『私とお母さんは昔付き合っていた。恋人関係にあった』
それは予測していた答え。
「君のお母さんと私は同じ学園の卒業生だ。そのことは知っているね?」
問い掛けではあったが私は答えなかった。
それは男性が私の言葉を待っているようには思えなかったからだ。
「私たちはそこで知り合った。そして恋におちた。だがその恋はよくある若者の恋愛とはほど遠い波瀾に満ちた恋だった。今思えば高校生には考えられないことが起こったのが二人の恋だったが、アメリカの大学に進学した私は君のお母さんと結婚の約束をした。お母さんが大学を卒業したら私たちは結婚するつもりでいた。だが私たちは別々の人生を歩むことになった。それは私が別の女性と結婚することになったからだ。こういう言い方をすれば逃げているように思われるかもしれないが、それは仕方がない選択だった。だが私はどうしてもお母さんのことが忘れられなくてね。数年後その女性とは別れた。しかし、その頃にはお母さんは結婚していた。そして子供が、君がいた」
道明寺司が母と付き合っていたのは、母が高校生の頃から大学を卒業するまでの間で、二人は結婚の約束をしていたと言った。
男性は話の中で仕方がない選択をしたと言ったが、どんなに愛し合うふたりでも結ばれないことはあることは知っている。
政略結婚など今のこの世の中には無いと思われるかもしれないが、私が暮らした国の中には、はっきりとした身分の違いが存在した国があった。実際クラスメートの中には、生まれた時から結婚相手が決められている子もいた。
それは、結婚が家同士の結びつきを強めるため利用されるということ。
つまり資産家の家に生まれた者には、その家を守ることが求められるということ。恐らくだが道明寺司は、そのために母と結婚することが出来なかったのだろう。
そしてそれは母と男性の間に起きた恋愛事件だったはずだが、もし母がこの男性と結婚していたら、私は男性の娘として生まれていたのかもしれない。
「君たち家族は特派員だったお父さんの転勤に伴い引っ越しが多かった。だが君が中学に上がる頃、お父さんだけが残りお母さんと君は日本に帰国した」
12歳で帰国した私と母のことを知っているということは、二人はその頃から連絡を取るようになったのか。それはどちらからだったのか。
そして互いの状況を知った二人は逢瀬を繰り返していたのか。
男性は父の不在をいいことに母に交際を迫り、母はそれを受け入れたのか。
母は海外で何も知らずにひとり暮らす父を裏切っていたのか。
「私とお母さんは君が考えているような関係ではない」
男性は私の思考を読んだかのような発言をしたが、真実かどうかは分からない。
「それならどういう関係ですか!?……あなたは父が日本にいないことをいいことに母に交際を迫ったんじゃないんですか!?」
私の口から出た言葉は怒気を含んでいた。そして男性を睨みつけていた。
けれど、そんな私とは違い継がれた男性の言葉は静かで落ち着いたものだった。
「違う。彼女の名誉のためにも言うが、私たちは会ってはいたが君が思っているような関係ではない。お母さんは決してお父さんを裏切ったりはしなかった」
それならどういった関係だったと言うのか。
私は苛立つ気持を抑えることが出来なかった。
「私たちはお茶を飲みながら話をするだけの関係だ。二人で何処かへ行くことはなかった。
二人の間には何もなかった。君のお母さんはお父さんを裏切るようなことをする人ではない。彼女は…..君のお母さんはそんな人ではない」
男性は、母は父を裏切ったりしなかった。そう繰り返し言ったが、それが本当かどうか確かめることは出来ない。だが男性の目は本心からそう言っているように思えた。
そして、本来なら母にも訊くべきことを男性だけに訊いていることに気付いていたが、18歳の私は母を母親ではなく女として見ることが怖かった。

