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2021
12.27

花束に添えて 3

新千歳空港には11時過ぎに着いた。
ロビーには先に北海道入りしていた西田がいて、司が手にしていたコートを預かった。

「ご子息様は、駿様はつくし様が入院している病院にいらっしゃいます」

ロビーから一歩外に出た司は、車までの短い距離だったが頬に冷たい風を感じた。
だが空は北の大地に相応しい大きな青空が広がっていた。
そして肺に吸い込んだ空気は東京とは違い澄んでいた。

司は車の後部座席で目を閉じた。
そして姉の言葉を反芻していた。






「つくしちゃん、心臓の手術をすることになったの」

姉の言葉に司の心臓は凍り付いた。

「職場の健康診断で異常が見つかってね。調べてみたら心臓の近くに腫瘍が見つかったそうよ。それからその腫瘍が何であるかは胸を開いてみないと分からないと言われたらしいわ。だから自分に何かあったら駿のことを頼むって私に連絡をしてきたの」

彼女は万が一のことを考え姉に甥の存在を知らせた。
それはいつか司が彼女のことを思い出したとき、この世に同じ血を持つ人間がいることを伝えて欲しいということ。
司は自分に息子がいることが嬉しかった。
彼女が自分の子供を産んで育ててくれたことが嬉しかった。
だが息子は母親と自分を棄てた男を憎んでいるのではないか。
だからいくら血の繋がりがあったとしても、一度も会ったことがない男が突然目の前に現れ父親だと名乗って受け入れてられるとは思っていなかった。
だから会うのが怖かった。

だが姉はそんな弟の心の裡を知っていた。
椿は司の秘書の西田を北海道に向かわせた。と、同時に椿自身も北海道に飛ぶと彼女に会い駿と会った。駿の伯母として司と母親の間に起こったことを話し、父親である司が失われた記憶を取り戻したとき、駿の存在を告げてもいいかを訊いた。
すると駿はこう答えたという。

「会いたいです。僕の父親だという人に。だって僕は母から父親は宇宙人だって聞かされましたから」

宇宙人という言葉にクスッと笑いそうになったが、司に会いたいと言ってくれた息子。
そして自分の命は神の采配で決まると思っている彼女。
息子にも会いたいが彼女にも会いたい。
会って彼女のことを思い出したと伝えたい。
だが既に息子が伝えているかもしれない。
もしそうなら彼女は今病院のベッドの上で何を思っているだろうか。
閉じた瞼に彼女の顏が浮かんできた。



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コメント
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dot 2021.12.27 14:59 | 編集
ふ**ん様
心臓に悪い話になってスミマセン(>_<)
そしてコメントが滞ってすみませんm(__)m
短いお話なので間もなく終わりますので少々お待ち下さいませ~
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2021.12.29 22:05 | 編集
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