司が原稿用紙の入った封筒を渡すと牧野つくしはホッとした表情を浮かべた。
そして、「ありがとうございます。お手数をおかけいたしました」と言って大事そうに抱えた。
食事は人の距離を近づける。
そして司は牧野つくしがフランス料理ならブイヤベースとカリフラワーのマリネが好きなことを知った。
「それならシェフに作らせましょう。いかがですか?来週のこの時間?今夜のように教授の原稿を受け取った後、私と食事をしませんか?」
「でも…..」
「私と食事をする理由が必要ですか?」
「はい」
「そうですか。それなら言いましょう。私はあなたのことが好きです。勿論本気です」
誰もが知る企業の副社長であり、都内に広大な敷地の邸を持ち、財力も美貌も持つ男からそう言われれば、どんな女も悪い気はしない。
だが牧野つくしは料理を飲み込むのではなく、空気を呑み込んで驚いた顏をしていた。
「そんなに驚くことですか?人は何かの加減で知り合う。そして男と女は何かの加減で相手に惹かれるようになる。その何かとは人によって違う。
私は立場上大勢の人間に会ってきました。ですがあなたのような瞳を持つ女性に会ったことがない。私はあなたの真っ直ぐな瞳に魅せられた。あなたの瞳は意志の強さが感じられる。あなたはその真っ直ぐな瞳と同じで真っ直ぐな人間だ。
それに私はこれまで自分に正直に生きてきた。だからあなたのことが好きだというのは嘘ではありません。それからあなたの声も好きです」
司は言葉に余韻を残して言うと、黙っている女を前に言葉を継いだ。
「ああ。それから私の立場は気にしないで下さい。あなたの前にいるときの私はただの男ですから」
以来、司は週に一度牧野つくしと食事をするようになった。
そして好きだと言われた女は、そんな司の思いに初めは逃げ腰だった。
だが、戸惑いながらも真剣に焦がれられれば、強固なネジで留められている心の扉を少しずつ開き始めた。

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そして、「ありがとうございます。お手数をおかけいたしました」と言って大事そうに抱えた。
食事は人の距離を近づける。
そして司は牧野つくしがフランス料理ならブイヤベースとカリフラワーのマリネが好きなことを知った。
「それならシェフに作らせましょう。いかがですか?来週のこの時間?今夜のように教授の原稿を受け取った後、私と食事をしませんか?」
「でも…..」
「私と食事をする理由が必要ですか?」
「はい」
「そうですか。それなら言いましょう。私はあなたのことが好きです。勿論本気です」
誰もが知る企業の副社長であり、都内に広大な敷地の邸を持ち、財力も美貌も持つ男からそう言われれば、どんな女も悪い気はしない。
だが牧野つくしは料理を飲み込むのではなく、空気を呑み込んで驚いた顏をしていた。
「そんなに驚くことですか?人は何かの加減で知り合う。そして男と女は何かの加減で相手に惹かれるようになる。その何かとは人によって違う。
私は立場上大勢の人間に会ってきました。ですがあなたのような瞳を持つ女性に会ったことがない。私はあなたの真っ直ぐな瞳に魅せられた。あなたの瞳は意志の強さが感じられる。あなたはその真っ直ぐな瞳と同じで真っ直ぐな人間だ。
それに私はこれまで自分に正直に生きてきた。だからあなたのことが好きだというのは嘘ではありません。それからあなたの声も好きです」
司は言葉に余韻を残して言うと、黙っている女を前に言葉を継いだ。
「ああ。それから私の立場は気にしないで下さい。あなたの前にいるときの私はただの男ですから」
以来、司は週に一度牧野つくしと食事をするようになった。
そして好きだと言われた女は、そんな司の思いに初めは逃げ腰だった。
だが、戸惑いながらも真剣に焦がれられれば、強固なネジで留められている心の扉を少しずつ開き始めた。

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