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2021
11.30

記念日 5

Category: 記念日(完)
「楓さん。我が家にも鳥がいるんだが、放し飼いが過ぎてほとんど戻ってこない。だがその鳥が三日前に戻って来た。外国から羽根を休めに戻ってきたようだが、楓さん。会っていただけないだろうか?」

放し飼いをしている鳥に会う?
楓は道明寺亘が言っている意味が分からなかった。
すると男性は楓の胸の内を読み取ったかのように言った。

「いや。分かりにくいたとえで申し訳ない。我が家の放し飼いになっている鳥とは孫です。
その孫は男の子でして、いや。あなたより7歳上だから男の子という年齢ではないな」

男性は深い皺が刻まれた目尻を綻ばせた。
楓はそこで察した。
これは祖父と道明寺亘が仕組んだ見合いの場なのだと。
だとすれば祖父と祖母の敦子と道明寺亘との話は本当なのかと疑いたくなるが、果たして__?
すると道明寺亘は再び楓の胸の内を読んで言った。

「楓さん。私とお祖父さんと敦子さんの話は本当です。このブローチは紛れもなく私が敦子さんに贈ったものだ。それから私たちは話し合ったことがある。将来自分達の孫が結婚することをね」

二十歳になった楓は、これまでも両親から見合いを勧められたことがある。
それは華族の家柄であり資産家の家に生まれた娘に用意される人生の道筋。
けれどまだ大学生の楓は結婚話に乗り気になれない。だから見合いの話を受けることはなかった。それに相手のことが全て分かった上での結婚は、安全ではあるが退屈なはずだ。

だがそう思う楓の人生は恋というものとは無縁だ。
それは用意された人生を歩むなら、恋愛の真似事すらできないまま、勧められた相手と結婚しなければならないと分かっているからだ。けれど、友人の中には親の決めた結婚には従わない。自由に恋をして好きな人と結婚するという者もいる。そして恋は行き着く果てが分からないから面白いと言う。だが楓は好きだ、とか、愛してる、といった感情が分からなかった。
それは祖父や道明寺亘のように恋におちたことがないからだが、それにしても二人の老人は本当に孫同士の結婚を望んでいるのか。

「楓さん。会うだけ会っていただけないだろうか」



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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2021.12.02 01:04 | 編集
ふ*******マ様
こんばんは!
楓さんのお見合い大作戦!(≧▽≦)
コメントをいただいていたにも係わらずお返事できなくてスミマセン(>_<)
最近少々疲れが溜まっていて早寝していました。
あ、お話は予約投稿でしたのでアカシアに関係なく進んでいました。
しかし予約を忘れていた日もありました。ごめんなさいm(__)m

洋行帰りの道明寺の坊っちゃん。
どんな男性なのか。それはもう道明寺家の人間ですからね。
そしてその気質は司にも受け継がれているはずです。
こちらは短編ですので間もなく終わりますが、最後まで楽しんでいただけると幸いです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2021.12.03 23:23 | 編集
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