?いやAか?
まあ、俺の手に収まる程度でも問題はない。
デカい方がいいとは思うが、感度も重要だ。

一瞬、その状況に何が起きたのかと立ち尽くしていた群衆はわっとつくしの周りを取り囲んだ。
いや、厳密にはつくしの周りではなく、つくしと男の周りだ。

空港の到着ロビーで抱き合い見つめ合う男女。それはどう見ても長い間、離れ離れになっていた男と女が懐かしさのあまり抱擁しているように見えた。
さっきまでそこに存在した目に見えない規制線はあっという間に消えて無くなっていた。

ふたりの周りでは眩しいほど沢山のフラッシュがたかれていた。
「道明寺さん、その方はどなたですか?」
「ご関係は?」
「恋人との再会ですか?」

司は何を言ってるんだお前はという顔で声のする方を見た。
が、あまりにも多くのカメラのフラッシュの点滅にその声の主は見えず眩しさに目を細めただけだった。
そこでようやく司は今の状況に気がついた。



空港のロビーで女を抱きしめて沢山のマスコミに囲まれている。



拷問にも等しいと思われる民間機を降りた矢先の出来事。
俺は時差ボケか?
民間機なんて乗ったもんだから頭がどうかしてるのか?
抱き留めた司の手は無意識に女の尻へと降ろされた。
その瞬間腕の中の女の身体がびくんと反応した。









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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.03.03 10:21 | 編集
かず**ん様
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
そしていつもお読み頂きありがとうございます。
つくしちゃんの声、今回はダダ漏れですね。
記者と言う仕事柄考えることが沢山あるそうです。
ドジって対面、らしかったですか?(笑)
今回の司は何気に女の品定めをしてましたね。
胸の大きさを確かめつつ、つくしのお尻に手を(笑)
あまりエロくならないように気をつけたいと思いますが、コメディ風味ですので楽しんで頂ければと思っています。
コメント有難うございました(^^)


アカシアdot 2016.03.04 21:40 | 編集
ま**ん様
えっ?(笑)
チューインガム可笑しかったですか?
うーん(笑)とにかく笑って頂けて良かったです。
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2016.03.04 21:49 | 編集
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