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2020
08.04

天色の空 4

道明寺司と会ってから1ヶ月が経った。
あの日。私は男性の話を訊きながら、母が話をしていただけとはいえ父以外の男性と一緒に過ごしていたことに嫌悪感を抱き、冷静な態度を取ることが出来ず早々に席を立つという失礼な態度を取った。
そしてあれから母を見る目が変わった。

それは父が亡くなった今、母はどうするつもりなのかということ。
かつての恋人同士は父に言われなくても一緒になるつもりなのか。
男性はあれから母と会ったのか。
もし母と道明寺司が会っているとすれば、男性は私と会ったことを母に言うはずだ。そしてそれを訊いた母の態度にも変化が現れるはずだ。
だが母が私に見せる態度は変わることはなかった。
そして私は未だに母に道明寺司との関係を訊くことが出来ずにいた。

それにしても、父は道明寺司と古い知り合いだと言ったが、どういった知り合いだったのか。
父は英徳学園の出身ではないが道明寺司と同じ年齢だ。
もしかすると、学生時代に会ったことがあるのではないか。
父は自分のこと事を娘の私に語ることは、ほとんどなかったが名門と言われる政治家一族の生まれだ。
その家の長男として生まれた父は、将来政治家になることを期待されていた。
だが寿司屋になることを選び、家を飛び出した。だから自分は生まれた家から勘当された人間だと言った。そんな父は何らかの理由で寿司屋になることを諦め、大学を卒業して通信社に勤めることになった。

そして父が母と結婚したのは母が大学を卒業してからだが、道明寺司の口から語られた母と男性との交際は、高校生の頃から大学を卒業するまで。
もしかすると同じ年の二人は高校生の頃、共に母の心を掴もうとしたのではないか。
だが父は母の心を掴むことが出来なかった。それは母が道明寺司を選んだから。
しかし父は道明寺司と別れた母と再会し結婚をした。それは二人が別れたすぐ後だが、一度諦めた人を手に入れた父は幸せだったはずだ。
けれど、大人になるにつれ気付いた父の癖とも言える唇の端に無理矢理皺を作る笑い方。
その笑い方は、自分と結婚した女性の心の中には昔の恋人がいて、その人のことを今でも思っていること知った悲しみの表れだったのではないか。
だとすれば、母を愛していた父が可哀想だ。

それに海外赴任中だった父が、母が昔の恋人と会っていたことを知っていて黙って見過ごしていたとすれば、それは母を愛するが故だったはずだ。
だから私は父が最後に言った『二人が一緒になることを許してやって欲しい』という言葉は父の母への愛情がそう言わせたのだと思えた。
つまり、それほど父は母を思っていたということだが、果たして父のそんな思いは母に伝わっていたのだろうか。

それにしても何故母は道明寺司と別れて直ぐとも言えるタイミングで父と結婚したのか。
それに、愛していた人のことをそんなにも早く忘れられるものなのか。
だがまだ恋をしたことがない私は、それを理解することが出来なかった。

だから私は、母が何故父と結婚をしたのか。
そして道明寺司が言ったことが本当なのか。母に訊かなければならなかった。



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コメント
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dot 2020.08.04 07:09 | 編集
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dot 2020.08.04 07:26 | 編集
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dot 2020.08.04 11:30 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
こちらのお話もそろそろ終わりを迎えます。
主人公は18歳の女性ですが、彼女が周りの大人の気持ちを理解出来るといいのですが....
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.08.04 21:46 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
お父さん。知っている方でしたね!(≧▽≦)
そうです彼です。
お嬢さんの名前ですか?そろそろ出て来ます。
そしてこちらのお話も間もなく終わりますので、もう少しだけお付き合い下さいませ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.08.04 21:49 | 編集
ふ**ん様
父親が誰か分かりましたか?(笑)
タイトルは....残念ながら違うんです(笑)
そして多感な18歳の娘。
葛藤を抱えて過ごしていますが、
「娘よ!終わりは近いぞ!もう少しだけ我慢してくれ」byアカシア
ということで間もなくお話は終わりを迎えます。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.08.04 21:55 | 編集
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