「ねえ。貴子がムラムラする男の仕草って何?」
「え?ムラムラする男の仕草?ちょっと何よその質問。それにドキドキじゃなくてムラムラだなんて何でそんなこと訊くのよ?」
「うん。『an・nan』って雑誌あるじゃない?」
「『an・nan』?ああ。あれね?アイドルの裸とかセックスについての記事が載る雑誌ね?」
「そう。その雑誌なんだけどね、あなたがムラムラする男の仕草って何?って記事があったの。だから貴子に訊いてみようと思って。ちなみにあたしは、はにかんでほほ笑む姿かな?」
「はにかんでほほ笑む姿?」
「そうなの。普段は厳しい顔して仕事をする男が、あたしの前で照れ笑いする姿が最高!
もうそんなことされたらキュンとかドキドキを通り越してムラムラしてどうしようもなくなるわ!それで?貴子は男のどんな仕草にムラムラするの?」
「あたし?……..そうねぇ…….やっぱりアレかな?人差し指をネクタイの結び目に入れて徐々に緩めていく仕草かなぁ」
「なんだ。貴子って以外と普通なのね?」
「ふふふ….以外と普通だって言うけど、あたしがその姿を見たいと思う男は支社長よ。
あたしいつも想像するの。秘書になったあたしは夜遅くまで仕事をする支社長に書類を渡すために執務室に入るの。そうしたら支社長は人差し指をネクタイの結び目に入れて緩めようとしているの。そんな支社長にあたしは書類を渡すために近づいたところで引き寄せられるの。
それで『貴子。書類なんかいいからキスしてくれ』って言われて書類を取り上げられてキスされるの。それから支社長はあたしを抱き上げて応接ソファまで運ぶの。それであたしたちはそこで愛し合うの!!」
「きゃー!貴子ったらそんなこと考えてたの?でもあんたのその妄想。絶対に叶うことはないから!だけど夢見るのは勝手だもんね!」
司は緩んでいた靴紐を結び直そうと、しゃがんだところでエレベーター待ちの女子社員の会話を耳にした。
だからそのままの姿勢で柱の陰にいた。
そして貴子という女を恋人の牧野つくしに置き換えていた。
それはこれまでも何度も頭の中を過る恋人が秘書だったらという妄想。
もし恋人が秘書だったら、貴子が言う通り執務室の応接ソファに押し倒して身体中を舐め回したい。それに恋人が秘書だったら、こうして恋人の姿を求めて社内を歩き回ることはない。
朝から晩まで傍にいて耳元で愛を囁くことが出来る。肩を抱く事は出来なくても偶然を装って手を握ることは出来る。
だが現実は甘くない。司の秘書は西田という銀縁メガネの中年男。
朝から晩まで傍にいて、隙あらば執務室を抜け出そうとする司を掴まえる。
サインをしろと山のように書類を持ってくる。それに何故かいつも夢の途中に割り込んで来る。だがそれは良しとしなければならない。
何故なら時に西田の割り込みで命拾いをすることがあるからだ。
執務室に戻った司は貴子の言葉に興味を抱いた。それに気になった。
それは恋人が男のどんな仕草にムラムラするのかということ。
だが恋人は奥手だ。だからふたりが愛し合うとき積極的に求めるのは司の方だ。
それに恋人の方からベッドに誘われたことがない。
だが恋人もベッドに入れば司を求めていることに間違いはなく、愛し合えばふたりは熱く燃えた。
だがそうは言っても、やはり恋人が男のどんな仕草にムラムラするのか気になる。
司はそう思いながら目を閉じた。
司が夕暮れ迫る時間に恋人に呼び出されたのはジャパニーズスタイルパブ。
日本語で言えば居酒屋。
少しだけ高級な雰囲気のあるそこの個室で恋人から開口一番言われたのは、「一体どういうことなの?ちゃんと説明して!」
司はそう言われたが、彼女が何を言っているのか全く分からなかった。
「どういうことって何がどういうことだ?それに説明ってなんだよ?」
「何がどういうことよ!今更とぼけないでよ!アタシ全部知ってるんだからね!」
