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2022
08.05

夏はドラマチック 10

彼女の目の前に差し出したクリームが乗ったスプーン。
司は彼女がスプーンを受け入れるかどうか口元をじっと見つめているが、彼女の両手は膝の上に降ろされている。だからあの時のように殴られることはないはずだ。

「私は朝からこれを食べるのを楽しみにしてきたわ。だからその時間を邪魔しないで欲しいの」

彼女はそう言うと司の手からスプーンを奪い取って自分で口へ入れた。
そして、きれいにクリームを舐めとったスプーンをテーブルに置くと言った。

「それからもう一度言います。あなたの気持はよく分かりました。だけどよく訊いて欲しいの。私はあなたに限らず誰かとお付き合いをするつもりはないの」

彼女はそう言葉を継ぐと「もう….溶けてるじゃない」と呟き、気持をパフェに集中させ、再びパフェを食べるためスプーンを手にすると、ひと掬いして口に運んだ。
司はそんな彼女を見て笑った。「お前。本当にそのパフェが好きなんだな」
すると彼女は、きっと司を見た。

「あなたねえ、さっきから私のことをお前って言うけど私にはちゃんと名前があるわ。
それから私はひとりでいたいの。だから相席はお断りします。コーヒーは別のテーブルで飲んでちょうだい」

スプーンを手にした彼女は司との会話を切り上げたいとばかりの口ぶりで言ったが、司は10年の時を経て会った彼女との会話を終えたくはなかった。それに司は彼女の不機嫌な反応を見るのが楽しいと感じていた。

「分かった。確かに好きな女をあんたと呼ぶのは失礼だ。じゃあなんと呼べばいい?王女様か?つくし様か?それともベイビーか?ハニーか?どの呼び方がいい?」

彼女は司を睨みつけた。

「ねえ、あなた私の話を聞いてないの?私はひとりでいたいの。それにあなたと係わるつもりはないと言って_」

「王女様」

司はそう言って再び彼女に手を伸ばした。
そして彼女の唇の端に付いたクリームを親指でそっとぬぐい取ると、その指を自分の口に運び舐めた。




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コメント
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dot 2022.08.05 05:42 | 編集
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dot 2022.08.06 01:12 | 編集
き**様
相手の口元に付いたクリームを指で取って自分の口へ運ぶ男。
アカシアも司のような男にならされてみたいです!(≧▽≦)
でも王女様は手強いです(笑)
アカシアが言えるのは、ガンバレ!司!大人の魅力で誘惑してね!です(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2022.08.07 21:42 | 編集
ふ**ん様
王女をハニーで、つくしハニーを思い出した‼(≧▽≦)
司所有のツカサブラックとツクシハニーはどうしているのでしょうねえ。
きっと北海道の牧場で楽しく余生を過ごしているはずです。
そう言えば御曹司も元気にしているのでしょうかねえ。
ちょっと気になる......
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2022.08.07 21:51 | 編集
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