「そうか。お前。えのきとアスパラを間違えたのか!それにしても牧野が海って女の名前まで出したってことは、あいつあの時のこと今でも相当根に持ってるってことだな」
あきらは訪ねてきた男の話を訊いて大笑いした。
そんなあきらの前にいる男は、片肘をついた姿勢でソファに腰掛けムッとした表情を浮かべていた。
「それにしても、どんな女も欲しいと言えばすぐに手に入れることが出来る男も牧野つくしには弱いのは昔と変わってねえよな。けど肝心なところでミスるのも昔と変わってねえな。
おい、覚えてるか?あろうことか、お前はデートに誘おうとした牧野に向かって、どてっ腹に穴を開けてやるって言ったことがあったよな?」
司はあきらが懐かしそうに話す様子を見ていたが、そんなことは覚えていない。
だがあきらの言う通り自分は変わってない。牧野つくしのことを思い出した途端、彼女に一直線だ。他の女は欲しくない。彼女だけが欲しい。
「それにしても牧野は身体を張ってお前の記憶を取り戻そうとした。つまり文字通り身体の関係を持ってお前の傍にいた。けどお前は3ヶ月経っても牧野のことを思い出さない。
それに見合いをして結婚することになっていたお前は事もあろうか牧野に愛人になれと言った。いいか。司。いくらお前があいつのことを思い出してなくても、牧野が愛人を持とうとするお前に幻滅するのは当然と言えば当然だ。なにしろあいつは曲がったことが嫌いな女だ。人の倫理に反することはまずしない。
その証拠に昔のあいつは俺たちの悪行を許さなかった。それに俺が人妻と関係を持っていることを知った牧野の目は冷たかった。そんなあいつだから結婚するお前の愛人になることは無理だとお前の前から去ってお前を忘れることにしたんだろうが、それにしてもなんでお前はあいつのことを思い出さなかったんだろうな」
あきらが言った通り牧野つくしは3ヶ月司のものだった。その間に彼女のことを思い出さなかったのが悔やまれる。
そして司は牧野つくしの記憶を失っている間、他の女と関係を持った。
あきらの言う通りでどんな女でも欲しいと言えばすぐに手に入れることが出来た。
だが牧野つくしが彼の前に現れてから他の女を欲しいとは思わなかった。
それは肌を重ねることで司の細胞が忘れていた女のことを思い出したから、牧野つくし以外の女を欲しいと思わなかったのだと思いたい。しかし、その思いは歪められ愛人という言葉となって口を突いた。
「けど安心しろ、あいつは、牧野はお前のことが今でも好きだ。絶対にそうだ。考えてもみろ。12年も思っていた男を簡単に忘れることが出来ると思うか?今のあいつは自分の気持をどうすればいいか分からないはずだ。つまりお前のことは終わったと言ってもまだ終わってないはずだ。だから司。あいつのお前への愛は冷凍保存状態だと思え。だから急ぐな。時間をかけて溶かせ。あいつがお前との関係を始めるまでも時間がかかったことを思い出せ」
司はあきらの話を訊きながら、あの頃のことを思い出していた。
自分を振り向いてくれない女を追いかけていた自分の姿を。
「だがな、司。時間をかけすぎるのも良くない。肝心なところは素早くだぞ。でないと牧野は考えちまう。あいつに考える時間を与えるとそのことがループしちまうからな。
けどいいか。牧野は付き合っている間よりも遥かに長い時間お前のことを思っていた。だからお前が他の女と付き合っていたことも知っているが、辛かったと思うぞ。だからそのことをくれぐれも忘れるな。
それから牧野は大きな幸せを求める女じゃない。あいつはささやかな、小さな幸せで満足する女だ。だからお前の気持を押し付けすぎるな」
彼女の性格は分かっている。考え始めるとそのことに囚われすぎて結論が先送りになってしまうことを。だがそんな女も社会に出て働くようになれば淡々とした態度も身に付けていて司を拒絶したが、それは彼女のことを忘れた司が悪いのだから仕方がない。
そして司はこれまで女がいたことは否定しない。
だが司が恋をした女は彼が持つ金やステータスに興味を示さなかった。
そんな女は大人になってもあの頃と同じで金に興味はない。
だからそんな女を再び振り向かせるため司は金や地位ではなく自分自身を与えることを決めた。愛人になって傍にいることを決めた。尽くす男になると決めた。
「それにしても、お前が愛人になると言った時の牧野の顏が見たかったぜ。
道明寺財閥の道明寺司が愛人にして欲しいと言うんだ。相手の女が牧野じゃなかったら泣いて喜んだはずだ。けど牧野のことだ。眉間に皺でも寄せてたんじゃねえのか?」
と言ったあきらは、「それで?次はどうするんだ?」と訊いた。
「次か?」
「ああ。次だ。あいつが働いている会社を買収して日本へ帰国させた。それに牧野をお前の部屋の下に住まわせることには成功した。それから仕事は営業から広報に異動させたんだろ?広報と言えば外部と接触する機会は多い。お前のことだ。何か考えてんだろ?」
「まあな」

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あきらは訪ねてきた男の話を訊いて大笑いした。
そんなあきらの前にいる男は、片肘をついた姿勢でソファに腰掛けムッとした表情を浮かべていた。
「それにしても、どんな女も欲しいと言えばすぐに手に入れることが出来る男も牧野つくしには弱いのは昔と変わってねえよな。けど肝心なところでミスるのも昔と変わってねえな。
おい、覚えてるか?あろうことか、お前はデートに誘おうとした牧野に向かって、どてっ腹に穴を開けてやるって言ったことがあったよな?」
司はあきらが懐かしそうに話す様子を見ていたが、そんなことは覚えていない。
