fc2ブログ
2022
02.28

金持ちの御曹司~業務命令~<中編>

「道明寺店長。本日はご同行、ありがとうございました」

「いえ。こちらこそ」

「それにしてもその変装。よくお似合いです」

「そうですか。どうもありがとうございます」

司はエリアマネージャーである彼女と近隣のライバル店のリサーチに出掛けていた。
だが眉目秀麗と言われる司の面はライバル店に割れている。それにその容貌はひと目を惹く。
実際店長の司は女性客に人気があり、店内を巡回すれば、「あの…おすすめ商品買いました」と声をかけられるほどで、『バイヤーおすすめの品』よりも『店長おすすめの品』というPOPが書かれている商品が飛ぶように売れていた。
だからライバル店のリサーチに出掛ける時は関係者に気付かれないように必ず変装をしていた。
そして今回の司は、うっすらとだが口髭を生やし、黒色のスーツに光沢のある紫がかったペールブルーのシャツを合わせ、茶色のアビエーターサングラスをかけ黒のコートを着ていたが、その姿はどう見ても関わりたくない人物。だからすれ違う人々は、一瞬司を見るが、すぐに視線を逸らし逃げるように去る。

そして彼女もいつものビジネススーツではなく、ラベンダー色のボーダーニットに上品な淡いピンクのパンツ。そしてベージュのコートを着ていたが、司は彼女のその姿を見たとき眩暈を覚えた。

かわいい__

そして唇には、いつもとは違う色が塗られていて、司の目はその唇に釘付けになった。
それに彼女のすぐ傍に立つと、彼女の匂いが鼻孔をくすぐった。
だからリサーチの間じゅう、その香りに頭がクラクラしていた。

「道明寺店長?どうかされましたか?もしかしてご気分でも悪いのでは?」

「いえ…..」

司の気分は上々だ。
そして気分と同じでズボンの中のモノも今にも勃ち上がりそうだった。

「そうですか?それならいいのですが少しお顔が赤いので熱があるのではないかと思いまして」

と言った彼女は「それでは今日のリサーチの報告書は後日お持ちします」と言って司の前から立ち去ろうとした。
だから司は「牧野さん。遅くなりましたね。もしよろしければこれからお食事でもいかがですか?」と食事に誘った。

時計の針は午後6時を回っていた。
すると彼女は司をじっと見て、「店長。お店に戻らなくてもいいのですか?」と言った。
店は夜9時まで営業している。だから彼女は司が店に戻ると思っているようだ。
だが司は、「今日は午後から休みを取っているので戻る必要はありません」と答えた。
すると彼女は一瞬だけ困惑した表情を浮かべ、司に向けていた視線を外した。
それは司の誘いを受けるかどうか考えているということ。何しろ今まで一緒に他店のリサーチに出掛けても、食事に誘われたことなどなかった。それに彼女が司の店の担当になって二年が経つが食事に誘われるのは初めてのこと。
だから余計に食事に誘った司の真意をはかっているのだろう。
だが彼女は視線を司に戻すと「居酒屋…….駅前の居酒屋に行きませんか?」と言った。





「山田!あの男!アラスカに転勤になればいいのよ!」

彼女は空腹が苦手で、お腹が減ると不機嫌になりやすい。だがお腹が満たされると機嫌が直ると言った。そう言った彼女は、だから自分は分かりやすい人間で単純だと言ったが、アルコールに対しては単純とは言えないようだ。

「道明寺店長、どう思います?あの部長あたしの仕事の仕方が気に入らないなら面と向かって言えばいいのに、社内メールでネチネチ言って来るの!本当にムカつく!あんな男アラスカの海でシャチに食べられればいいのよ!」

彼女が言った山田とは、彼女の上司で髪の毛がチリチリとうねっている小柄な男。
司もその男のことは知っているが、趣味は座布団運びとやらで、どうやら彼女とは反りが合わないようだ。だからアラスカに転勤になればいいと言ったが、生憎D&Yホールディングスはアラスカに店舗を構えてはいない。

そして彼女は不満げに鼻を鳴らしたが、まさか真面目だと思われていた彼女の口からシャチに食べられればいいという過激な言葉が訊けるとは思ってもみなかった。それにこれまでどちらかと言えば他人行儀だった彼女が、鼻と鼻がくっつきそうになるくらい顏を近づけてくるとは思いもしなかった。
そして、「ねえ、道明寺店長。今日はとことん飲みましょうよ!」と言うと手を挙げて、
「すみませーん!」と店員を呼ぶと「焼き鳥とジャーマンポテト下さい。あ、それからビールのおかわりもお願いします!」と言った。

司は酒に強い。
だからどんなに空のジョッキがテーブルに並んでも表情は変わらない。
だが彼女は運ばれてきたビールジョッキを口に運ぶと司に絡んできた。

「ちょっと!もっと飲みなさいよ!アンタ男でしょ?それともあたしのお酒が飲めないっていうの?あたし、エリアマネージャーですけど?」

漆黒の瞳は大胆不敵に輝きハラスメントまがいの言葉を口にした。
だが司は彼女にならハラスメントを受けてもいいと思った。
特にセクシャルなハラスメントは大歓迎。
鼻と鼻がくっつきそうになる以上に、もっと彼女に近づきたい。
だが目の前の女性は注文した焼き鳥とジャーマンポテトを口に運び、ビールのおかわりを飲み干すとテーブルの上に突っ伏した。



にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2022.03.01 10:29 | 編集
ふ**ん様
お返事が大変遅くなりました。
もう何を書いたか分からん!と言われてしまいそうですね(滝汗)
司に髭が生えるのか!生えるでしょう(笑)
アビエーターサングラス。そうです。西部警察の大門刑事部長がかけていたサングラスです。
はい。座布団運びの山田くんとか色々と突っ込みどころが多い話です。
何しろ御曹司ですからね(≧◇≦)
セクシーなハラスメント希望の司。
セクシーどころか……
後編はご覧の通りとなりましたm(__)m
アカシアdot 2022.03.16 22:39 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top