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2022
07.17

夏はドラマチック 6

罠にかけられるのが嫌で女と長続きしたことがない。
それに自分から女を口説いたことがない。
そんな司が酒を浴びるほど飲んで口にしたという一度くらい女を口説いてみたいの言葉。
だが司はそんな言葉を口にした記憶はない。けれど、もしかするとそれは心の奥にあった王女に対する思いがそう言わせたのかもしれない。
何しろ相手は王女。司が容易に近づくことが出来ない相手。だから初恋は叶わないものだと諦めていたからだ。だがしかし王女の側近が近づくことを許した。だからこのチャンスを逃す訳にはいかなかった。

司は彼女がこちらに気付いていないのをいいことに、席に着いた彼女をひたすら見つめ続けた。いや、気付くもなにも過去に会ったのは一度だけ。だから彼女は司のことを覚えていない。それは10年という年月は一度しか会ったことがない誰かを完全に忘れてしまえるほど長い年月だから。
だが司は小さな鼻をツンと上に向けた生意気なひとつ年下の少女のことを忘れたことはなかった。あのとき心に忍び込んだ少女は、これまでずっとそこにいた。

ウエイトレスが彼女の前に水の入ったグラスを置いた。
そして注文を聞くと背を向けた。
司は立ち上った。そして彼女を視界にとらえたまま、テーブルをよけ大股で歩き出した。
そんな司に向けられるのは女性客の視線。だがその視線は無視。
今の司は彼女の視界に入ることだけを望んでいた。

司は彼女のテーブルの前で立ち止まると、ぴたりと足を止めた。
すると彼女は顏を上げ司を見たが、黒曜石の瞳には警戒心が浮かんでいた。



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コメント
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dot 2022.07.17 23:30 | 編集
ふ**ん様
王女つくし。
クルクル男を覚えているか?
何しろ10年前のことですからねえ。
そして、お話は進んでいます。
はい。覚えてないと言われてます(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2022.07.30 21:01 | 編集
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