「入る訳がないでしょ?私はそんな女じゃありません。部屋を間違えたのを謝りに来ただけですから」
女の顏は険しくなっていた。
それに対して司は面白そうに、「そうか。ただ謝りに来ただけか。それならさっさと立ち去ればいいはずだが随分と長居をしているようだな?それにお前は自分のことをそんな女じゃないって言うが、俺は何も言ってないが?」と言った。すると女は下唇を噛んだ。
司は部屋の入口で一歩後ろに退いた姿勢で、「それで?どうする?入るのか?入らないのか?」と訊いた。
すると女は「どうして私があなたの部屋に入らないといけないのよ?それに知らない男性とホテルの部屋でふたりっきりになるつもりはないわ」と言ったが、20分前には遠慮することなく部屋の中に入って来た。
だがそれは仕事の依頼人の元を訪れたに過ぎず、知らない男には当たらないという解釈だ。
しかし司は身辺調査がされた依頼人ではなく全くの見知らぬ男だ。だから女は警戒していた。
「あなた。いつもそうやって女を誘惑するわけ?」
司は女の思いがけない言葉に俺が?という態度を取り裸の脇腹に視線を向けた女に言った。
「俺がいつもこんな風に女を誘惑するって?」
「ええ。そうよ。ちょっとカッコいいからって女が誰でも自分の思いのままになると思っているなら大きな間違いだから」
司は自惚れるつもりはないが、自分が世間からカッコいいと言われていることは知っている。だが人間など一皮むけば皆同じ骸骨だ。それに外見など表面上のことでありそれが全てだと考える人間は浅はかで愚かな人間だ。そう思う司の好奇心が騒いだ女も目に見えるものだけを重視する女なのか。
それにしても部屋を間違えたことを丁寧に詫びた女は、男を警戒しながらも言いたいことは言わせてもらうというタイプのようだ。
だがそれは司が誰だか知らないから言えるのかもしれないが、彼はこのやり取りを面白いと感じていた。だからこのまま会話を続けることにした。
「随分と独断的なことを言う女だな?」
「何が独断的なのよ?私に言わせればあなたは見知らぬ女を部屋に招き入れることに躊躇いのない男だわ。だからいつもこんな風に女を誘惑しているはずよ?違うかしら?現にそうやって上半身裸でこれみよがしな態度を取っているでしょ?」
女はそう言って眉間に皺を寄せたが、それはまるで見たくもない裸を見せられて嫌な思いをしていると言った顏だ。だが司は自分の裸の肉体に対して文句を言う女に出会ったのは初めてだ。
「これみよがしだと?俺はシャワーを浴びて着替えをしていたところだ。それに自分の部屋でどんな格好をしていようが勝手だと思うが?」
「ええ。そうよ。部屋でどんな格好をしようとその人の勝手だわ。でもチャイムが鳴るのは誰か来たからよ。それなのに裸で出てくるなんて露出狂よ。もしかしてあなた露出する趣味があるとか?そうよ。あなたは自分の体を誰彼構わず見せたいのよ。
でもいい?あなたが誰だか知らないけど、裸の王様じゃない限り世の中にはマナーってものがあるの。たとえそれが宿泊している人間にサービスを提供する側の人間でも彼らだって目の前に裸の男が現れたら迷惑よ。それに見たくないものを見せられる人間の気持になってみなさいよ。例えばだけど冬場になったらよく現れるアレよ。トレンチコートを着た怪しげな男。前を歩いていた男がいきなりこっちを振り向いたと思ったらコートの前をバアッーって開けて自分の裸を見せる露出狂よ!あんなことして何が楽しいのか知らないけど変態よ!今のあなたのその恰好はそれと同じよ!」
司はこれまで女に変態呼ばわりされたことはない。
それに女が言う露出狂ではない。
だが女は司のことを変態の露出狂だと決めつけたようだ。
「変態とか露出狂とか言いたい放題だが俺もビジネスの時にはネクタイくらいは締めるが?」
「へえ。そう。あなたビジネスマンなの?でも裸にネクタイじゃないわよね?でももしそうならやっぱりあなたは変態よ。だから私はあなたの部屋に入りません。
それから部屋を間違えたことは謝るけど、例えここがあなたの家だとしても、来客があれば服を着て対応するのがマナーよ。いい年をしてそんなことも分からないようじゃどうかしてるわね」
女はそう言うと一歩後ろに退いた。
そして司の前から走り去った。
司はダイニングテーブルの上に置かれている小さな長方形の紙を手に取った。
それは司に向かって言いたい放題言った女が部屋を間違えズカズカと入って来て手帳を開いた時に落としたもの。名刺ではない紙に書かれているのは、『レンタルファミリー』という文字と電話番号だった。

