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2021
04.13

最愛 2

Category: 最愛(完)
司は娘の帰国を喜ばしく思いながらも、突然の帰国の理由を訊かないわけにはいかなかった。
それは、数ヶ月後にはパリを引き払い司と同じ屋根の下で暮らすというのに、それを待たずして一旦帰国して来たからだ。
だから司は訊いた。

「それで?突然帰国して急ぎの用でもあったのか?」

「うん…お父さんに会いたくなったから帰ってきた」

司はその言葉を信じたわけではないが、意外とは言えなかった。
何しろ娘は周りからパパっ子だと言われていたからだ。
だから甘えるのは母親よりも父親の司であり、それは思春期と言われる時期でも変わらなかった。
だから会いたくなったという気持ちは正直な気持ちだと思った。だが年頃の娘が親に会いたくなった理由が何であるかが気になった。

「何かあったのか?」

思い当たるのは娘が交際している男のこと。
司はパリで娘から交際相手を紹介されたことがある。同じ年のフランス人の男は礼儀正しい日本語で自己紹介をした。
もちろん、その男のことはすぐに調べた。すると男はフランスの貴族家系の出身で、父親は道明寺ほどの規模ではないが食品を手掛ける多国籍企業の社長だった。
だからもし娘がその男と結婚するなら結婚資金など貯める必要はないのだが、いや、誰と結婚するにしても司が父親である以上、娘が結婚資金を貯める必要などないのだが、本人がそうすると言うのだから無駄だと言うつもりはない。
それに未来は分からないものだ。
そして、娘は大学を卒業すると日本に帰国して司の会社で働くことが決まっている。
だから遠距離恋愛は無理だと別れることを選択したのかもしれない。そしてその辛さから突然の帰国を決めたのかもしれない。

だが娘は、「別に何もないわよ。ただお父さんに会いたくなっただけ」と言った。
それでも、年頃の娘を持つ父親なら誰もが気にする娘の恋愛。だから司は、「恋人のことか?」と思わず訊いていた。

「え?何?ゴメン。ぼんやりしていて聞いてなかった」

「….いや….何でもない」

訊いておきながら言い淀んだのは、もし司が思ったように交際相手との別れを決めて帰国してきたなら、今は何かを言うよりも、心の傷を癒してやる方が先だと思った。
だから「暁子。何日くらいいるんだ?」と訊いたが、もし滞在日数が長いようなら傷は相当深いのではないかと思う。

「3日。週末はノルウェー出身の友達の家に遊びに行くの。だから水曜にパリに発つわ」

卒業してヨーロッパを離れる前に行くところが沢山あると言う娘は帰国も突然なら出発もせわしない。
そして娘は、「お母さんに会ってくるね。じゃあまた後で」と言って部屋を出て行った。




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