「おい待て…..とぼけるもなにも俺はとぼけてない。だから何でお前が怒っているかマジで分かんねぇ」
「アンタって男は……まだとぼける気?アタシが何も知らないと思ってそうやって逃げる気ね!」
司は恋人から物凄い剣幕でとぼけるな。全部知ってると言われたが、何のことかサッパリ分からなかった。
「牧野。ちょっと待て。全部知ってる?それに俺が逃げる?一体なんの話をしてるんだ?落ち着いてちゃんと分かるように話せ」
司は怒りで興奮している恋人を落ち着かせようとした。
だが恋人は落ち着くどころか信じられないような事を口にした。
「落ち着けですって?よくもそんなことが言えるわね……じゃあ言うわ。アンタ今まで二股かけてたんでしょ!」
「はあ?」
「はあ?何がはあよ!気の抜けた返事しないでよ!」
「気の抜けた返事って言うが、俺は二股なんかかけてない。それにお前以外に愛している女はいない!」
「そう……。白を切るつもりなのね。いいわ。アンタがその気なら証拠を見せてあげるわ!」
司は二股をしているという嫌疑をかけられた。
そしてその証拠を見せると言われたが、恋人オンリーの男に他に女などいるはずもなく、そんなものあるはずがない。だから恋人は何かを勘違いしているのだと思った。誤解だと思った。たまたま近くにいた女と写真を撮られたとかそんなものだと思った。
だから携帯電話を操作している恋人の名前を優しく呼んだ。だが睨まれた。
そしてもう一度「牧野……..」と呼び掛けたところでふたりの前に類が現れた。
「司……」
「類!おい。丁度よかった。牧野が俺が二股をかけているって誤解している。俺が牧野以外の女を愛せる訳がないのにだ!類。お前からも俺が浮気するような男じゃないって話してくれ。俺は牧野つくし一筋だってな!」
ジャパニーズスタイルパブに偶然現れた類。
恋人は類の話すことなら信じるはすだ。
何しろ恋人の言うところの魂の片割れという関係のふたり。
今でこそ、その関係を認めているが、初めはそんなことを言う恋人をバカじゃなかろうかと思った。そして類も牧野つくしとは友人以外の何ものでもないと言ったが、かつて司と類は彼女を巡って対立した経緯がある。
けれど、あれから類は司と恋人の友人として彼らの傍にいた。
そんな類はどこか哀しそうな顏をして司の前にいた。
「司。バレたなら仕方がないよ。牧野のためにも自分の気持ちを正直に伝えた方がいい」
司は自分の味方になってくれると思っていた類の口から出た思わぬ言葉に、この男何を言ってるんだと声を荒げた。
「類?お前何か知ってるのか?それに何を言ってる?バレるもなにも俺はこいつ以外に女はいない!それに二股どころか他の女には一切興味がない!第一お前は俺が女嫌いだったのを一番良く知ってるだろうが!それに正直もなにも俺の気持ちが牧野つくし以外に向いたことはない!」
「司。でも牧野は知ってるんだ。知ってしまったんだよ」
司は類が司が知らない何かを知っているように思えた。
「類?お前何言ってる?牧野が知ってるって…..」
「司。これ」
そう言った類はポケットの中から取り出した数枚の写真を司の前に置いた。
「これは…….」
司は一番上に置かれている写真を手に取った。
「ああ。この写真を見た牧野はお前が二股をかけていることを知ったんだ」

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「うん。『an・nan』って雑誌あるじゃない?」
「『an・nan』?ああ。あれね?アイドルの裸とかセックスについての記事が載る雑誌ね?」
「そう。その雑誌なんだけどね、あなたがムラムラする男の仕草って何?って記事があったの。だから貴子に訊いてみようと思って。ちなみにあたしは、はにかんでほほ笑む姿かな?」
「はにかんでほほ笑む姿?」
「そうなの。普段は厳しい顔して仕事をする男が、あたしの前で照れ笑いする姿が最高!
