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2021
12.13

金持ちの御曹司~純愛ラプソディ~

「あたし。昨日きのこの山を買ったの」

「え?もしかしてあんた、きのこ派?」

「うん。軸のカリッとした食感が大好きなの!」

「へえ、そうなんだ。あたしは断然たけのこの里。子供の頃からあのサクサク感に手が止まらなくなるわ!」



司は恋人の部署を訪ねたが彼女に会えなかった。
そして執務室に戻る途中で女性社員の会話を耳にした。それは社員の中には、きのこ栽培の山や、たけのこを育てるための土地を持つ人間がいるということ。

司の会社の給料は他社よりも高いと言われている。
だから社員の中に、きのこを栽培するための山や、たけのこが取れる里山を所有している人間が居ても不思議ではない。それに社員が農業に興味を持つことは悪いことではない。
それは世界的にSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれるなか、山や畑を耕すことが食糧の供給や新たな雇用を生み出し、地域農業の発展や自然環境の保持に貢献することになるからだ。
そして道明寺ホールディングスも、明日の地球のためにSDGsを推進している。だから社員たちが環境問題に目を向け、里山に出掛けることは会社としても喜ばしいことだ。

司は執務室に戻るとスーツの上着を脱いだ。
そして椅子に腰掛けると、パソコンに向かい仕事をしようとした。
だがしかし、女性社員の言葉が気になっていた。
それは、きのこの軸はカリッとしているということ。きのこの軸はカリッとなどしておらず柔らかい。だから首を傾げた。それに、たけのこのサクサク感という言葉にも疑問を持った。
だがまあいい。司はたけのこに興味はない。それに司が食べた、たけのこ料理で美味いと思ったのは恋人が作ってくれた天ぷらくらいだ。

だがきのこについては一言ある。司が食べるきのこと言えばマツタケ。
そのマツタケを始めて恋人と一緒に食べたとき司の股間は焦げついた。
それは恋人がマツタケのカサの部分を口に入れるとき、まばゆい黒い瞳が物憂げなものに変わったからだ。そのとき司の頭の中に浮かんだのは、彼女が司の前に膝をつき、自身を口に含んだ姿。彼女の口が動くたび、司が持っているソレを味わっている彼女の姿が頭の中に広がり欲望が昂まってスラックスの中のものが疼くと、身体中が男性ホルモンでいっぱいになった。

そしてそれは少年時代に想像すらしなかった大人の光景。
そういった行為は好きな女以外とするつもりのなかった司は、一糸まとわぬ姿で、つまりあられもない姿で彼女がそういった行為をするところを想像すると、血がドクドクと打ちつけだし体温が急激に上がるのを感じた。そして、マツタケを食べ終わった恋人に「どうしたの?顏が赤いけど大丈夫?熱でもあるんじゃない?」と言われると「大丈夫だ。なんでもない」と答え、その光景を打ち消した。

それでも暫くはマツタケの大きな「カサ」。
その裏にある「ヒダ」。
そしてヒダの裏にある細かい「スジ」。
それを味わう恋人の姿が頭の中から離れなかった。
だが大人なった恋人は唇を司と溶け合わせ望みを叶えてくれた。
だから今は十代の青二才のような妄想は必要ない。
だがそれでも夢を見ることがある。












ホテルの部屋の扉を開けると、そこに若い女が立っていた。

「お客さん私を呼ぶのは初めてね?でも大丈夫。私たち、きっと素敵な時間が過ごせるわ」

女は司の隣をすり抜け部屋に入るとコートを脱いだ。
すると微かな香水の香りがした。それは今まで司が嗅いだことがない匂い。
そして胸が大きく開いたジャケットから白い肌を覗かせていたが、ジャケットの下にブラウスの類を着ていないことは一目で分かった。そしてピッタリとしたミニスカートから覗く足はストッキングを履いていなかった。

「私の名前はつくし。だからつくしって呼んで」

自分のことをつくしと呼べと言った女。だがそんなふざけた名前が本当の名前ではないことはすぐに分かった。それは濃い口紅やアイラインを塗った女がコールガールだからだ。
それに司は女を呼んだ覚えはない。
しかし女は当然といった顏でそこにいて、「それで?あなたは何が望み?何をして欲しいの?」と訊いた。

