fc2ブログ
2016
02.22

恋の予感は突然に 50

結婚してからはゴシップ誌で自分の姿を見ることがないようにといつも気を付けてきたがここまで堂々としているとかえって何でもないのかもしれない。
世間は他人の秘密を知りたがるものだ。だが秘密でもなんでもなければ誰も興味など持たない。

道明寺家の人間以外で二人が結婚していることを知っている人間はいないはずだ。
なぜならこの秘密は大きすぎるから。
誰かに話せばきっと世間に知られてしまう。
秘密を知る人間は少なければ少ない程いい。
道明寺司が結婚したという事実は大きなニュースになる。
つまりはそのニュースは誘惑が大きいと言うことだ。その事実を知る人間は新聞社や雑誌社から誘惑される。人は自分だけの秘密と言うものをなぜか秘密にしたがらない。
なぜかしゃべりたがる。

『 親しい友人によると 』 とか
『 とある事情筋 』 とか・・

誰だよ事情筋って!

司はつくしを両親に会わせることによって世間に自分たちの結婚を公表しようと考えていた。
もうそろそろあいつのお腹も目立ってくるころだ。
研究所で根も葉も無いような噂の的になることは決していいことではない。



つくしはあたふたとした印象を与えないように落ち着いてと深呼吸した。
すべてにおいて順序が逆だと怒られそうな気がする。
妊娠、結婚、両親への挨拶・・・
まさにすべての順序が逆だった。
世間の噂に聞く道明寺夫妻とはどんな人物なのか・・
こわばってしまう顔をなんとか作り笑いでごまかそうとしていたが目だけは笑うことが出来なかった。


つくしは真正面に座る二人の顔をひたすら見つめていた。
今、自分の目の前にいるのは名家に生まれた者が持つ独特の雰囲気をまとった夫妻だった。
司の両親は二人とも冷淡で子供のことなど顧みなかったと聞いていた。
母親にも父親にも見放されて育った子供時代。
父親不在で育ったため自分は親になる自信がないなど聞かされていた手前、司の父親はどんな人物なのだろうかと想像していた。
せめて事前に写真でも見ておけばよかった。
世界的な企業のトップともなれば写真など探せばいくらでも見つかったはずだから。
だが、どうやら写真は必要がなかったようだ。
いつも自分が目の当たりにしているのと同じ顔の人物がそこにいた。



司の父親は息子と同じように魅力的な男性だった。
とても34歳にもなる息子がいるようには見えなかった。
あらためて近くでまじまじと見ると息子にそっくりでまるで息子がそのまま年をとったようだ。
くるくるの髪の毛はこめかみに多少の白髪が混じるもののかっこ良すぎる!
挑むような視線といい、彫が深く端正な顔立ちなんてまるで3Dプリンターでコピーしたみたい。
といってもコピーは息子の方だけど。

DNAって恐ろしい・・・
人間としての進化の過程でこんなにもそっくりな遺伝子の持ち主なんているのかと驚いた。
是非研究してみたい。
二人で産婦人科を受診しつくしのお腹の中の子供は男の子だとわかっていた。
もしかして、あたしのお腹のなかにいる子供もこんな感じになるの?
髪の毛はやっぱりくるくるしているのだろうか?




そんなことを考えていたら、相手もつくしのことを遠慮なく見つめてきていた。
つくしは自分がまじまじと見つめていることに気が付いて失礼なことをしたと我に返った。

「あの、はじめまして。牧野つくしです」
こわばった顔にこわばった微笑みを張り付けたままで言った。
「牧野さん?あなた司と結婚したんですよね?」
挨拶もまわりくどい言い方も一切なくいきなり事実だけを述べられた。
「え?は、はい。そうです」
「ならなぜ牧野と名乗るんですか?」
その言葉につくしは慌てていた。
「え、あ、あの・・・」
「お、おやじ・・ま、まきのは・・こいつは仕事で牧野を名乗ってるからついクセが・・」
「司、おまえは黙ってなさい」
「わたしはこちらの女性と話をしているんだ。口を出すな」と一喝した。
世界的企業のトップともなると自分の息子に対しての言葉にも容赦はなかった。
時計の秒針の音まで聞こえそうなくらいの静けさが流れるようななか、司の両親は互いの視線を交わしていた。


「つくしさん?」父親の隣に座す女性が話をはじめた。
その女性は黒い髪をきっちりと結い富裕層の女性が好むような上品で優雅な装飾品を身につけているのが見て取れた。歳はいくつ位なのだろう。
どう見ても50歳くらいにしか見えなかった。
目元に多少の皺があったとしてもその皺が決して彼女の美貌を損なっているというわけではなかった。
そしてその美しい面差しは娘である椿に受け継がれていた。
「は、はい!」
「司がわたくしたちのことをどのようにあなたに話したのか見当はついています」
と思いもよらない話題につくしは戸惑った。

それはつくしが予想していた言葉とは違っていたからだ。
名家の御曹司に庶民の娘だなんて格式が違い過ぎてお粗末すぎる。
別れてくれ?別れろ?
そんな言葉を口にされることを予想していたが、何やら話の方向性が違っているように思われた。
つくしは自分の懸念が言葉に現れないようにと言葉を継いだ。
「あ、あのご両親様ともに会社を経営されていると言うことでいつもお忙しくされているとお伺いしています」
「ご挨拶が遅くなり大変申し訳ございません」
つくしはそこまで言うと固唾をのんで息を殺した。
いい歳をしてまともに挨拶も出来ないような人間だなんて思われたくなかった。

「いいのよ。そんなに堅苦しく話さなくても」
「どうせ司のことです。また例の話をしたのでしょうね・・」
司の母親はそこまで言うと指に嵌められた大ぶりな石と同じ輝きを持つイヤリングに手をやっていた。
そして呆れたように司を見ていた。








にほんブログ村

人気ブログランキングへ

応援有難うございます。
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.02.22 07:15 | 編集
た*き様
ブッシュさん、親子で本当によく似ていらっしゃいますね。
親子二代で大統領だなんてかの国の世襲のようですが
さすがに三人目の大統領は実現しないようですね。
あんなに似ている親子もいると言うことで
道明寺父子もそっくりさんと言うこともあり得ますよね。
つくしちゃん是非研究したいと言っていますがどうでしょうか(笑)
コメント有難うございました(^^)

アカシアdot 2016.02.24 23:48 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top