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2024
03.26

Sin 4

Category: Sin(完)
どこかで幸せに暮らしていることを祈っていたが、15年振りで見る彼女は変わっていなかった。
司は医者だ。仕事柄感情を出すことなく常に冷静な表情を浮かべている。
そんな司を前にした彼女は、いかにも彼女らしい笑顔を浮かべ「元気そうで良かった」と言ったが、彼女は自分が医師である前に、昔の恋人の診察を受けることについて特別な感情はないのか。
過去にこだわりはないのか。
あの頃のことは遠い過去なのか。
しかし、不治といわれる病を抱えている人間とは思えない物静かな目に、司は彼女への感情を見抜かれそうだった。あるいは、もう見抜かれているのかもしれない。
それは意識の底に眠らせているだけで、別れてからも司の中で彼女はいつもそこにいたということ。ふたりが恋人同士だったことが風化することはなかった。
だが結婚している彼女にすれば、司とのことは永遠に抹殺したい。葬り去りたいことなのか。
そんな彼女に幸せな結婚なのか?と訊いてみたかった。
だがふたりの間に流れた遠い時間を自嘲すれば訊けなかった。
その代わり、「変わらないな」と言った。
すると彼女は「いいえ。変わったわ。あの時より年を取ったわ。もうおばちゃんよ」と言って「変わらないのはアンタの方でしょ?」と言って笑った。




眩しいライト。
青い手術着を着た男。
司が見ているのは麻酔をかけられ手術台に横たわる彼女。
意識のないその身体に緊張はない。
司は愛した人の身体に鋭いメスを入れる。
それは己の脳髄を刺し貫かれるより辛いこと。
だが、司なら彼女を助けることが出来る。
指先が司を裏切ることはない。
そして彼女の夫も司の腕を信じている。

「先生。どうかつくしを助けてやって下さい」

ひとまわり年上の男の髪には白いものが混じっていた。



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