「やだ…….もしかして間違えた?」
女はそう言ってソファの上に置いているバッグを掴むと、慌てた様子でごめんなさいを繰り返しながら脱兎のごとく部屋を出て行ったが、20分後に再びチャイムが鳴り響いた。
司は扉を開けた。
するとそこには、ついさっき部屋の中にズカズカと乗り込んで来た女が申し訳なさそうに立っていて、「ごめんなさい」と頭を下げた。そして女が再び司の前に現れたのは部屋を間違えたことを謝りに来たからだと言った。
女が訪ねるはずだったのは、ひとつ下のフロアにある部屋。
つまり階数を間違えて司の部屋を訪ねたということだが、目的の部屋の男が女の言った通り臨時の恋人を雇ったのなら、女は今ここにいないはずだ。
するとその疑問に答えるように、「キャンセルされました。恋人と別れるのを止めたそうです。だからサービスは必要ないと言われました」と言った。
そして女は20分前、招かれもしないのに部屋に入って来たが、今は扉の前にいて中に入って来ることはなかった。
司はそんな女を安眠を妨げたことで怒ろうとした。文句を言おうとした。
だが戻って来ることなど思いもしなかった女が再び目の前に現れ、本当に申し訳なさそうにしていることから本心から怒ることが出来なかった。それにその態度には謝罪の誠意が感じられた。と、同時に臨時の恋人を派遣する会社に興味を抱いた。それは派遣されて来た女はベッドの相手もするのかということだ。
司は女が出て行ったあとシャワーを浴び着替えの途中だ。
だから飲みかけのミネラルウォーターのボトルを握っている男は上半身裸で、その肩には筋肉がついていて、艶やかに輝いている。
司は女の視線がその肩に向けられたのを見た。
「言っておきますが私はそんな女じゃありませんから」
女は自分が何を見ているのかを司に知られ慌てた様子で言った。
「そんな女?」
「ええ。私の仕事はフリをするだけです。決して本当の恋人がするようなことはしません。
それに当社は恋人を代行する会社ではありません。
当社は肉体関係を持つことがない間柄の人間を派遣する会社です。つまり依頼人から見て祖父や祖母。両親や兄弟姉妹や子や孫を派遣する会社です。私たちはその役割を演じるんです。
例えばそれは結婚式に出席する親族の数合わせや葬儀に参列する親族としての役目だったりします。それから亡くなった孫の代わりに話を訊いてほしいといったご依頼や、一人っ子で姉妹のいない女の子の姉として過ごして欲しいといったものです。ですから本来恋人役など引き受けることはないのです。でも今回ご依頼いただいた方は、これまでも何度かご利用いただいた方でしたし、どうしてもということで恋人の役目を引き受けたんです。つまり今回は特別なんです。
それに当社は依頼を引き受ける前にその人の身辺調査を徹底しています。だから変な誤解をされては困ります」
と女は背の高い男の前で顎を突き上げて長々と自分の立場を力説したが、司はそんな女に珍しく好奇心が騒いだ。
だから一歩後ろに退いた。
それは、もっと話したい。言いたいことがあるなら部屋に入れという意味だが、20分前とは違い今は部屋の入口から動かない女はどうするのか。
それに私はそんな女じゃないと言う女ほど、そんな女であることが殆どだが、果たして女は部屋に入るのか。それとも言いたいことは言ったと踵を返すのか。司は女の出方を待っていた。

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女はそう言ってソファの上に置いているバッグを掴むと、慌てた様子でごめんなさいを繰り返しながら脱兎のごとく部屋を出て行ったが、20分後に再びチャイムが鳴り響いた。
司は扉を開けた。
するとそこには、ついさっき部屋の中にズカズカと乗り込んで来た女が申し訳なさそうに立っていて、「ごめんなさい」と頭を下げた。そして女が再び司の前に現れたのは部屋を間違えたことを謝りに来たからだと言った。
女が訪ねるはずだったのは、ひとつ下のフロアにある部屋。
つまり階数を間違えて司の部屋を訪ねたということだが、目的の部屋の男が女の言った通り臨時の恋人を雇ったのなら、女は今ここにいないはずだ。
するとその疑問に答えるように、「キャンセルされました。恋人と別れるのを止めたそうです。だからサービスは必要ないと言われました」と言った。
そして女は20分前、招かれもしないのに部屋に入って来たが、今は扉の前にいて中に入って来ることはなかった。
司はそんな女を安眠を妨げたことで怒ろうとした。文句を言おうとした。
