男性との初めてのデート。
つくしは緊張してないと言ったが、実は緊張していた。だが時間が経つにつれ、その緊張もほぐれ、打ち解けてくると久し振りのテーマパークを楽しんでいた。
するとその分だけお腹がすくのは当たり前で、「ねえ。お昼どうする?」と訊いたが、テーマパークのレストランはいつも混んでいて、食べたくてもすぐにという訳にはいかない。
それにいくら男性が列に並ぶことが構わないと言っても、やはり待つことに慣れていない男性にはどうかと思った。
それなら飲み物を手にした食べ歩きや、ハンバーガーやピザという手もあるが果たして男性がそういったものを食べるだろうか。
すると「昼飯ならさっきの親父、いや会長からレストランに席を用意してあると言われた。場所は銀行の隣だそうだ」と言ったが、さすが男性はここの大株主だけのことはあると思った。だが、園内にある銀行の隣にレストランがあっただろうかと記憶を巡らせたが覚えがなかった。
いや。もしかして新しく出来たのかもしれない。何しろつくしがここに来たのは随分と前だ。
けれど、パンフレットを見たが銀行の隣にレストランの表記はない。
それでもそこだと言われたならと指定された場所に行ったが、やはりレストランらしき店舗は見当たらなかった。
その代わりそこにあるのは『33』と書かれた扉。
「ここだ」
「ここ?」
店の看板もなければ、しっかりと閉ざされた扉に人の出入りは全くなく、そこはレストランには思えなかった。
「ねえ。本当にここ?レストランには見えないんだけど違うんじゃない?」
「いや間違いない。扉に33の数字だけが書かれていると言ったからここだ」と言った男性が入口に向かって右側の壁にある金属パネルの中に隠されたインターフォンを押した。
すると「どちら様ですか?」と声が聴こえた。
そして男性が「道明寺だ」と名乗るとすぐに扉が開かれ女性が現れた。
「お待ちしておりました。道明寺様」と言って中に案内されたが、そこは高級ホテルのようなエントランス。
そこからエレベーターで二階へ案内されると、ラウンジがあり、その先にあるのは外観からは想像もつかなかった豪華なレストランだ。
「どうやらここは予約が必要な会員制レストランのようだな」
男性はこういった場所に慣れているのだろう。
ここがどういった場所なのか瞬時に分かったようだ。
「銀行の隣にこんな所があったなんて知らなかった」
窓辺の席に案内されたが、まさかこのテーマパークに秘密のレストランが存在していたとは知らなかった。
それにしても、いくら会員制で予約者以外は受け入れないと言っても、日曜の昼食時だというのに人がいない。と、いうことは、もしかすると会長と呼ばれた人物が大株主である道明寺ホールディングスの副社長の来園に急遽ここを貸し切りにしたのではないか。
「ねえ。もしかしてここ貸し切りなんじゃない?」
「多分な。それにしてもあの親父。気が利くじゃねえか」
「でもなんだか悪い気がするんだけど」
窓の外から聞こえる歓声は、ここが巨大テーマパークである証拠だが、建物の中は外の世界とは全く別の静けさと優雅さがあった。そんな場所をふたりだけで使うという贅沢は男性が道明寺司だから出来ることだと分かっていても、ここを独り占めするには悪いような気がした。
「気にするな。こういった場所は大口の株主やスポンサー企業の特権として用意されている場所で利益を追求するための場所じゃない。それから夕食もここで食べてくれと言われている。つまりここは俺たちが自由に使っていいってことだ。だから食事を済ませたあともここでゆっくりすればいい。それに夜にはパレードがあるんだろ?あの親父が言うにはここから見る夜のパレードの景色は園内で一番だそうだ」
男性が言った通り、初めて夜のパレードを見た時は感動した。
園内に散りばめられていた様々な光りの形が音楽と共に目の前を通り過ぎていく様子は、想像をはるかに超えたもので、まさに夢の国の出来事だと思った。
だがつくしはおとぎの国のお姫様になりたいと望んだことはない。