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女の顏は険しくなっていた。
それに対して司は面白そうに、「そうか。ただ謝りに来ただけか。それならさっさと立ち去ればいいはずだが随分と長居をしているようだな?それにお前は自分のことをそんな女じゃないって言うが、俺は何も言ってないが?」と言った。すると女は下唇を噛んだ。
司は部屋の入口で一歩後ろに退いた姿勢で、「それで?どうする?入るのか?入らないのか?」と訊いた。
すると女は「どうして私があなたの部屋に入らないといけないのよ?それに知らない男性とホテルの部屋でふたりっきりになるつもりはないわ」と言ったが、20分前には遠慮することなく部屋の中に入って来た。
だがそれは仕事の依頼人の元を訪れたに過ぎず、知らない男には当たらないという解釈だ。
しかし司は身辺調査がされた依頼人ではなく全くの見知らぬ男だ。だから女は警戒していた。
「あなた。いつもそうやって女を誘惑するわけ?」
司は女の思いがけない言葉に俺が?という態度を取り裸の脇腹に視線を向けた女に言った。
「俺がいつもこんな風に女を誘惑するって?」
「ええ。そうよ。ちょっとカッコいいからって女が誰でも自分の思いのままになると思っているなら大きな間違いだから」
司は自惚れるつもりはないが、自分が世間からカッコいいと言われていることは知っている。だが人間など一皮むけば皆同じ骸骨だ。それに外見など表面上のことでありそれが全てだと考える人間は浅はかで愚かな人間だ。そう思う司の好奇心が騒いだ女も目に見えるものだけを重視する女なのか。
それにしても部屋を間違えたことを丁寧に詫びた女は、男を警戒しながらも言いたいことは言わせてもらうというタイプのようだ。
だがそれは司が誰だか知らないから言えるのかもしれないが、彼はこのやり取りを面白いと感じていた。だからこのまま会話を続けることにした。
「随分と独断的なことを言う女だな?」
「何が独断的なのよ?私に言わせればあなたは見知らぬ女を部屋に招き入れることに躊躇いのない男だわ。だからいつもこんな風に女を誘惑しているはずよ?違うかしら?現にそうやって上半身裸でこれみよがしな態度を取っているでしょ?」
女はそう言って眉間に皺を寄せたが、それはまるで見たくもない裸を見せられて嫌な思いをしていると言った顏だ。だが司は自分の裸の肉体に対して文句を言う女に出会ったのは初めてだ。
「これみよがしだと?俺はシャワーを浴びて着替えをしていたところだ。それに自分の部屋でどんな格好をしていようが勝手だと思うが?」
「ええ。そうよ。部屋でどんな格好をしようとその人の勝手だわ。でもチャイムが鳴るのは誰か来たからよ。それなのに裸で出てくるなんて露出狂よ。もしかしてあなた露出する趣味があるとか?そうよ。あなたは自分の体を誰彼構わず見せたいのよ。
でもいい?あなたが誰だか知らないけど、裸の王様じゃない限り世の中にはマナーってものがあるの。たとえそれが宿泊している人間にサービスを提供する側の人間でも彼らだって目の前に裸の男が現れたら迷惑よ。それに見たくないものを見せられる人間の気持になってみなさいよ。例えばだけど冬場になったらよく現れるアレよ。トレンチコートを着た怪しげな男。前を歩いていた男がいきなりこっちを振り向いたと思ったらコートの前をバアッーって開けて自分の裸を見せる露出狂よ!あんなことして何が楽しいのか知らないけど変態よ!今のあなたのその恰好はそれと同じよ!」
司はこれまで女に変態呼ばわりされたことはない。
それに女が言う露出狂ではない。
だが女は司のことを変態の露出狂だと決めつけたようだ。
「変態とか露出狂とか言いたい放題だが俺もビジネスの時にはネクタイくらいは締めるが?」
「へえ。そう。あなたビジネスマンなの?でも裸にネクタイじゃないわよね?でももしそうならやっぱりあなたは変態よ。だから私はあなたの部屋に入りません。
それから部屋を間違えたことは謝るけど、例えここがあなたの家だとしても、来客があれば服を着て対応するのがマナーよ。いい年をしてそんなことも分からないようじゃどうかしてるわね」
女はそう言うと一歩後ろに退いた。
そして司の前から走り去った。
司はダイニングテーブルの上に置かれている小さな長方形の紙を手に取った。
それは司に向かって言いたい放題言った女が部屋を間違えズカズカと入って来て手帳を開いた時に落としたもの。名刺ではない紙に書かれているのは、『レンタルファミリー』という文字と電話番号だった。

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司*****E様
おはようございます^^
司相手に臆することなく何でも言う女。
さて彼女は司が何者か知っているのか。いないのか。
露出狂とか変態とか言いたい放題(笑)
そして彼女が去った後で部屋に残されていたレンタルファミリーと書かれた紙を手に取りました。
コンタクトを取るのか。取らないのか。
レンタルファミリーを利用するのでしょうかねえ(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
司相手に臆することなく何でも言う女。
さて彼女は司が何者か知っているのか。いないのか。
露出狂とか変態とか言いたい放題(笑)
そして彼女が去った後で部屋に残されていたレンタルファミリーと書かれた紙を手に取りました。
コンタクトを取るのか。取らないのか。
レンタルファミリーを利用するのでしょうかねえ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.10.11 23:03 | 編集

ふ*******マ様
おはようございます^^
おっちょこ姉さん足あとを残す!(≧▽≦)
司はレンタルファミリーを利用するのでしょうか。
そしてこのお話の行方は.....どこへ向かうのでしょう(笑)
おはようございます^^
おっちょこ姉さん足あとを残す!(≧▽≦)
司はレンタルファミリーを利用するのでしょうか。
そしてこのお話の行方は.....どこへ向かうのでしょう(笑)
アカシア
2020.10.11 23:19 | 編集