だが戻って来ることなど思いもしなかった女が再び目の前に現れ、本当に申し訳なさそうにしていることから本心から怒ることが出来なかった。それにその態度には謝罪の誠意が感じられた。と、同時に臨時の恋人を派遣する会社に興味を抱いた。それは派遣されて来た女はベッドの相手もするのかということだ。
司は女が出て行ったあとシャワーを浴び着替えの途中だ。
だから飲みかけのミネラルウォーターのボトルを握っている男は上半身裸で、その肩には筋肉がついていて、艶やかに輝いている。
司は女の視線がその肩に向けられたのを見た。
「言っておきますが私はそんな女じゃありませんから」
女は自分が何を見ているのかを司に知られ慌てた様子で言った。
「そんな女?」
「ええ。私の仕事はフリをするだけです。決して本当の恋人がするようなことはしません。
それに当社は恋人を代行する会社ではありません。
当社は肉体関係を持つことがない間柄の人間を派遣する会社です。つまり依頼人から見て祖父や祖母。両親や兄弟姉妹や子や孫を派遣する会社です。私たちはその役割を演じるんです。
例えばそれは結婚式に出席する親族の数合わせや葬儀に参列する親族としての役目だったりします。それから亡くなった孫の代わりに話を訊いてほしいといったご依頼や、一人っ子で姉妹のいない女の子の姉として過ごして欲しいといったものです。ですから本来恋人役など引き受けることはないのです。でも今回ご依頼いただいた方は、これまでも何度かご利用いただいた方でしたし、どうしてもということで恋人の役目を引き受けたんです。つまり今回は特別なんです。
それに当社は依頼を引き受ける前にその人の身辺調査を徹底しています。だから変な誤解をされては困ります」
と女は背の高い男の前で顎を突き上げて長々と自分の立場を力説したが、司はそんな女に珍しく好奇心が騒いだ。
だから一歩後ろに退いた。
それは、もっと話したい。言いたいことがあるなら部屋に入れという意味だが、20分前とは違い今は部屋の入口から動かない女はどうするのか。
それに私はそんな女じゃないと言う女ほど、そんな女であることが殆どだが、果たして女は部屋に入るのか。それとも言いたいことは言ったと踵を返すのか。司は女の出方を待っていた。

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コメント
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ふ*******マ様
おはようございます^^
名前はまだ出て来てないおっちょこちょいのお姉さんは誰?
それは....秘密です!(笑)そんな訳ありません。彼女です。
アカシアも5歳児に「ボ―っと生きてんじゃねえよ!」と怒られるようなことが沢山ありますよ(笑)
今朝も読み返してみれば誤字脱字。あれ?書いたはずの行が飛んでいる!で、急いで修正しましたが夜目は間違いが多いですね(苦笑)
さてこちらのお話はどうなって行くのでしょう。
ということでお話は次へ進みましたのでお納めくださいませ^^
おはようございます^^
名前はまだ出て来てないおっちょこちょいのお姉さんは誰?
それは....秘密です!(笑)そんな訳ありません。彼女です。
アカシアも5歳児に「ボ―っと生きてんじゃねえよ!」と怒られるようなことが沢山ありますよ(笑)
今朝も読み返してみれば誤字脱字。あれ?書いたはずの行が飛んでいる!で、急いで修正しましたが夜目は間違いが多いですね(苦笑)
さてこちらのお話はどうなって行くのでしょう。
ということでお話は次へ進みましたのでお納めくださいませ^^
アカシア
2020.10.11 06:38 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
部屋を間違えた女。
これは運命の出会いなのか。それとも神の悪戯なのか。
どちらにしてもこの二人には色々とあるんですね(笑)
さて謝りに来た女に対して余裕のある男。
それはそうですよね。人違いなんですから。
しかし司は興味を抱いたようです。
ということは、物語は始まったということです(笑)
おはようございます^^
部屋を間違えた女。
これは運命の出会いなのか。それとも神の悪戯なのか。
どちらにしてもこの二人には色々とあるんですね(笑)
さて謝りに来た女に対して余裕のある男。
それはそうですよね。人違いなんですから。
しかし司は興味を抱いたようです。
ということは、物語は始まったということです(笑)
アカシア
2020.10.11 06:52 | 編集
