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2020
07.22

夜の終わりに 28

「嘘をついたことは謝る」

交際相手は父親が余命一年だと嘘をつていたことを謝った。
そして父親は、「このことは私が息子にさせたことです」と謝ったが、息子の交際相手に会い息子と結婚して欲しいと伝えるため取った行動は病を装うこと。
たが、いつまでもそれを続ければ、つくしの心に負担を掛ける。
それに、いずれバレる嘘だ。だから早々に告白したと言った。
そして晴れやかな表情を浮かべた父親はこう言った。

「ニューヨーク滞在を楽しんで下さい。行きたいところがあれば息子に言えばどこでも連れて行ってくれるはずです。それからマンハッタンのペントハウスはセントラルパークに近いが五番街もすぐ傍です。私はあなたを騙したことの償いがしたい。だから何か贈り物がしたい。もし欲しい物があれば言って下さい。すぐに用意しましょう」

と、言われたが高級ショッピングエリアの五番街に欲しい物などない。
だから「いえ。欲しい物はありません」と答えた。すると父親は、「つくしさんは炭素原子の配列で出来た硬い石はお好きですか?」という質問をしてきたが、それはつくしの知識を試しているのか。
だからつくしは、「いいえ。石には興味がありません。それにダイヤモンドはこの指輪だけで充分です」と答えたが、ダイヤモンドは炭素原子が結合して出来た石だ。
すると父親は片眉を上げ、「そうですか。石はお嫌いですか。それなら他に何か欲しい物があれば司に言って下さい。息子はあなたのためならどんな物でも手に入れるでしょう」と言ったものの、その口振りは、つくしが高価なものを欲しがる女ではないことを分かった上で言っていた。


それにしても息子が息子なら父親も父親だ。
嘘だと告白する前に、自分たちが出来なかった、真新しい学生服を着た男の子が英徳の校門の前で我が子の脇に立って写真を撮られている光景を実現させて欲しいと言った。
それは一日でも早く孫が見たいということだが、その言葉の裏にあるのは、自分が校門の前に立ち孫と一緒に写真を撮りたいという思い。と、同時にここにきて更にはっきりしたのは、道明寺家の人間は望みを叶えるためなら手段を選ばないということ。
だからつくしは自分が贅沢な追いつめられ方をされていることを実感した。

そして邸を後にするとき「これを受け取ってちょうだい。お土産よ」と言って道明寺楓から手渡されたのは平たい箱。車の後部座席で隣に座っている男に「ねえ。これクッキーか何か?」と訊いたが「さあな。開けてみろよ」と言われたことから開けた。

「何これ….」

「何これって見ての通りだろ?」

「でもどうして?」

「お前が石に興味はないと言ったからそれにしたんだろ」

「石に興味がないからって…..」

「気にするな。大したものじゃない。受け取れ」

大したものではないから受け取れと言われたが、箱に入っていたのは真珠のチョーカーとイヤリング。石に興味はない、の言葉を受けた父親は、それならと真珠にしたと言うのか。
だが、どちらも宝石であることに変わりはない。
それに真珠のチョーカーは冠婚葬祭に付けるシンプルなものとは違い大玉の3連だ。
そして真珠だけではなくダイヤモンドも散りばめられた豪華さだ。

「そんな…受け取れと言われても受け取れないわよ」

「何故だ?」

「何故だって….こんな高価なもの頂くわけにはいかないわよ。それに、婚約者って言っても私たちの付き合いはまだ短くて本当に婚約した訳じゃないでしょ?」

交際相手の父親が癌であり余命を告げられたことから、婚約者として会うことにしたが、ふたりの関係はまだ深くない。

「いいや。父親はお前が気に入った。俺の婚約者だと認めている。それに本人も口にしたが俺とお前が結婚することを望んでいる。だから息子の婚約者に贈り物をするのは当たり前だ。返せば気に入らなかったのかと思うだろうよ。つまり贈り物をした相手を傷つけることになる。それにうちの親は他人から物を突き返された経験はないはずだ。と、なるとどうなるか。そうだな。まず気分を損ねることは間違いないが、お前も義理の親の気持を損ねたくはないはずだ。だから受け取ればいい」

義理の親の気持。
結婚すれば道明寺夫妻が義理の両親になる。
世間によくある嫁姑問題を今から起こしたくはない。
出来れば夫の両親との関係を損ねることはしたくない…….

いや、そうではない。
この男と話すと論点がズレていく。
今している話は道明寺夫妻が義理の両親になる話ではなく、こんなに高そうな贈り物を受け取ることは出来ないことを言いたいのだ。

「あのね。さっきも言ったけど、私たちは付き合い始めたばかりで、いくら結婚を前提とした付き合いだからっていきなりご両親に会わされた私の身にもなってよ?それにこんな見るからに高価ものを受け取ることは出来ないわよ….」

そう言ったつくしに対し、「いいか。牧野つくし。俺と付き合うなら、こういったものを身に付ける機会が増えることになる。だから受け取れ」と言って箱の蓋を閉めた。

つくしはその言葉に黙った。それは男性の言葉に納得せざるを得ないからだ。
道明寺ホールディングスの副社長と付き合うということは、プライベートジェットもだがニューヨークの広大な敷地を持つ邸も然りで、これまで自分が知らなかった世界に足を踏み入れることを意味する。
だが交際することを決めた時は、相手がどんな立場でも関係ないと思っていた。
けれどこうしてニューヨークまで足を運び、相手が育った環境を知れば、その環境に、つまり道明寺家の習慣に身体が馴染むだろうかという思いがある。

そしてマンハッタンの中心部は酷く渋滞していたが、これはいつものことだと言われた。
車が向かっているのは交際相手のペントハウス。
よく考えなかったが、宿泊先はホテルではなくそこだ。
つまりここで一気にふたりの関係が進むことになるのか。
つくしは隣にいる男の顏をチラリと見た。
すると「どうした?」と訊かれ「え?うんうん。何でもない」と答えたが、形のいい眉と鋭い目元がやわらいだ顏は魅力的な笑顔をしていた。




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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.07.22 06:18 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
dot 2020.07.22 23:06 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.07.23 13:46 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
本当に司パパは気が早い。どれだけ先の話をするんでしょうねえ。
そしてニューヨークで過ごす夜。
ゆっくりと付き合いを進めていくはずが‼
それにしても司が見せたとびっきりの笑顔は女心をとろけさせるんでしょうねえ。
流れに身を任せる?(≧∇≦)どうする、つくし?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.07.23 21:42 | 編集
と*様
有無を言わさず道明寺家のペース。
道明寺家は、絶対に逃さない。
司のストーカー体質は司パパからの遺伝かもしれませんね?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.07.23 21:47 | 編集
ふ**ん様
炭素原子の配列で出来た硬くて透明な石。
アカシアは有難く頂戴しますm(__)m
宿泊先をホテルではなくペントハウスにした男。
え?その意図?( ̄▽ ̄) 
ど、どうなんでしょうねえ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.07.23 22:18 | 編集
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