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2015
12.25

恋の予感は突然に 11

司は濡れた髪に指をさし込むと後ろへとかき上げた。
そして釈然としない想いで牧田月子のことを考えていた。
わかってはいたが、案の定逃げられた。

熟睡するたちではなかったが、なぜかあの日は朝まで目が覚めることがなかった。

これまで寝る相手は自分で選んできた。
類も言っていたが、どう考えても牧田月子は俺の好みのタイプじゃなかった。
けど類が言ったことが正しいわけじゃねぇ。
確かにチビだし、色気なんて全然ねぇし、身体は・・・胸は小さいが形はきれいだった。
ウエストは俺の両手で掴めばその手に収まる程細かったし掴んでゆすったら壊れるんじゃねぇかと思った。
あんなちっちぇえ身体でよく俺を受け入れたもんだと感心した。
経験のない女が俺を受け入れるのははっきり言って苦しかったはずだ。
・・・そうだ。あの女は経験がなかった。
よくわかんねぇけど、はじめてってのは痛いもんなんだろ?
なのにそんなことはひと言も口になんてしなかったがな。


けど口は達者で自己主張もはっきりしていた。
なんか知らねぇが堅い決意ってもんが感じられていた。
今まで俺の周りにいた女は俺に嫌われるのが余程嫌なのか、自己主張する女なんていなかった。ツマンネー女ばっかだったってことだな。

あの女の矛盾だらけの話しは眉唾ものだが・・・
・・・あの女、ぜってぇ年を誤魔化していやがる。

なにが尼寺に入るから俗世間最後の思い出だ!
わけの分からない話しをベラベラと喋ってたけどあの女自分でもわけわかってねぇんじゃねぇの?


女と寝るときはどこか理性が働いていた。
それはいつも感じていた。
どこかで別の自分が冷静な目で自分自身を見ているようで満足感なんて感じられなかった。
単なる男としての欲求を満たしているだけに過ぎなかった。

だがあの時は感情にあおられて容赦なく奪っていた。
拒むことも逃げることも許さないように奪った。
そして、そうしながらもっと他にどんなことがあるのか教えてやりたいと思っていた。
本来なら女の初めては愛されて、慈しまれて、甘やかしてやるべきだろう。
なのにあの女、やることだけやって頂戴って感じだった。




・・・おい、待てよ?
それって・・・アレか?
女の立場にたってみれば・・・

俺はあの女の欲求不満処理の相手をさせられたってことか?
俺があの女のおもちゃにされたってことか?


冗談じゃねぇぞ!!


あの女・・自称28歳の牧田月子は無垢だった。
誰かを待っていたからその年まで無垢でいたかったのか?
それとも自分にふさわしいと思える男がいなかったからなのか?
けどあの女、やることが大胆だよな?

どちらにしても、あの女を見つけ出して聞かなければならないことがあった。
そしてどうしても牧田月子のことが頭から離れなかった。
いつまでも正体不明な女でいられると思うなよ、牧田月子!




イテッ・・


切っちまったか・・
司は顎に手をあてると鏡のなかの自分を確認していた。









背中がゾクゾクした・・・
そんなことあるわけないけど鏡の向うから誰かに睨まれているような気がした。


つくしは浴室の鏡の前で自分の肩につけられた赤い痣を見ていた。
気づけばそれは所有の印のようにつけられていた。

牡馬が牝馬と交尾をするとき制圧化に置くように牝馬の首元を噛むが、まるでその行為の痕のようだ。
素肌を噛んで唇で吸われた痕。
どの動物の世界でも雄は同じような行動を見せる。
マーキング行動・・・
あのバカ男、あたしにこんなもの付けて何考えてるのよ!


ゲームのルールはわかっていた・・・
一夜限りのつき合い・・

つくしは記憶をたどった。
あたしは心と身体を引き離そうとしたけど・・・
ダメだった。
男に愛されるってどんな感じなのかずっと想像はしていたけど、現実は想像していたのとは違っていた。
まず第一に男の身体があんなに熱いだなんて知らなかった。
熱い身体に抱きしめられたとき、自分の身体が溶かされていきそうに感じられた。
まるでフライパンに落とされたバターのようだった。
だんだんと身体の力が抜けてくるとふにゃりとして男の手で思いのままに弄ばれているように感じた。
お腹に置かれた手の大きさとその熱に身体の奥が疼くような感じがしていた。
ちょうど、その手の下は子宮があるところ・・・
そしてあの男の頭があたしの・・・


何考えてるのよ、あたしは!
つくしは頭のなかに浮かんだ情景を描き消そうと自分のお腹に手をあてると目を閉じた。
もうすぐあたしのお腹のなかにあの男の子供がいるかどうかが分かる日が来る。
あたしの体内時計は正確だ。生理が予定通りにこなければ間違いないはずだ。
不安を感じないと言えば嘘になる・・
つくしは目の前にある小さな箱を手にした。
妊娠検査薬。これを使う日がもうすぐ来るはずだ。