けれど男性は恋人を夢の国に誘っている。つまり男性はその見た目とは違いロマンチストだということだが、そんなつくしの考えは男性の発した言葉で証明された。
「俺は牧野つくしと恋愛をすることを決めたとき、お前が喜ぶことならどんなことでもしようと思った。それは少しでも長く一緒にいる時間を過ごして俺のことを知ってもらうことは勿論だが、同じ景色を見て同じ感動を味わいたい。自分の恵まれた環境を牧野つくしのために生かすことが出来るならそれでいいと思っている。言っただろ?何しろ俺はお前に惚れたんだ。惚れた女のためなら何でもする。だからお前も遠慮なくそれを受け取ってくれればいい」
つくしはその言葉を素直に受け入れたが、そうすることが出来たのは、男性が浮かべた表情がさわやかな笑顔だったからだが、何事も堂々と構える男性のその笑顔にドキンと心臓が高なった。
そしてここで提供されるのは高級フランス料理のフルコース。
園内はアルコール禁止だが、ここだけはアルコールを飲むことが許されていて、ワインリストを手渡された男性は、慣れた様子でワインを選んでいたが、「それからあのセクハラ男は異動になった。二度とお前の前に現れることはない」と言った。
だからメニューを見ていたつくしは、男性を上目遣いに捉えた。
すると男性の顏は先ほどとは打って変わって引き締まった厳しい顏に変わっていた。

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つくしは緊張してないと言ったが、実は緊張していた。だが時間が経つにつれ、その緊張もほぐれ、打ち解けてくると久し振りのテーマパークを楽しんでいた。
するとその分だけお腹がすくのは当たり前で、「ねえ。お昼どうする?」と訊いたが、テーマパークのレストランはいつも混んでいて、食べたくてもすぐにという訳にはいかない。
それにいくら男性が列に並ぶことが構わないと言っても、やはり待つことに慣れていない男性にはどうかと思った。
それなら飲み物を手にした食べ歩きや、ハンバーガーやピザという手もあるが果たして男性がそういったものを食べるだろうか。
すると「昼飯ならさっきの親父、いや会長からレストランに席を用意してあると言われた。場所は銀行の隣だそうだ」と言ったが、さすが男性はここの大株主だけのことはあると思った。だが、園内にある銀行の隣にレストランがあっただろうかと記憶を巡らせたが覚えがなかった。
いや。もしかして新しく出来たのかもしれない。何しろつくしがここに来たのは随分と前だ。
けれど、パンフレットを見たが銀行の隣にレストランの表記はない。
それでもそこだと言われたならと指定された場所に行ったが、やはりレストランらしき店舗は見当たらなかった。
その代わりそこにあるのは『33』と書かれた扉。
「ここだ」
「ここ?」
店の看板もなければ、しっかりと閉ざされた扉に人の出入りは全くなく、そこはレストランには思えなかった。
「ねえ。本当にここ?レストランには見えないんだけど違うんじゃない?」
「いや間違いない。扉に33の数字だけが書かれていると言ったからここだ」と言った男性が入口に向かって右側の壁にある金属パネルの中に隠されたインターフォンを押した。
すると「どちら様ですか?」と声が聴こえた。
そして男性が「道明寺だ」と名乗るとすぐに扉が開かれ女性が現れた。
「お待ちしておりました。道明寺様」と言って中に案内されたが、そこは高級ホテルのようなエントランス。
そこからエレベーターで二階へ案内されると、ラウンジがあり、その先にあるのは外観からは想像もつかなかった豪華なレストランだ。
「どうやらここは予約が必要な会員制レストランのようだな」
男性はこういった場所に慣れているのだろう。
ここがどういった場所なのか瞬時に分かったようだ。
「銀行の隣にこんな所があったなんて知らなかった」
窓辺の席に案内されたが、まさかこのテーマパークに秘密のレストランが存在していたとは知らなかった。