司は、これは罠ではないかと思った。
それは司が今日ここにいることを知っているのは、限られた人間だけだからだ。

司は明日の取締役会で道明寺ホールディングスの副社長に就任する。
だが、社長の息子である司が会社の跡を継ぐことを気に入らない人間が社内にいることは知っている。だから彼らは司を罠にかけ、スキャンダルを捏造し、マスコミに公表することで、その座から追い落そうとしているのだ。

司を罠にかけようとしているのは常務一派。
常務一派は会社の機密情報を持ち出しライバル企業に売った。
司はその情報を耳にすると証拠を掴んだ。そして明日の取締役会で証拠を突きつけるつもりだ。だから彼らはそれを阻止するために女を送り込んだのだ。

「ねえ?どうして欲しいの?」

女はそう言って司に近づき、ハイヒールを履いた片足を伸ばして司の爪先に触れると、なまめかしく微笑んだ。
司は正真正銘の男だが女には不自由していない。
それに女にもセックスに溺れたことはない。
だから女を部屋から追い出すのは簡単だ。
そして女が浮かべている微笑が仕事としての微笑みであり本心からの笑みでないことは分かっている。
それでも司は常務一派の手に乗るのも悪くないと思った。それは司の方が誘惑の手を使い慣れているからだ。だから女がどれくらいの手管を持っているのか。お手並み拝見といこうと思った。

司はにんまりとした。

「何でもするって?」

「ええ。あなたの望むことは何でも。だから何でも言って」

女は意味ありげに言うと、司の腕に手を伸ばし、爪で腕を撫で下ろした。











「ああ!」

つくしと名乗った女は裸になると背後から司の猛攻撃を受けて叫んでいた。
精力旺盛な男は女に息づかいを整える暇を与えなかった。
はじめは服を脱ぐことなく女にしゃぶらせるだけにしようと思った。
どんなやり方で司を楽しませてくれるのかお手並み拝見といこうと思った。
だが裸になった女が纏う香水とは違う匂いに、女の身体の奥深くにある子宮を手に入れたいと思った。過去に抱かれたどんな男よりも強烈に燃え上がらせたいと思った。

「ああ、お願い…….もっと…….もっとして…..」

司を求めて女が腰を突き出す。
だから司は容赦なく腰を打ちつけた。

「これが好きか?」

「ええ……好き…….」

「そうか。感じるか」

「ええ…….感じるわ……凄くいい…..」

「それならもっとしてやる」

司は更に激しく腰を打ちつけた。

「あッ!はあッ!__あ、あ、あ!…ああっん!ああ……」

司に突き上げられる度に女は喘ぎ顏をのけ反らす。
そして唸るか悶えることしか出来なかった。
だから司は腰を回しながら尚更激しく腰を振った。
強弱を付け、ゆっくりと、じらすように、深く突き上げた。
すると女は、もっと欲しいとみだらに腰をくねらせた。
司はそんな女の尻から手を離し身体を引いた。
女はそれが気に入らなかったようで不満の声を上げた。
そして司に向かって挑発的に腰を高く上げた。
それは司を誘惑する命を受けていたはずの女が男の獲物に変わった瞬間であり、獲物は司に喰われることを望んでいた。だから司は女の腹部から剃られることなくある豊かな黒毛に手を這わせると、脚の間に指を差し入れ性器をゆっくりともてあそんだが、貪欲な陰部はグッショリと濡れて司の指を深く呑み込み捉えた。

「もっと欲しいのか?」

司は女の中で指を回し感じやすい箇所を突いた。
すると愛液がさらに溢れた。

「ええ…..お願い…….」

「お願い?どんな願いだ?」

「どんなって…….あなたが欲しいの……」

「あなたが欲しい?それじゃ分かんねぇな」

司は背後から獲物になった女に冷たく言った。
そして女の右の尻を叩いた。

「言えよ。何が欲しいか。どこに何が欲しいか言うんだ。そうすりゃ今まで行ったことがないところにお前を連れていってやる。それからお嬢さん。物事はそううまくはいかないものだ。だからあんたをここに送り込んだ男に言うんだな。私は男を喜ばせるどころか、私の方が喜ばされました。快楽の奴隷になりましたってな」

すると女は言った。

「ええ…….分かった…..伝えるわ……だから……お願い。あなたの大きなモノを入れて!あなたのペニスを私のアヌスに入れて!」



おい!ちょっと待て!
いつの間にか寝ていた司は目を覚ましギョッとした。

司が恋人と愛し合うようになってから随分と経つが、そういった行為は経験したことがないが、こんな夢を見るということは恋人が司にアナル・セックスを求めているということなのか?

