あいつに不意打ちを食らわせてやった。
あんときの顔を思い出して思わず笑いそうになっていた。
すげぇびっくりした顔してた。
司は間違いなく学習していた。
あのチビで嘘つきで天邪鬼な女のことを。
これからはあいつより優勢に立ってやるつもりだった。
なんか知らねぇうちにこんな気持ちになってたなんて俺ってどうなんだ?
けど俺たちって結婚してるんだよな?
ならいいんだよな?
何しても?
あんときあいつにキスしたら
「あ、頭おかしくなった・・?」
と言われた。
確かに自分でもそう思った。
でも仕方ねぇじゃねえかよ。俺が恋したら悪りぃのかよ?
俺は一度こうと決めたら良いも悪いもその道を進むことが男だと思ってる。
俺はあの女と違って正直な男だからよ。
世間が何を言おうとやりたい事をやりたい時にパッパッとやるのが俺の人生哲学だ。
よし!俺は決めた。
司はマンションまでの帰り、車の中で口笛を吹いていた。
***
つくしはリラックスできる服に着替えるために割り当てられた部屋へと向かった。
先ほど自分のマンションに立ち寄り郵便物を回収してきたところだった。
もちろん自己資金で買ったマンションで決して賃貸ではない。
女がひとり自立して生きていくと決めた時点で一大決心をしてマンションを購入することにした。
さすがに全額を現金で支払うことは無理だったが、頭金はしっかり入れたし残金のローンの信用保証も問題なくクリアしていた。
たとえ今はあの男とこのマンションに暮らしていても、あくまでもこれは一時的なことでいつか自分のマンションに戻るつもりだ。
それは何があったとしても気持ちが変わることがないと思っていた。
届いていた郵便物はダイレクトメールに各種使用料金の請求書・・・
そのなかに一通の封書を見つけたつくしは嬉しくなった。
はさみを手にして封を切ろうとしていたところに電話が鳴り、つくしは鞄の中から携帯電話を取り出した。
「もしもし?」
「つくしなの?」
「し、滋さん?」
「久しぶりっ!誰だと思った?」
つくしはベッドの端に腰をかけると滋と話し始めた。
「つくし、それでどうなの?妊娠したの?」
「えっ?」
「つくし?」
「うん・・・したみたい」
「ちょっと!嘘でしょ?つくしと司って一発で的中?」
「さすが司だわ・・やるときはやるものね」
滋は興味津々で聞いてきた。
「それでもうお腹膨らんだ?」
「そ、そんなすぐにふ、膨らむわけないでしょ!」
つくしは自分のお腹を見下ろした。
「で、つくし病院には行ってみたの?」
「あんたたち一緒に暮らすことになったらしいけど、実のところ司との暮らしって
大変でしょ?」
「うん・・病院にはまだ行ってないんだけど・・多分ね・・で、子供のことがバレてから同居生活になったんだけど・・」
電話の向うで滋がかぶりを振る姿が目に浮かぶようだった。
「つくし、病院でちゃんと見てもらいなさいよ?つくしはのんびりし過ぎじゃない?」
「それから、ごめんね・・つくし。あたしが司にあんたのことを話したばっかりにこんなことになってさ」
「ん・・いいのよ滋さん・・あの男が意外と・・家族想いだって知って驚いたけどね」
「もしかして椿さんのこと聞いたの?」
「うん、聞いた・・」
滋はつくしのその言葉に司がそこまでつくしに話しているならばと話しを継いだ。
「司はねぇ、椿さんに育てられたようなものだから・・つくしに子供が出来たって知ってその子供がどうしても欲しくなっちゃったのね・・・欲しいって言ってもどうにもならないけど、せめて関わり合いたいって思ったのね、きっと・・。それに椿さんにしたら司の子供なんて可愛くて仕方がないと思うわ」
つくしはあの日、あの男の姉と会った時のことを思い返していた。
椿さんはどう考えてもあたしなんかみたいにお金持ちのお嬢様でもないような女がなぜ自分の弟と親しく・・結婚する事になったのか理解できなかったはずだ。
本当は二人には何の接点もなくて、ただあたしが・・自分だけの子供が欲しくて・・あんな行動を起こした結果だった。
そしてあの男はどんな形で出来た子供だとしても、子供を思う古くさいくらいの倫理観を持っていてあたしのことを、そして欲しいと望んで出来たんじゃない子供のことも考えてくれている。
それにキスされて・・・おまえに恋したって言われた・・
「ねぇ!つくし、聞いてる?いっそのこと司と結婚しちゃったら?」
「な、なに言ってるのよ・・・滋さん!」
「そ、そんなことしたら・・」
「あーそうよねぇ。つくしは自分だけの子供が欲しかったんだしね。バカな男の遺伝子が欲しいって司をご指名ってわけで・・・」
全然バカな男じゃなかったけど・・
「でもさ、既成事実婚って感じだよね?」
つくしは本当は入籍していると言うことを告げようかどうしようか迷っていた。
「でもねぇ司が女と同居生活を送るなんて思いもしなかったわ」