もうそんなことされたらキュンとかドキドキを通り越してムラムラしてどうしようもなくなるわ!それで?貴子は男のどんな仕草にムラムラするの?」
「あたし?……..そうねぇ…….やっぱりアレかな?人差し指をネクタイの結び目に入れて徐々に緩めていく仕草かなぁ」
「なんだ。貴子って以外と普通なのね?」
「ふふふ….以外と普通だって言うけど、あたしがその姿を見たいと思う男は支社長よ。
あたしいつも想像するの。秘書になったあたしは夜遅くまで仕事をする支社長に書類を渡すために執務室に入るの。そうしたら支社長は人差し指をネクタイの結び目に入れて緩めようとしているの。そんな支社長にあたしは書類を渡すために近づいたところで引き寄せられるの。
それで『貴子。書類なんかいいからキスしてくれ』って言われて書類を取り上げられてキスされるの。それから支社長はあたしを抱き上げて応接ソファまで運ぶの。それであたしたちはそこで愛し合うの!!」
「きゃー!貴子ったらそんなこと考えてたの?でもあんたのその妄想。絶対に叶うことはないから!だけど夢見るのは勝手だもんね!」
司は緩んでいた靴紐を結び直そうと、しゃがんだところでエレベーター待ちの女子社員の会話を耳にした。
だからそのままの姿勢で柱の陰にいた。
そして貴子という女を恋人の牧野つくしに置き換えていた。
それはこれまでも何度も頭の中を過る恋人が秘書だったらという妄想。
もし恋人が秘書だったら、貴子が言う通り執務室の応接ソファに押し倒して身体中を舐め回したい。それに恋人が秘書だったら、こうして恋人の姿を求めて社内を歩き回ることはない。
朝から晩まで傍にいて耳元で愛を囁くことが出来る。肩を抱く事は出来なくても偶然を装って手を握ることは出来る。
だが現実は甘くない。司の秘書は西田という銀縁メガネの中年男。
朝から晩まで傍にいて、隙あらば執務室を抜け出そうとする司を掴まえる。
サインをしろと山のように書類を持ってくる。それに何故かいつも夢の途中に割り込んで来る。だがそれは良しとしなければならない。
何故なら時に西田の割り込みで命拾いをすることがあるからだ。
執務室に戻った司は貴子の言葉に興味を抱いた。それに気になった。
それは恋人が男のどんな仕草にムラムラするのかということ。
だが恋人は奥手だ。だからふたりが愛し合うとき積極的に求めるのは司の方だ。
それに恋人の方からベッドに誘われたことがない。
だが恋人もベッドに入れば司を求めていることに間違いはなく、愛し合えばふたりは熱く燃えた。
だがそうは言っても、やはり恋人が男のどんな仕草にムラムラするのか気になる。
司はそう思いながら目を閉じた。
司が夕暮れ迫る時間に恋人に呼び出されたのはジャパニーズスタイルパブ。
日本語で言えば居酒屋。
少しだけ高級な雰囲気のあるそこの個室で恋人から開口一番言われたのは、「一体どういうことなの?ちゃんと説明して!」
司はそう言われたが、彼女が何を言っているのか全く分からなかった。
「どういうことって何がどういうことだ?それに説明ってなんだよ?」
「何がどういうことよ!今更とぼけないでよ!アタシ全部知ってるんだからね!」
「おい待て…..とぼけるもなにも俺はとぼけてない。だから何でお前が怒っているかマジで分かんねぇ」
「アンタって男は……まだとぼける気?アタシが何も知らないと思ってそうやって逃げる気ね!」
司は恋人から物凄い剣幕でとぼけるな。全部知ってると言われたが、何のことかサッパリ分からなかった。
「牧野。ちょっと待て。全部知ってる?それに俺が逃げる?一体なんの話をしてるんだ?落ち着いてちゃんと分かるように話せ」
司は怒りで興奮している恋人を落ち着かせようとした。
