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2021
02.08

金持ちの御曹司~絶体絶命~<後編>

司が手に取った写真に写っているのは司と類で女の姿はそこにない。

「おい。これ………」

司は言葉が出なかった。

「ああ。これには俺と司だけが写ってるね」

類はそう言ったが、ふたりは裸でベッドに横たわっていた。
そして類は、まるで重ねられたスプーンのように司の背後から身体を押し付けていた。

「おい…..なんだよこれは….」

「よく撮れてると思わないか?」

「よく撮れてるって、類、お前この写真…」

「これは司がアメリカで大学に通っていた頃、泊めてもらった時に撮ったんだ。どう?よく撮れてるだろ?」

類はセルフタイマーで撮ったというそれらの写真を見て微笑んだ。
だが司は微笑むことは出来なかった。
そして次に見た写真も裸のふたりが写っていた。
それは寝ている司の唇にキスをしている類の妖しくも美しい姿。

「俺さ。静香を追いかけてパリに行ったけど、向うで気付いたんだ。静香のことは姉のように思っていただけで、あれは恋じゃなかったって。それで日本に戻って来てから自分の本当の気持ちに気付いたんだ。俺が本当に恋をしているのは司だってね」

「類。お前……」

それは幼馴染みの親友から聞かされた驚愕発言で、あり得ない言葉。
だから司は言葉を継ぐ事が出来なかった。

「俺。昔から司が無防備に寝てる姿にムラムラしてた。それにお前が付けてるコロンの香りが鼻腔を満たすことに幸せを感じてた。でも俺は男で司は俺を友達としか見てくれない。それなら友達でもいいと思った。何しろ司は女が嫌いだったからね。だからいずれ家のために結婚しても、それは愛があるからじゃない。だから俺は司が結婚しても我慢できる自信があった。それにいずれ俺も花沢家のために結婚することになる。そうなったら司とは友達として一生傍にいようと思った。
でも牧野が現れて、女嫌いだったはずの司が牧野を好きになった。俺は司の幸せそうな顏を見て諦めようと思った。失恋の準備をした。だけど無理だった。俺は司のことを諦めることが出来なかった。牧野に取られたくなかった。だから牧野に恋を仕掛けた。でも牧野は司の方が好きだって…..。そしてふたりは結ばれた。だから今度こそ諦めることに決めた。ただの友達として司の傍に居ようって…….」

類は司と目を合わせたまま少し間を置いて言葉を継いだ。

「だけど司が牧野を日本に残してニューヨークで暮らし始めたとき、遠距離恋愛はいずれダメになると思った。案の定、ニューヨークで暮らし始めたお前と牧野は、すれ違いが増えた。そして喧嘩を繰り返すようなった。俺はあのとき司がビジネスと牧野のことで葛藤を抱えているのを知っていた。そうだよ。俺はお前の相談に乗りながら心の中でお前が牧野と別れることを望んでいた。
司。あの晩のこと。覚えてるだろ?俺がお前の元をと訪ねたとき俺たちは一晩中飲んだ。
酒に強いお前が酔わないことは分かってた。だから睡眠薬を混ぜた。それでお前がベッドで横になるって言ったとき、しめたと思った。お前が寝る時は裸なのは昔から変わってなくて、俺も服を脱いでベッドで横になったお前の隣に寝た。それでこの写真を撮った。それを携帯に保存していた。
もちろん他人が見ることがないように注意していた。でもこの前、ひとりで見ていたとき後ろに人の気配がして振り返ったらそこに牧野が立っていた。見られたんだよ。牧野に…..。だから牧野に伝えた。俺たちは付き合ってるんだってね。それで俺は今日ここに呼ばれたんだ。司が選ぶのはどっちの人間なのか。俺か牧野か。どっちを選ぶかカタを付けようって……. 司。俺の気持ちを分かって欲しい。俺の頭の中はあの日の司の顏が揺らいでは消えてゆくを繰り返している。司。俺は司の薬指に指輪を嵌めることは出来ない。でも俺はお前を抱きしめたい。俺は司と一緒になりたい」

「ちょっと待ってくれ…..」

司は類の口から何年も押さえつけていた感情を聞かされ言葉を失った。
そして衝撃的な写真に司の頭の中は混乱していた。
それでも、何とか気持ちを落ち着かせて言わなければならないのは、司は類とは付き合っていないということだ。
だからそれを言おうとした。
だがそこに恋人の声が響いた。

「類の気持ちはよく分かったわ。それにアタシは男同士で愛し合うことが悪いとは思わない。でも二股をかけられるのは許せない。だってアタシも類と同じくらい道明寺のことを愛しているの。だからこうなった以上、アタシと類のどちらを選ぶかはっきりカタを付けてもらいましょう。そして選ばれなかった方は潔く身を引く。類。それでいいわよね?」

司は恋人の身を引く、の言葉にギョッとした。
そして混乱していたが、今度こそ紛れもない自分の思いを恋人に伝えた。

「おい牧野。待て。お前何を言ってる?だいたい俺は類と付き合ってねえ!
それにお前と類のどちらを選ぶって、そんなのお前に決まってるだろうが!いいか?俺は男は愛せない。それに俺はお前以外の女は愛せない!」

司はそういったが類は諦めなかった。

「司….俺は男だけど誰よりも司のことを知っている。牧野よりも長い付き合いでお前が何をされれば喜ぶかもよく知っている。司。俺は互いの唇が潰れるくらいのキスをしたい。舌をからみ合わせたい。お前の口に拷問されたい。お返しにお前の首に痣の残るような激しいキスをしたい。お前のハンサムな顏が恍惚に苦悶する様子が見たい。お願いだ司。俺と生きてくれ!牧野を捨てて俺を選んでくれ!」

