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2020
07.26

夜の終わりに 30

Category: 夜の終わりに
マスターベッドルーム…..
俺の部屋と言われたそこにつくしの荷物が置かれている。
それが意味するのはニューヨークに滞在する間つくしが寝るのはこの部屋ということ。
だが展開が早すぎる。けれど、まだキスしかしたことがないとはいえ男は交際相手。その男と同じ部屋に寝る意味は推測する必要がないほどはっきりとしていて、あの雨の夜のように、ただ隣に寝るという意味ではない。だが、セックスを強要されることはないと思えた。けれど、まだ同じ部屋に寝るための心の準備が出来ていない。だからそのことについてどう切り出したらよいか思案していた。

それは部屋を別にして欲しいということだが、言えばあからさまな拒絶と捉えられるだろうか。
いや。拒絶しようとしているのではない。交際を始めればいつかはそういった関係になることは理解しているが、今はまだ早いとしか言えなかった。
だがそれをそのまま相手に伝えるよりも他に言い方はないかと考えた結果こう言った。


「とても素敵な部屋ね。ほんとシンプルで素敵ね?夜中に起きてトイレに行く時に足元の何かにつまずくこともなさそうだし、ベッドも大きいから4人くらい寝れそうだし、どんなに寝相が悪くてもベッドから落ちることもなさそうだし、それにカーテンも素敵!でもね、私マニュキア塗り直さないといけないから同じ部屋じゃなくて別の部屋にしてもらえない?ほらマニュキアって臭うでしょ?だからこんな素敵な部屋に臭いが染み付いたら申し訳なくて。それに気分が悪くなるといけないから私が泊まるのはゲストルームのひとつにしてもらえると助かるんだけど」

つくしはそう言ってから爪を隠した。
それは旅に出る前に身だしなみを整える意味でマニキュアを塗ったが、塗り直さなければならないほど酷い状況ではなかったからだ。
それにしても何が助かるというのか。自分で口にしておきながら言葉の意味が分からなかった。

そんなつくしに向けられている男の顏が、したり顔に見えた。
その瞬間頭を過ったのは、もしかしてこの男は、つくしが慌てる姿が見たくてわざと荷物を自分の部屋に運ばせたのではないかということ。
すると男はこう言った。

「そんな見え透いた嘘をつかなくてもいい。爪は綺麗なままだろ?それに安心しろ。俺のベッドで寝ないための長ったらしい言い訳を用意しなくても、お前のここでの滞在は別に部屋を用意している。荷物がここにあるのはメイドが間違えたんだろうよ」と言われ、つくしは少し、ほっとしたがマニュキュアの事は嘘だと気付いていたようだ。

そして、「いいか牧野つくし。俺は無理矢理女を抱くような男じゃない。それにお前にその気がないのに抱いたところで俺は嬉しくもなければ楽しくない」と言われた。

それにしても、この男は表情にこそ出さなかったが、別の部屋に泊まりたいと願うつくしがなんとか捻り出した言い訳を笑っていたのだ。だから自分の思考を読まれていたことに気恥ずかしい思いがした。
だが交際相手をからかってどうするというのか。
すると今度は、ゆっくりと笑いながら面白そうに言った。

「俺はお前の知恵がどこまで回るか楽しみにしていた。それにしてもマニュキュアを塗り直したいとは咄嗟とはいえよく考え付いたな」

と、褒められたが嬉しくない。
それは、その言葉からやはり思ったとおり交際相手がつくしの荷物を自分の部屋に運ぶように指示をしていたことが分かったからだ。

「あのね。人をからかうのもいい加減にしてくれない?私たちは恋人同士でしょ?その恋人をからかってどうするのよ?」

その言い方は憤懣とまでは言わないがムッとしていた。
だが相手はそんなつくしに対して嬉しそうに言った。

「恋人同士か。俺はお前の口からその言葉が訊けてうれしい」

「え?」

「俺は初めに言った。たとえお前が俺に惚れてなくても惚れさせてみせるってな。
つまり俺たちの付き合いは俺の気持を押し付けているところが大きい。そんな付き合いの中でお前の口から恋人同士って言葉が訊けたことが嬉しいんだ」

つくしの口から出た恋人という言葉。
そしてふたりの交際の中で、どちらの気持が大きかと言えば、それは自分だといった顏は時々つくしに見せる笑顔だ。

「それに俺は牧野つくしという女が自分の気持を口に出すことが苦手な女だってことは知っている。それから緊張するとやたらと喋ることも。だが俺はお前が喋るところを見ていると楽しいと思える。それは他の女に対しては絶対に抱くことがない感情だ。
だが言葉だけじゃ満足できない。好きな女を抱きたい気持がある。それは欲望という言葉とは違う。男と女の間には触れ合ってみなきゃ分からないことがある。引っかき合って撫で合ってみなきゃ分からないことがある。だから俺はそうすることでもっとお前を知りたいと思う。だが俺はお前がその気になるまで待つ。まあそれが惚れた弱みだな」

つくしの隣に立つ男は、そう言うと彼女の髪に手を触れた。

「それから俺はこれからもお前をからかう。だからお前はそんな俺を怒ればいい。何しろお前の本音は怒りの中に含まれていることがほとんどだ。それに俺を怒ることが出来るのはお前だけだ。牧野つくし」




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コメント
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dot 2020.07.26 07:30 | 編集
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dot 2020.07.26 10:49 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.07.26 16:29 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
dot 2020.07.27 02:14 | 編集
ふ*******マ様
え?お詫び?
ふ*******マ様がご心配されるようなことは何もありませんでしたよ。
むしろ拙宅のお話を楽しんで下さることを嬉しく思っています!
そしてよろしければ、またご感想をお聞かせ下さいませ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.07.27 22:26 | 編集
司*****E様
こんにちは^^
からかわれているとしか思えない女。
司にしてみれば、牧野つくしという真っ直ぐな女をからかうのが楽しいのでしょう。
そしてつくしは、そんな司に押されていますが、自分の気持を大切にしながら司のことを知っていくことでしょうねえ(^^ゞ
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.07.27 22:28 | 編集
ふ**ん様
牧野つくし。司の手のひらの上で転がされている感がありますな。
ま、恋に奥手の女ですから、それは仕方がないでしょう。
そして惚れた弱みで待つ男。
そう言いながら、やる時はやる男!?(笑)
からかいながらも、そこは大人ですから!(≧▽≦)
アカシアdot 2020.07.27 22:30 | 編集
と*様
紳士的な態度を取る男。
それは心と身体の準備を万全にして欲しいということでしょうか。
さあつくしは司の態度に何を感じているのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.07.27 22:33 | 編集
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