FC2ブログ
2020
06.21

夜の終わりに 16

糊の利いた真っ白なシャツにワインレッドのネクタイ。
田坂の言葉を借りれば綺麗な逆三角形の身体を包んでいるのは黒のピンストライプのスーツ。癖のある髪と鋭い目の男性の名前はT男ではなく道明寺司。
二度と会うことはないと思っていた男性は、それなりの会社で立場がある人間だとは思っていたが、まさか男性が道明寺ホールディングスの副社長だとは思いもしなかった。

「冗談でしょう….」

「牧野君。何が冗談なんだね?いや。それにしても君が道明寺副社長と知り合いだったとはね。本当に驚いたよ」

つくしは事業部長の言葉に答えることはなかった。
それは、T男と名乗った男性がつい先ほどまで事業部長と田坂が話題にしていた道明寺司だったことを知った衝撃があまりにも大きかったからだ。

そして事業部長が額に汗を浮かべ、居心地悪そうにしているのは、道明寺グループの副社長を前に緊張しているのは勿論だが、床に倒れている田坂がつくしにセクハラ行為を行っていたことを知らなかったことに対し責任を取らされると思っているからなのか。とにかく落ち着かない様子でそこにいた。

だが男性から、「君。この男を外に連れ出してくれ。それからふたりだけにしてくれないか」と言われると心底ホッとした表情を浮かべ、部屋の外にいる男性たちの手を借り田坂を連れ出すと静かにドアを閉めた。
そして、ふたりっきりになると、そこにもたらされたのは沈黙だが、何故男性はここにいるのか。
いや、ここは道明寺のグループ会社であり副社長である男性がここにいることに不思議はない。だがそれでもどうして?という思いがあった。

「驚いたか?」

「え?ええ…..あの…..はい….」

つくしは事業部長ほどではないにしろ落ち着かなかった。だから、しどろもどろに近い状態の返事しか出来なかった。
だが男性は違った。そしてつくしの疑問に答えるように何故自分がここにいるのかを話し始めたが、視線はまっすぐで言葉使いはやさしかった。

「どうして俺がここにいるか不思議に思っているようだが、まずは謝りたい。
あの日、お前が風呂に入っている間に鞄の中を見た。それは自分と一緒にいる女が誰だか知りたかったからそうしたが、そこにあった社員証からお前が東邦電気の社員だということを知った。だからあの時点でお前の名前が牧野つくしだということは知っていた」

それは、つくしが自分のことをT子だと名乗る前の話で、男性はつくしの求めに応じて仮の名前をT男だと名乗った。

「本当は駅まで送って行ったあのとき車の中で俺のことを話すつもりでいた。
それは本当の名前もだがホテルの部屋で話したとはまた別の意味で自分がどういった人間かを話そうと思った。だがあの時かかって来た電話は急を要するもので切ることも終わらせることも出来なかった。だから改めて牧野つくしという女性に会いに行こうと思った。
だがすぐにニューヨークへ向かわざるを得ない状況が生じた。そして今日まで会いに来ることが出来ずにいた」

そう言えば、事業部長と田坂の会話の中に今はニューヨークにいるという下りがあったが、つくしに会いに行こうと思っていたという言葉の意味は、もしかすると男性は、つくしが男性のことを知りたいと思っていたのと同じように彼女のことを気にしていたのか。
そしてその意味は___

「落ち着かないのか?」

「え?」

「それに動揺しているように見える。ああそれから緊張しているようにも思える」

そう言われたが、あの時の男性が道明寺グループの副社長という圧倒的な権力を持ち威厳を放つ人物だと知れば、落ち着かないのは当たり前だ。それに動揺もすれば緊張もする。
そして顏は熱くなっている。

「牧野つくし。お前は俺に探して欲しいと思わなかったか?」

それはまるでつくしが男性を気にしていたことを知っているかのような言い方。
それについ先ほどまでの話し方とは違い上から目線で、つくしが自分に惹かれるのは当然だといった態度だ。
だから「どういう意味ですか?」と返した言葉はムッとしていた。
そして思った。あの夜セクハラを受けているつくしの話に耳を傾けてくれた男性は、つくしに頑張れ負けるなと力をくれた。話を訊いてもらったことで心が軽くなった。
だが反面、10代で婚約者をあてがわれそうになったことから女性に対してはシニカルな考え方を持つ人物のように思えたが、男性が何者か分かった今、道明寺司という男も実は男性特有のプライドの高さがあるということなのか?
そして美形と呼ばれる男性ほどプライドが高いと言われるが、道明寺司も美形と呼ばれる男性であることは間違いない。それに当然だがそのことを本人も自覚している。だから自分の発言が何を言っても許されるとでも思っているとすれば、それは大きな間違いだ。

「どういう意味か…..か?そうか。俺が言った言葉の意味が分からないか」

男性はムッとしたつくしに対し楽しそうな表情をしているが、そんな男性の目を見つめたまま冷たく言葉を返した。

「ええ。分かりません」

「そうか。それなら教えるが、お前、俺に惚れただろ?ああ、心配するな。俺もお前に惚れた。だからお前を探しに来た。それにたとえお前が俺に惚れてなくても気にしなくていい。
そのときはお前を俺に惚れさせればいいだけの話だ」





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.06.21 11:13 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.06.21 13:49 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2020.06.21 16:52 | 編集
このコメントは管理者の承認待ちです
dot 2020.06.22 22:29 | 編集
か***ち様
最後のセリフがカッコ良過ぎでしたか?(笑)
こんなことが言えるのは司くらいでしょうね(#^.^#)
アカシアdot 2020.06.23 21:48 | 編集
司*****E様
俺に惚れたか?そんなことが堂々と言える男は司しかいません!(笑)
それにしても言われたつくしの頭の中はどうなっているのでしょうねえ。
司に捕まったら逃げられない。
ええ。彼、執着しますからねえ。
アカシアdot 2020.06.23 22:02 | 編集
イ**マ様
彼だけに許されるセリフ!(≧▽≦)
確かにそうです。並の男が言ったら殴られるでしょうね(笑)
アカシアdot 2020.06.23 22:05 | 編集
ふ**ん様
>豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せ(サメ女推薦)
わはは(≧▽≦)あの時のように嘘はつかないT男。
「お前も俺に惚れてる」
それにしも司だから許されるセリフですよね。
持ってけドロボーとなるでしょうかねえ(笑)
アカシアdot 2020.06.23 22:09 | 編集
と*様
ご対面!と、言っても司の独壇場のような気がしますが、どうなるのでしょうねえ(^^ゞ
アカシアdot 2020.06.23 22:14 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top