だが恋人は落ち着くどころか信じられないような事を口にした。
「落ち着けですって?よくもそんなことが言えるわね……じゃあ言うわ。アンタ今まで二股かけてたんでしょ!」
「はあ?」
「はあ?何がはあよ!気の抜けた返事しないでよ!」
「気の抜けた返事って言うが、俺は二股なんかかけてない。それにお前以外に愛している女はいない!」
「そう……。白を切るつもりなのね。いいわ。アンタがその気なら証拠を見せてあげるわ!」
司は二股をしているという嫌疑をかけられた。
そしてその証拠を見せると言われたが、恋人オンリーの男に他に女などいるはずもなく、そんなものあるはずがない。だから恋人は何かを勘違いしているのだと思った。誤解だと思った。たまたま近くにいた女と写真を撮られたとかそんなものだと思った。
だから携帯電話を操作している恋人の名前を優しく呼んだ。だが睨まれた。
そしてもう一度「牧野……..」と呼び掛けたところでふたりの前に類が現れた。
「司……」
「類!おい。丁度よかった。牧野が俺が二股をかけているって誤解している。俺が牧野以外の女を愛せる訳がないのにだ!類。お前からも俺が浮気するような男じゃないって話してくれ。俺は牧野つくし一筋だってな!」
ジャパニーズスタイルパブに偶然現れた類。
恋人は類の話すことなら信じるはすだ。
何しろ恋人の言うところの魂の片割れという関係のふたり。
今でこそ、その関係を認めているが、初めはそんなことを言う恋人をバカじゃなかろうかと思った。そして類も牧野つくしとは友人以外の何ものでもないと言ったが、かつて司と類は彼女を巡って対立した経緯がある。
けれど、あれから類は司と恋人の友人として彼らの傍にいた。
そんな類はどこか哀しそうな顏をして司の前にいた。
「司。バレたなら仕方がないよ。牧野のためにも自分の気持ちを正直に伝えた方がいい」
司は自分の味方になってくれると思っていた類の口から出た思わぬ言葉に、この男何を言ってるんだと声を荒げた。
「類?お前何か知ってるのか?それに何を言ってる?バレるもなにも俺はこいつ以外に女はいない!それに二股どころか他の女には一切興味がない!第一お前は俺が女嫌いだったのを一番良く知ってるだろうが!それに正直もなにも俺の気持ちが牧野つくし以外に向いたことはない!」
「司。でも牧野は知ってるんだ。知ってしまったんだよ」
司は類が司が知らない何かを知っているように思えた。
「類?お前何言ってる?牧野が知ってるって…..」
「司。これ」
そう言った類はポケットの中から取り出した数枚の写真を司の前に置いた。
「これは…….」
司は一番上に置かれている写真を手に取った。
「ああ。この写真を見た牧野はお前が二股をかけていることを知ったんだ」

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司*****E様
ムラムラする男性の仕草。
なるほど….J君がたまにやる「その」姿にドキッとするんですね!(≧▽≦)
お話は浮気疑惑をかけられた司のお話でしたが、司がつくしにフラれるかもしれない。
それは司にとって絶体絶命の状況ですが、どうなるかと思えば....
そんな前編からの後編です(*'ω'*)
ムラムラする男性の仕草。
なるほど….J君がたまにやる「その」姿にドキッとするんですね!(≧▽≦)
お話は浮気疑惑をかけられた司のお話でしたが、司がつくしにフラれるかもしれない。
それは司にとって絶体絶命の状況ですが、どうなるかと思えば....
そんな前編からの後編です(*'ω'*)
アカシア
2021.02.11 21:15 | 編集
