車が向かった先は日本の三大財閥のひとつである道明寺財閥当主の一族が暮らす邸。
道明寺家は江戸時代の豪商だが元は武士。その武士を廃業して始めたのが両替商。
そして今は商社、金融、不動産、鉱業、エネルギーなど多岐にわたる事業を展開する経済界の名門。そんな家を約束もなくいきなり訪ねて行ったが、楓が名前を名乗ると閉じられていた大きな鉄の門は音もなく開いた。
車は広大な敷地の中をゆっくりと進んだ。
暫く走ると洋風建築の大きな建物の前に止まった。
楓はそこで白髪の男性の出迎えを受けた。
そして男性は道明寺亘(わたる)と名乗り、自分が道明寺財閥の当主だと言った。
「あなたが敦子さんのお孫さんですか。葬儀には参列させていただいたのですが、おばあ様のこと。お悔やみ申し上げます」
敦子とは三ヶ月前に亡くなった楓の祖母の名前。
つい先日四十九日を終えた。
「それにしても、あなたはあの頃の敦子さんにそっくりだ。どうやら彼女の飾らない喋り方と美貌はあなたに受け継がれたようだ」
道明寺亘はあの頃の敦子さんと言った。
飾らない喋り方と美貌と言った。
つまり男性は楓の祖母の若い頃を知っているようだが、祖母と男性はどういった関係なのか。
楓は祖母の交友関係を知らない。
それに祖父の口から道明寺亘という名前を訊いたことがない。
だが祖父も道明寺亘も財界人だったことから、互いの存在は知っているはずだ。
一緒に何らかのビジネスをしたことがあってもおかしくはない。
しかし、感じられるのはビジネスではなく個人的な何か。
だが祖父が道明寺亘と個人的な付き合いがあるなら、「元の持ち主に返して欲しい」と言って箱を楓に預けることなく自分で返すはずだ。
「それで楓さん。今日はどのようなご用件でこちらに?」
道明寺亘は楓を歓待したが、何故楓が来たのかは分からないようだ。
だから楓は、「私が今日こちらにお邪魔したのは、祖父からこちらを元の持ち主に返して欲しいと言われたからです」と言って鞄から小さな箱を取り出した。

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道明寺家は江戸時代の豪商だが元は武士。その武士を廃業して始めたのが両替商。
そして今は商社、金融、不動産、鉱業、エネルギーなど多岐にわたる事業を展開する経済界の名門。そんな家を約束もなくいきなり訪ねて行ったが、楓が名前を名乗ると閉じられていた大きな鉄の門は音もなく開いた。
車は広大な敷地の中をゆっくりと進んだ。
暫く走ると洋風建築の大きな建物の前に止まった。
楓はそこで白髪の男性の出迎えを受けた。
そして男性は道明寺亘(わたる)と名乗り、自分が道明寺財閥の当主だと言った。
「あなたが敦子さんのお孫さんですか。葬儀には参列させていただいたのですが、おばあ様のこと。お悔やみ申し上げます」
敦子とは三ヶ月前に亡くなった楓の祖母の名前。
つい先日四十九日を終えた。
「それにしても、あなたはあの頃の敦子さんにそっくりだ。どうやら彼女の飾らない喋り方と美貌はあなたに受け継がれたようだ」
道明寺亘はあの頃の敦子さんと言った。
飾らない喋り方と美貌と言った。
つまり男性は楓の祖母の若い頃を知っているようだが、祖母と男性はどういった関係なのか。
楓は祖母の交友関係を知らない。
それに祖父の口から道明寺亘という名前を訊いたことがない。
だが祖父も道明寺亘も財界人だったことから、互いの存在は知っているはずだ。
一緒に何らかのビジネスをしたことがあってもおかしくはない。
しかし、感じられるのはビジネスではなく個人的な何か。
だが祖父が道明寺亘と個人的な付き合いがあるなら、「元の持ち主に返して欲しい」と言って箱を楓に預けることなく自分で返すはずだ。
「それで楓さん。今日はどのようなご用件でこちらに?」
道明寺亘は楓を歓待したが、何故楓が来たのかは分からないようだ。
だから楓は、「私が今日こちらにお邪魔したのは、祖父からこちらを元の持ち主に返して欲しいと言われたからです」と言って鞄から小さな箱を取り出した。

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