司は電話を切ると立ち上がった。
俺は頭がどうかしているにちがいない。
あの嘘つき女、牧田月子の為に振り回されているなんて。
いいや。これは多分仕事のし過ぎだ。

スーツの上着を羽織ると支社長室から廊下へ出た。
慌てて後ろから付き従う秘書とエレベーターに乗ると一気に1階まで降りていく。
エントランスロビーには何人かの集団がいて俺を認めると挨拶をしてきた。
当然だが無視した。
今の俺の顔みてなんか言ってくるやつがいたら大したもんだと褒めてやる。

司は建物の外へ出ると待たせていた車に乗り込んでいた。
一瞬だが冷たい空気にあたり、頭の中がすっきりとして少しはまともにものが考えられる気がしていた。

真面目くさった顔で嘘をつく女が気になるなんてどうかしてるな。
見つからないから気になるだけだと自分に言い聞かせてみても、どうしても気になる。
あの女のどこがそんなに気になるのかすらわからなくなってきた。



奪って欲しいと言われたから、それまでのことをしただけだと言うのに
最近の俺は以前にも増して・・と言うより牧田月子に会ってから益々不機嫌になったんじゃねぇかと言われていた。
結局あきらや総二郎は滋が連れてきたあの女のことは全く知らなかった。
肝心の滋は海外での生活に戻ってしまって連絡が取れない。
滋のやつ、わざと俺からの電話に出ねぇつもりでいるな?
今度帰国したら絞めてやるから覚えてろよ!






ジェット機のタラップを上りながら司はうんざりとしてため息をついた。
これからNYまでの機内の中でもあの女のことが頭から離れそうになかった。
いつもは読まない雑誌でも読むかとページを開いたとき、あの女がそこにいた。








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コメント
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dot 2015.12.25 08:05 | 編集
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dot 2015.12.25 13:02 | 編集
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dot 2015.12.25 13:13 | 編集
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dot 2015.12.25 14:44 | 編集
ポ*コ様
面白かったですか(笑)
ご感想を有難うございました。
ドタバタしていますが楽しんで頂けて良かったです。
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.12.25 23:03 | 編集
た*き様
はい、つくしは優秀な人物のようです。
ただその道についてはスペシャリストでも他のことについては
どうなんでしょうね?(笑)
結構天然なところがあります(笑)
そ、そうですねぇ・・あの方なら言いそうです。
本当に言いそうです!
バカ息子、本当にバカなのか?
そうなんです。つくしちゃん、司を馬に例えていました!
本当に子種だけでいいのか?
もったいないですよね?
いつもコメント有難うございます(^^)
アカシアdot 2015.12.25 23:12 | 編集
つか***ちゃん様
司の逆襲(笑)どんな逆襲になるんでしょうねぇ。
逆に返り討ちされるかもしれませんね(笑)
取りあえずNYへは行ったようです。
仕事ですから。←拙宅は仕事には厳しいです(笑)
あの雑誌はどうしたんでしょうね。
司、つくしのことが気になるみたいです。
何故気になるのでしょか・・・理由は?
早朝更新でもお読み頂けて嬉しです。
拍手コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.12.25 23:25 | 編集
ま**ん様
いえいえご丁寧に有難うございます。
年末も差し迫って皆様もお忙しいなか、お読み頂き有難うございます。
そうなんです。思わぬところでバレました。
これから二人はどうなるんでしょうねぇ(笑)
この二人ならどうするかなぁ・・なんて思っています。
こんなラブコメ風味を楽しんで頂けて有難いです。
ま**ん様もお身体をご自愛くださいませ。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.12.25 23:33 | 編集
サ*ラ様
つくしちゃん逃亡!
勿論です。目的を遂げた今、彼女は満足していると思います。
いやいや思わず笑いました、初体験のお相手という気持ちに毛が生えた程度!
お見事な表現です。特別な感情は今のところ芽生えてはいないようです。
司、利用されただけみたいです。あの司がですよ?(笑)
イケメンも形無しですね。それも選ばれた理由がバカっぽいからって・・(笑)
そうですよね、あちらのお話では辛い思いをしてますから、こちらで振り回してやりたいですね。
あちらのお話も年内にもう一話と思っています。
つくしの研究分野、明日明らかになります。頭はいいのにどこかズレてる。
その道を究めようとする人にありがちな独りよがりの部分があるのかもしれません。
クリスマスのお話もお読み頂けて嬉しいです。有難うございます。
来年には家族が増えます。忙しくなりそうです。
今夜のクリスマスディナーどうだったんでしょうねぇ。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.12.25 23:53 | 編集
as***na様
赤ちゃん、宿ったのか?
どうなんでしょうね(笑)
そろそろ分かりそうです。
なにしろつくしの体内時計は正確のようです。
機内で何気なく手にした雑誌。
いつもはそんなものは読まないが、何故か手にしていました。
運命だったのでしょうか?
この二人はどんな状況でも運命の赤い糸で結ばれているのでしょか。
でも今のつくしにはそんな気配は全くありません。
どうするのでしょうねぇ。
いつもコメントを有難うございます(^^)
アカシアdot 2015.12.26 00:03 | 編集
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