fc2ブログ
2020
10.12

Love Affair 4

「先輩。どうでしたか?」

「桜子....本当にあれでよかったの?」

「何言ってるんですか!あれで良かったんです。先輩の行動はかなりのインパクトを与えたはずです。これなら絶対に道明寺さんは先輩に興味を示します。だって道明寺さんは自分になびく女より歯向かう女の方が好きですから。それに先輩は昔から男の狩猟本能を刺激するところあるんです。それにこんなことを言うのは悔しいんですけど先輩のそんな生意気な態度が男の征服欲をかき立てるんです。それにしてもどうして先輩がそんなにモテるのか知りたいくらいです」

とレンタルファミリーを経営する三条桜子は言ったが、スポーツ用品の会社で働くつくしが彼女の会社でスポット社員として働いているのには訳がある。
それはつくしが高校生の頃に互いに愛を誓い合った男がニューヨークから東京に戻って来たからだ。
だが、その男は刃物で脇腹を刺され重傷を負い彼女のことを忘れた。
けれどいつかは思い出す。それは1年後かもしれない。2年後かもしれない。いや5年後かもしれない。だがあれから12年が経ったが、未だに彼女のことを思い出すことはなかった。
いや。もしかすると思い出していたのかもしれない。
男は忘れていたつくしの記憶を取り戻したが、もう彼女に興味はない。彼女のことを好きではない。だから会いに来ることはなかったのではないか。だからつくしはそれを確かめることを決めた。
だが思っていたのとは違うことを知ったのはホテルの扉が開いたときだ。
男はつくしの顏を見ても眉ひとつ動かすことがなかった。その顏には感情の動きがひとかけらも見られなかった。
その代わり、誰だ、この女はと言った顏で彼女を見ていた。
つまりそれは男は未だに牧野つくしのことを思い出していないということだ。

「いいですか?先輩。躊躇ってる時間はないんです。道明寺さんお見合いするんですよ?
あの道明寺さんがですよ?あの人、政略結婚なんて絶対にしないと思っていたのに。それなのにどうしてお見合いする気になったのか……でも大丈夫です。道明寺さんに先輩のことを思い出させればいいんです。そのためには強烈なインパクトを与える必要があるんです。そうすればきっと思い出しますから。だって道明寺さんの頭の中には絶対に先輩の記憶があるはずです!それにいいですか先輩。冬のニューヨークに行ってボードウォークに座ってセンチメンタルな気分に浸ってる場合じゃなかったんですよ?本当に何をしにニューヨークまで行ったのか。
今どき高校生でもマンハッタンで高層ビルを眺めて帰るだけなんてしませんから。それに好きな男が諦めきれない女は当たって砕けろです。そうですよね。先輩?先輩は道明寺さんのことが忘れられないんですよね?」

つくしは去年の冬。休みを取ると桜子とニューヨーク旅行に出かけた。
それは桜子の言う通りで忘れられない男に会うためだ。
だが相手は道明寺ホールディングスの副社長。そう簡単に会える相手ではない。
それでもチャンスはあった。それは美作あきらがお膳立てをしてくれたからだ。

美作商事の専務のあきらと三条桜子は、交際とまでは言わないが親しくしていた。
そして美作あきらは親友思いの人間であり、その思いはかつて親友が好きだった女に対しても同じだ。
だから偶然を装いあきらの友人としてつくしを紹介する段取りがされていた。
だが直前になってつくしは会えないと言って真冬のニューヨークの街に出た。
そして今回の道明寺の副社長が見合いをするという話も、メープルのあの部屋に泊まっているということも、あきらから桜子に伝えられた話だ。

「それに私も先輩のために闘っていた道明寺さんが忘れられないんです。そりゃあ今の道明寺さんはビジネスの場で闘っていますけど、今は大人の男って感じで違うんです。今の道明寺さんはあの頃のように先輩だけを見ていた道明寺さんじゃないんです」

桜子の言う通りだ。あれから12年経った男は大人の男だ。
かつて女性など興味がないと言っていた男も、それなりに浮いた話があった。
それに裸の男は、高校時代に比べよりシャープな身体をしていた。
そして目をやった脇腹には刺された時の傷痕が残されていた。

「先輩。先輩はあの島で道明寺さんと関係を持ったんですよね?それが先輩の最初で最後の男性との関係ですよね?いえ。もし道明寺さんの後に誰かとそういった関係になっていたなら謝ります。でも違いますよね?先輩の経験はただひとり。そうですよね?」

そうだ。つくしの初めての男はあの男で、それは大河原滋に拉致された島での出来事。
男女の機微に敏感な桜子は、つくしの態度からそれを察していたらしく、暫くすると「先輩。妊娠していませんよね?」と訊いた。

「でもそれにしても12年間もよく男無しで暮らせますよね?先輩は女としての性欲が無いんですか?でもまあ分かりますよ?心を開き合える相手じゃないと身体を開くことは出来ないってことですよね?そんな先輩がやっと決心して胸の奥に仕舞い込んでいた思いをぶつけることにしたんですから、私が協力しないで誰が協力するって言うんです?それにいいんですよね?もし道明寺さんがうちの会社に先輩を派遣して欲しいって言ってきたら受けても」

つくしは桜子の問いに頷いた。
そして「でももし今回のことで私のことを思い出さなかったら、あの男のことはキッパリと忘れるわ。そして今度こそ前を向くから」と答えていた。




にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.10.12 07:21 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.10.12 08:13 | 編集
ふ*******マ様
牧野つくしの一大決心に司は乗るのか。乗らないのか。
乗りました!(笑)
自分を忘れた男に思い出させることが出来るのでしょうかねえ(笑)
アカシアdot 2020.10.14 21:28 | 編集
司*****E様
そうです。司が記憶喪失になったお話なんです。
そんな司が見合いをするということで行動を起こしました。
まずは強烈なインパクトを与えて喰い付くかどうかを見ましたが、見事に喰い付いてくれました!(笑)
ここから先は、つくしの頑張り次第でしょうかねえ(笑)
アカシアdot 2020.10.14 21:34 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top