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2020
05.08

烈日 4

Category: 烈日(完)
私は彼女と会った後、同僚から訊いた道明寺司の恋について書かれている古い記事を調べることにした。
私の職場は広告代理店ということもあり、自社が制作した広告が掲載された、その当時の代表的な週刊誌や雑誌がデジタル化されることなく本の状態で資料として保管されていた。
そしてその中に、『道明寺ホールディングスの御曹司、盟主としての道を選ぶのか?』とタイトルが付けられた記事を見つけた。

そこには、当時の道明寺財閥は業績不振から経営危機に陥っており、多額の資金を必要としている。そしてその打開策として考えられているのが、跡取り息子である道明寺司がアメリカの資産家の娘と結婚することだと書かれていた。
そして『道明寺司氏には結婚の約束をした女性Aさんがいる。高校生の頃から交際をしているAさんは裕福とは言えない家庭で育ったことから現代版シンデレラと呼ばれているが、かつて道明寺司氏の母親との間に確執があった。だが今はふたりの関係は良好であり、母親もAさんのことを息子の結婚相手として認めている。だが、ここにきて結婚の約束は果たされることなく終わるのではないか?果たして御曹司の選択は?』と続いていたが、そんな記事の下に掲載されている写真の道明寺司は、無表情でカメラを見据えている。だがその瞳には目に見えない激しさと情熱が湛えられているように思えた。


『彼の人生は自分だけの人生じゃなかったから』

彼女はそう言ったが、まさにその通りで、記事の内容は若いふたりの上へ覆いかぶさってきた重い現実。
その現実を跳ね除けるだけの力は、あの頃の道明寺財閥にはなかった。そして言わずもがなで若いふたりにそんな力があるはずもなく別れを選んだ。いや。きっと彼女の方が身を引いたのだろう。

彼女は明るい人柄だ。それに前向きな人だ。
そして、その明るさと前向きさの中に感じられるのは、ひたむきなところ。
だから絵を描いている時の彼女から感じられるのは絵に対するひたむきな思い。
そんな彼女は何を描いてもいいと自由な題材を与えられれば、いつも明るい絵を描く。
だがその絵は決して上手いとは言えなかった。しかし絵は作者の精神状態が現れると言われていることから、彼女が絵を描いている時は気分が高揚しているのか。そういった感情が絵に現れているように思えた。

そのとき、ふと思った。彼女が絵画教室に通い始めたのはいつの頃からだったのか。
もしかすると、男性と会うために、つまり外出する理由が欲しくて絵画教室に通い始めたのではないか。
四半世紀ぶりに再会したふたりは、まだ若かったあの頃、自分達の身に起きた不条理を受け入れた。けれど大人になった今、自分の心をあきらめることを止めた。自分の心から逃げるのを止めた。
そして、もう離れないと決めたのだろう。

だがそんなふたりに与えられた時間は短いはずだ。愛し合う時間は短く、話をする時間はさらに短いはずだ。
いや違う。そうではない。あの砂浜で見た情景からして、後ろから彼女を抱きしめた男性は話すことは求めていない。それよりも彼女をずっと抱いていたい。このまま溶け合ってしまいたい。そんな思いが感じられた。

だが他人はそんなふたりの思いを情事と呼び、汚れた関係と言う。
しかし私は情事と呼ぶには何かが違うように思えた。
そう思うのは、砂浜で見たふたりの表情があまりにも幸福そうに見えたから。
そして今は別々の人生を歩んでいるとしても、ふたりが一緒にいることは生まれた時から決められていた運命に思えてならなかった。
それに、あのふたりは、たとえ会える時間が10分しかなくても一緒にいることを望むはずだ。




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コメント
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dot 2020.05.08 06:03 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
理香ちゃん。遠い昔の記事にふたりの過去を知りましたが不倫ではない。そう感じたようですね。
そして大人になったふたりのことを色々と思っているようです。
すでにお話は進んでいますので御覧の通りです(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2020.05.09 22:46 | 編集
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