まさかこの男のことでこんなにも頭がいっぱいになるなんてことは考えても見なかった。
子供の生物学的な父親だと割り切っていたけど、知れば知るほど好きになって来た。
あたし達はいきなり夫婦になったから、それ以前の関係が構築されていないからこれから二人でその関係を築いていこうとしていた。
「道明寺に似たらハンサムな子供で、あたしに似たら頭がいい子供だと思う・・」
「そんなもん、両方だったらどうすんだよ?」
「え?ハンサムで頭がいい子?そんなの・・」
あり得る。
この男もあながちバカじゃなかったんだから決して無いとは言えなかった。
どうしよう・・もしそんなことになったらこの子の将来は・・
でも大丈夫よ。あたしみたいな人生は歩ませないから。
あたしがこの子の傍にいて育てるんだから。
勉強だけの人生になんてさせないから。
そのとき二人の前にスポーツタイプの赤いクーペが止まり、ひとりの女性が運転席から颯爽と降りてきた。
その態度は堂々として自信ありげに見えた。
見えたのではない。車を降りてこちらへと歩いてくる態度は自信に満ちていた。
背の高いその女性は長く黒い髪をさっと背中へと払うとヒールの音を響かせながらこちらへと歩いて来た。
「 司!」
その呼びかけにつくしは司の姉の椿さんかと思ったが違っていた。
椿さんよりも随分と若い・・・多分自分よりも若い女性だ。
司はまずいと思った。
そこに現れたのは元恋人だった。
俺の子供が欲しい・・・と言いだしたから別れた女だった。
なんだってそんな女とこんな所で出くわさなきゃなんねぇ?
この女とはきっぱりと別れたつもりだ。
司はなぜか急に息苦しさを感じてきた。
あたりを見回してみても隠れるとこなどなく、迎えの車もまだ来そうになかった。
まさかつくしを置いて逃げるわけにも行かず、司はその場に立ち止まって女が近寄ってくるのを待つしかなかった。
別に突然別れたつもりは無かったし、きちんとけじめをつけて別れたつもりだが・・
仕方ない・・ここは俺が殴られるなり怒鳴られるなり・・
司は覚悟を決めてその場に立っていた。
つくしは滋から聞いていた。
司は女にモテる男だから女の扱いには慣れてると思うわよ?
だからつくしが初めてでもうまくやってくれるわよ?
つくしもはじめはプロの恋人だと思ったくらいの男だから女関係が無かったなんてことは考えたこともなかったし、どんな女とつき合ってたとか興味もなかった。
だが世間では女ったらしだなんて言われていても、その証拠を見たわけでは無かった。
しかしいま目の前で繰り広げられている状況をどう理解すればいいのだろう。
つくしはこれまでに見たこともないような美しい女性を目の前にしていた。
「司!会いたかったわ」
と言って女が司に抱きついてきた。
「な、なんだ?」
司は殴られるか罵倒されるかと思っていただけに言葉が出なかった。
「寂しかったわ。久しぶり!元気だった?」
「酷いじゃない!全然電話にも出てくれないなんて!」
女は真っ赤に塗られた唇を尖らせて言ってきた。
そしてむせ返るような香水の香りが司の回りに漂っている。
「司はあのときあたしが子供が欲しいだなんて言ったから別れようって言ったのよね?」
「あたし、あれは一時の感情の迷いだったのよ・・だからついあんなこと言っちゃって・・司は子供なんて欲しくないものね・・」
「ねえ、だから・・あたし二度とそんなこと言わないからまたやり直しましょ?」
司は自分の隣・・それも少し距離を置いて立つつくしが気になっていた。
ま、まずい・・・
とっくに別れたと思っていたらこの女は俺と別れるつもりがないってことか?
司の頭の中はそんな思いでいっぱいになっていた。
「わ、悪いが俺にはそんなつもりはない」
司はそう言いながら抱きついてきた女の腕を慌てて引き剥がした。
隣を見るのが恐ろしかったが見ないわけにはいかなかった。
思い込みかもしれないがあのでかい瞳が嫌悪に曇った。
なんか・・雲行きが怪しくなってきたのか?
どろどろとした空気が隣から漂って来たように感じられる。
「どうしてよ!もう他につき合ってる女がいるの?」
なんて答えたらいいんだ?司はちらりと隣を見やった。
おまえとの結婚は秘密なんだろ?
『 結婚していることは秘密 』
つくしにそう言われている手前迂闊には言い出せなかった。
「悪いが、二人の関係はもう終わってる」
今はそれしか言えなかった。
隣にいる女と結婚していると言いたかったが言えないでいた。
つくしはといえば、とりすました表情でまるで赤の他人のようなふりをして隣に佇んでいた。
どうしたらいい?こいつ・・何を考えてるんだ?