それにしても、いくら会員制で予約者以外は受け入れないと言っても、日曜の昼食時だというのに人がいない。と、いうことは、もしかすると会長と呼ばれた人物が大株主である道明寺ホールディングスの副社長の来園に急遽ここを貸し切りにしたのではないか。
「ねえ。もしかしてここ貸し切りなんじゃない?」
「多分な。それにしてもあの親父。気が利くじゃねえか」
「でもなんだか悪い気がするんだけど」
窓の外から聞こえる歓声は、ここが巨大テーマパークである証拠だが、建物の中は外の世界とは全く別の静けさと優雅さがあった。そんな場所をふたりだけで使うという贅沢は男性が道明寺司だから出来ることだと分かっていても、ここを独り占めするには悪いような気がした。
「気にするな。こういった場所は大口の株主やスポンサー企業の特権として用意されている場所で利益を追求するための場所じゃない。それから夕食もここで食べてくれと言われている。つまりここは俺たちが自由に使っていいってことだ。だから食事を済ませたあともここでゆっくりすればいい。それに夜にはパレードがあるんだろ?あの親父が言うにはここから見る夜のパレードの景色は園内で一番だそうだ」
男性が言った通り、初めて夜のパレードを見た時は感動した。
園内に散りばめられていた様々な光りの形が音楽と共に目の前を通り過ぎていく様子は、想像をはるかに超えたもので、まさに夢の国の出来事だと思った。
だがつくしはおとぎの国のお姫様になりたいと望んだことはない。
けれど男性は恋人を夢の国に誘っている。つまり男性はその見た目とは違いロマンチストだということだが、そんなつくしの考えは男性の発した言葉で証明された。
「俺は牧野つくしと恋愛をすることを決めたとき、お前が喜ぶことならどんなことでもしようと思った。それは少しでも長く一緒にいる時間を過ごして俺のことを知ってもらうことは勿論だが、同じ景色を見て同じ感動を味わいたい。自分の恵まれた環境を牧野つくしのために生かすことが出来るならそれでいいと思っている。言っただろ?何しろ俺はお前に惚れたんだ。惚れた女のためなら何でもする。だからお前も遠慮なくそれを受け取ってくれればいい」
つくしはその言葉を素直に受け入れたが、そうすることが出来たのは、男性が浮かべた表情がさわやかな笑顔だったからだが、何事も堂々と構える男性のその笑顔にドキンと心臓が高なった。
そしてここで提供されるのは高級フランス料理のフルコース。
園内はアルコール禁止だが、ここだけはアルコールを飲むことが許されていて、ワインリストを手渡された男性は、慣れた様子でワインを選んでいたが、「それからあのセクハラ男は異動になった。二度とお前の前に現れることはない」と言った。
だからメニューを見ていたつくしは、男性を上目遣いに捉えた。
すると男性の顏は先ほどとは打って変わって引き締まった厳しい顏に変わっていた。

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コメント
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司*****E様
おはようございます^^
ええっとですねえ、パーク内の秘密のレストランを手配してくれたのは、司パパではなくテーマパークの会長です(^^ゞ
分かりづらかったでしょうか。
そして司の口から告げられたセクハラ課長の異動。
司はどこに飛ばしたのでしょうねえ(笑)
おはようございます^^
ええっとですねえ、パーク内の秘密のレストランを手配してくれたのは、司パパではなくテーマパークの会長です(^^ゞ
分かりづらかったでしょうか。
そして司の口から告げられたセクハラ課長の異動。
司はどこに飛ばしたのでしょうねえ(笑)
アカシア
2020.07.07 20:27 | 編集

と*様
最高のデート!(≧▽≦)
司が相手ならそれはもう最高でしょう!(*´∀`*)♡
羨ましいゾ!
最高のデート!(≧▽≦)
司が相手ならそれはもう最高でしょう!(*´∀`*)♡
羨ましいゾ!
アカシア
2020.07.07 20:31 | 編集
