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2020
06.26

夜の終わりに 18

『俺と恋愛してくれ』

つくしはテーブルを背に追いつめられた形で返事を求められていた。
追いつめた男性は何もない一夜を共に過ごしてから気になっていた人だ。だからその男性から惚れた。付き合って欲しい。恋愛をしてくれと言われれば、「はい」と答えればいいはずだ。
だが、その状態で口を突いたのは、「ええっと…..あの…..少し考えさせてくれませんか?」

「少し考える?何を考える?考える必要はないはずだ。何しろ俺はお前に惚れてる。それにお前も俺に惚れてる。そうだろ?」

男性は片眉を上げそう言ったが、つくしの硬くなっていた頬を撫でた指先が今度は唇に触れそうになった。
だから慌てて口を開くと、「か、考える必要はないって言われても、私たち、ええっと、ほら、あの夜を一緒に過ごしただけでお互いのことを知らなすぎます。あなたの名前も今日初めて知ったんです。だから…他に年齢とか血液型とか。食べ物は何が好きかとか趣味とか。もし付き合うなら相手のことを色々と知ってからの方が楽しいと思うんです!」
と早口で言ったが、男性とのあまりの近さに顏が上気していることもだが、息がはずんで鼓動はたかぶっていた。
そして目の前の巨体ともいえる男性に対し、自分があまりに小さく感じられて不安になった。
だがそんなつくしに対し男性は考え込むように眉をひそめたが、黒く鋭い瞳は熱心につくしを見つめていた。

「そうか。俺のことが色々と知りたいか?」

つくしは、その言葉に頷いた。
何度も頷いて目でそうだと訴えた。

「それなら言おう。俺の名前は道明寺司だが、道明寺ホールディングス株式会社の副社長だ。
年は35才。血液型はB型。好きな食べ物はお好み焼き。ああこれはあの夜に話した姉が子供の頃に作ってくれたことで好きになった。と、言っても最近は食べたことはない。それから趣味は特にないが他に質問は?」

よどみなく言った男性は片眉を上げた。
だからつくしは色々と言った手前、他に何か聞く事はないかと探した。そうしなければ、目の前の男性に会議室のテーブルの上に押し倒されるのではないか。もしくは抱きしめられるのではないかと思ったからだ。だからそうならないために何でもいいから言おうとしたが、頭が真っ白で思い浮かばない。だがそんなつくしをよそに男性が言葉を継いだ。

「どうやらお前は俺に訊きたいことがあるようだが、俺は今まで恋愛をしたことがない。つまり恋愛のプロセスに何が必要かを知らないが、恋愛は付き合っていく過程が楽しいと訊く。
だから初めから相手の全てを知るようじゃ恋愛は楽しめないと思うのは俺の思い違いか?それに時間をかけて共に過ごすことで共通の基盤が出来ると思っているんだが違うか?」

いや、違わない。
男性の言っていることは正しい。
何もかも知って始まる恋はない。
それに共通の基盤を作るためには、その人のことを理解することが必要で、そのために出来るだけ一緒に過ごすことが必要だと思う。

けれど、道明寺司と恋愛をする?
親会社の、それもトップの地位に限りなく近い男性と?
そんな男性の過去の女性関係は知らないが、意識して女性の前で魅力を振り撒く必要がないほどモテるはずだ。恐らく類まれな美しさを持つと言われる女性や、お金持ちで良家の子女と呼ばれる女性たちと付き合ってきたはずだ。それなのに、そんな男性がグループ会社の所謂電気屋と呼ばれる会社の社員と恋愛をしたい?
それも、美人でもなければスタイルがいい訳でもない。恋愛経験がない訳ではないが上手くいかない女と?だが恋が上手くいかなかったからといって失意に沈んだことはない。つまりその気になる前に終わっていることから深く傷ついたことはないが、そんな女で本当にいいのか?

「おい。牧野つくし。あの夜も思ったがお前は考えていることが口に出ていることがある。
だからその呟きについて答えるが、俺の立場は気にするな。他人がごちゃごちゃ何か言ったとしても、そんなものは風が吹いている程度に思え。それに俺は惚れた女を何かの矢面に立たせるつもりはない。何かあれば俺が守る。それから俺に暗い秘めた過去はない。まあ、あの夜も話した通り若い頃はやんちゃ坊主だったが今の俺はそんなことはない。とはいえ、さっきひとり男を殴ったが、あれは嫌がるお前を助けるためであり正当な行為だと思っている」

人には過去があるから今がある。それにつくしは終わったことを言ったところで何になると思う人間だ。
そしてつくしは追い込まれても尻尾を丸めて逃げる人間ではない。
だが今はひたすら守勢に回っていて男性からの交際の申し出をどうすればいいのか考えている。

「牧野つくし。今更何を躊躇う?俺たちは裸にこそならなかったがラブホテルで一夜を明かした仲だ。それもお前は俺の前でノーパンでいた。普通の神経の女ならいくら何もしないと言われても見知らぬ男の前で下着を脱いで洗いはしないだろうが、他人をいとも簡単に信じたお前が俺は好きだ」

洗って干していた下着を見られるという触れられたくないことに触れられ、ただでさえ熱い顏がさらに熱を持った。
だがそれは別として、今までこんな風に告白をされたことはなかった。
それにつくしも男性のことが気になっていた。だから自分の胸に言い聞かせた。男性がどんな立場にいる人間だとしても、男性が言った通り気にしなければいい。
そして自分の行動は自分が責任を持てばいい。それだけの年は重ねた大人の女だ。それに男性と付き合ってダメになったとしてもそれはそうなる運命だったと思えばいいだけの話だ。
だからつくしは息を深く吸い込んでから言った。

「いいわ。お付き合いします」

「そうか。それならこれから徐々に俺を知ってくれ」

そう答えた男性は、つくしの腰に大きな手を添え彼女の身体を引き寄せると唇を重ねた。





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コメント
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dot 2020.06.26 07:20 | 編集
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dot 2020.06.26 07:26 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
dot 2020.06.26 13:41 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.06.27 10:48 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
つくしの脳内はヒートアップ(≧▽≦)
もの凄い勢いで迫られてますが、本人も気になっていたことですしね。
え?それにしても司が早い?いいんです。大人なんですからガンガン行っちゃってください。
それに仕方ありません。恋する男は独占欲の塊ですから(笑)
アカシアdot 2020.06.27 20:45 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
そうです。牧野つくしという女に時間を与えると色々と考えてしまうので、これでいいんです。
そして司の愛し方は強引さの中にも優しさがあります。
だからキスしたくなったらするし、抱きしめたくなったら遠慮なく抱きしめるでしょう。
司の恋に駆け引きは不要です。
でも大人なんですからいいんです!(笑)
アカシアdot 2020.06.27 20:54 | 編集
と*様
坊っちゃんの押しが強すぎる(≧▽≦)
惚れた女ですからねえ。ロックオンされた女は逃げれません。
え?断れる女性がいるのか?う~ん。いないでしょうね。
アカシアも会議室で迫られたいです!(笑)
アカシアdot 2020.06.27 20:58 | 編集
ふ**ん様
「俺と恋愛してくれ」
「はい!喜んで!」と言いたいところですが、彼はつくししか見ていません。
あはは(≧▽≦)金持ちの御曹司の真面目バージョン!
そういえば御曹司。最近ご無沙汰ですがどうしているのでしょう。

さてこの男。取りあえずつくしと交際スタートです。
恋愛経験はない男ですが、彼なら何をしても様になると思います。
カッコいい男は何をしてもカッコいいですからねえ(笑)
アカシアdot 2020.06.27 21:21 | 編集
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