「そんなこと言わないでよ!あたしたちの身体の相性がどれだけ良かったのか覚えているでしょ?」
「ねえ司は今でもあたしのこと欲しいんじゃないの?」
女はそう言って司の腕に手をかけようとした。
「おい。しつこい女だな!いい加減にしねぇとぶっ飛ばすぞ?てめぇのこの手首をへし折ってやろうか!」
司は自分の腕に手の伸ばして来た女の手首を掴むとぎりぎりと締めつけていた。
「その顔に傷を作りたくないならさっさと失せろ!」
この際女をさっさと追い払えるならどんな悪態でもつくつもりだった。
「なによっ!あたしの身体だけが目当てだったの?」
「ひどい男!最低っ!」
女はそんな捨て台詞を残すと車で走り去った。
司は自分の隣に立つ女を見るのが怖かった。
こんな時はなんて言ったらいいんだ?
昔の女と今の女が鉢合わせ・・・
いや今の女じゃない。妻だ!
人生のなかでこんな状況に追い込まれたことは無かった。
神に誓ってもいい。俺はあの女とはきれいさっぱりと別れている。
あのクソ女!!
なあ、俺はおまえのことを真剣に思っている。
「な、なあ・・聞いてくれ・・」
そのときひとりの女性がつくしの隣に立つ男めがけて突進してきた。
「つかさ~!」
背が高くすらりとした長い脚を持つ黒髪の女性。
おい!マジかよ!!
次に現れたのは・・・さっきの女の前に付き合っていた女。
勘弁してくれ!
なんなんだよこのショッピングモールは!
「会いたかった~!」
そう言ってまた抱きつかれていた。

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「そんなもん、両方だったらどうすんだよ?」
「え?ハンサムで頭がいい子?そんなの・・」
あり得る。
この男もあながちバカじゃなかったんだから決して無いとは言えなかった。
どうしよう・・もしそんなことになったらこの子の将来は・・
でも大丈夫よ。あたしみたいな人生は歩ませないから。
あたしがこの子の傍にいて育てるんだから。
勉強だけの人生になんてさせないから。
そのとき二人の前にスポーツタイプの赤いクーペが止まり、ひとりの女性が運転席から颯爽と降りてきた。
その態度は堂々として自信ありげに見えた。
見えたのではない。車を降りてこちらへと歩いてくる態度は自信に満ちていた。
背の高いその女性は長く黒い髪をさっと背中へと払うとヒールの音を響かせながらこちらへと歩いて来た。
「 司!」
その呼びかけにつくしは司の姉の椿さんかと思ったが違っていた。
椿さんよりも随分と若い・・・多分自分よりも若い女性だ。
司はまずいと思った。
そこに現れたのは元恋人だった。
俺の子供が欲しい・・・と言いだしたから別れた女だった。
なんだってそんな女とこんな所で出くわさなきゃなんねぇ?
この女とはきっぱりと別れたつもりだ。
司はなぜか急に息苦しさを感じてきた。
あたりを見回してみても隠れるとこなどなく、迎えの車もまだ来そうになかった。
まさかつくしを置いて逃げるわけにも行かず、司はその場に立ち止まって女が近寄ってくるのを待つしかなかった。
別に突然別れたつもりは無かったし、きちんとけじめをつけて別れたつもりだが・・
仕方ない・・ここは俺が殴られるなり怒鳴られるなり・・
司は覚悟を決めてその場に立っていた。
つくしは滋から聞いていた。
司は女にモテる男だから女の扱いには慣れてると思うわよ?
だからつくしが初めてでもうまくやってくれるわよ?
つくしもはじめはプロの恋人だと思ったくらいの男だから女関係が無かったなんてことは考えたこともなかったし、どんな女とつき合ってたとか興味もなかった。
だが世間では女ったらしだなんて言われていても、その証拠を見たわけでは無かった。
しかしいま目の前で繰り広げられている状況をどう理解すればいいのだろう。
つくしはこれまでに見たこともないような美しい女性を目の前にしていた。
「司!会いたかったわ」
と言って女が司に抱きついてきた。
「な、なんだ?」
司は殴られるか罵倒されるかと思っていただけに言葉が出なかった。
「寂しかったわ。久しぶり!元気だった?」
「酷いじゃない!全然電話にも出てくれないなんて!」
女は真っ赤に塗られた唇を尖らせて言ってきた。
そしてむせ返るような香水の香りが司の回りに漂っている。
「司はあのときあたしが子供が欲しいだなんて言ったから別れようって言ったのよね?」
「あたし、あれは一時の感情の迷いだったのよ・・だからついあんなこと言っちゃって・・司は子供なんて欲しくないものね・・」
「ねえ、だから・・あたし二度とそんなこと言わないからまたやり直しましょ?」
司は自分の隣・・それも少し距離を置いて立つつくしが気になっていた。
ま、まずい・・・
とっくに別れたと思っていたらこの女は俺と別れるつもりがないってことか?
