俺は牧野を、妻となったこの女を欲しいと思った。
この女は俺のものだ。
この身体はもちろん、考えも、吐息もすべて欲しい。
類との関係をこいつの口から聞きたい。
つくしはまさかこんな事を聞かれるとは思わなかった。
類との関係について聞かれ、答えを探すこともないとばかり、司の顔を仰ぎ見た。
「類は高校の先輩で、関係もなにも・・」
つくしは言葉に詰まる。
司の態度はいかにも納得がいかないと言わんばかりの態度だ。
「なんで類の車で帰って来た?」
「なんでって・・」
「類と二人っきりで食事もしたらしいな」
「だってせっかく・・」
つくしは言葉を継ぐことが出来ない状況に陥った。
司にキスをされているからだ。事態の急展開に、つくしはなすすべもない。
昼間の執務室で突然キスをされることは、全くの予想外だ。
司は我慢が出来なかった。
つくしを抱き寄せ、両手で顔を挟み、唇を引き寄せていた。
優しくなんて出来るわけがない。息遣いが荒くなり、押し付けた身体が反応する。
特別色っぽい女でもないというのに、壊れそうなくらい華奢な身体を無視することが出来ない。
司はつくしを床から抱き上げ、次の瞬間にはソファの上に押し付けていた。
「つくし――」
コンコン
執務室のドアをノックする音に2人ともそちらを向いた。
「無視しろ」
司は体重を乗せかける。
そのとき、カチリと音がし、ドアが開き秘書の男が入ってきた。
「勝手に入ってくるな!」
凄みのある低い声が返ってくる。
「申し訳ございません。何度もノックをしたのですが・・・」
と、自分の上司にあたる男とその妻を見る秘書。
張りつめた空気が二人の周りにある。
「見て分かるだろ、西田。取り込み中だ」
司はつくしの両手をソファに押さえつけ、身体の上に乗っている。
「ど、道明寺・・」
小さな声でいさめるように囁いた。
「離して・・」
つくしは気まずさから顔が赤くなっている。
「お願い・・」
なんとか司の身体から逃れようとしていたつくしは、司の肩をちょっと押しやった。
司は躊躇ったが、ゆくりとした動きで身体を起こす。
つくしは穴があったら入りたかった。
これほど気恥ずかしい思いをしたことがなかったからだ。
秘書は何も見ていないように上司に近づくと、何かを手渡していた。
つくしはその隙にお化粧を直してくるからと言って部屋を出ようとしたが、一歩も進まないうちに司に腕を掴まれた。
「迷子になるなよ」
びっくりした・・。
つくしは化粧室で鏡を見た。
頬はほんのりと赤く染まり、唇は道明寺のキスを受け少し腫れている。
あのとき、西田さんが来なければ。
そう思うと胸の鼓動が収まらない。
ああ・・・。
つくしは両手で自らの身体を抱きしめた。
あのとき、道明寺の体の重さと温もりがなくなった途端、淋しさを感じていた。
鏡の向こう側からこちらを見返す女は、あたしが知っていた女じゃない。
道明寺・・
あんたはあたしの事をどう思っているの?
あたしはこうなることを自ら望んで彼の傍にいる。
でもベッドを共にしていても愛の言葉をささやく事はない。
つくしはそっと目を閉じた。
あたしはあんたの心も欲しい。

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この女は俺のものだ。
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「類は高校の先輩で、関係もなにも・・」
つくしは言葉に詰まる。
司の態度はいかにも納得がいかないと言わんばかりの態度だ。
「なんで類の車で帰って来た?」
「なんでって・・」
「類と二人っきりで食事もしたらしいな」
「だってせっかく・・」
つくしは言葉を継ぐことが出来ない状況に陥った。
司にキスをされているからだ。事態の急展開に、つくしはなすすべもない。
昼間の執務室で突然キスをされることは、全くの予想外だ。
司は我慢が出来なかった。
つくしを抱き寄せ、両手で顔を挟み、唇を引き寄せていた。
優しくなんて出来るわけがない。息遣いが荒くなり、押し付けた身体が反応する。
特別色っぽい女でもないというのに、壊れそうなくらい華奢な身体を無視することが出来ない。
司はつくしを床から抱き上げ、次の瞬間にはソファの上に押し付けていた。
「つくし――」
コンコン
執務室のドアをノックする音に2人ともそちらを向いた。
「無視しろ」
司は体重を乗せかける。
そのとき、カチリと音がし、ドアが開き秘書の男が入ってきた。
「勝手に入ってくるな!」
凄みのある低い声が返ってくる。
「申し訳ございません。何度もノックをしたのですが・・・」
と、自分の上司にあたる男とその妻を見る秘書。
張りつめた空気が二人の周りにある。
「見て分かるだろ、西田。取り込み中だ」
司はつくしの両手をソファに押さえつけ、身体の上に乗っている。
「ど、道明寺・・」
小さな声でいさめるように囁いた。
「離して・・」
つくしは気まずさから顔が赤くなっている。
「お願い・・」
なんとか司の身体から逃れようとしていたつくしは、司の肩をちょっと押しやった。
司は躊躇ったが、ゆくりとした動きで身体を起こす。
つくしは穴があったら入りたかった。
これほど気恥ずかしい思いをしたことがなかったからだ。
秘書は何も見ていないように上司に近づくと、何かを手渡していた。
つくしはその隙にお化粧を直してくるからと言って部屋を出ようとしたが、一歩も進まないうちに司に腕を掴まれた。
「迷子になるなよ」
びっくりした・・。
つくしは化粧室で鏡を見た。
頬はほんのりと赤く染まり、唇は道明寺のキスを受け少し腫れている。
あのとき、西田さんが来なければ。
そう思うと胸の鼓動が収まらない。
ああ・・・。
つくしは両手で自らの身体を抱きしめた。
あのとき、道明寺の体の重さと温もりがなくなった途端、淋しさを感じていた。
鏡の向こう側からこちらを見返す女は、あたしが知っていた女じゃない。
道明寺・・
あんたはあたしの事をどう思っているの?
あたしはこうなることを自ら望んで彼の傍にいる。
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