つくしの堅い決意は崩れはじめていた。
裁判所からの通達が届いた時点であの男が本気で裁判を起こすつもりであると知った。
世間でいうところの簡単な裁判ではあるが、訴訟を起こした人間があの道明寺HDの道明寺司だと知られた時点で簡単な裁判ではなくなることがわかったからだ。
世間の注目を浴びることだけはなんとしても避けなくてはならない。
地味で、平凡でおとなしい人生を歩みたいと思っただけなのに、なんでこんなことになるよ!
頭のなかを巡ることと言えば、裁判で述べられる内容についてだ。
あからさまに、文字通り赤裸々に述べられるに違いない。
あの恥知らず男め!
自分と子供のことを考えると敗北を認めない訳にはいかないと思った。
受け入れたくはないけれど、受け入れなくてはならない状況に追い込まれたように感じた。
まだ始まってもいない試合に負けた感じがして悔しくてたまらない。
難しい立場に追い詰められたと思ったが他に逃げ道が見つかりそうになかった。
司は牧野つくしについての情報を集めてはみたが、決定的な何かは無かった。
あの女を追い詰めるような何か切り札でもあればとも考えてみた。
そしてあの女の弱点でもついてやろうかと思っていたがそんな情報はなかった。
学者センセーは清廉潔白ってやつか?
司は結婚することで自分のなにが変わるんだと自問自答してみた。
たとえ結婚をしたとしてもあの女と本当の意味での夫婦になるとか、そんなことは考えてもいなかった。
女との永続的な関係なんて自分には考えられなかった。
結婚はあくまでも子供の為であって自分の為ではない。
一時的な同居とでも考えてみればいい。
そして、それはもうひとつの理由の為だ。
たとえ自分が子供を望んでいないとしてもだ。
もちろん、結婚に縛られることになった復讐はするつもりだ。
俺をコケにしやがってあの女!
選んだ男が間違いだったってことを分からせてやるからな!
本当はこんなことなんてしたくはないけど、子供の為だから仕方ない。
大きなビルの前に着いたとき、正直足がすくんでしまった。
いかにも一流企業と思われる華やかさのあるビルだった。
目についた受付でいきなり支社長に面会を求めてきた女に対して不審な表情を浮かべられた。
それもそうだろう。
つくしは道明寺司について色々と調べてみた。主にネットだけど・・
ついでに道明寺HDについても調べてみた。
そして怖くなった・・・
多岐にわたる事業を展開し、世界各国に支社を持ち、そしてあの男は強大なバックグランドを持つ名家に生まれた男だった!
やっぱり滋さんに頼らずにここに来たのは間違いだったと思った。
もちろん、いきなりアポなしで身元不明の女が訪ねて来たのだから不審がられて当然だった。それでも係の者が参りますと言われ待つこと5分。
乗り込んだエレベーターのドアが開いた先、思い切って足を踏み入れた部屋にあの男がいた。
本当はくるりと向きを変えていま来た廊下を引き返そうかと思った。
数歩入ったところでまるで汚らわしい物でも見るような目で見られた。
なによ!
あんたあたしの子供が欲しいだなんて言ってその目つきはなによ!
その視線に不快感を覚えたがつくしはしっかりと受け止めて、目をそらすまいとした。
何か皮肉でも言ってやろうかと思ったが思い浮かばなかった。
なんだか危険地帯にでも足を踏み入れてしまったかのようだった。
つくしは思わずごくりと唾をのんだ。
「ど、道明寺さん・・」
と喉に貼り付くようなその名前を呼んでみた。
「なにしに来たんだ?書類、届いたんだろ?用があるなら弁護士を通せ。通達が届いたんなら弁護士を通して話すか、裁判で話し合うしかねぇぞ?」
おまえ何しに来たんだ?と非難するような声はひどく冷たく感じられた。
思わずそこらへんにある高価そうな置物でこの男を殴ってやろうかと思った。
いったい俺は何を見ているんだ?
目の前にいるのは牧野つくしで、いったいこの女は何がしたいんだ?