司の頭の中はそんな思いでいっぱいになっていた。
「わ、悪いが俺にはそんなつもりはない」
司はそう言いながら抱きついてきた女の腕を慌てて引き剥がした。
隣を見るのが恐ろしかったが見ないわけにはいかなかった。
思い込みかもしれないがあのでかい瞳が嫌悪に曇った。
なんか・・雲行きが怪しくなってきたのか?
どろどろとした空気が隣から漂って来たように感じられる。
「どうしてよ!もう他につき合ってる女がいるの?」
なんて答えたらいいんだ?司はちらりと隣を見やった。
おまえとの結婚は秘密なんだろ?
『 結婚していることは秘密 』
つくしにそう言われている手前迂闊には言い出せなかった。
「悪いが、二人の関係はもう終わってる」
今はそれしか言えなかった。
隣にいる女と結婚していると言いたかったが言えないでいた。
つくしはといえば、とりすました表情でまるで赤の他人のようなふりをして隣に佇んでいた。
どうしたらいい?こいつ・・何を考えてるんだ?
「そんなこと言わないでよ!あたしたちの身体の相性がどれだけ良かったのか覚えているでしょ?」
「ねえ司は今でもあたしのこと欲しいんじゃないの?」
女はそう言って司の腕に手をかけようとした。
「おい。しつこい女だな!いい加減にしねぇとぶっ飛ばすぞ?てめぇのこの手首をへし折ってやろうか!」
司は自分の腕に手の伸ばして来た女の手首を掴むとぎりぎりと締めつけていた。
「その顔に傷を作りたくないならさっさと失せろ!」
この際女をさっさと追い払えるならどんな悪態でもつくつもりだった。
「なによっ!あたしの身体だけが目当てだったの?」
「ひどい男!最低っ!」
女はそんな捨て台詞を残すと車で走り去った。
司は自分の隣に立つ女を見るのが怖かった。
こんな時はなんて言ったらいいんだ?
昔の女と今の女が鉢合わせ・・・
いや今の女じゃない。妻だ!
人生のなかでこんな状況に追い込まれたことは無かった。
神に誓ってもいい。俺はあの女とはきれいさっぱりと別れている。
あのクソ女!!
なあ、俺はおまえのことを真剣に思っている。
「な、なあ・・聞いてくれ・・」
そのときひとりの女性がつくしの隣に立つ男めがけて突進してきた。
「つかさ~!」
背が高くすらりとした長い脚を持つ黒髪の女性。
おい!マジかよ!!
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コメント
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た*き様
あの有名な逸話ですね!バーナードの返事の皮肉さがいいですね。
はい。つくしと司、どちらがどちらでもハイスペックだと思います(笑)
えっ?つくしにもそんな・・・?
そうですよね、いてもおかしくはないと思います。
そうなるとお話が・・でもいいアイデアですね!有難うございます。
使わせて頂くかもしれません。
コメント有難うございました(^^)
あの有名な逸話ですね!バーナードの返事の皮肉さがいいですね。
はい。つくしと司、どちらがどちらでもハイスペックだと思います(笑)
えっ?つくしにもそんな・・・?
そうですよね、いてもおかしくはないと思います。
そうなるとお話が・・でもいいアイデアですね!有難うございます。
使わせて頂くかもしれません。
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.29 22:20 | 編集

as***na様
昔の女に遭遇する。司にとっては青天の霹靂だったことでしょうね。
こちらのつくしちゃんの望みは平凡に暮らすことです。
子供には頭の良さは求めていないようです。
本人が頭が良すぎたばかりに普通の子供の暮らしが出来なかったので
それを望んでいます。
ですが司と結婚して平凡な人生を望めるはずもなく、今後が心配です(^^)
コメント有難うございました(^^)
昔の女に遭遇する。司にとっては青天の霹靂だったことでしょうね。
こちらのつくしちゃんの望みは平凡に暮らすことです。
子供には頭の良さは求めていないようです。
本人が頭が良すぎたばかりに普通の子供の暮らしが出来なかったので
それを望んでいます。
ですが司と結婚して平凡な人生を望めるはずもなく、今後が心配です(^^)
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.29 22:28 | 編集

H*様
司バカですよね(笑)
もっと言ってやって下さい。
ちゃんと後始末をしていなかったのでしょうか。
こんなことではつくしちゃんとの未来が不安ですよね。
つくしちゃんの代わりにバカ、バカ言ってやって下さい(笑)
拍手コメント有難うございました(^^)
司バカですよね(笑)
もっと言ってやって下さい。
ちゃんと後始末をしていなかったのでしょうか。
こんなことではつくしちゃんとの未来が不安ですよね。
つくしちゃんの代わりにバカ、バカ言ってやって下さい(笑)
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.30 23:00 | 編集
