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2022
08.26

夏はドラマチック 12

司は広い部屋の中央にいたが、この部屋が居間などではないことは明らかだ。
何しろ壁に飾られているのは、この国の歴代の王と妃の肖像画。
つまりここは謁見の間ということだが、いずれ次の国王となる彼女の肖像画もここに飾られることになる。そして隣には王配の肖像画が飾られる。
本来なら司の恋は身分違いと一蹴されてもおかしくない。だが王女の側近の西田は王女が司と恋に落ちることを望んでいる。けれど司は地位や名誉が欲しいわけではない。ただ、牧野つくしと恋をすることができればそれでいい。

司の背後で扉が開く音が聞こえた。
だから振り向いたが、王女は司に向かって歩いて来ると3メートルほど離れた場所で立ち止まった。
そして黙ったまま司をじっと見つめているが、その表情をどう解釈すればいいのか分からなかった。

「手紙を読んでくれたのか?」

「手紙?いいえ」

司は自分が書いた手紙が読まれていないことを知ったが、それは想定していたことであり落胆はしなかった。だが読んでいないのなら何故王女は司と会うことにしたのか。

「早速ですが道明寺さん。今日来ていただいたのは、あなたにお願いがあるからなの」

「お願い?」

司の疑問に対しての答えは早々と出たが、それは意外な言葉。
何しろパフェを前にした王女に自分の気持を伝えたとき、王女は司に興味がないと言った。誰とも付き合う気はないと言った。だから司は自分が必要とされるような言葉を訊くとは思わなかった。

「あなた私のことが好きだと言ったわよね?」

「ああ。俺は牧野つくしに惚れた。その思いは初めて会ったあの時からずっと心の中にあった。だから毎日手紙を送りつける俺のことを厚かましい恥知らずな男だと思っているとしても書くことを止めることは出来なかった」

司はこれまで女に夢中になったことがない。
だが僧侶という訳ではない。付き合いはしたが女に罠にかけられる、束縛されるのが嫌で長く続いたことがなかった。
だが彼女になら罠にかけられたい。
束縛されたい。
しかし司が好きになった女は容易に近づくことが出来ない立場の女。

「そう。あなたは自分のことを厚かましくて恥知らずな男だって自覚しているのね?」

「自覚しているかと言えばそれは違う。だが俺は自分の恋愛に責任を持てる男だ。だから好きになった女のためならどんなことでもする。つまりお前のためならどんなことでもするってことだ」

司はそういうと王女に近づいた。

「それで?お願いってのは?」

好きな女のためならどんな願いも叶えてやる。
だが王女という立場なら命じるだけでどんな願いも叶えられるはずだが、一体何を望んでいるのか。

「知らない世界を見せて欲しいの」

「知らない世界?」

その立場から世界中を旅したことがある王女が言う知らない世界とは?

「ええ。私の知らない世界。それはつまり……男と女の世界よ」




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コメント
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dot 2022.08.26 05:49 | 編集
き**様
お返事が遅くなりましたm(__)m
つくし王女の過激な発言は続いています(笑)
好きな女に迫られれば嬉しいはずですが、さあ、どうする司!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2022.09.01 05:41 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2022.09.01 17:45 | 編集
ふ**ん様
つくし王女。
大胆な発言。
そしてアカシアはコメント返信が遅い!
編集長。すみません。m(__)m
そしてこの司はテクニシャンです(≧▽≦)
アカシアdot 2022.09.18 06:28 | 編集
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