「司って男は昔から美男子だったけど、どこか影があってね。最近じゃ年のせいか凄みまで感じさせるような男になってきたし、おまけに危険な香りまでさせてきた男がつくしと同居してるなんて驚き以外にないわよ!」
滋はそんなつくしが羨ましいと言った。
「ねぇ、司のことだからいつもブスっとした顔してるんじゃないの?つくし大丈夫?いくら美形でも笑わない男の顔なんて見たくないよね?」
「まあ、それでも男は上手に質問すればどんどん話をしてくれるものだから、つくしもそうしてみたら?」
「男ってのはみんな心は少年のままなのよ?」
つくしは滋に告げることが出来なかった。
実は入籍したの・・・
それにおまえに恋したって言われて、今のあたしはどうしたらいいのか分からなかった。
色々なことが頭を巡って考える時間が欲しかった。
実は頭がよくて、家族想いで・・そして、道明寺司は笑顔が素敵・・
つくしは自分の気持ちが揺らいでいるのを感じていた。
少し前までの自分は誰かを思って気持ちが揺れるなんてことがあるとは考えてもみなかった。
まして、恋をするなんて考えたことも無かったし、そのことに関していい思い出なんてなかったから・・。
だから男は必要なくて自分だけの子供が欲しかった。その子には平凡な人生を歩ませてあげたいし、自分もその子供と一緒に新しい人生が歩めると思っていた。
あたしはどうしたらいいんだろう・・
つくしは胸のうちで呟いていた。

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あんときの顔を思い出して思わず笑いそうになっていた。
すげぇびっくりした顔してた。
司は間違いなく学習していた。
あのチビで嘘つきで天邪鬼な女のことを。
これからはあいつより優勢に立ってやるつもりだった。
なんか知らねぇうちにこんな気持ちになってたなんて俺ってどうなんだ?
けど俺たちって結婚してるんだよな?
ならいいんだよな?
何しても?
あんときあいつにキスしたら
「あ、頭おかしくなった・・?」
と言われた。
確かに自分でもそう思った。
でも仕方ねぇじゃねえかよ。俺が恋したら悪りぃのかよ?
俺は一度こうと決めたら良いも悪いもその道を進むことが男だと思ってる。
俺はあの女と違って正直な男だからよ。
世間が何を言おうとやりたい事をやりたい時にパッパッとやるのが俺の人生哲学だ。
よし!俺は決めた。
司はマンションまでの帰り、車の中で口笛を吹いていた。
***
つくしはリラックスできる服に着替えるために割り当てられた部屋へと向かった。
先ほど自分のマンションに立ち寄り郵便物を回収してきたところだった。
もちろん自己資金で買ったマンションで決して賃貸ではない。
女がひとり自立して生きていくと決めた時点で一大決心をしてマンションを購入することにした。
さすがに全額を現金で支払うことは無理だったが、頭金はしっかり入れたし残金のローンの信用保証も問題なくクリアしていた。
たとえ今はあの男とこのマンションに暮らしていても、あくまでもこれは一時的なことでいつか自分のマンションに戻るつもりだ。
それは何があったとしても気持ちが変わることがないと思っていた。
届いていた郵便物はダイレクトメールに各種使用料金の請求書・・・
そのなかに一通の封書を見つけたつくしは嬉しくなった。
はさみを手にして封を切ろうとしていたところに電話が鳴り、つくしは鞄の中から携帯電話を取り出した。
「もしもし?」
「つくしなの?」
「し、滋さん?」
「久しぶりっ!誰だと思った?」
つくしはベッドの端に腰をかけると滋と話し始めた。
「つくし、それでどうなの?妊娠したの?」
「えっ?」
「つくし?」
「うん・・・したみたい」
「ちょっと!嘘でしょ?つくしと司って一発で的中?」
「さすが司だわ・・やるときはやるものね」
滋は興味津々で聞いてきた。
「それでもうお腹膨らんだ?」
「そ、そんなすぐにふ、膨らむわけないでしょ!」
つくしは自分のお腹を見下ろした。
「で、つくし病院には行ってみたの?」
「あんたたち一緒に暮らすことになったらしいけど、実のところ司との暮らしって
大変でしょ?」
「うん・・病院にはまだ行ってないんだけど・・多分ね・・で、子供のことがバレてから同居生活になったんだけど・・」
電話の向うで滋がかぶりを振る姿が目に浮かぶようだった。
「つくし、病院でちゃんと見てもらいなさいよ?つくしはのんびりし過ぎじゃない?」
「それから、ごめんね・・つくし。あたしが司にあんたのことを話したばっかりにこんなことになってさ」
「ん・・いいのよ滋さん・・あの男が意外と・・家族想いだって知って驚いたけどね」
「もしかして椿さんのこと聞いたの?」
「うん、聞いた・・」