だがあきらの言う通り自分は変わってない。牧野つくしのことを思い出した途端、彼女に一直線だ。他の女は欲しくない。彼女だけが欲しい。
「それにしても牧野は身体を張ってお前の記憶を取り戻そうとした。つまり文字通り身体の関係を持ってお前の傍にいた。けどお前は3ヶ月経っても牧野のことを思い出さない。
それに見合いをして結婚することになっていたお前は事もあろうか牧野に愛人になれと言った。いいか。司。いくらお前があいつのことを思い出してなくても、牧野が愛人を持とうとするお前に幻滅するのは当然と言えば当然だ。なにしろあいつは曲がったことが嫌いな女だ。人の倫理に反することはまずしない。
その証拠に昔のあいつは俺たちの悪行を許さなかった。それに俺が人妻と関係を持っていることを知った牧野の目は冷たかった。そんなあいつだから結婚するお前の愛人になることは無理だとお前の前から去ってお前を忘れることにしたんだろうが、それにしてもなんでお前はあいつのことを思い出さなかったんだろうな」
あきらが言った通り牧野つくしは3ヶ月司のものだった。その間に彼女のことを思い出さなかったのが悔やまれる。
そして司は牧野つくしの記憶を失っている間、他の女と関係を持った。
あきらの言う通りでどんな女でも欲しいと言えばすぐに手に入れることが出来た。
だが牧野つくしが彼の前に現れてから他の女を欲しいとは思わなかった。
それは肌を重ねることで司の細胞が忘れていた女のことを思い出したから、牧野つくし以外の女を欲しいと思わなかったのだと思いたい。しかし、その思いは歪められ愛人という言葉となって口を突いた。
「けど安心しろ、あいつは、牧野はお前のことが今でも好きだ。絶対にそうだ。考えてもみろ。12年も思っていた男を簡単に忘れることが出来ると思うか?今のあいつは自分の気持をどうすればいいか分からないはずだ。つまりお前のことは終わったと言ってもまだ終わってないはずだ。だから司。あいつのお前への愛は冷凍保存状態だと思え。だから急ぐな。時間をかけて溶かせ。あいつがお前との関係を始めるまでも時間がかかったことを思い出せ」
司はあきらの話を訊きながら、あの頃のことを思い出していた。
自分を振り向いてくれない女を追いかけていた自分の姿を。
「だがな、司。時間をかけすぎるのも良くない。肝心なところは素早くだぞ。でないと牧野は考えちまう。あいつに考える時間を与えるとそのことがループしちまうからな。
けどいいか。牧野は付き合っている間よりも遥かに長い時間お前のことを思っていた。だからお前が他の女と付き合っていたことも知っているが、辛かったと思うぞ。だからそのことをくれぐれも忘れるな。
それから牧野は大きな幸せを求める女じゃない。あいつはささやかな、小さな幸せで満足する女だ。だからお前の気持を押し付けすぎるな」
彼女の性格は分かっている。考え始めるとそのことに囚われすぎて結論が先送りになってしまうことを。だがそんな女も社会に出て働くようになれば淡々とした態度も身に付けていて司を拒絶したが、それは彼女のことを忘れた司が悪いのだから仕方がない。
そして司はこれまで女がいたことは否定しない。
だが司が恋をした女は彼が持つ金やステータスに興味を示さなかった。
そんな女は大人になってもあの頃と同じで金に興味はない。
だからそんな女を再び振り向かせるため司は金や地位ではなく自分自身を与えることを決めた。愛人になって傍にいることを決めた。尽くす男になると決めた。
「それにしても、お前が愛人になると言った時の牧野の顏が見たかったぜ。
道明寺財閥の道明寺司が愛人にして欲しいと言うんだ。相手の女が牧野じゃなかったら泣いて喜んだはずだ。けど牧野のことだ。眉間に皺でも寄せてたんじゃねえのか?」
と言ったあきらは、「それで?次はどうするんだ?」と訊いた。
「次か?」
「ああ。次だ。あいつが働いている会社を買収して日本へ帰国させた。それに牧野をお前の部屋の下に住まわせることには成功した。それから仕事は営業から広報に異動させたんだろ?広報と言えば外部と接触する機会は多い。お前のことだ。何か考えてんだろ?」
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司*****E様
こんにちは^^
ベーコンのアスパラ巻きとえのき巻きを間違えた男は、海ちゃんと言われてもピンと来なかったはずです。
そんな時に頼りになるのはあきら。
兄貴を自称する男ですからねえ。
そして牧野つくしを取り戻す次なる作戦。
彼女に振り向いてもらいたい男はどうするのでしょうね?
コメント有難うございました^^
こんにちは^^
ベーコンのアスパラ巻きとえのき巻きを間違えた男は、海ちゃんと言われてもピンと来なかったはずです。
そんな時に頼りになるのはあきら。
兄貴を自称する男ですからねえ。
そして牧野つくしを取り戻す次なる作戦。
彼女に振り向いてもらいたい男はどうするのでしょうね?
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.11.16 22:49 | 編集

ふ**ん様
愛人司。いえ。愛人になれない司。
尽くしたいのに尽くせない。
そんな男は余裕を見せているようですが次なる作戦。
上手くいくのでしょうかねえ(笑)
コメント有難うございました^^
愛人司。いえ。愛人になれない司。
尽くしたいのに尽くせない。
そんな男は余裕を見せているようですが次なる作戦。
上手くいくのでしょうかねえ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.11.16 22:56 | 編集