支社長室に自ら訪ねて来た女は初めこそきょろきょろとあたりを見回していたかと思ったら、真っ直ぐな視線で俺を見つめてきた。
女が鞄の中から取り出したのは裁判所からの通達と思われる書類だった。
この女、視線をぶつけてきたままでそらそうとはしなかった。
いい度胸してるじゃねぇか。
弁護士を用意しろと言われたから相談した。
訴訟内容を検討しましょうと言われ、相手の名前を告げたら驚かれた。
町弁が相手に出来るような人ではありません・・そして相手が悪すぎますよと言われた。
司法の世界でもあの男の影響力ってのは相当なものなんだと驚いた。
人権派の弁護士だっていうから相談したのに・・
結論・・・結婚するなら婚前契約書を作って自分の権利を守ってはどうかと勧められた。
この男のご機嫌をそこねると大変なことになりそうだから、こちらの要求をなるべく好意的に受け取ってもらえるように妥協して作ってみた。
だから訴訟は取り下げて欲しい。
財産は何も必要ないし、何の権利も主張しない。
この男の持つすべての物に対して何も欲しくなんてない。
あたしが唯一欲しいものはこの子だけ。
この男のバックグラウンドを知ったとき、この子が取りあげられるんじゃないかという不安に襲われた。
財力と影響力を考えれば今さら逃げるとか隠れるとかしても無駄だと思った。
こうなったら正攻法で戦うしかない!
あたしが作った契約書の内容についてこの男が納得するかなんて考えてないけど、少なくともこの男がどこで、何をしようと別に構わなかった。
他の女と子供を作ってもかまわない。
それにいつ別れてくれてもいい。
それもなるべく早く!
そして子供とあたしを自由にしてくれるなら何でもあげるから!
「あ、あたし、あんたと結婚することに決めたから!」
取りあえずね・・・
それでもって契約書の内容に違反したら契約不履行で即離婚申し立てをしてやるから!

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裁判所からの通達が届いた時点であの男が本気で裁判を起こすつもりであると知った。
世間でいうところの簡単な裁判ではあるが、訴訟を起こした人間があの道明寺HDの道明寺司だと知られた時点で簡単な裁判ではなくなることがわかったからだ。
世間の注目を浴びることだけはなんとしても避けなくてはならない。
地味で、平凡でおとなしい人生を歩みたいと思っただけなのに、なんでこんなことになるよ!
頭のなかを巡ることと言えば、裁判で述べられる内容についてだ。
あからさまに、文字通り赤裸々に述べられるに違いない。
あの恥知らず男め!
自分と子供のことを考えると敗北を認めない訳にはいかないと思った。
受け入れたくはないけれど、受け入れなくてはならない状況に追い込まれたように感じた。
まだ始まってもいない試合に負けた感じがして悔しくてたまらない。
難しい立場に追い詰められたと思ったが他に逃げ道が見つかりそうになかった。
司は牧野つくしについての情報を集めてはみたが、決定的な何かは無かった。
あの女を追い詰めるような何か切り札でもあればとも考えてみた。
そしてあの女の弱点でもついてやろうかと思っていたがそんな情報はなかった。
学者センセーは清廉潔白ってやつか?
司は結婚することで自分のなにが変わるんだと自問自答してみた。
たとえ結婚をしたとしてもあの女と本当の意味での夫婦になるとか、そんなことは考えてもいなかった。
女との永続的な関係なんて自分には考えられなかった。
結婚はあくまでも子供の為であって自分の為ではない。
一時的な同居とでも考えてみればいい。
そして、それはもうひとつの理由の為だ。
たとえ自分が子供を望んでいないとしてもだ。
もちろん、結婚に縛られることになった復讐はするつもりだ。
俺をコケにしやがってあの女!
選んだ男が間違いだったってことを分からせてやるからな!
本当はこんなことなんてしたくはないけど、子供の為だから仕方ない。
大きなビルの前に着いたとき、正直足がすくんでしまった。
いかにも一流企業と思われる華やかさのあるビルだった。
目についた受付でいきなり支社長に面会を求めてきた女に対して不審な表情を浮かべられた。
それもそうだろう。
つくしは道明寺司について色々と調べてみた。主にネットだけど・・
ついでに道明寺HDについても調べてみた。
そして怖くなった・・・
多岐にわたる事業を展開し、世界各国に支社を持ち、そしてあの男は強大なバックグランドを持つ名家に生まれた男だった!
やっぱり滋さんに頼らずにここに来たのは間違いだったと思った。
もちろん、いきなりアポなしで身元不明の女が訪ねて来たのだから不審がられて当然だった。それでも係の者が参りますと言われ待つこと5分。
乗り込んだエレベーターのドアが開いた先、思い切って足を踏み入れた部屋にあの男がいた。
本当はくるりと向きを変えていま来た廊下を引き返そうかと思った。
数歩入ったところでまるで汚らわしい物でも見るような目で見られた。
なによ!