滋はつくしのその言葉に司がそこまでつくしに話しているならばと話しを継いだ。
「司はねぇ、椿さんに育てられたようなものだから・・つくしに子供が出来たって知ってその子供がどうしても欲しくなっちゃったのね・・・欲しいって言ってもどうにもならないけど、せめて関わり合いたいって思ったのね、きっと・・。それに椿さんにしたら司の子供なんて可愛くて仕方がないと思うわ」
つくしはあの日、あの男の姉と会った時のことを思い返していた。
椿さんはどう考えてもあたしなんかみたいにお金持ちのお嬢様でもないような女がなぜ自分の弟と親しく・・結婚する事になったのか理解できなかったはずだ。
本当は二人には何の接点もなくて、ただあたしが・・自分だけの子供が欲しくて・・あんな行動を起こした結果だった。
そしてあの男はどんな形で出来た子供だとしても、子供を思う古くさいくらいの倫理観を持っていてあたしのことを、そして欲しいと望んで出来たんじゃない子供のことも考えてくれている。
それにキスされて・・・おまえに恋したって言われた・・
「ねぇ!つくし、聞いてる?いっそのこと司と結婚しちゃったら?」
「な、なに言ってるのよ・・・滋さん!」
「そ、そんなことしたら・・」
「あーそうよねぇ。つくしは自分だけの子供が欲しかったんだしね。バカな男の遺伝子が欲しいって司をご指名ってわけで・・・」
全然バカな男じゃなかったけど・・
「でもさ、既成事実婚って感じだよね?」
つくしは本当は入籍していると言うことを告げようかどうしようか迷っていた。
「でもねぇ司が女と同居生活を送るなんて思いもしなかったわ」
「司って男は昔から美男子だったけど、どこか影があってね。最近じゃ年のせいか凄みまで感じさせるような男になってきたし、おまけに危険な香りまでさせてきた男がつくしと同居してるなんて驚き以外にないわよ!」
滋はそんなつくしが羨ましいと言った。
「ねぇ、司のことだからいつもブスっとした顔してるんじゃないの?つくし大丈夫?いくら美形でも笑わない男の顔なんて見たくないよね?」
「まあ、それでも男は上手に質問すればどんどん話をしてくれるものだから、つくしもそうしてみたら?」
「男ってのはみんな心は少年のままなのよ?」
つくしは滋に告げることが出来なかった。
実は入籍したの・・・
それにおまえに恋したって言われて、今のあたしはどうしたらいいのか分からなかった。
色々なことが頭を巡って考える時間が欲しかった。
実は頭がよくて、家族想いで・・そして、道明寺司は笑顔が素敵・・
つくしは自分の気持ちが揺らいでいるのを感じていた。
少し前までの自分は誰かを思って気持ちが揺れるなんてことがあるとは考えてもみなかった。
まして、恋をするなんて考えたことも無かったし、そのことに関していい思い出なんてなかったから・・。
だから男は必要なくて自分だけの子供が欲しかった。その子には平凡な人生を歩ませてあげたいし、自分もその子供と一緒に新しい人生が歩めると思っていた。
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Comment:2
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます

た*き様
そうですね。その方が司の望みが叶うと思います!(笑)
あの映画ご覧になられたのですね?そうですね、確かに司は友達って感じは難しいように思えます。
あの相手役の俳優さん、あまりカッコいいとは言えず(失礼)なのですがリアリティはありますね。
類があの役・・類はあんなにおしゃべりできる?(笑)類くん確かにいつもナイスフォローですよね。
私の中では類くんはいつもつくしを見守る騎士というイメージでして(笑)
でも何を考えているか分からないイメージがありますが、つくしのピンチにはいつも駆け付けるところが
やはり騎士ですね(^^)拙宅ではいつもその立ち位置でごめんなさい。
コメント有難うございました(^^)
そうですね。その方が司の望みが叶うと思います!(笑)
あの映画ご覧になられたのですね?そうですね、確かに司は友達って感じは難しいように思えます。
あの相手役の俳優さん、あまりカッコいいとは言えず(失礼)なのですがリアリティはありますね。
類があの役・・類はあんなにおしゃべりできる?(笑)類くん確かにいつもナイスフォローですよね。
私の中では類くんはいつもつくしを見守る騎士というイメージでして(笑)
でも何を考えているか分からないイメージがありますが、つくしのピンチにはいつも駆け付けるところが
やはり騎士ですね(^^)拙宅ではいつもその立ち位置でごめんなさい。
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.20 22:48 | 編集
