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2021
04.14

最愛 3

Category: 最愛(完)
「お父さん。ミモザなのね?」

じゃあまた後でと言って部屋を出た娘は戻って来るとそう言った。

「ああ。今年も立派に咲いていたからな」

「あの木。私が生まれた年に植えたのよね?つまりもう20年以上になるのに枯れることなく毎年花を咲かせるなんて凄いわ」

世田谷の道明寺邸の庭には大きなミモザの木があり、毎年沢山の小さな黄色い花を咲かせていた。

「あの木は暁子が生まれた記念に父さんと母さんがふたりで植えた。
真っ黄色なふっくらとしたミモザの花言葉には公平や思いやりという言葉がある。母さんはお前が思いやりのある子に育って欲しいという願いを込めてあの木を選んだ。
それに母さんいわく、春はピンクの桜もいいが黄色はパワーが貰えるそうだ。だから母さんは大きくなったミモザを見上げ青い空を指差して言っていた。Start a new life だってな」

Start a new life.
新しい生活の始まり。
それは春に年度が変わる日本社会に相応しい言葉。彼女は黄色い小さな花に向かって、また一年よろしくね、と言っていた。

「空を指差すだなんて、お母さんらしい行動ね!それにイタリアでのミモザの花言葉は感謝だけど、お父さんはいつもお母さんに感謝していたものね」

「ああ。父さんは暁子の様に素敵な女性を産んでくれた母さんに感謝してる。それに私と結婚してくれたことに感謝してる。だからこの季節は母さんの好きなミモザの花を飾ることにしてる」

司はそう言って机の上に飾られている妻の写真を手に取ったが、妻は3年前にガンで亡くなった。

「それで?急に帰国した理由は父さんの顏が見たくなったからじゃないだろ?恋人と何かあったんじゃないのか?」

司は心に思っていたことを再び口にした。
司は娘が母親に似て頭が良く聡明であることを誇りに思っていた。いや、頭だけではない。
人を思いやる心や、少しお節介なところは長女だった妻の気質だ。
そして、長い黒髪の後ろ姿は初めて会った高校生の頃の妻の姿に似ている。
それに黒目がちな大きな瞳も妻の瞳だ。そんな瞳を持つ暁子は持って生まれた性格が陽気で、物事を前向きに考える人間だ。だからもし恋人と別れたとしても、すぐに立ち直ると思うが心は見えないものだ。だから心配していた。

「うんうん。違う。彼とは順調。私が日本に戻ったら遠距離恋愛になるけど、彼、お父様の会社の日本支社で働けるように頑張るって。だからお父さんの頭の中にあることは外れよ」

娘にはそう言われたが、やはり胸に何かを抱えているように思えてならなかった。
だからその何かを取り除いてやりたかった。

「じゃあ何だ?突然の帰国の理由が父さんに会いたくなったというのは理由としては曖昧だと思うぞ」

すると娘は、「私、お父さんに訊きたいことがあって帰国したの」と言ってから沈黙を挟み、「私.....お父さんの本当の娘じゃないんでしょ?」と言った。




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コメント
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dot 2021.04.14 07:41 | 編集
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dot 2021.04.14 10:40 | 編集
ふ*******マ様
ほのぼのした父子の会話が!!
爆弾投下したつもりはないのですが、このようなお話でスミマセン。
何があったのか。それは次のお話で明らかになります。
モヤモヤも明日の朝には解消できるといいのですが....
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2021.04.14 21:53 | 編集
ま**ん様
え?一体どういうことなのか?
それはですねえ.....
明日の朝には明らかになりますので、お読みいただければと思います。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2021.04.14 21:55 | 編集
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