あんたあたしの子供が欲しいだなんて言ってその目つきはなによ!
その視線に不快感を覚えたがつくしはしっかりと受け止めて、目をそらすまいとした。
何か皮肉でも言ってやろうかと思ったが思い浮かばなかった。
なんだか危険地帯にでも足を踏み入れてしまったかのようだった。
つくしは思わずごくりと唾をのんだ。
「ど、道明寺さん・・」
と喉に貼り付くようなその名前を呼んでみた。
「なにしに来たんだ?書類、届いたんだろ?用があるなら弁護士を通せ。通達が届いたんなら弁護士を通して話すか、裁判で話し合うしかねぇぞ?」
おまえ何しに来たんだ?と非難するような声はひどく冷たく感じられた。
思わずそこらへんにある高価そうな置物でこの男を殴ってやろうかと思った。
いったい俺は何を見ているんだ?
目の前にいるのは牧野つくしで、いったいこの女は何がしたいんだ?
支社長室に自ら訪ねて来た女は初めこそきょろきょろとあたりを見回していたかと思ったら、真っ直ぐな視線で俺を見つめてきた。
女が鞄の中から取り出したのは裁判所からの通達と思われる書類だった。
この女、視線をぶつけてきたままでそらそうとはしなかった。
いい度胸してるじゃねぇか。
弁護士を用意しろと言われたから相談した。
訴訟内容を検討しましょうと言われ、相手の名前を告げたら驚かれた。
町弁が相手に出来るような人ではありません・・そして相手が悪すぎますよと言われた。
司法の世界でもあの男の影響力ってのは相当なものなんだと驚いた。
人権派の弁護士だっていうから相談したのに・・
結論・・・結婚するなら婚前契約書を作って自分の権利を守ってはどうかと勧められた。
この男のご機嫌をそこねると大変なことになりそうだから、こちらの要求をなるべく好意的に受け取ってもらえるように妥協して作ってみた。
だから訴訟は取り下げて欲しい。
財産は何も必要ないし、何の権利も主張しない。
この男の持つすべての物に対して何も欲しくなんてない。
あたしが唯一欲しいものはこの子だけ。
この男のバックグラウンドを知ったとき、この子が取りあげられるんじゃないかという不安に襲われた。
財力と影響力を考えれば今さら逃げるとか隠れるとかしても無駄だと思った。
こうなったら正攻法で戦うしかない!
あたしが作った契約書の内容についてこの男が納得するかなんて考えてないけど、少なくともこの男がどこで、何をしようと別に構わなかった。
他の女と子供を作ってもかまわない。
それにいつ別れてくれてもいい。
それもなるべく早く!
そして子供とあたしを自由にしてくれるなら何でもあげるから!
「あ、あたし、あんたと結婚することに決めたから!」
取りあえずね・・・
それでもって契約書の内容に違反したら契約不履行で即離婚申し立てをしてやるから!

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Comment:3
コメント
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as***na様
もどかしさ・・・
いつまで続くのでしょうか・・(笑)
司も男としてのプライドがあるようですので
簡単にはつくしに対しての気持ちを認めるということは無いような気がします。
司、粘着質の気質ですので気づけばきっと嫌というほど付き纏う?
ん?でも結婚する?(笑)
さあ、どうするんでしょうか司!
コメント有難うございました(^^)
もどかしさ・・・
いつまで続くのでしょうか・・(笑)
司も男としてのプライドがあるようですので
簡単にはつくしに対しての気持ちを認めるということは無いような気がします。
司、粘着質の気質ですので気づけばきっと嫌というほど付き纏う?
ん?でも結婚する?(笑)
さあ、どうするんでしょうか司!
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.06 22:46 | 編集

なな様
はじめまして。
いつもお読み頂き有難うございます(^^)
二人がいつ恋に落ちるのか・・
気が付けばいつの間にかと思われます(笑)
どちらが先に恋に落ちるのか、恋の予感がそろそろ・・(笑)
こちらのお話コメディ風味ですのでどうなることやら・・と言う感じです!
拍手コメント有難うございました(^^)
はじめまして。
いつもお読み頂き有難うございます(^^)
二人がいつ恋に落ちるのか・・
気が付けばいつの間にかと思われます(笑)
どちらが先に恋に落ちるのか、恋の予感がそろそろ・・(笑)
こちらのお話コメディ風味ですのでどうなることやら・・と言う感じです!
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.01.06 22:56 | 編集