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それは予測していた答え。
「君のお母さんと私は同じ学園の卒業生だ。そのことは知っているね?」
問い掛けではあったが私は答えなかった。
それは男性が私の言葉を待っているようには思えなかったからだ。
「私たちはそこで知り合った。そして恋におちた。だがその恋はよくある若者の恋愛とはほど遠い波瀾に満ちた恋だった。今思えば高校生には考えられないことが起こったのが二人の恋だったが、アメリカの大学に進学した私は君のお母さんと結婚の約束をした。お母さんが大学を卒業したら私たちは結婚するつもりでいた。だが私たちは別々の人生を歩むことになった。それは私が別の女性と結婚することになったからだ。こういう言い方をすれば逃げているように思われるかもしれないが、それは仕方がない選択だった。だが私はどうしてもお母さんのことが忘れられなくてね。数年後その女性とは別れた。しかし、その頃にはお母さんは結婚していた。そして子供が、君がいた」
道明寺司が母と付き合っていたのは、母が高校生の頃から大学を卒業するまでの間で、二人は結婚の約束をしていたと言った。
男性は話の中で仕方がない選択をしたと言ったが、どんなに愛し合うふたりでも結ばれないことはあることは知っている。
政略結婚など今のこの世の中には無いと思われるかもしれないが、私が暮らした国の中には、はっきりとした身分の違いが存在した国があった。実際クラスメートの中には、生まれた時から結婚相手が決められている子もいた。
それは、結婚が家同士の結びつきを強めるため利用されるということ。
つまり資産家の家に生まれた者には、その家を守ることが求められるということ。恐らくだが道明寺司は、そのために母と結婚することが出来なかったのだろう。
そしてそれは母と男性の間に起きた恋愛事件だったはずだが、もし母がこの男性と結婚していたら、私は男性の娘として生まれていたのかもしれない。
「君たち家族は特派員だったお父さんの転勤に伴い引っ越しが多かった。だが君が中学に上がる頃、お父さんだけが残りお母さんと君は日本に帰国した」
12歳で帰国した私と母のことを知っているということは、二人はその頃から連絡を取るようになったのか。それはどちらからだったのか。
そして互いの状況を知った二人は逢瀬を繰り返していたのか。
男性は父の不在をいいことに母に交際を迫り、母はそれを受け入れたのか。
母は海外で何も知らずにひとり暮らす父を裏切っていたのか。
「私とお母さんは君が考えているような関係ではない」
男性は私の思考を読んだかのような発言をしたが、真実かどうかは分からない。
「それならどういう関係ですか!?……あなたは父が日本にいないことをいいことに母に交際を迫ったんじゃないんですか!?」
私の口から出た言葉は怒気を含んでいた。そして男性を睨みつけていた。
けれど、そんな私とは違い継がれた男性の言葉は静かで落ち着いたものだった。
「違う。彼女の名誉のためにも言うが、私たちは会ってはいたが君が思っているような関係ではない。お母さんは決してお父さんを裏切ったりはしなかった」
それならどういった関係だったと言うのか。
私は苛立つ気持を抑えることが出来なかった。
「私たちはお茶を飲みながら話をするだけの関係だ。二人で何処かへ行くことはなかった。
二人の間には何もなかった。君のお母さんはお父さんを裏切るようなことをする人ではない。彼女は…..君のお母さんはそんな人ではない」
男性は、母は父を裏切ったりしなかった。そう繰り返し言ったが、それが本当かどうか確かめることは出来ない。だが男性の目は本心からそう言っているように思えた。
そして、本来なら母にも訊くべきことを男性だけに訊いていることに気付いていたが、18歳の私は母を母親ではなく女として見ることが怖かった。

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コメント
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司*****E様
おはようございます^^
18歳の娘はこの状況をどう感じているのでしょう。
父親から聞かされた母親のこともそうですが、司と会って聞かされた母親のことに対しても気持の整理がつかないでしょうねえ。
そしてこれまで自分が見ていた母親に対しての思いというものがあります。
母親を女として見る。18歳の娘の今の思いは果たして?
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
18歳の娘はこの状況をどう感じているのでしょう。
父親から聞かされた母親のこともそうですが、司と会って聞かされた母親のことに対しても気持の整理がつかないでしょうねえ。
そしてこれまで自分が見ていた母親に対しての思いというものがあります。
母親を女として見る。18歳の娘の今の思いは果たして?
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.08.03 23:33 | 編集

ふ*******マ様
おはようございます^^
気の強そうなお嬢さんではなく、気が張っているお嬢さん。
はい。そうですね。何しろ父親から母親には好きな人がいて、自分が亡くなったらその人と母親が幸せになることを願うと言われたんですからねえ。
娘は18歳です。やっと大人の入口に立ったところです。
二人のことを許せるでしょうかねえ。
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
気の強そうなお嬢さんではなく、気が張っているお嬢さん。
はい。そうですね。何しろ父親から母親には好きな人がいて、自分が亡くなったらその人と母親が幸せになることを願うと言われたんですからねえ。
娘は18歳です。やっと大人の入口に立ったところです。
二人のことを許せるでしょうかねえ。
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.08.03 23:41 | 編集