司は長い間、恋人とは純愛関係にあった。
それは日本とアメリカという遠距離恋愛であることもあったが、性に奥手だった恋人の気持を大切にしていたからだ。
だからふたりが結ばれたのは、司がアメリカで暮らすようになって2年後のクリスマス。
司は日本から会いに来た恋人と結ばれた。それ以来恋人と愛し合う中でオーラル・セックスは経験したことがあるが夢に見たようなセックスはしたことがない。
と、なると今見た夢は司の肩の一方に乗った悪魔のささやきに違いない。そしてもう片方の肩に乗った天使は止めることなく焦る司を見て笑っているはずだ。




「失礼いたします」

司は執務室に入ってきた西田の声に顏をそちらに向けた。

「支社長。お届けものがございます」

司は西田の言葉に片眉を上げた。
それは先を促す仕草。

「牧野様からこちらをどうぞとのことです」

疲れには甘い物がいいと言う恋人は、いつも差し入れをしてくれるが、西田が司の机の上に置いたのは、『きのこの山』と『たけのこの里』と書かれた小さな箱。

「西田。何だ。これは?」

「はい。こちらはチョコレート菓子でございます」

西田はそう言うと執務室を出て行った。
司は、きのこの山と書かれた箱を手に取ると開けた。
すると出てきたのは、カサがチョコレートで軸がクラッカーでできた、きのこの形をした菓子。
そしてもう一方の、たけのこの里と書かれた箱を開けると、チョコレートとビスケットでできた、たけのこの形をした菓子がある。
司は、そのとき少し前に耳にした女性社員たちの会話の内容が理解出来た。


「あたし。昨日きのこの山を買ったの」
「え?もしかしてあんた、きのこ派?」
「うん。軸のカリッとした食感が大好きなの!」
「そうなんだ。あたしは断然たけのこの里。子供の頃からあのサクサク感に手が止まらなくなるわ!」


司はまず、たけのこの形をした菓子をつまみ口に入れた。
するとチョコレートと一緒にサクサクとした食感を感じた。
そして同じように、きのこの形をした菓子をつまんだ。
だが口に入れる前にそれをじっと見た。
それは大きなカサも無ければ、その裏にあるはずのヒダも、そしてヒダの裏にある細かいスジも無い小さなきのこ。
その小さなきのこを恋人が食べる姿を想像しながら「俺のきのこは、こんなにちっちゃくねぇぞ」と呟いてから口に運んだ。そしてつい今しがた見た夢を振り返ったが、もし恋人が今まで行ったことがないところにどうしても行きたいと言うなら連れていくが、強引にことを運べばブン殴られることは分かっていた。

それにしても何故あんな夢を見たのか。
もしかすると、やはり恋人はソレを求めているのか。
だから司にこんな夢を見させたのか。
いや。それは違う。
恋人はそこまで性に奔放ではない。
だとすれば、これは自分の欲望なのか。

司は欲望やセックスが悪いとは思わない。
裸になって抱き合いたいと思うことを悪いとは思わない。
何故ならそれらは、身体の内側から溢れる相手を思う気持の表れだから。
それに心の思いを口で伝えると同時に身体で伝え合うことは恋人同士には必要だ。
それは命がけの恋をした相手となら尚更のことであり、二度と離したくないと思える相手と永遠に繋がっていたいという思いは純粋な愛だ。
だから司の恋人に対しての思いは常に純愛。
そうだ。ふたりの愛は純愛であり誰にも邪魔されることなく自由に愛し合うことができる狂詩曲(ラプソディ)だ。

司は再び小さなきのこをつまんだ。
そして今度はじっくりと見ることなく口に入れると「さてと。仕事に取り掛かるとするか」と言ってパソコンを叩き始めた。





「金持ちの御曹司」 こちらのお話が100作品目になります。
まさか100作も書くとは思いもしませんでしたが、これまで100作品にお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。
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コメント
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dot 2021.12.13 07:46 | 編集
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dot 2021.12.13 17:04 | 編集
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dot 2021.12.13 20:45 | 編集
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dot 2021.12.13 20:51 | 編集
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dot 2021.12.14 14:20 | 編集
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dot 2021.12.15 00:58 | 編集
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