あけましておめでとうございます。
今年は心身共に健康な日々が過ごせますように。
そして今年もよろしくお願いいたします。
なお、こちらのお話は短編です。
***********************
カラカラカラカラカラ........
どこかが壊れているのか。そんな音をさせながら自転車はいつものように邸の横を通り過ぎて行った。
司がその音を耳にするようになってから1ヶ月が経った。
彼は毎晩同じ時間にここにいて、その音を訊いていた。
ここは高級住宅地に広い敷地を持つ道明寺邸の一角にある古い洋館。
母屋はコロニアル様式だが、この建物は大正末期から昭和初期にかけて流行ったスパニッシュ様式。
建物がある場所は日が当たらないと言われる北側だが、それでもここは鬱蒼と葉を茂らせた背の高い常緑の木々が森の様相を呈していた。そして風が強く吹けば枝がいっせいに揺れてざわざわと音を立てる。だが茂った葉は地上に届くはずの日の光りを全て吸い込む。だから地面は湿り気を帯び苔に覆われていた。
そんな場所だから洋館の中は薄暗く陽光が射し込むことはない。
けれど目が慣れてしまえば、その暗さは気にならなかった。
それにどの部屋も隅々まで手入れが行き届いていて、家具は優雅な本物のアンティークだ。
だが司がこの建物に足を踏み入れたのは、道明寺財閥の後継者として副社長の地位についてから。
それまでここに古い洋館があることは知っていたが、足を踏み入れようとは思わなかった。
だがあるとき、暇潰しにこの場所を訪れた。
この建物は司の祖父が建てた。
その祖父は司が幼い頃に亡くなっていて、その姿は記憶の中にない。
そんな祖父は戦前から続く道明寺財閥の当主だったが、絵を描くことを趣味としていたという。だからこの建物の中には祖父がアトリエとして使っていた部屋があるが、司は絵を描く趣味はない。
それなら何故司が毎日決まった時間にここにいて、壊れそうな自転車が立てる耳障りな音を訊いているのか。それはこの場所を気に入っているからだ。
はじめてこの建物の中に足を踏み入れたとき、鍵が掛けられた部屋を見つけた。
邸を管理している執事はこの建物について前任の執事から聞いていることがあると言った。
それは鍵のかかった部屋があるが、その鍵は祖父が持っていたということ。だが祖父が亡くなったことから鍵がどこにあるのか分からないということ。だから執事は業者を呼んで鍵を開けようとした。だが開かなかった。
しかし司は道明寺の男が大切なものがあるならそこに隠すであろうという予測の元に探した場所で鍵を見つけた。
そして祖父が亡くなって以来誰も足を踏み入れたことがないと言われる部屋の扉を開いて中に入った。するとそのとき死んだ祖父の息づかいが聴こえたような気がした。
そして記憶にはない祖父だが、その祖父が机の引き出しの中に自分の趣味に使っていた道具を整然と並べて保管している様子から自分の性癖は祖父譲りなのだと知った。

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カラカラカラカラカラ........
どこかが壊れているのか。そんな音をさせながら自転車はいつものように邸の横を通り過ぎて行った。
司がその音を耳にするようになってから1ヶ月が経った。
彼は毎晩同じ時間にここにいて、その音を訊いていた。
ここは高級住宅地に広い敷地を持つ道明寺邸の一角にある古い洋館。
母屋はコロニアル様式だが、この建物は大正末期から昭和初期にかけて流行ったスパニッシュ様式。
建物がある場所は日が当たらないと言われる北側だが、それでもここは鬱蒼と葉を茂らせた背の高い常緑の木々が森の様相を呈していた。そして風が強く吹けば枝がいっせいに揺れてざわざわと音を立てる。だが茂った葉は地上に届くはずの日の光りを全て吸い込む。だから地面は湿り気を帯び苔に覆われていた。
そんな場所だから洋館の中は薄暗く陽光が射し込むことはない。
けれど目が慣れてしまえば、その暗さは気にならなかった。
それにどの部屋も隅々まで手入れが行き届いていて、家具は優雅な本物のアンティークだ。
だが司がこの建物に足を踏み入れたのは、道明寺財閥の後継者として副社長の地位についてから。
それまでここに古い洋館があることは知っていたが、足を踏み入れようとは思わなかった。
だがあるとき、暇潰しにこの場所を訪れた。
この建物は司の祖父が建てた。
その祖父は司が幼い頃に亡くなっていて、その姿は記憶の中にない。
そんな祖父は戦前から続く道明寺財閥の当主だったが、絵を描くことを趣味としていたという。だからこの建物の中には祖父がアトリエとして使っていた部屋があるが、司は絵を描く趣味はない。
それなら何故司が毎日決まった時間にここにいて、壊れそうな自転車が立てる耳障りな音を訊いているのか。それはこの場所を気に入っているからだ。
はじめてこの建物の中に足を踏み入れたとき、鍵が掛けられた部屋を見つけた。
邸を管理している執事はこの建物について前任の執事から聞いていることがあると言った。
それは鍵のかかった部屋があるが、その鍵は祖父が持っていたということ。だが祖父が亡くなったことから鍵がどこにあるのか分からないということ。だから執事は業者を呼んで鍵を開けようとした。だが開かなかった。
しかし司は道明寺の男が大切なものがあるならそこに隠すであろうという予測の元に探した場所で鍵を見つけた。
そして祖父が亡くなって以来誰も足を踏み入れたことがないと言われる部屋の扉を開いて中に入った。するとそのとき死んだ祖父の息づかいが聴こえたような気がした。
そして記憶にはない祖父だが、その祖父が机の引き出しの中に自分の趣味に使っていた道具を整然と並べて保管している様子から自分の性癖は祖父譲りなのだと知った。

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コメント
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ふ**ん様
こちらこそ、今年もよろしくお願いしますm(__)m
不思議なお話が始まった!(≧▽≦)
その不思議さも徐々に明らかになると思います。
コメント有難うございました^^
こちらこそ、今年もよろしくお願いしますm(__)m
不思議なお話が始まった!(≧▽≦)
その不思議さも徐々に明らかになると思います。
コメント有難うございました^^
アカシア
2021.01.04 23:15 | 編集

司*****E様
明けましておめでとうございます。
こちらこそ今年もよろしくお願いしますm(__)m
ワイドショーでコンサートの様子を見たのですが、キラキラのミラーボールの中から現れる5人!
夢がありますねえ。凄いという言葉しかないのですが流石ですね。
そんなスーパーアイドルの彼らの休止。寂しいかもしれませんが、数年後に集まるような気がしています。
そうですよねえ。今年はコロナ禍ですから、初詣はご遠慮下さいも多いですよね?
そんな今年も色々と制約がありそうですが、コロナに負けることなく頑張りましょう。
コメント有難うございました^^
明けましておめでとうございます。
こちらこそ今年もよろしくお願いしますm(__)m
ワイドショーでコンサートの様子を見たのですが、キラキラのミラーボールの中から現れる5人!
夢がありますねえ。凄いという言葉しかないのですが流石ですね。
そんなスーパーアイドルの彼らの休止。寂しいかもしれませんが、数年後に集まるような気がしています。
そうですよねえ。今年はコロナ禍ですから、初詣はご遠慮下さいも多いですよね?
そんな今年も色々と制約がありそうですが、コロナに負けることなく頑張りましょう。
コメント有難うございました^^
アカシア
2021.01.04 23:28 | 編集