「類…..」

司は類の目に光るものを認めると言葉を詰まらせた。
するとその様子を見ていた恋人は言った。

「道明寺。今のアンタは躊躇いを感じている。アンタはアタシのことを選ぶっていいながら類のこと気にしてる。アタシと類との間で迷ってる…..」

「おい。バカなことを言うな。俺が言葉に詰まったのは、類が俺の幼馴染みで親友だからだ。
だからそんな類から胸の裡を伝えられて戸惑っただけだ!」

「いいえ。違うわ。アンタは迷ってるのよ……アタシと類との間で気持ちが揺れてるのよ」

と言った恋人は黙った。
そして暫くすると「やってられないわ!」と言って立ち上がって店の外に出ようとした。
だから司は慌てて後を追った。だが恋人は「アンタとはもうこれっきりよ!」と叫ぶと真っ赤なポルシェで司の前から去った。

そして残されたのは司と類。
自分と幼馴染みの親友。

「司…..牧野は俺のためにお前を諦めてくれたんだ。あいつ俺たちのために身を引いてくれたんだよ」

類は嬉しそうにほほ笑んだ。
そして司の手を握ると、きらきらし始めた目で司を見つめ「愛してるよ、司」と言って唇を重ねようとしていた。

「止めろ!類!離れろ!類!止めろ――――!!」

司は叫んで目を覚ました。
恋人がムラムラする男の仕草は何かを考えて見た夢は、何故か類が司にムラムラする夢。
それも類は司が無防備に寝ている姿にムラムラすると言った。

「気持ち悪りい……」

司は呟いた。だが夢は目が覚めた途端忘却の彼方に消えるものだ。
だから扉をノックする音に「入れ」と言って現れた西田にコーヒーを持ってくるように言った。









司は恋人と夢に出て来たのとは別のジャパニーズスタイルパブにいた。

「なあ。牧野。お前がムラムラする男の仕草って何だ?」

「ムラムラする男の仕草?何それ?おかしな事を聞くわね?」

「いいから答えてくれ」

「そうねえ…..ムラムラはしなかったけど映画の主人公の男性がメガネを外す仕草にキュンとしたことがあるわねえ。ほらメガネって顏の一部じゃない?それを外すってことは、その人の素の部分が見えるって言うの?その仕草がカッコ良かったの」

恋人の口から語られたのは、映画の主人公の男がメガネを外す仕草。
その姿にキュンとしたことがあると言った。
司の周りにいる人間で常にメガネをかけているのは秘書の西田しかいない。
だが、司は西田がメガネを外した姿を見たことがない。けれど、もし恋人が西田のメガネを外す仕草を見たからといってキュンとはしないだろう。
だが司自身がやってみる価値はある。
だからさっそくメガネを買うとかけてみた。
そして恋人の前で外してみせた。
すると恋人は言った。

「最高!道明寺!」

だがそれは笑いながらでありキュンなど全くしていないことは明らかだ。
だがそれでもよかった。
恋人が楽しければ、それでいい。
だが敢えて言った。

「なんだよ。その言い方。俺じゃ胸がときめかないって?」

「胸がときめくもなにも私は道明寺の全部にまいってるのに今更でしょ?」

司は恋人をキュンとさせることは出来なかった。
だが恋人は司をキュンとさせることが出来る。

「そうか。お前。俺の全部にまいってるか…..」

そう答えた司は恋人の言葉ひとつで幸せを感じることが出来る。
そして彼女はこの瞬間もその幸せを感じさせてくれた。

「うん。そうよ。だからメガネなんてかけなくてもいいの。道明寺はそのままが一番よ!」





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コメント
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dot 2021.02.08 07:37 | 編集
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dot 2021.02.08 08:15 | 編集
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dot 2021.02.08 23:51 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
意表をついた御曹司シリーズでしたか?
アカシアはBLドラマなるものを見たこともなければ、本も読んだことがないのです。
それにしても司も変な夢を見たものですね(笑)
つくしも恋人の二股相手がまさかの類で驚いたことでしょう。
え?類の名前を見たくないですか?
あ、これはアカシアが悪いですよね。類くん。ゴメンねm(__)m
アカシアdot 2021.02.11 21:22 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
司と類のBL的なお話にニヤニヤありがとうございましたm(__)m
しかし、つくしに去られ類に迫られる。司にとっては悪夢ですね(笑)

BLではないけど、BL感を醸し出す小説があるんですね!(笑)
そしてそれを読むと妄想の嵐(笑)
いいですねえ。その嵐をぜひ2年後は大河ドラマにも向けて下さいね!(≧▽≦)
え?総二郎とはまだ書かれてない?
と、いうことは、アカシアあきらとの話を書いているんですね!
もう全然記憶がないです(笑)
総二郎は司にどう迫るのでしょう。ちょっと気になりますね(笑)
アカシアdot 2021.02.11 21:24 | 編集
ふ**ん様
類が熱かったですか?(笑)
こちらが花沢類子ですが、類くん版の「情熱大陸」だった!(≧▽≦)
確かに類の司に対する気持ちに情熱を感じます。
そして男の類がムラムラする司の裸。
え?スプーンが重なるように裸で眠るふたりの写真をポスターにして例の企画の特別付録第二弾にですか!?
編集長。ありがとうございますm(__)m でも目のやり場に困りそうです。
それにしても、メガネを外す姿が好きなつくしのためにメガネを購入する男は、恋人のことに関しては本当に純粋ですね。
アカシアBLは読んだことが無いのですが、楽しんでいただけて良かったです!
アカシアdot 2021.02.11 21:50 | 編集
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